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SUPER BEAVER interview
- SPECIAL -

SUPER BEAVER interview

無意識に立つようになって、周囲に意図的に立たされて、本当に立ちたい場所を見つけた後にもう一度、今度は自分の意識でそこに立つ。 若くして経験した苦楽で見出した礎を以ってこの度、彼等が書き記すのは年代、場所、ステータスに関わらず全ての人に共通する”本当の事” 。 大切な事を忘れたり、見失ったりしないよう作品に落とし込んで保存する。 SUPER BEAVERが今発するメッセージは、手に取る人を選ばずいつでも気持ちを浄化してくれるような、音楽以上の存在感を得た本物の表現だ。

Interview & Text : 鞘師 至

かたくなに守ろうとしなくてもそこにあるもの、それが自分らしさ。

―初めて会ってから10年近く経ったかな? 当時メンバーがまだ高校生でSUPER BEAVERとして活動し始めたくらいの時期からライブを見てたから、先日SOLD OUTでぎゅうぎゅう詰めの渋谷CLUB QUATTROで超絶盛り上がってるライブを見た時は、なんだか幸せな気持ちになりました。

渋谷龍太(Vo. 以下”S”): そうですよね、バンド結成した直後からの付き合いですもんね。 当時二子玉川にあったライブハウスでライブし始めた時に出会って、その後エッグマンでも会うようになって。 高校の同級生以外であの頃の俺等を知ってる人は本当レアですね(笑)。

柳沢 亮太(Gt. 以下”Y”): 当時まだ17、18歳とかだもんね、懐かしい。

-その当時最初に出したデモ音源とか、ライブでやっていた曲とかを思い返してみると、ギターフレーズや手癖、その頃から今も変わらない特有のセンスがあるなぁ、と。

Y: そうかもしれないですね。 しかも今は尚更、曲制作のアイディアがシンプルになって来てるから、変に技巧を凝らして仮組みした曲を一度バラして再構築したりしないで、基にあるメロディーにナチュラルに乗る展開を作っていってるんですけど、そういうシンプルな感覚での曲作りって、いろんな経験を経て来た今、初期の自分に近づいてきてるのかもしれないですね。

-確かに、今のSUPER BEAVERの音がこれまでで一番シンプルな纏まりかもしれないですね。

Y: 悟りの境地じゃないですけど、今はほんとシンプル。 今流行のサウンドとか、フレーズってあるじゃないですか。 流行のジャンルもあるし、アイドルの楽曲なんて今すごいハイクオリティーなかっこいい曲たくさんあるし、要素として周りにいいアイディアっていくらでも転がってるんですけど、それに寄せていくんじゃなくて、「俺たちこれが良いと思うから、これでいいっす!」って純粋に言えるシンプルさっていうのは最近一番強く持ててると思う。 周りのバンドやムーブメントがどんどん変わっていく中で、自分たちはずっと変わらない、ブレない、っていうバンドのやり方をずっと続けていくおもしろさっていうのがあるんですよね。 後々改めて周囲を見回してみた時に「ほれ見ろ、俺たち間違っちゃいなかったじゃん」って。
外側じゃなくて内側にこだわる。

S: 自分たちの芯はどんどん確実なものになってきていると思います。 バンド始めた時は「きっとこれやったらかっこいい」とか「こういうバンドになってみたい」っていう気持ちが強かったんですけど、時間を経ていろんな人達と出会ってバンドやってく中で、お手本になるようなものは周りからどんどん無くなっていきました。 昔、憧れてたのはライブパフォーマンスだったり、見た目だったりしていたのが、今かっこいいと思えるのはスタンスとか、生き方とか。 だから今は何かお手本があって真似したいとかではなく、かっこいいと思えるものを自分で作っていく感じですかね。

-その芯とか悟りみたいなもの、いつ頃手に入れ始めたんですか? 何かきっかけがあった?

S: これっていった明確なきっかけがあった訳じゃないし、ある日を境にガラッと変わった訳でもないけど、自分でその変化に気付いたのはメジャーでの契約が終わって自分たちで「SUPER BEAVER」ってアルバムをリリースする間の期間かな。 最初の感覚っていうのを忘れてるんじゃないか、って気付いて再認識できるようになって、音楽に対していろんな余分な事を抜きにして、紳士に向き合えるようになったのがその時期。

-その時期友人のバンドを見にエッグマンに久しぶりに来て、辛いけどようやく自分たちの足で立って進めるようになった、これからだ、って話してたのをよく覚えてます。 それまでは高校生で人気を上げて全国バンドコンテストで優勝、メジャーデビュー。 スーパーマリオのスター状態みたいな無敵感があったけど、あの時を境に本当に改めて、地に足付けて活動し始めたんだな、と。

Y: マリオもスター状態って制限時間ありますからね(笑)。

S: あのスターマリオのテンション高いBGMから普通のBGMに戻った瞬間の寂しさね(笑)。 ただ、そのスター状態って言ってくれる時期も自分としては、いろんな人が周りについてきたり、状況がどんどん進んでいったり、戸惑いばっかりでした。 天狗になる余裕なんてなかった。 それでもその世界でずっとやってるプロフェッショナルな大人達と対等にやり合わなければいけなかった訳で、当然あの時の経験値では対等になんてやり合えないんですよね。 自分の中で「僕らはこうやりたい」っていう確固たる自信がその時はまだ持ててなかった気がします。 自分の持ってる武器じゃ戦えない、って思った瞬間に「音楽をやるってこういうもんだ」って割り切る為の心の整理をし始めようとしてしまってたんですよ。 楽しくて音楽やってたはずなのに、「サラリーマンだってそうじゃん、楽しくて仕事してるばっかりじゃないし、俺だって仕事として音楽やるんだから仕方ないよ」って。 その考えがつまらないものだ、っていうことに当時は全く気付けなくて、気持ちのバランスを見いだせなくて潰れて。

