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Anly interview
- SPECIAL -

Anly interview

沖縄本島から北西へ9kmにある離島、伊江島。エメラルドグリーンの海に囲まれた島が生んだシンガーソングライターAnlyが6月15日に3rdシングル『EMERGENCY』をリリースする。タイトル曲『EMERGENCY』は、夫婦間の愛憎を描き今、世間で話題のカンテレ・フジテレビ系ドラマ「僕のヤバイ妻」のオープニングテーマとして書き下ろされた曲だ。19歳のAnlyが生み出したのは、既存のイメージを覆すようなパワフルでハードなロックソング。自身が受けたヴィンテージロックの流れを取り入れ、力強い楽曲を完成させた。そんなAnlyに、今作について。今の活動や身の回りのこと。楽曲制作の源となること、未来や夢のことを思いっきり話してもらった。

Interview & Text : Ryo Tajima

言葉は歌の種、とても大切なもの

–3月23日にリリースしたシングル『笑顔/いいの』から早くも新作が登場ですね。今回のシングルのタイトル曲『EMERGENCY』はカンテレ・フジテレビ系ドラマ「僕のヤバイ妻」のオープニングテーマでもあります。夫婦間の愛憎を描いたドラマでしたが、年齢的にもAnlyさんにとって、大変な楽曲制作になったんじゃないですか?

Anly(以下、A):そうですね。『EMERGENCY』はドラマの台本を読んで書き下ろした曲なんですが、このドラマの内容は、夫婦関係のドロドロした感じを描いたもので、私にはちょっと理解しにくい内容だったんです。19歳なので、そういう夫婦関係はわからないことも多かったんですが、1人の女性の”無条件に愛して欲しいんだ”っていう気持ちは、読んでいくうちに伝わってきたんです。奥さんと旦那さんがいて、奥さんはただ愛して欲しかっただけなんだろうなって。そういう女性の心の葛藤を、音で表現しようと考えた時に、これはロックが向いていると思ったんです。

–確かに『EMERGENCY』にはイントロから、リフにハードロックの要素を感じるし、メロディも力強く、サビは耳に残ると思いました。ドラマに合わせてロックを表現しようとしたんですか?

A:リフやベースとなるものは、前からあったものなんです。私は言葉が最初に浮かんできて、それに曲をつけて楽曲を制作していくタイプなんですが、珍しく歌詞がついていない曲があったんです。台本を読んでロックで表現しようと決めたときに、以前作っていた、あの曲に歌を乗せてみようと思って制作したのが『EMERGENCY』です。自分の好きな60〜70年代のロックの影響が滲み出ている曲というか。The BirthdayのGt、藤井謙二さんに弾いてもらったギターソロも、すごくカッコ良くて曲の聴きどころになりました。

–ギターソロに対してはAnlyさんからは、藤井謙二さんにどんなお願いをしたりしたんですか? そのときの全体的な曲のイメージとして参考にしたオールドロックのバンドはありますか?

A:ロックのパワフルな感じを表現したかったんで、ZZトップ(※)みたいになって欲しいっていうのは思いましたね。リフが頭に残るような感じがいい、とか。そういう話をサウンドプロデューサーの根岸孝旨さんと話をしながら、こだわりつつ…。でもソロは、あんまりカチっと決めるんじゃなくて、その場のグルーヴやライブ感を出したかったので、スタジオのその場の音を大切にしました。

–楽曲制作で大変だったことは何ですか?

A:やっぱり歌詞は難しかったですね。大人の女性の葛藤ではあるんですが、どこかにピュアさを残したかったのでAメロでは「何でそういうこと言うの?? バカにしないで!」ってニュアンスのことを言っているけど「本当は、もっと私のことを真っすぐ見て欲しいし、まだアナタのこと諦められないんだよ」っていう気持ちを書いてみました。

–Anlyさん自身は『EMERGENCY』の歌詞の内容のような”やるせなさ”や切なさを感じたりしたことはありますか?

