―1/5の「murffin discs label night」、eggmanでのライブお疲れ様でした。
村上 学 (Vo/Gt 以下 “M”): いやー凄い濃い日でしたね。それぞれライブのスタイルも音楽性も違うけどああやって一緒にいると説明しづらい謎の一体感があるんですよね。
-打ち上げでは各バンドのボーカリスト全員が集まってわいわい話しているのがすごく良い画でした。
M: そうそう、渋谷くん(SUPER BEAVER Vo.)と飲んでたら、優心さん(Czecho No Republic Vo./Ba.)が同じ席に加わって結果的にボーカル大集合の画になってました。 いろいろ話しました、楽しかったですね。
-プライベートでも会うバンド仲間って東京ではどんな人がいます?
M: 東京だと特に友達少ないんですよ。 それこそ去年の12月に初めてプライベートで優心さんと飲んだくらいかな。優心さんは本当”先輩”って感じ。 バンドの事とかも相談するといろいろアドバイスくれるんですよ。 1/5のライブの時にCzecho No Republicの「ダイナソー」を一緒に歌った時にも言われましたけど、「もっと普段の自分を出せばいい」とか。 頼もしい先輩って感じがします。
-それでは今作「ONE」についてお話を聞かせてください。今作では邦楽ロック以外のテイストからもセンスが培われてそうなリフがけっこうありました。最近村上さんがハマって影響を受けた音楽ってありますか?
M: 最近はね、遂にジャズにハマりました。 全然詳しくないですけど、Claude Williamsonはすごくよかったです。 ピアノが好きで、”何か良いピアノのネタないかなー”って探してたら行き着きました。 過去何度かジャズに手を出してみた事があったんですけどその時はまだピンと来てなくて、この歳になってようやくハマりましたね。
-ジャズのインスピレーションから得るテスラの音楽って絶対的にかっこよくなりそうですね。プログレっぽい音符の使い方で頭の拍ずらしていったりするリフもあったり。
M: あぁ、サイドセクション(M3)のサビ前とかですよね。 あんまり意識してないですけどプログレは好きなんだと思います。 ドラムの實吉もプログレ好きですしね。 いろんなおもしろいアイディアを自分達なりに取り入れていきたいんですよね。 ただ変に飛び道具的なこと事をやったもん勝ち、みたいなのはやるつもりないんで、今回の『ONE』は特に今までのテスラのやって来た事を全部捨てて全く新しい事を、っていうのではなく、あくまで前作『TESLA doesn’t know how to cry.』の延長線上の作品になってると思います。 前作でプロデューサーに付いてもらって制作した経験値を活かして、自分達なりのアレンジメントを突き詰めたのが今作です。
-リードトラック「国境はなかった(M1)」について教えてください。
M:今回の作品の「国境はなかった」をはじめ、「メロル(M6)」、「one(M7)」に関
して実は3曲とも同じことを歌ってるんですよ。
人はそれぞれが自分の価値観、文化、思想や宗教をもつ1つの国であり、自分こそが その国を治める統治者で、自分という国を守るために人は境界線(国境)をひいてしまう。けれど、その境界線は自分次第で取り払うことも、新しく設けることもできるんじゃないかと。それによって、家族という新しい国を作ったり、世界も1つの国になる。
最近の海外ニュース、例えば疫病や紛争をみても、まるで他人ごとのように感じてしまうことも多いと思うんですけど、それが日本で起きた途端にすごく慌ててしまう。
僕たちは無意識に境界線をひいてしまっているじゃないかって。
自分が愛せるもの、守れるものには限りがあるが、それさえも自分の引く国境次第で変わっていくと思うんです。そんな想いを込めてつくりました。
-「国境はなかった」は、テスラは泣かない。らしいピアノリフレインと、畳み掛けるような曲展開がとても印象的でした。作曲に関して苦労した点とかありました?
