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sumika interview
- SPECIAL -

sumika interview

sumikaの引き出しは一体何個あるのだろう。フルアルバムリリースから3ヶ月という超ハイペースでリリースされるにも関わらず、今までとは違ったテイストが盛り込まれていて、また新たなsumikaというバンドの魅力を味わうことができ、既に次はどういった音を聴かせてもらえるのか耳がワクワクしてしまうような感覚に陥った。みなさんにも早くこの感覚を味わってほしい。

インタビュアー:ブッキングマネージャー窪田

―作品について伺っていく前に現在行っているsumika史上最大規模のツアーについて伺いたいです。ツアー初日の武道館での公演を見させていただきましたが、以前のホールツアーを経ての進化があったような印象もあって、手応え感じられているんじゃないかと思いました。

片岡健太(写真○○ Vo/Gt 以下…片岡):去年の学びがちゃんと活かされて、トライアンドエラーがしっかりと地続きで繋がっているような感覚はありますね。今までの活動が間違っていなかったなと実感できるツアーになっていますね。
小川貴之(写真○○ Key/Cho 以下…小川):年齢層とか性別とか以前よりお客さんの層の幅が広がっているなという感覚もありますね。

―物理的に会場キャパシティも大きくなって、輪が大きくなっているような印象です。

黒田隼之介(写真○○ Gt/Cho 以下…黒田):本当にありがたいことですね。

―そんなリリースツアー真っ只中の6月早くも次作のCDリリースがあると。かなり短いリリーススパンですよね。しかも前作は『Chime』はフルアルバムだったからアウトプットし尽くしてさらに次作となると結構大変だったのかなと思いました。

片岡:今までほとんど体感したことのないスパンの短さで、物理的に時間がなかったスケジュール感ではありましたし、今作の「イコール」に関してはタイアップ作品ということもあって先方とのキャッチボールなども含めてそれこそ年末年始も稼働はしていましたね。ただ、今回の2曲は『Chime』には全くないエッセンスの2曲だから良い意味でセパレートとして考えられました。アルバム制作とは全然違うことをやっているという感覚で制作できましたし、そういう意味では新鮮というか新しいことをやり続けているというところでポジティブに進めていけたと思っています。
黒田:音の選び方とかも意識しましたね。聴きやすさとか。この部分は『Chime』という作品を作った後だからそういう意識も持てたというのはあるかもしれないですね。

―今お話があったように今作の2曲は面白い曲だなと感じました。両A面シングルというと二面性とか種類は違えどもシンプルなド直球的なイメージが個人的にはあったんですが、今作の2曲はまたそれとはちょっと違うのかなと。

小川:「イコール」が出来た時に今ままでのsumikaにはなかったタイプの曲だなと感じましたし、デモ音源の段階から完成までにとんでもない成長を遂げていて、ストリングスを入れた瞬間にすごい大きな視野というか世界観を感じることができたので、この曲に対してもう1曲どういうものを作っていこうかというのはみんなで話し合いました。THE sumikaみたいな曲にするのか、オシャレな曲にするのか、それとも歌詞でフックをつけていくのかとか。「イコール」という曲ができたからこそこういった話し合いができて、最終的に両A面という形態にたどり着けたのかなとは思っています。

―「イコール」という楽曲に導かれた作品ということですね。青春感はありつつも過去作「ファンファーレ」とはまた違った青さの印象があって、新境地という言葉が正しいかはわからないですが、違った角度の作品ではあるのかなと。

片岡:“夢”と“現実”みたいなものはテーマ、コンセプトでありました。いろいろなタイミングでその狭間でみんな揺れると思うし、もちろん僕自身もそう。個人的にその二つが一番かけ離れて悩んでいた時期が高校生くらいの頃だったんです。この「イコール」という楽曲でタイアップをやらせていただいた【MIX】の主人公たちと同じくらいの世代。どうやったら夢に追いつける現実を作れるのかと。そういったことを改めて考えてみました。その“夢”と“現実”を“イコール”で繋ぐためにはなにが必要なのかなとか。作り終えて思うのはこのことを考えるのに年齢はそんなに関係ないなということでしたね。きっかけは【MIX】という作品の主人公たちの世代というところから高校生の頃を思い出しましたが、きっと何歳になっても“夢”と“現実”を“イコール”で繋ごうとすることは大事だと思うし、そういう瞬間に人間は輝くんじゃないかなって。

―確かに“夢”と“現実”が完全に常に一致していることなんてほとんど有り得ない状況ですもんね。仮に他人から見たら夢が叶っている状況に見えたとしても実際にそこを“イコール”で繋げられるのは自分自身だけですし。人生の大きなテーマかもと感じました。ちなみにタイトルから曲を作り上げていった感じですか?

