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スーダラ少年 interview
- SPECIAL -

スーダラ少年 interview

音楽というモノは僕が思っているより複雑だ
様々なジャンルの音楽があって、様々なルーツがあって、
音楽は世界だって変えられるし、人だって変えられる、
時に音楽は自由だし、時に音楽は枠にはまってしまっている
僕は”スーダラ少年”にインタビューする前、とても緊張していた。
様々なジャンルの音楽を取り入れている彼の音楽の事を、同じ目線で話ができるか不安だった。
でもこのインタビューが終わった時、そんな不安は全て飛んでしまっていた。
僕は彼の”音楽”が好きだ。僕は彼の”言葉”が好きだ。僕は彼の”人”が好きだ。
音楽というモノは僕が思っているよりシンプルだ

interviewer 森村俊夫

―この度は1stミニアルバム”「?」クエスチョン”リリースおめでとうございます。今作は”「?」クエスチョン”というタイトルですが、どういった意味があるのでしょうか?

今作品をつくるにあたっては”コンセプト”というものを何も決めませんでした。今作にはライブで人気のあるような曲も入っていなくて、むしろ”スーダラ少年”の楽曲の中でも”アクの強いもの”を詰め込んだ作品なんですよね。特に深くは考えずにこの作品をつくり始めたという部分からの”「?」クエスチョン”という意味が1つあります。
それに、”スーダラ少年”という名前を始めて聞いたほとんどの人がきっと頭の中に”「?」クエスチョン”が出てくると思うんですよね(笑)。そんな名前にも負けないインパクトをこの作品にも付けたいという気持ちからこのタイトルを付けたというのもあります。

-1曲目に収録されている「レプリカで撃て」ですが、”レプリカ”という言葉には”複製品”という意味がありますが、この曲のタイトルにはどういった意味がありますか?

お客さんによく”変わった歌い方ですね”とか”どうやって歌を勉強したんですか?”と聞かれる事が多いんですが、呼吸方法とかそういう事より、好きなアーティストに少しでも近づける様にいろいろなアーティストの歌い方をめちゃくちゃ研究してモノマネをしていたんですよね。高校生の時は特に”ビリー・ジョエル”の歌い方を一番研究しました。
“レプリカ(複製品)”という言葉は銃の事を歌っているわけじゃなくて、”誰かの歌い方の真似をする自分の声”の事を歌っていて、そうやっていろいろな誰かの歌い方の真似をしている中で、それが自分の血となり肉となって、それが重なった時に自分自身のオリジナルのモノが生まれる瞬間があるんですよね。
曲の歌詞の中に

“憧れを食べてるうちにそれを作ろうとして
そのうちにそれを壊したくなって
曲げたり噛んだり潰したりして
その目の前にあるものはさ
少なくとも僕は知らないタイトル”

という部分があるんですが、そこを一番歌いたくてつくった曲です。始めは誰かに憧れて始めた事でも、それをとことん追求して突き詰めた先には新しいモノが待っているんじゃないかと思うんです。音楽の世界や表現の世界は、誰かに似ていたり近付いていたりすると”ただの真似事”としてバッシングされてしまう事が多いと思うんですよ。でも、影響を受けているなら受けている事を貫いて研究して行く事でオリジナルのモノが生まれるという事はすごい事だと思うんですよね。ずっとやっていく内に”自分にしかできない事”が見つかっていくし、それを突き詰めていく事が”スーダラ少年”として一番大事にしてきた事でもあって、それを歌いたかったっていうのがあります。

-この楽曲は歌詞の言葉のチョイスに、他の楽曲とは違う”バイオレンス”な世界観を感じます。”スーダラ少年”の楽曲にはあまり無い、攻撃的楽曲だと感じました。

さっき”誰かに近付きたい”って話しましたけど、実は”本当は越えてやろう”と思っています。気持ちはすごくアグレッシブで、少しトゲのある言葉がすごくその時の自分の心境とシンクロするんですよね。歌詞にも出てくる”リボルバー”という言葉には”ぶちかましてやる”っていう強い気持ちもあるのかも知れないですね(笑)。

-対してサビには、不思議な怪しい世界観が表現されていますね。

サビの部分はファルセットと1オクターブ下の声を2つ重ねているんですが、上手く不思議な世界観が出せましたね。トゲのある言葉とのミスマッチ感とも相まって良い世界観が出せているんじゃないかと思っています。
でも、実は始めは狙ってやっていなくて、元々はAメロの部分がサビだったんですよ(笑)。この楽曲を作品にするとなった時、改めてマッシュアップして磨いていく内に、サビじゃなくてAメロにはめた時にすごく良かったんですよね。ただ、あの部分すごくキーが高くて(笑)。
Aメロからサビまであのキーだと聴いていても疲れる曲になってしまうじゃないかなと思って、どうアプローチすれば良いかとすごく悩んだ結果、あのサビが生まれましたね。

-先日公開されましたMVも、その不思議な怪しい世界観を押し出す作品になっていますね。

初めてあの作品を観た時、すごく興奮しましたね。実はMVの制作に関しては上山監督(Ken Yokoyama「Save Us」のPVを手掛けたことで、一気に話題となったカクバリズム所属の上山悠二監督)に全てお任せしました。本当に何にも言ってないです。

-映像と音の混ざり具合がとても気持ち良いです。この作品をパッケージするにあたって、レコーディング手法でこだわった事はありますか?

