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Qaijff interview
- SPECIAL -

Qaijff interview

“別れだったりいろいろな経験をしてきた中で、それさえも全部含めて 素晴らしいじゃないか人生は という気持ち”(森彩乃)
昨年のElectric Lady Landでのワンマンを経て、何倍も大きく強く、そして深みのある音を体現する”Qaijff”の最新作『Life is Wonderful』がついにリリース。
“未完成”が故に感じる”後悔”を圧倒的な期待感に変換し、
今の”Qaijff”の多様性と、これからの”Qaijff”の可能性を存分に感じさせる希望が溢れる一枚。

interviewer:森村俊夫

Vo. & Pf. 森彩乃/Ba. & Cho. & Prog. 内田旭彦/Dr. 三輪幸宏

–今作、かなり豪華なつくりに感じました。特にサウンド面では繊細な部分は残しつつ、かなりパワフルになりましたよね。

内田:昨年、100本程ライブを重ねていった中で、ライブを観て僕達を好きになってくれた人が増えたと感じた一年でした。サウンド面で特に意識したという訳ではありませんが、ライブだけでなく、作品としても甘えずに120%の作品を制作しようという気持ちが強くて、こういったアレンジになったのかなと思います。

–2014年リリースの1st full albumの『クアイフ』と、前作2015年の1st mini album『organism』の二作間でも作品の変化を感じましたが、今作の『Life is Wonderful』ではまた更にガラッと変わったなと感じました。

森:前作の制作時ぐらいからいろいろな音を使い始めて、それが自分達にも馴染んで選択肢が広がったというのが大きくて、こういうものにしようって決めなくても、自然にいろいろなアイデアを詰め込む事ができたのかなと思います。

三輪:前作までは歌を意識し過ぎて、歌を邪魔しないように叩いてた弾いていた部分が大きかったんですが、今作では歌を大事にした上で空いたスペースに遊び心を詰め込んで、バランス良く構成できました。

内田:制作前に、一度今までやってきた事を見直した時期があって、なんとなくやってきたところを振り返ってみたら、もっと良くできるなと感じるところがありました。そこに気付く事ができたから、前作より良くしていく事ができたのかなと思っています。

–今作の1曲目「Wonderful Life」は”Qaijffらしく”、そして贅沢にピアノを鳴らすイントロから入りますが、楽曲を通してとても”強い意思”を感じました。
楽曲の物語としては”別れ”でありながらも、その先の未来に対しての意思も感じる楽曲ですね。

内田:楽曲を制作する時はいつも何も考えずに制作し始めてゆくんですが、出来上がった後に”こういう事が言いたかったんだな”と自分自身で感じる事が多いです。
曲の最後の部分で後悔を歌っているんですが、その後悔があるからこそ”また進もう”と思えるのかなと思っています。今に満足していたら、明日が楽しみじゃなくなるような気がしていて、だから僕は今もそういう気持ち(後悔)を背負って生きているし、そういう事が人生を面白くさせているという事が伝われば嬉しいなと思っています。

森:今作はすごく希望に溢れている曲達ができたと思っているので、”強い意志”を感じてもらえた事はすごく嬉しいなと思っています。
今作1曲目のタイトルが「Wonderful Life」で、アルバムのタイトルが『Life is Wonderful』と、タイトルだけを見るとすごくハッピーに感じる言葉ですが、ただのハッピーな感情だけではなく、別れだったりいろいろな経験をしてきた中で、それさえも全部含めて”素晴らしいじゃないか人生は”という気持ちをこのタイトルに込めています。
コンセプトを決めて今作を制作していった訳ではないんですが、生きてきた中での経験や体験で自然と生まれたものがこのアルバムになっていって、その全てを含めて”Life is Wonderfulだ!”と言える余裕が自分達に出てきたんだと思います。

–意識的な部分ではないのかも知れませんが、豪華なイメージのあるイントロから、Aメロで温かく入る歌がすごく気持ち良いですね。

内田:今作を通してで、”森彩乃”のというボーカルの声を生かせるように意識して制作しました。ボーカルの音域が他人よりも広いので、今まではそれを生かすかなり高い音域を歌う楽曲が多かったんですが、高い音域ばかりだと楽曲が”ヒステリック”なイメージになっていく感覚があって、今作では高い音域だけではなく”温かく”聴こえるような音域でボーカルのメロディーをつくる楽曲が多いです。特に「Wonderful Life」の歌い出しは、作品の一番初めの歌い出しにもなるので、Aメロ部分は何度も書き直しました。

森:今作は、気持ちの面で余裕を持って肩の力を抜いて制作できました。前作の制作の時は、インパクトやテクニカルな部分をすごく意識していたんですが、今回は視点をちょっと変えて制作できた気がしています。

–サビの前にある「いこう」と優しく歌う箇所は、すごく近い位置で手を取って引っ張っていってくれるように感じて、少しドキッとする箇所でもありました。

森:そうですね。まさに、そう感じてもらいたいと思って歌っています。自分だけ進む訳じゃなくて、手を取って一緒に進んでいきたいです。

–今作はサウンドが豪華にパワフルになった印象がありますが、それだけでは無くて、感情の抑揚や細かな感情の変化を繊細に表現されている様に感じました。

内田:歌に関してはキーやメロディーの部分でも意識して制作しているし、ボーカリストとしても表現の幅が広がってきたと思っています。バンドアンサンブル的な面だと、”どういう演奏をしたい”というプレイメインの考えではなくて、演奏でつくる”景色”を大事にして、希望を表現したいと考えて制作しました。行ったり来たりして感情が定まらない訳ではなく、目指す”景色”がはっきりしているから、その中での感情の変化に抑揚を感じてもらえるんだと思います。