片岡:まずはワンコーラスを作ってからですね。この曲においては実際に夢が叶うか叶わないかというところには重点を置いていなくて、“イコール”で繋ごうと必死に追い求めて、もがいて、でも頑張っていくというところの美学、その様の美しさに重点を置いています。だから夢を書きたいわけでも現実を書きたいわけでもなくて、その間にあるモノを書いていく考えたらもう“=”という記号しかなかったんです。そこでタイトルが決まってから他の部分も作っていったという過程でした。

―曲の最後の部分でこの曲の真意というか、「イコール」というタイトルの意味を知ることができました。正直、曲の冒頭部分だけでは“イコール”という言葉が思い浮かばなくて。

片岡:それは最初のワンコーラスと一緒にタイトル案を提出した時にいろいろな方に言われました(笑)。本当にこれって繋がるの?って。

―“描いた理想の自分とはかけ離れた現在(いま)と”というワードからは想像がつかなかったです。なにが“イコール”で結ばれるのかもわからなかったし、なにか明確な答えをだすために○+○=みたいな形で“イコール”を使うのかなとか想像しながら聴き進めていったら最後にようやく意味がわかって。

片岡:古畑任三郎方式ですね(笑)。

―まさに(笑)。

黒田:それジワジワきますね(笑)。

―この曲の中で主人公が成長していくような印象も持ちました。そういった部分は【MIX】という作品とのリンクがあるのかなと。

片岡:まさしくそうですね。曲の中で歩んでいって成長していくというのは意識した部分です。

―今回のタイアップはまたなかなかに熱く重いバトンだったのかと思いました。

荒井智之(写真○○ Dr/Cho 以下…荒井):もちろん驚きましたし、とても光栄なことだなと思いました。今回の話を進めていく中で“国民的”というワードがよく使われていて、逆に【タッチ】の続編的な立ち位置の作品ですとか、【タッチ】というワードはあまり出てこなかったんです。それがなかったから素直に受け止めることができたのかなという印象はありました。【タッチ】という作品は漫画だけでなく音楽も国民的な誰もが知っているものだし、それに近い曲でとか、それとは違うテイストでとかそういう情報だったらちょっと受け止め方は違っていたのかなって。

―今の話を聞くとsumikaチームとしての精度がどんどん高くなっているんだなと感じました。

片岡:それは確実にありますね。お互いの会話のキャッチボールとか、気遣いとか。今だ!って共通で思えるタイミングとかがどんどん近くなっているのかと。僕らがストレスなく音楽活動をできる環境を整えてくれていて本当に感謝しています。

―そんな中での今回のお話というのはバンドとしても夢がある話ですよね。

片岡:まさかあだち充先生の作品の中で自分たちの作る音楽が鳴るだなんて夢にも思わなかったですから。

―まさに“イコール”で繋がった部分でもあるんじゃないですかね。

片岡:言われてみたら確かにそういう意識は潜在的にあったのかもしれないです。

―そう考えても非常に夢があるタイトルですよ。

片岡:ステキな解釈をありがとうございます。一つの“夢”が“現実”と繋がった瞬間ですね。僕にとっての“イコール”が【MIX】だったのかな。

―両A面のもう1曲についても伺っていこうと思います。「イコール」の世界観からガラリと変わった「Traveling」という楽曲。バスケットボールのトラベリングという意味もダブルミーニングで入れていたりとか、それに付随して“3”という数字をちりばめていたり、他にも言葉遊びも含めて遊び心満載だなぁと思いました。

片岡:そうですね。いろいろ制作を進めていく中で遊びを結構入れていきましたね。

―この2曲の対比は両A面だからこそかなと。どういう曲を「イコール」の対にするかというところでこういった楽曲というのはまたちょっと意外だったというか。

片岡:この曲に関しては正々堂々、我々が今年の夏になにを歌いたい、なにを演奏したい、どんな曲を作りたいという考えの元に作りたい曲を作ったという流れでした。

―この半年くらいのsumikaしか知らない方とかからしたらびっくりしてしまうような曲かもという印象を持ちました。

片岡:確かにそうかもしれないですね。でもパブリックイメージを壊したいとかそれに立ち向かうみたいな気持ちではなく、sumikaというバンドのこういった側面に関してはまだまだ伝え切れていない気がしたので曲という形でみんなに届けてみようかくらいのライトな気持ちです。新しいと捉えてくれる方もいると思いますし、変わってないと捉えてくれる方もいるかもしれないですが、この曲に関してはとにかくsumikaとして作りたい曲を作ったというシンプルな考え方です。こういう曲が出来たから両A面でいこうという気持ちが固まりましたしね。

―「イコール」を表題曲としたシングルというのも想定としてはあったのですか?

