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Anly interview
- SPECIAL -

Anly interview

沖縄伊江島出身、18歳のシンガーソングライターAnly(アンリィ)。 海と山に囲まれ、情報社会とは疎遠な南の島で育った少女が実力で引き寄せた運命は、メジャーデビューでの全国展開、更には海を渡り英国・ロンドンでのスタジオセッションと、行動範囲や触れる音楽環境に大きな広がりを見せながら駆け上っていくシンデレラストーリー。 歌唱力には力強さが、歌声には透明感が宿る独特の魅力は、彼女自身の生い立ちに裏付けされた歌の固有種。 大好きな歌と、歌うために習得したアコースティッグギターは人知れず故郷で磨かれた純真な求心力を以って今、関西テレビ・フジテレビ系ドラマ「サイレーン」主題歌や、カロリーメイト・テレビCMソング等に抜擢され、現在進行形で多くの人達を惹き付け始めている。

Interview & Text : 鞘師 至

幼い頃聴いていたのは父譲りのブルースやロック

今作『太陽に笑え』でメジャーデビュー、活躍する舞台が目まぐるしく変わっていっていると思いますが、メディアでもよく歌を耳にする様になった今、どんな心境ですか?

Anly ( 以降 “A” ): 昨日もちょうど『サイレーン』を見たんですけど、TVから自分の曲が流れてくるっていうのは何とも言いえないすごく不思議な感覚ですね。 まず自分の曲を主題歌に選んでくれたのが嬉しいし、同時に驚きもあるし、色んな感情が混じっている状態で毎週ドラマを見ています。

– デビューする前はずっと地元に?

A: 生まれてから15歳までは地元の伊江島(沖縄県)という島で暮らしてました。 でも島には高校がなくて沖縄本島の高校までも片道2時間くらいかかるので、通えなかったんですよ。 それで15歳の時に高校へ通う為に母と一緒に沖縄本島に出てきて3年間本島で暮らして、その後卒業して今、東京と沖縄を行ったり来たりしています。

育った伊江島というのは、どんな場所ですか?

A: 沖縄本島の北側、ちょうど美ら海水族館がある辺りの沖にある小さな島で、もう自然しかないような所です。 人口よりも牛のほうが多いんですよ(笑)。 牛5000頭に対して人が4000人、すごくのどかな島です。

– 10代とは思えない様な玄人っぽい、ブルージーな楽曲もこれまで歌っていたので、音楽的生い立ちも気になりました。

A: 島にはCDショップも無くて、家にはインターネット環境も無かったんで、父が聴いてるエリック・クラプトンとか、CCR、ZZ TOPとかを聴いて育ったんです。 ポップスとか、EDMみたいな今っぽい音楽は島では聴いていなくて、高校生になって本島に移ってから聴き始めたんです。 Youtubeとかもその頃から見るようになって、そこで初めて聴いた音楽が沢山ありました。

地元伊江島ではどういう場所で歌を歌っていたんですか?

A: 島に住んでる時は、歌を歌う為に伴奏が必要だからギターを始めて、家で粛々とギターを弾きながら歌ってましたね。 遊び道具がギターだけだったんで日々ひたすら家で歌ってたんですけど、夜になるとよく母に「何時だと思ってるの!」って叱られてました(笑)。

フェスやるのが夢なんです、伊江島で。

東京での生活は環境変わって大変では?

A: いえ、見たことない物とか街の人の多さとか、見てるといつも新鮮で面白いです。 東京は楽しい場所ですね、でもやっぱりたまに沖縄に帰りたいな、って思ったりもします。

今回収録されてる「Come back」(M3)では地元に帰りたい気持ちが歌われてますが、今ちょうどそんな気持ち?

A: そうですね(笑)。 あれは元々島から出て那覇に移り住んだ高校時代に書いた曲なんですよ。 部活で忙しかったりしてすごく楽しいんですけど、たまに辛かったりすると「地元に帰りたいな」って思っちゃうんですよね。 でも負けて帰るんじゃかっこよくないなぁ、と思ってもっと胸張って帰れるようにしなきゃ、って自分を応援する為に書いた曲です。 今もたまにこんな気持ちになりますね。 違う土地に行った時はいつもそう。

自分にも言い聞かせながら歌ってるんですね。

A: そう、今はそいういう自分への応援の意味もあるし、地元から色んな他の土地に散っていった友達への応援の気持ちも込めて歌ってます。

伊江島の人たち、地元へ残ってる人は少ないんですか?