A:人に対してじゃなくて自分に対して「まだゼロじゃない、まだ諦めるな!」とか。そういう自問自答はあったりしますね。

–自分と向き合うということですね。そのために、何か趣味的にやっていることはありますか?

A:嫌いなんですけどランニングです。すごいイヤなんですよ(笑)。「行きたくない…走るの、キライ」って。でも、ライブでのパフォーマンスを考えると体力は必要だし、嫌いなことをちゃんと1日1回やるっていう自分との戦いですね。それを乗り越えていくことで、自分のモチベーションが上がるし、達成感がありますね。苦手なことを続けることで、ちょっとした波が来ても乗り越えられそうって思える。「イヤでも行ったさ〜、あのとき!」みたいな(笑)。

–さっき歌詞が乗っていない曲が珍しい。という話がありました。言葉が先にでるというのは、どういう感じで曲のインスピレーションが出てくるんですか?

A:色んなパターンがあるんですけど、歩いていたら突然なんかこう…1つのワードが出てきたりとか。例えば「柔軟剤」とか(笑)。「だから」とか。そういう1つの単語から、どんどん派生していって物語ができていくうちにメロディが、その言葉に乗って行くっていう作り方を最初にシンガーソングライターを目指して曲を作り始めた頃はやっていました。

–あの「柔軟剤」?

A:洗濯しているときに、パッと。「柔軟剤」これからなんか膨らませられないかな? みたいことを思ったり考えたり。沖縄から東京に来てからは、音の刺激とか人が歩く速さとか、色んなことから影響を受けてメロディから曲を書くことも増えてきましたけど、やっぱり最初は言葉。歌の種みたいなのがないとできないですね。言葉は自分にとって、とても大切ですね。

光や希望を感じてもらえるように。

 

–『EMERGENCY』に対してカップリングの2曲目『虹』は、とても優しい印象の曲ですね。歌詞といい、背中を押されるような元気をもらえる曲だと思います。

A:この曲は私がシンガーソングライターを目指して曲を書き始めた頃、1番最初にできた曲なんです。中学生の頃には歌詞はできていて、完成させたのが高校生ぐらい。自分の夢に向かって歩き出していくぞって歌詞の内容で、自分に対しての応援歌ですね。レコーディングしたのも17歳のときで、そのスタジオレコーディングが人生初。そのときの音源です。

–この曲、17歳のときの1stレコーディング音源なんですか?

A:そうですね。メインの歌は録り直したんですけど、コーラスの声は17歳の自分の声。昔の自分と今の自分がコラボレーションしている感覚でした。昔と今では触れている音楽が違ったので声の太さも今とは全然違う。17歳のときは合唱部にいたり、イタリア歌曲をやっていたり、色んな音楽が混ざった声をしていて、昔の自分から影響を受けました。そういう部分も面白かったですね。今、聴いても純粋に夢を追いかけるぞっていう気持ちがすごく爽やかに出てる曲だと思います。最初に作った曲をこうしてCDにできるのは、なんか特別な気持ちで、ぜひみんなに聴いてもらいたいです。

–最初のオリジナル曲をこのタイミングで発表する理由は何ですか?

A:サウンド的に70年代のイメージがあったし、そろそろ梅雨ですし。

–梅雨?

A:梅雨が明けたら太陽の季節。『虹』がかかるぞって季節感もありつつ、今回のCDに入れるのを決めました。

–『虹』の歌詞は、人を元気づけてくれるすごくポジティブな歌詞だと思います。Anlyさんは音楽で人に力を与えるような表現をされているように思いました。

A:自分の弱さとかを曲の中で見せることはあるんですけど、それだけで終わらないで、光や希望を必ず最後に持ってこないと。そうでなくちゃ、自分にとっては歌を聴く意味がないというか。他の人は違うかもしれないけど、自分が歌を聴くときは、やっぱり「あぁ、また頑張ろう」って聴いた後に思いたいし、そう感じてもらえる曲を作ろうと思ってますね。

–『STAIRWAY TO HEAVEN(天国への階段)』のカヴァーも収録していますよね。レッド・ツェッペリンの名曲をセレクトした理由は?