今作が”スーダラ少年”として初めての作品という事もありますけど、レコーディング経験が全然ないんですよね。なんでかと言うと、ライブが好き過ぎる事もあってレコーディングが嫌いなんですよね(笑)。
レコーディングした音にライブとは違うモノを感じてしまっていて、音質もすごく固いものに感じてしまうので苦手だったんですよね。
だから、今作のレコーディングをするにあたって”ライブで表現している事をそのままパックしたい”というのはずっと言っていて、スタッフのみんなも考えてくれていた部分でした。
特に最後に収録されている「タイムトラベルなんて」という曲は、完璧な一発録りでレコーディングしました。ライブ感はどうしても欲しくて、マイクもかなり拘りました。ずっと一番の壁だったですが、今回良い意味でその壁と向かいあえたので、良い歌は歌えたと思います。今まで、マイクやエンジニアさんに向けて歌っていたのを、会場を浮かべながら歌いましたね。

-今作の他の楽曲についても聞かせて下さい。2曲目「チャーリーズ・トーク」では、一変して一気にハッピーな雰囲気の楽曲ですね。

“チャーリー”というのは”チャップリン”の事で、この楽曲は”無声映画”の事を歌っています。”モダン・タイムス”という映画がとても好きで、その映画の最後に歌を歌うシーンがあるんですよ。無声映画なのに、ついに声を出してしまうんですが、その歌ってこの世に存在しない言語で歌っているんですよね。世界中のどんな人が聴いても平等に伝わるようにという気持ちを自分の楽曲にも込めています。アレンジに関しては、当時の時代観を意識してスイングな要素を思いっ切り入れていますね。

-終始ハッピな雰囲気の楽曲ですが、ーヶ所ガラッと雰囲気が変わる場所がありますよね?

“チャップリン”という人はハッピーな一面がある一方で、国外追放されたりと波瀾万丈な人生を歩んでいる人なんですよ。そんな中でも”チャップリン”はパワフルに真っ直ぐ進んでいくんですが、そんな部分もこの楽曲には取り入れたくて、スラップ等のサウンドを使って表現しています。

-3曲目「赤いスカート」。2人の男女のいる風景が浮かんでくる楽曲ですね。とても切ないストーリを感じました。

昔一緒にバンドを組んでいたメンバーの実話を元につくった曲なんですが、そいつに25歳で初めて彼女ができたんですよ。初めての彼女という事もあって、みんなですごく祝福していたんですけど、そんな彼女に浮気をされたあげくに”子供ができた”と嘘を付かれて10万円騙し取られるんですよ(笑)。
その話を聞いた時に、もう慰めの言葉も見つからなかったんですが、せめて音楽にしてあげたいと思って(笑)。この曲に何かメッセージがある訳ではなく、その時の衝撃的な光景を歌っただけなんですが、恋愛に対して盲目な少年をテーマにして、”どんまい”という気持ちを込めてつくりました。

-5曲目「きたかい道」。

俺は静岡出身なんですけど、静岡に”北街道”という道があって、小学校の通学でも通っていた道で、昔は北街道沿いが自分の世界の全てだったんですよね。
そこで学んだ事や経験した事ってすごくたくさんあって、それが今も自分の心の引き出しの中に特に大事に閉まってあるんです。そんな大切な”北街道”での思い出を曲にしたいという気持ちもあったし、バンドの中のただのシンガーやボーカルだとは思われたく無かったので、こういった弾き語りの曲を入れたかったというのがあります。
“北街道”をずっと進んでいくと、好きだった子の町があるんです。当時、病的に奥手だった自分自身の苦い思い出を一番歌いたかったというのがあります。

-最後の”僕はヘッドファンをつけた”というフレーズを二回繰り返すところはすごく印象的です。

後から知ったんですが、男女で”まん丸(の)赤い月”を見るっていうのはすごく運命的な事らしいんですよ。それから”赤い月”を見る度に、月が”お前はなにやっているんだよ”と言ってきている様な気がして(笑)。そんな月の言葉を聞かないように”ヘッドフォンをつけた”自分がいました。

-今作最後に収録されている「タイムトラベルなんて」。レコードやラジオの様なレトロな音質で始まるこの楽曲。一発録りの楽曲という事もあって、ライブ感やグルーヴ感のある楽曲ですね。

この曲はすごく辛くて音楽を辞めようかとも考えていた頃につくった曲です。当時、今までやっていたバンドを辞めて、全く音楽のジャンルも違う”スーダラ少年”として1人で改めて一から音楽をスタートしたんですが、今までのお客さんも応援はしてくれどもライブには来てもらえなくなったりと、本当に全てが一からで、現実を突きつけられた時期でもありました。
そんな時に、音楽が上手くいっていた時期を振り返りそうになったり、未来の成功を想像したりもしたんですが、結局自分の中では無意味で、過去も未来も関係なく、生きている”今”をやるしかないんだなという答えになりました。結局のところ”今”が楽しくて、心を躍らせながら”今”やるべきことをやっているし、 “面倒くさいからタイムトラベルなんて行かないよ”って気持ちをこの曲にしました。

-今作品には6つの全く違った世界観が存在している印象ですが、でもその6つの世界観全てが”スーダラ少年”の一部を切り取ったモノであって、その世界観の中に1つの真っ直ぐなモノが通っているからこそ、この作品は真っ直ぐ心に入ってきてすごく心地良いのだと思います。

ありがとうございます。この作品の中で”スーダラ少年”の今までとこれからのやっていきたい事を表現しているし、同じ事をやっている人は他にはいないと思うし、これからも面白い事をどんどん提案していくので、感じてもらいたいです。
今回の作品は”スーダラ少年”としての、(とっても高級な紙で作った)”名刺”だと考えています。この冊子を読んで知ってくれた方にも、HPやインターネットの視聴でも良いので聴いてもらいたいです。そして自分の音楽と、聴いてくれた人との何かがシンクロして交わっていければ良いなと思っています。