片岡:もちろんそれは選択肢としてありました。タイアップとの向き合い方としてその作品が導いてくれた楽曲という気持ちがあるので、もちろんそれは大事にしつつ、sumikaというバンドとして両A面にしてもう1曲に関しては0から1を作るというのをこのタイミングでやれたらタフかなと。【MIX】という作品を尊敬していて、それが導いてくれた楽曲として「イコール」が出来たからこそ、もう1曲に関しても一切妥協せず、しっかりと自分たちに負荷をかけた状態の強度で挑みたかったし、挑むべきだなと。

―ストイックですね。過去にストイックなエピソードも聞いていたし。

片岡:もうあの時の僕は死んでますよ(笑)。

~一同爆笑~

―バンドとして真摯に正面から向き合っているんだなというのを改めて感じることができました。

小川:マジで作りましたよ。
黒田:マジでって(笑)。
小川:実はアレンジを全くの別verも作ったんですよ。最終的にはそれらをMIXさせた形になりました。
荒井:めっちゃドヤ顔したね(笑)。

―使ってきましたね。

~一同爆笑~

小川:どういう曲を作ったら両A面にふさわしいか、両A面の立ち位置みたいなものはすごく考えました。カップリングじゃダメなんですよ。自信を持って両A面にできないと正義じゃないから。自分たちがそう確信できるレベルまでこの曲を高めていきたかったので、いろいろアイデアを出して、みんなで相談しながら作り上げていった楽曲ですね。それこそレコーディング当日にもいろいろ変更しながら。そういった試行錯誤を繰り返していたのでオケとしてのレコーディングが終わった時にスタジオで聴いた時の満足感はすごかったですね。

―「イコール」という楽曲が生まれたからこそ、この曲の制作にそこまでの力を費やすことができたんでしょうね。今レコーディングの話もでましたがなにかエピソードなどあれば聞かせてもらいたいです。

小川:「イコール」はストリングスを入れているんですが、今まではバンド側のアレンジが固まっているものに対してストリングスを入れてもらっていたんですが、この曲に関してはストリングスを先に入れてもらってそれに対してピアノをどうアレンジするかということにチャレンジしました。国民的な楽曲と言われる曲ってそういう手法でやっている曲が多いというのを聞いたことがあって、今回はそういったアプローチをしてみたほうが良いんじゃないかなと思って。より大きな世界観、よりキレイなピアノを弾きたいなという意識で挑みました。
黒田:めちゃくちゃ個人的なんですが「イコール」のドラムの音が最高でしたね。本当に気持ちよくて。それもあってギター録りもすごく良いテンションで臨めました。
荒井:嬉しいですね。実は新しいドラムセットを鳴らした日だったんです。レコーディングの日に下ろして。今のツアーはそのセットでやらせてもらっています。
黒田:本当に良い音なんでぜひ聴いてください。

―注目ポイントですね。今作ですがジャケ写にも思わず目がいきました。ここ最近ずっと人物が写っていたので。コンセプトを聞かせてもらえますか?

片岡:2曲のどちらかに寄ったジャケ写にはしたくなかったんです。それだとそれこそ両A面の意味がなくなってしまうというか、1枚の作品として違うかなって。全く違うテイストの2曲の両A面なのですが、2曲並べて共通項ってなにかなって聞いた時に自由に対して歌っているなということに気付いて、そこからイメージを膨らませて鳥にたどり着きました。

―なるほど。確かに言われてみたらそうですね。そこは気付かなかったです。そうやって曲をいろんな角度で見るのも楽しみにの一つですね。そして今作には初回生産限定版にはライブ音源がつくのでそこも楽しみです。収録楽曲は選曲の妙があるなと感じました。

片岡:チーム全員で選曲会議をして、考え方としてはライブ音源だけではなく、両A面の2曲を意識してバランスを考えました。8曲を聴いてもらえたら嬉しいなという想いです。sumikaという伝える上で過不足がないようにというのは常に念頭に置いているので、「イコール」と「Traveling」だけでは表現し切れていない部分、ライブの部分とかを知ってもらうにはどういう曲を収録するのがいいかという話し合いでしたね。

―では2枚で一つの作品というイメージですかね。

片岡:できればそう捉えてもらって、2枚とも聴いてもらえたらすごく嬉しいです。

―作品を作るという上での強いこだわりを感じるエピソードが聞けて、1リスナーとしても嬉しい想いです。ありがとうございます。