A: どこか別の土地で住み始めたり、戻ってくる人は少ないですね。 だからなかなか会えない人もいるんですけど、歌って応援するんです。

ー そういうAnlyさん含めたそれぞれの人たちが今各地でがんばって、将来地元に戻ってこれたら楽しそうですね。

A: そうなんですよ! 今年の夏にJ-WAVEの「ハロワ夏フェス」っていうコーナーで夏フェスのリポーターをやらせてもらってフジロックとか、サマソニに行かせてもらったり、J-WAVEのSUMMER JAMに出演させてもらったりしたんですけど、テントが並んでる風景を見たり、見たかったアーティストのライブが見れたりしてあの開放感ある素敵な空間にいたら、どんどん夢が膨らんできて、私の地元伊江島でもフェスをやりたいな、って。 フェスを開いて、それがきっかけで他の土地に散ってる友達が伊江島にまた集まってくれてみんなと会えたららすごく楽しいだろうなって思ったんですよね。 伊江島に来たことがない人達には島の自然とか、良い所を知ってもらえるきっかけにもなると思うし。地元伊江島でフェスを開催するのが今の夢の一つです。

決意と歌える喜びを、歌う度に思い出せる曲。

ちなみに今、音楽をやっていて一番楽しいのはどんな時?

■A: やっぱり歌ってる時かな。 ステージに立った瞬間から緊張もあるし、いろいろ考える事があるんですけど、それも含めてすごく楽しいんです。 ライブ中にお客さんと目が合ったりすると、じっと聴いてくれてる感じが嬉しかったりもするし、この人はもしかしたら今私の曲を聴いて元気になってくれてるのかな、とか想像して嬉しくなる事もあるし、一緒に歌を口ずさんでる人を見つけた時も、たくさん曲を聴いてくれたんだなって思うとすごく嬉しいです。 この前ライブで自分と同い年くらいの女の子が「Boy’s Blues」(※1)を口ずさんでくれてたのがすごいびっくりしましたね、嬉しかった。

着実に浸透してきてるってことですね。

■A: 誰かと共有できてる事がなんだか凄く嬉しいんですよね。

なるほど。 ちなみにドラマ「サイレーン」の主題歌にもなっている今回のタイトル曲「太陽に笑え」、これはどんな時にできた曲?

A: 沖縄本島でストリートライブをやってた時にこの歌詞のイメージが浮かんできたんです。 夏の沖縄で太陽がジリジリ照りつけてる日にストリートで歌っていたら、暑くても集まってくれて聴いてくれてる人達がいて、自分が歌えてる事の幸せを実感したんですよね。 その時、高校3年の夏で自分の中で、ちょうど歌を歌って生きて行く事を決断したくらいの時期だったんで、この先どんな事が起きても、どんな状況になっても絶対この風景とか気持ちを忘れないでいたい、って思ってその気持ちを込めて作ったのが「太陽に笑え」です。 その時見ていた人達にも忘れないでほしいし、この先も見ていて、聴いていてね、っていう想いも含めて書きました。 自分への決意表明だったり、さっき話してた応援の意味も込めた、原点を見つめ直す事ができる曲をひとつ持っておきたくて書いた曲です。 この先辛くてめげそうな時があったらこの曲聴いて元気出そう、って思ってます(笑)。

サビの力強さはその気持ちの強さから生まれたものかもしれませんね。

A: そうかもしれないですね。 そのストリートライブ、国際通り(※2)でやってたんですよ。 あの場所、ちょうどずっと道がまっすぐに伸びているから、そこに太陽の光があって、まっすぐ歩いていくイメージがサビの歌詞の「歩け 歩け」っていうフレーズに繋がったんです。 自分が夢に向かってまっすぐに歩いていくぞ、っていう意思も重なってできた歌詞です。

2曲目の『Don’t give it up!』はイギリス出身のシンガー、ガブリエル・アプリンとのコラボですね。

A: そうなんです、私の好きだったシンガーとのコラボ、すごく感激でした。 このコラボ、きっかけはshibuya eggmanでのライブだったんですよ。 『Bye-Bye』っていうインディー盤CDのレコ発ライブで歌わせてもらった時に、そのCDに入っているガブリエル・アプリンの曲のカバーを歌ったんですけど、ライブ会場に彼女のレコードメーカーの方が見にきていて、私の歌ってる姿を見てくださっていたんですよ。 その時に「今度ガブリエル・アプリンのリリースがあって、その為のレコーディングをロンドンでやるから、一緒に来てセッションしませんか?」ってお話しを頂いて、ロンドンにいく事になりました。

全英チャート1位、世界的に注目されてるシンガーとのコラボですもんね、すごい事ですね。

■A: 高校2年生くらいの時にアルバムを初めて聴いてすごく好きになって、それからずっと憧れのアーティストだったので、本当に光栄でした。

レコーディングではガブリエルとどんな話しを?

