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BRAHMAN interview
- SPECIAL -

BRAHMAN interview

全国各地のライブ会場でその時の思いや疑問、希望をアウトプットしてオーディエンスに投げかけ、紡いで廻り続けるBRAHMAN。今回1年振りにリリースされるシングル「露命」を引っさげ、また全国を巡る。土地、会場を選ばず、都内も地方も、東北も関西も、幕張メッセも小さなライブハウスも、全てが彼らのプレイグラウンドだ。8/22、この日サロンキティー18周年ライブにて、本番を控えるTOSHI-LOW(Vo)に会いに、愛媛県松山へ飛んだ。

interviewer:鞘師至   live photo : 三吉ツカサ

「必要なのは、人間力」

―BRAHMANは大型フェスにも多く参加する中、ライブハウスでもライブをし続けていますね。

■TOSHI-LOW(以下 T):俺達の日常は昔からライブハウスにあるよ。ライブハウスでのライブが特別なんじゃなくて、フェスみたいな大きなステージの方が非日常だからね。当時のバンドブームが終わってライブハウスから人が全然いなくなった後、ハーフパンツにVANSのスニーカーでスケボーやってるような奴らがどんどん集まってきて、そのうちまたライブハウスがいっぱいになる、っていうのを見てきてたけど、それって流行だからじゃなく、自分から好きな音楽を探しに来た奴らがそこに集まって出来た流れでさ。俺もそういう自分で見つけ出してやる感覚が好きなんだよね。お客さんにも、もし俺たちをそういう風に見つけてもらえたら嬉しいし。そうやって知っていったものって忘れないから。そういう自分で掘り下げてくおもしろさがライブハウスにはあるから、いくら大きいフェスに出ても自分達のほんとの初心はいつでもライブハウスにあって、今でもライブハウスでやってる。そしてそれを続けている限りその原点の気持ちを一生忘れない。当時客として、ビビりながらチケット握りしめて行ってたあの感覚とかね。すごい大事だと思うよ。俺は会社員でも、就職した訳でもない、つまりはずっと音楽で全てを教わってきてるんだよ。ライブハウスで学んだ事が一番デカい。だからそんな場所に対して嘘はつきたくないし、変なしがらみとかでライブする事を規制されるのも嫌だね。地方に行くとよく聞くから。「○○のライブハウスに出たら、その土地で別のライブハウスには出るな」とか。くだらないよ。別にそんなの実力なんだ、どこでやったっていいし規制するのはおかしい。そういう変な力関係が早くなくなるといいな、というのは常に思ってる。

–そういう規制、昔は今以上に色濃くありました?

■T:いや、昔はライブハウスの数自体もっと少なかったからね、そんなに聞かなかったな。もちろん出てるバンド間では昔からいろいろあったけどね。地方に呼ばれて行くと、楽屋開けただけでめちゃくちゃガン付けられるとか。「東京のやつがなんだ?」みたいな。まあ俺は出身東京じゃないし、田舎者なんだけどなぁ(笑)と思いながらも、そういう奴とはライブで白黒付ければいいと思ってたよ。

–そのバンドマン達はライブを見た後、接し方は変わりました?

■T:変わるよ、いいライブやれば。ずっと難癖付けてくるやつらもいるけど、そういう奴らはすぐにいなくなるし。まあ俺は喧嘩ふっかけられても逆にやる気出るというか、絶対見返してやるって思えるからそんなに嫌いじゃないけどね。ただそれで裏行って喧嘩しても意味ないから、ステージで白黒つけてやるっていつも思ってるよ。絶対負けねえって思いながら。客席見れば結果はすぐに分かるしね。客が少なかろうが売れてなかろうが気迫ある本当に凄いライブするバンドっているじゃん?俺が見て来た先輩のバンドにはそういうバンドが確実にいたよ。むしろそういうバンドから影響受けてる事が多いかもしれない。そういう人がどこにいるって考えると、武道館とかじゃなく、やっぱり今でもライブハウスにいるんだよね。

「常にリアリティーを持ってライブハウスに立っていたい」

–影響を受けた音楽は、洋楽のCD等ではなくて、自分の目で直接見て来た、身近にあるバンドのライブって事ですか?

■T:例えばその好きな洋楽のバンドマンと出会えるのも、ライブハウス出て、いろんなバンドと知り合って、次はどこどこの企画に出て、そのうち武道館でやったり、何万人のフェスに出たり、人の繋がりで新たな人とどんどん出会って行って俺はある日ジョー・ストラマーと会えたり、マヌ・チャオに会えたりする日が来たんだけど、そう考えるとやっぱり全てのルーツはライブハウスなんだよね。力抜かずに、逃げ出さずにそこでずっとやってきたからたくさんの人に会えたと思う。