–「未完成ワールド」の”未完成”という言葉には、ネガティブさを全く感じさせないですね。次の「光を探しに」でも”不完全”という言葉にポジティブさを感じて、この2曲の流れに通ずるものを感じました。

森:「未完成ワールド」は内田がメインで作詞して、「光を探しに」は私が制作したんですが、実は2曲の繋がりを意識しながら制作した訳では無く、結果たまたま同じメッセージを込めた楽曲になりました。

–なるほど。今、バンドとして3人が同じように想像している景色があるという事でしょうか。

内田:そうですね。そんな気がしています。

–「光を探しに」は何度も”光を探しにゆこう”と歌う楽曲ですが、”光”とは何を表しているのでしょうか。

森:特に明確な意味はなくて、歌詞の意味を限定せずに、聴く人がいろいろな経験をしている中でその中で歌詞がどう聴こえるのかというのが面白いと思っています。
戦争の映画を観て、すごく辛い環境の先にはすごく些細な事でも大きな幸せに感じる事ができるんだなと思った事が制作を始めたキッカケです。
今の私達は、それに比べるとすごく生易しい環境ですが、些細な事でも生きていれば幸せに感じて生きてゆく事ができて、”光を見つける”事ができるんじゃないないかと思います。

–「Re:Answer」は、前半の重いイメージもありながらも、後半一気に雲が晴れるかのように感じる壮大な楽曲でした。

内田:”救いたい””愛したい””笑せたい”とかすごくちっぽけな事に悩んでいる事を大きな世界観で表現できたらカッコ良いなと思って制作しました。

–今作はいろいろな要素が詰め込まれていますが、「ソングフォーミー」はまた違うものが詰め込まれていて、優しくて浮遊感があって、歌声も少し抜いたようで心地良いですね。

内田:この楽曲は今作の最後にできました。普段はあまり限定的な歌詞を書かないんですが、僕達にはめずらしく”月曜の朝”を限定して切り取った楽曲で、イメージしていたもの全てを1Aに詰める事ができました。

森:私も一緒に歌詞を共作したんですが、内田が初めにつくってきたワンコーラスをリスナーのように聴いて、そこで感じたものを反映できたのかなと思っています。構成も他の楽曲に比べてかなりシンプルで、今までの私達だったら”大丈夫!?”って不安になってたんじゃないかと思います。

三輪:こんなに音数の少ない楽曲は初めてで、実はこの曲のレコーディングが一番時間がかかりました(笑)。

–前作で感じたインパクトとはかなり対照的な楽曲ですね。次の楽曲のタイトルの「グッドナイター」とはどういう言葉なんですか?

内田:僕のおじいちゃんが亡くなって、おばあちゃんが”夢の中でも会えたらな”って言っていたのがキッカケで、”良い夜”を過ごせるようにという意味があります。

–「Don’t Stop The Music」はサッカーの名古屋グランパスのサポートソングにもなっていますが、内田さんはサッカーを幼少期から経験していて、同じ名古屋グランパスのユースチームにも所属されていたんですよね。

内田:サッカーは3歳からやっていました。
でも、名古屋グランパスのユースチームを親にも相談せずに、急に辞めた経緯もあって、最初は複雑な気持ちもありました。

森:幼少期からやっていたから、サッカーは当たり前のものになっていたんじゃない? 私もピアノを3歳ぐらいから始めて、ピアノが好きという気持ちよりも、ピアノは当たり前のものになっていて。今でこそ、それを生かせているけど、昔は辞めようと思った時期もありました。
今回、グランパスの関係者の方々も、ユース出身の人がこういった形で戻ってくる事をすごく喜んでくれて、とても嬉しかったです。

–サポーターソングという事で、掛け声が入っていたりと、かなり賑やかでハッピーな楽曲ですね。

内田:始めは、僕のグランパスに対する想いを描いていた楽曲だったんですが、地域のサポーターの人達を巻き込んでいけるような楽曲にしたくて、歌詞を書き直しました。

−今作はアプローチの仕方が楽曲それぞれで違いますが、それでも作品として全てが”Qaijffらしく”、バンドとしての表現のレンジの広さを感じました。

森:”らしさ”を考える事で可能性を狭めてしまうような気がしていて、最近はそういう事を考えなくなりました。意識をしなくても、今言ってもらったみたいに私達の個性を感じてもらえるバンドなんだと思えているので、変な意識をせずに制作できたと思います。

内田:割と(演奏的にも)個性的なメンバーだと思うので、フラットにやっても個性的な曲になってしまうように考えるようになって、バンドのやるべき事を意識せずに、自分達を信じてやれています。

–昨年”Electric Lady Land”でのワンマンライブも大成功させましたが、今後の展望はありますでしょうか。

内田:インディーシーンですごくカッコいいバンドもいっぱいいる中で、音楽性的に認められなくて辞めてしまった人がたくさんいて、すごく悔しい気持ちがあります。僕達も邦楽のロックシーンの中では結構マイノリティーな編成だと思うんですが、そんな中でもこの音楽シーンの中で認められていきたいと思っています。CDが売れないって言われる世の中だけど、作品力を突き詰めていけば、それは変わっていくと思うし、いつか僕達でも認められるって事を証明して勇気を与えていきたいです。

三輪:以前、名古屋の”ちくさ座”という普段演芸等を行っている円形のホールでライブを行った事があったんですが、またそういう変わった場所でもライブを定期的にやっていきたいですね。

森:そういう面白い事をたくさんやっていく為にも、多くの人に認められたいですね。今年、グランパスのサポートソングという機会をもらって、名古屋(地元)で活動していける環境があるのが嬉しいです。そして、全国へも羽ばたいて行きたいと思っています。