A: どんな音楽聴いてきたの? フリートウッド・マックとか… あ、私も大好き! みたいな音楽の話しをしたり、あとはそれぞれの故郷の話しをしたりしました。 アプリンさんはストーンヘンジがあるウィルトシャーっていう田舎町に生まれたと言っていて、田舎育ちっていう点で自分と共通する生い立ちがいろいろあったんですよ。 だから聴いてきた音楽も近いのかな、って考えたら自分がアプリンさんの音楽に反応した理由が分かった気がしました。 すごくフレンドリーな人でした。 今回の彼女のアルバムは割とダークな感じの音で、その印象があったから結構クールな人だと思ってたんですけど、真逆で超明るい人でした(笑)。 「Don’t give it up!」はドラマ「サイレーン」の原作を読んだインスピレーションから書いた曲で、ロンドンに行く話しを頂く前からあった曲なんですけど、そういう既存の曲のパートを彼女がレコーディングで歌っている姿を見ているのがなんだか不思議な感じでした。 サビの部分は一緒にブースに入って歌ったんですよ。 前から憧れてた人と自分の歌で一緒に歌えるし、昔から行きたいと思っていたロンドンでレコーディングできるし、もう夢のようでしたね。

東京とロンドンを行き来して貴重な経験を重ねて、めちゃくちゃグローバルな18歳ですね。

A: そうです!都会の人っぽい(笑)。 でも島に戻るとすぐ話し方戻るんですよ、伊江島のなまり方に。 多分これからもずっとそうなんだと思います(笑)。

聴く人のこころに寄り添う歌を。

今回、初回生産限定盤には「太陽に笑え」MVも収録されたDVDが付いていますが、MV撮影の現場はどんな様子でした?

■A: 「太陽に笑え」の映像は、元々工場だった所をスタジオにした場所で撮影したんですよ。 ああいうセットがあってスタジオで撮影っていうのは初めてだったんで、スタッフさんも沢山いるし緊張したんですけど、すごく楽しかったです。 普段自分が歌う時にどんな表情をしてるか、今回の撮影中のカメラチェックの時に初めてよく分かったんで、歌詞の言葉とか気持ちが伝わるように表情にこだわってやっていきました。 実際撮った映像をモニターでチェックしたら、撮ってる時に自分が想像していた表情とギャップがあって、難しかった部分もあったんですけど、いろいろアドバイスを頂いたりしながら、最終的にすごくかっこいい映像が撮れたと思います。

– 映像と言えば、黒板アートで作られた映像で話題のカロリーメイトCM。 こちらではAnlyさん、岡村孝子さんのカバーを歌われてますね。 日本のシンガーのカバーはこれが初?

■A: そうなんです、昔からカバーでは洋楽ばかり歌っていたんで、今回本当に初めての日本語曲のカバーでした。 レコーディングでも初めての事がいっぱいあって、生のストリングスと一緒に歌って録音したり、新鮮な体験でした。 せーの!で一斉にストリングスを弾いて、私は歌って、3回くらい録った中から1テイク決めてもうレコーディング終了、みたいなすごくサクサク進んだレコーディングだったんですよ。 現場で初めてストリングスの演奏を聴いた時は想像してた以上に感動してぞわぞわっ、と鳥肌が立ちました。 出来上がったCMを見た時も映像と曲のマッチングとか、世界観がとても素敵で。 あの黒板アート、凄いですよね。 2600時間かけて描かれたっていう超大作。 完成版を見て、あぁ凄いプロジェクトに参加させて頂いたんだな、って改めて思いました。

ライブではこれまで弾き語りでの歌を披露してきてますが、今後はフルバンドで歌う事もありますか?

A: 11/28の今作のリリース記念ライブからはバンドで歌う事もあるので、今までライブに足を運んでくれている人達に、バンド編成でのライブもこれから是非見てもらいたいです。 つい先日リハーサルで初めてバンドの皆さんと演奏して歌ってきたんですけど、すごい楽しいですね。 一人の時はそれはそれで、歌が伝わり易いっていう良さがあって楽しいんですけど、バンドでは音が重なってく快感があるんで、また違った楽しさを今すごく感じてます。

– これから先、どんな歌を歌っていきたい?

A: 人に寄り添えるような歌を歌っていきたいです。 音楽のジャンル的には隔たり無くというか、自分の感覚でいいなと思った音楽をこれまで聴いてきたし、歌ってきたので、これからもそういう感覚で作曲したいと思ってます。 今回の作品でロックな曲をやれたので、次は自分にあるまた別のテイストのもの、自分のルーツにある様なものとか、新しく取り入れたメロディーとかに載せて、元気な時も苦しい時も聴けるような、聴く人の生活に寄り添えるような歌を作って、歌っていきたいですね。 「Anlyの曲、こんな時に聴きたいな」って思ってもらえるものを沢山作っていけたらって思ってます。


※1… 「Boy’s blues」: Anly インディー盤Mini Album『Bye-Bye』収録曲。 Anlyの歌う曲の中でも渋めでブルース調の楽曲。
※ 2… 「国際通り」: 那覇のメインストリートになっている大通り。