Y: その時期はもう鎖国状態だったよね。 俺たちメンバーのリアルな情報は外に出ないし、なんか外ではすごい盛り上がってるように見えるけど本当のところはどういう状況になってるのかメンバーには全く情報が入ってこないし、そんな中で黒船みたいな屈強な人たちにたくさん叩かれて。 これは持たないな、って思いましたね。 だからそれをきっかけに考え方も、チーム組みも、音楽も、シンプルになってきた。 しかもメジャーレーベルの契約が切れた時に、もうこれ以上ひどい状況はない、って思うくらいどん底の感覚があったんで、そこからは少なくても上がっていくしかない、っていう前向きな気持ちでいれたんですよね。 誰かに咎められたりせずに自由に曲も書けたし(笑)。 自由に音楽やるってすげー楽しい!っていう新鮮な気持ちでやれるようになった。 そこから何かを取り戻そうと一所懸命穴を掘り進んでいったら反対側に出ちゃった、みたいな感じで今はシンプルに楽しくやれるようになってよかったですね。
今は自分たちがやる事にちゃんと実感がある。

-歌詞の説得力とか、ライブでのボーカルでリスナーの気持ちぐっと持っていく感じっていうのも、その変化の時期くらいから尖っていったような気がします。 気持ちが宿るようになったというか。

S: ヤナギ(柳沢)の書く歌詞と、自分の思う事がずっと同じバンドでやって来てしっかりリンクしてきたのがその時期ですね。 ヤナギの書く歌詞を歌って俺が思う事、俺が思う事をヤナギが汲み取って歌詞にする事、そのサイクルがうまく循環するようになったらもはや一個人の想いではなくて、バンドとしての想いとして発せられるようになって、それがバンドの強固な武器になっていった、っていう。 壇上に上がるのはSUPER BEAVER代表として俺がやらせてもらって、演説してる感じ。 その前にみんなで考えて、ヤナギが文字に起こしてくれて、それを持って俺がアドリブを交えながら話す。 この連携が取れていれば、バンド全体の意思として強固なものを発し続けていられるなっていう感じはします。

-渋谷さんには恥ずかしいから言うな(笑)っていつも言われますけど、思い返してみればMCで話す事、高校生の頃言っていた「あなたの為に何かがしたい」っていう事も、今ライブで言っている事も、芯は同じ気がします。

S: 確かに!あの頃から言ってる事対して変わってないな(笑)。

Y: それまじで懐かしいっすね(笑) でも考えも歌詞も曲も、巡り巡って原点に近くなってるのは確かかも。 『らしさ』とか、正にあの当時付けそうな曲タイトルですしね(笑)。

S: でも本当に一巡してあの当時のスタンスが今、自信に繋がってる気がします。 初期はただただ楽しく音楽やれてて、そんな自分たちに自信があって、そこから後、全く自信がない、どうすればいいか分からない時期が訪れ、それを経てようやく、始めの頃と同じような楽しさと自信を、今度は裏付けをしっかり持った上で付けられてきた。 外観で一番輝いて見えていたかもしれないメジャー時期は、逆に本当の意味で音楽やれてるかどうかとか、楽しんでるかどうかで生まれるキラキラした感じは、バンド始めた当初に比べたら劣ってたと思うんですよね。 バンド組みたての若い頃ってある意味最強だと思うんです。 思いつきと勢いだけで「よし!やろうぜ!」ってコピーバンドとかやってスタジオで曲合わせるだけで最高に楽しいあの時の感じ。 今は当然若さとか、初期衝動みたいな同じもので張っても勝てないけど、逆に今、自分たちがやってきた経験値、自分たちでちゃんと描けるこれからの展望で得られる達成感があるから、本当に今までいろんな事がありましたけど、今こういうスタンスでやれているっていうのは非常に素敵だなと思います。
経験を経て、結成当時に近い価値観になってる。

-今作の『らしさ』では、変わっていくものと変わらずあり続けるものの対比が書かれてますが、昔と違って今手に入れたものって何かあります?

S: そうだなあ、今だからこそあるのは一種の恐怖みたいなものかな。 前向きになる為の恐怖感っていうのを手に入れて音楽的な価値観としては昔のバンド始めた頃に戻ってきた感じかもしれないですね。 この2面性、両手離しで「俺は最高だぜ!好きなようにやるぜ!」っていうんじゃなく、世の中にはこんな事もあんな事も、いろいろあるっていうのを知った上で前進する今ならではの強みになってる気がします。

Y: 若い頃は生活がどんどん変わっていく事が怖かったんですけど、当時大切にしてたものが変わらず今でも大事だって気付いた今、その大事にしたいもの、曲げたくないものが軸としてあれば、基本的に周囲の環境とか状況なんて変わるのが当たり前だから、変わっていってもいいかなって思えるようになってきたんですよね。 それは音楽的な表現方法もそう。 ピアノ入れたいとか、ストリングス入れたいとか、楽器が打ち込みになったとか、方法が変わっても軸にSUPER BEAVERが本当に歌いたい事があればそれで良くて、その軸以外は時間が経てば変わっていくし、それでいい。 例えば今回歌詞でもコンビニの雑誌コーナーってフレーズがありますけど、よくファッションとかでも時代は巡るっていうじゃないですか、一巡したオシャレみいな。 でもその変化の渦の中にいる自分は本当にそれ、かっこいいと思ってるの? 本当はどうなの? っていう事を言いたくなったんですよね。 要するに『らしさ』も『わたくしごと』もほとんど同じ事を言ってます(笑)。 周りに影響されるも良し、流行に乗るのも良し。 重要なのは自分が、本当にそれを良いと思ってるかどうか。