A:デビュー前は色んな洋楽のカヴァーをライブでやっていたんですよ。アヴリル・ラヴィーン、ガブリエルアプリンとか、ビートルズの『ブラックバード』とか。その流れで叫ぶような洋楽のカヴァーをやりたいって思って、難しいけどチャレンジしようと選んだ曲です。ロックが好きという限り1回は通った方がいい曲かな? と自分の中で勝手に考えて「よし、やるぞ! 」と決めたんです。歌詞の内容も難しいですよね。この曲の風景を考えて思い浮かべようとしながら歌って面白かったです。

育った伊江島で音楽フェスをやりたい

 

–このシングルで3枚目、5月22日には大型ロックフェス「METROCK 2016」にも出演したりと、活動の幅が一気に広がっていますよね。ミュージシャンとして、最初の頃と、どのように心境に変化がありますか?

A:やっぱり、始めた頃とは全然違って。色んな場所で、歌わせてもらう機会が多くなってきましたし、たくさんの人に歌を届ける機会も増えてきました。その中で、ライブでどうやってパフォーマンスしたらカッコいいかなとか、曲作りの過程でも、このサウンドの方がノれるかな? とか。自分だけが満足するんじゃなくて、聴いてる(見ている)人が楽しめるような音楽を作りたいっていう思いが強くなってきています。

–作曲のときからライブのステージを想像する?

A:そうですね。ロックの曲を作る時は常にイメージしていますね。例えば『EMERGENCY』の原型となる曲は夏フェスに出るときにハードな、ロック調の曲が必要じゃないか、と思いながら書いた曲のうちの1曲なんです。

–フェスなどの広いエリアでのライブはライブハウスでの演奏と、また違いますしね。

A:今年から大きい音楽フェスにも出演する機会が増えてきたんですが、私の目標の1つに、今年、音楽フェスに出演したいと心の中で思っていたんで、それがちょっとずつ実現できるのは、すごくうれしいです。去年は自分が出演したわけではないんですが、フジロックやサマーソニックのレポーターの仕事をして、フェスの現場を見て、特にフジロックでのキャンプしながら夜通し音楽を楽しんでる空間にすごく感動したんです。自分が生まれ育った沖縄の伊江島でもこういうイベントをやったら、進学と共に散らばっていった自分の同級生とかが戻ってきて集まって、音楽を楽しんで「また頑張ろうね」って言い合いながら繋がれるのかな、と思ったりするんです。今、私の夢は沖縄県の伊江島で音楽フェスをやることなんですよ。

–地元レペゼンでアーティストが主体となってフェスやイベントを主催するのは、すごくいいカルチャーだと思います。Anlyさんは、故郷に対する思い入れが強くあるんですね。

A:そうですね。自分のことを育ててくれた伊江島に恩返しをしたいって気持ちは常にあります。私ができる音楽で島の人たちに「私、こうやって頑張ってるよ。だからみんなも頑張ろう! 」って感じの空気感が作れるフェスができたらいいなぁって。

–自分が主催する以外に出てみたい音楽フェスは何ですか?

A:やっぱり…フジロックですね。レポーターとして、色んなステージを巡りましたけど、どのステージも本当に雰囲気が良くて。ステージの1つのフィールド・オブ・ヘブンの幻想的でアジアンテイストな空間には感動でした。「あぁ、ここで歌いたいな」って思ったりしました(笑)。それに、音楽を楽しんでる人たちの顔がすごくいいなぁって。みんな全力で音楽を楽しんで盛り上がっていて。「この人は普段はサラリーマンなのかな? この人はバイトしてるのかな、コンビニかな?」とか。そこにいた人たちは日頃何をしている人なんだろう? って考えたり。でも、この音楽に触れている間だけは、日頃のことを忘れて、手をあげたり声をあげたりして盛り上がっている。その姿がカッコいいなって。初めて経験したフジロックの場で、自分はやっぱりあのステージに立って、みんなに全力で楽しんでもらいたいって思ったんです。音楽フェスは、私にとってある意味すごい衝撃だったというか。伊江島の人口の倍くらいいっぱい人がいて(笑)。こんなに音楽好きな人がたくさん集うのはいいですよね。

–Anlyさんが伊江島でフェスをやるとしたら、どんなフェスにしたいですか?