–人と出会ってきた場所がいつもライブハウスなんですね。

■T:今俺の周りにいる友達っていうのも、ライブハウスで知り合った奴らばっかりなんだよ。この間、毎年地元で仲間が集まってやってる新年会の話をしてたんだけどもう20回目でさ。当時水戸LIGHT HOUSEが出来た時、俺が高1で、その時の高1〜3年の学校をドロップアウトした様な奴らが集まってライブハウスで遊んでたんだけど、その時の奴らと今でも呑んでんだよね。多い時は100人くらいで。今俺は田舎を捨てて東京に住んでるけど、彼等のお陰で震災の時だって茨城行くにも、福島行くにも、ルートがすぐ出来たよ。どこへ何を持って行けばいいか、現地の今の情報をすぐに回してくれたのはそいつらだったよ。トラック手配して荷物積んで、とにかく動きが速かった。それが学校の友達でもなければただの町の友達でもなく、音楽の友達っていうのが面白いよね。

「賛否両論なんかに何ビビってんだよ、もっと信頼してみなよ人間を」 

–震災時に水などの支援物資を届けた活動の事、当時聞きました。震災直後はフォローの動きにいろいろと世間の意見もあって、eggmanでもライブを開催する事、チャリティーをする事、アクション一つ一つに否定的な声もありました。当時関わったアクションに対しては、否定的な声もありました?

■T:俺の周りは否定というより「ディスられんじゃない?怖くない?」って心配してた。でも元々バンドなんて賛否両論あって当たり前じゃん?ディスられるのなんか宿命だよ。インターネットでどこの誰かも分かんねえような顔なしにいくらディスられようが、もっと自分の周りにいる人達を信頼して、言うこととか、願うこととかを紡いで紡いでやっていけば必ず正しい道に当たると俺は思ってる。

–リリース後の全国ツアー含めた全国各地でのライブ、中には東北ライブハウス大作戦 の会場も入っていたりと、今も被災地へのサポートを続けていますが、ツアー後に考えている動きはありますか?

■T:俺昔からその日の事と、あとは何となく10年後くらいのビジョンをぼんやり考えてて、それ以外は特別考えてないんだよね。じゃあ10年後何やってたいかって言ったら、変わらずライブハウスでライブしてたいっていう事なんだけど。少し前の話で、ある人が俺に言ったんだよ、「SHELTERでやったらLOFTでやって、QUATTROやってAXでやって、ZEPPやって…一緒にデカくなろうよ!」って。ステップアップとしてライブハウスを捉えてるのを犇々感じてマジで気持ち悪かったね。地元水戸で自分が15歳の時にできた高さ10cmにも満たないようなステージに上るのが当時の夢で、今でもその時持ってた気持ちは変わらないから。その夢をただ会場がデカいってだけで、他の物と優劣付けてもらっちゃ困るよ。俺の夢だ、はした金みたいな夢と比べんじゃねえ、って。

–「露命」の3曲。歌詞は何となく震災に関わるメッセージにも感じました。シングル2作続いての本リリースは、その時の熱量をその時にアウトプットしたかったから?

■T:リリースの細かいことは俺達に聞いても多分参考にならないよ(笑)。狙いっていうんじゃなくて出したい時に出せればいいなと思ってるから。これだけ長くバンドやっててアルバム4枚だからね(笑)。でも流行とか関係なく、昔から変わらない意識で曲作りできてるから、初期の曲でも今も同じ意味合いで演奏できてるし。ライブでやってる既存の曲もどんどん変えてるしね。毎回毎回新車を買って、古くなったら売ってっていう人もいるんだろうけど、俺等はそういうんじゃなく少しずつ直してさ、ずっとやってきてるよ。サビたらサビたでいい色合いだなって思うし、愛着出てくるし簡単には売れない。曲は自分達を構成してくれるひとつの大事な要素だから。家族、というか子供に近いんだろうね、なんとなく。人気ある子もいればそうじゃない子もいる。足が速い子もいれば鈍臭い子もいて、それでも俺達生んでる方からすれば等しく愛くるしいんだよね。だから昔の曲やるにも不具合がでてくればちょこちょこ直して、現状ベストな状態でやっていけばいいと思うし。新しい物を生産しなきゃバンドが回らない、経済が回らない、社会が回らないと思ってる人が多いと思う。大量生産して、大量消費して、大量廃棄して、結果的にCD山ほど捨てられて。売り方としてはそういうのって儲かるのも分かるけどさ。もう、そういう時代は終わりにしてもいいじゃねえかって思う。無駄はいらないよね。もうゴミみたいなCDの山も見たくないでしょ。だから自分達が作る音、曲に対しても量産はいらない。どっかいつからか続けて来たこの経済のサイクルっていうのを考え直してもいいんじゃないか、って思うよ。俺達は元々そういうせわしないスタンスで活動してないから今になって周りを見渡すと、俺等のほうが気軽で良くない?って思うんだよね。それでもやれて来れてる。時代が新しいものに飛びつくのは当たり前だけど、だからと言って自分が無理してそれに合わせていこうと思わなくていいし。古くなることだって受け入れればいい。古くなってダメになるような音楽だったら、そんなの始めから終わってるんだよ。若くてかっこいいからキャーキャー言われてるような音楽だったら数年後には終わるから。少なくても俺はそういうものを求めてないし、俺の周りにいる人達も欲しがってない。そういう感覚を共有できる奴らとずっと遊んでいけたらいいな、と思ってるよ。
今必要なのは人間の、もっと本質的な気持ちの強さだよ。

◉露命