M:「国境はなかった」に関しては完成するのに半年以上かかったんですよ。 最初に元型が出来たのが前回のアルバムのレコーディング終わってすぐですからね、紆余曲折ありました。 全体像を作ってから一度ボツになってて、そのままお蔵入りにする予定もあったくらいなんですけど、スタッフから「良い曲だからもう少し練って完成させたほうがいい」って言われて試行錯誤して組み上げてみたら、意外にちゃんと個性ある曲に仕上がった、っていう。 昔と比べてかなりアイディアの引き出しが増えたので、アレンジはすごく楽しみながらできましたね。
-楽曲構成という観点からすると、「メロル(M6)」は対照的に曲展開的に全てのフレーズがすんなりハマった感じのスッキリ感があると思いました。
M: 正にそうなんです。 この曲はすんなり出来た曲だったんですよ。
-コーラスワークの絡みやリフのレイヤーの差し引きが緻密に組まれてるんですが、脳がフル回転して閃きまくってる瞬間にどんどん続きが出来上がっていった感じの自然さがある、というか。
M: これね、実は「アナと雪の女王」からインスピレーション受けたんですよ。 流行からの影響っていうのがいかにもって感じで自分でもおもしろいんですけど、男女が掛け合いで歌う歌があるでしょ? あれを見てすごいいいな、と思って自分のバンドも男女ボーカル両方いるから掛け合いしたいな、って思って組んでみたのが「メロル」の掛け合いです。
-他の収録曲も含めて以前よりコーラスワークの方法論に多様性出ましたよね。
M: 出ましたね。 この先コーラスのパターンはどんどん増えてくと思います。 自分達らしさっていうのを濃くする事、新しいものに手を出す前にまずは今の自分達の個性を濃くする事を今回はフォーカスして作っていろいろ自分達でも分かって来た事があるんで、今後もっとそれを突き詰めていけそうな感じがしてます。 今作はその入り口というか。
-今作、作詞作曲が全曲村上さん。
M: そう、今回はそうさせてもらいました。 自分の中でモメまくって曲も歌詞も練りまくってますね。 自分のハードルが高くなってるだけだったらいいですけどね、昔より曲を作るのはどんどん大変になってます。 とても時間がかかる。 『ONE』を作り終えてからの新曲はけっこうスムーズにいくようになったんですけどね、この7曲は相当苦労しました。
-歌詞ではこれまでの作品にずっとある悩みや憤りみたいな題材に加えて、その少し先に見えてきた希望目掛けて突進していくような前傾姿勢も感じます。
M: そうですね、歌詞の中でしか強く在ることができないんで(笑)。 自分の書いた歌詞の中でくらいは踏ん張って前向いて進んでいよう、って。 今回歌詞では、文化、思想、言語、宗教は多様で大いに結構だ、とか、僕らは地球っていう大きな一塊の細胞のひとつに過ぎない、とか得てして戦争反対っぽい平和主義的な事を言っています。 去年2014年は集団的自衛権の件とか、秘密保護法とか、テロとかがあった中で、世界が、日本が危なくなるかもしれないっていうリアリティーが急に増したじゃないですか。 それで今自分は何やってる?って振り返ったら音楽作ってCD出せてる訳で、だったら何かが起きてしまってバンドなんかやってられなくなる前に、これは言おう、と決めた事をかたちにして残そうと思ったんですよね。 「国境はなかった」、「メロル」、「ONE (M7)」では全部同じ事を言ってます。 僕らはこうだ、っていう今僕が言いたい事。 アルバムタイトルにONEという言葉を持って来たのもそれに付随していて、この”ひとつ”っていう言葉の意味を、聴いてくれるひとがそれぞれCD聴いて、歌詞を呼んでくれた時にそれぞれで咀嚼して意味付けしてくれれば、すごく大きいスケールを持った意味合いになると思うんで、その想像してもらう事まで含めた願いでこの言葉に決めました。 すごく簡単な響きなんですけどね。
-これまでより、メッセージの方向が外へ向いてますよね。
M: 何でなんでしょうね。 ツアーとかでいろんな所を廻っていろんな人に会って、バンドに社会性が付いたのかもしれないですね。 確かに今までは内に向かった事を書いてたけど今回は外へ向いてる。 メジャーデビューして対外的な側面がバンドに出てきた事で、社会の一員としてバンドが機能する様になってきたのかもしれません。
-今成熟していってるんですね。
M: そうだと良いですけどね(笑)。 今回ジャケ写も初めて自分達の写真にしたんですよ。 それは今の僕らはこんなんです、っていう意思表示として。 全部は今現状精一杯の自分達を音でも歌詞でもジャケットでも残す為の作業でした。 僕がもっと大人になった時にこの作品を見てどう思うか分からないですけど、とりあえず今のリアルがこれ、っていう。 昔と比べて少しは自分達の音や言葉や見た目に自信と責任持てる様になったのかもしれませんね。 けじめ、というか。 大切にしたい感覚です。
【リリース情報】
Major 1st mini album [ ONE ]
2015年3月4日(水)on sale
TYCT-60057 (税込定価¥1,836 税抜価格¥1,700)
1. 国境はなかった
2. MOTHER
3. サイドセクション
4. Imagination Gap Ground
5. Tuesday
6. メロル
7. One