A:アットホームで、自分がステキだと思っているミュージシャンの人と一緒に歌ったりセッションしたりできたら、と思いますね。フェスには、たくさんステージがあるじゃないですか。伊江島のシンボルに、伊江島タッチュー(城山)っていう岩山があるんですけど、横から見たらシルエット的に麦わら帽子みたいな形なんですが、その山の上のステージとかいいなぁ…と。「限定20名、山の上にご招待!」みたいな(笑)。172Mロックフェス。岩山。そういう変なステージもいいんじゃないかな。登ってトワイライトな感じでライブする。でも、やるなら台風が来ない時期にしなくちゃいけないです。沖縄は11月はいい季節で、自分の好きな季節でもあるので、それぐらいにやりたい…って、意外と具体的なビジョンがあったりします。

–山登り×ライブは画期的ですね、楽しみにしています。さて、今回のシングルリリース後、6月28日には渋谷エッグマンでワンマンライブが予定されていますが、ワンマンは自身初になりますか?

A:デビューライブのとき以来のワンマンなんで、かなり久しぶり。インディーズ時代のCDはエッグマンのレーベルから1枚リリースしているし、メジャーデビューライブもエッグマンだし、昔から繋がり深いライブハウスなんで、本当に楽しみですね。

–ワンマンだし、普段のライブとは心境も違うんじゃないですか?

A:全然違いますね。今回はエレキギター、CDジャケットにも登場しているピンクのフェンダーのペイズリー柄テレキャスターを手に入れまして。コレをライブで弾こうと思っています。エレキギターを使った楽曲は今回のシングルが初めてなので、初めてエレキギターを弾いている姿をライブで披露するってところも、楽しみです。基本的にロックなライブにしたいですね! 今回の『EMERGENCY』の曲のコンセプト的にも。

ーテレキャスターのペイズリー柄って珍しいですね。

A:見た目はポップですが、意外とトラディショナルな型で。’68年にあったモデルの復刻版なんですけど、ひと目見たときからいいなって思って。手にとった時の自分を見た時にも、このギターが似合っていたので、選んだんです。

–けっこう柄も選んだポイントですか? 服もそういうデザインが多かったりします?

A:そうですね。デビューシングルの時に穿いていたスカートもペイズリー。まず、ペイズリー柄に反応しちゃうんですよね。ボタニカルな感じが好きで私服もそういうのが多いかもしれないです。服はブランドは気にしないですけど、模様は重視です。

–今後どのようなアーティスト活動をしていきたいですか? 目標や夢も教えてください。

A:伊江島フェスは今、1番大きな目標なんですよね。そこに辿り着くまでの目標で言うと、たくさんあります。例えば、アルバム制作したいとか、イギリスでライブしたいとか。『Summertime Ball』 っていうUKのフェスに出たいです。大きすぎる目標かもしれないけど…。でも、目指さないと始まらないからそれに向けて、いろんなことを乗り越えて自分の夢を実現したいと思います。

–ちょっと気が早いですが、アルバムの構想を少しだけ教えてください。

A:まだ具体的な構想はないんですけど、自分が生み出せる音楽の幅を見せられたらいいなと、考えています。優しい曲からロックな曲まで。今までリリースした作品を振り返ると、デビューシングルは、ロックで力強くて、セカンドは優しい曲でした。今回また『EMERGENCY』でロックになって。伊江島とか沖縄の雰囲気、ゆっくりした時間の流れを感じるような曲とか。そういう自分自身の”ルーツミュージック”みたいなのを見せられたらいいなと思っています。

 


※ZZトップ…1969年結成のアメリカのスリーピース・ロックバンド。ハードロック、ブルースロックとよばれるオールドロック。現在も活動中。