―今回取材させて頂くにあたってまず驚いたのが、舞子さんがすごくお若いということ。21歳とは思えないほどしっかりしていらっしゃいますよね!
中村舞子(以下N):ありがとうございます!でも自分では全然そうは思っていないんです(笑)。このお仕事を始めてから、自分の人一倍ダメな部分に気付くことも多くなったし、日々もっとしっかりしなきゃなと思いながら活動させてもらっています。
―デビュー作の頃から聴かせて頂いているんですが、歌声の方も、デビュー時と比べると着実に大人っぽくなっていますよね。
N:ありがとうございます!昔は他の人に比べてテクニックが足りないとか、誰かと比較して落ち込むこともあったんですけど、周りがマイペースに成長している自分を受け入れてくれていることが段々分かってきて。人と比べることも、ファンのみんなに対して失礼だと思うようになったんです。それからは自分の良いと思う部分はもちろん、ダメなところも含めて好きになっていこう、と素直に思えるようになりました。それが、今回のアルバムのナチュラルさにも繋がっていると思うし、さっきお話した「等身大の大人っぽさ」にも影響しているんだと思います。
―今回のミニ・アルバム『7→9』なんですけど、”ひと夏の恋”というテーマで制作しようと思った経緯を教えてください。
N:きっかけは、「一本の映画を撮るようにアルバムを作ってみたい」と思いついたことです。色んな映画が好きでよく観るんですけど、途中で「ありきたりなストーリーだな」って思っても、ラストシーンで流れるエンディング曲が良ければ、それだけで「観て良かった!」と思っちゃうくらいの名曲ってあるじゃないですか。そういうちゃんとした起承転結の流れに沿った、人を感動させるものが作りたいなと思って。そこから「”ひと夏の恋”を始めから終わりまで描こう!」というコンセプトに行き着いた感じです。
―あとは21歳という年齢も、本作の制作に深く関わっているのではないかなと思ったのですが。
N:そうですね。最近、自分の年齢というものを改めてちゃんと受け止めてみたいと思うきっかけがあって。ふだん私は周りから「しっかりしてるね」とか「大人っぽい」って言われることが多いんですけど、実生活では必ずしもそうではないんですよね。同級生や年の近い友達と朝まで馬鹿騒ぎすることもあれば、悩みを打ち明けてみんなで泣いたりすることもある。そういった自分の飾らない部分も、今回キチンと作品に落とし込みたいなと思ったんです。
―中村舞子も、普通の女の子なんだと(笑)!
N:そうですそうです(笑)!
―今回アルバムの物語は夏を舞台に繰り広げられていますけど、舞子さんご自身、夏に何か特別な思い入れはあるんですか?
N:私は元々フィリピンのマニラという、クリスマスでも暑い南の島の生まれなんですね。3歳の頃にはもう日本にいたので当時の記憶はほとんどないんですけれど、なぜか毎年、夏が近づく度にワクワクするんですよね。血が騒ぐというか(笑)
―アルバムの中で、特に私らしいなと思う曲は?
N:アルバムのラストトラックで、配信でシングルにもなった「End Roll」ですね。主人公の女の子の強がりなところとか、自分もすごく反映されているなと思います。
―具体的にはどういった内容なんでしょうか?
N:「End Roll」は、主人公の女の子が “ひと夏の恋”に「別れ」という決断をする楽曲です。一生懸命年上の男性に恋をして、いつも自分のことだけを見ていて欲しいから、夢中になって追いかけて… だけど、彼とのすれ違いを通して、彼女は気付くんです。「私はきっとこの恋だけじゃ物足りなくなっちゃう」って。仕事とか家族とか、いつの間にか目を反らしていた自分の現実と段々焦点が合ってくる。でも、たとえ彼と別れるという結果になったとしても、彼と出会って過ごした時間や、彼という人を知ることができたという気持ちを糧にして前に進んで行こうという、ポジティブなメッセージも込めています。
―とても深みのある歌詞なんですよね。一回読んだだけでは汲みきれない世界観というか。
N:アルバムの一つ前のトラック「まだ、そばにいたい」では分かり易さを追求したので、逆にこの「End Roll」は一度聴いただけでは分からないことを大切にしたくて。少し謎が残るような作りの物語にしたかったんです。ぜひ繰り返し聴いてもらって、皆さんそれぞれの物語を照らし合わせてほしいですね。
―アルバムの結末にあたる楽曲を最初に発表することって、正直かなり勇気のいることだなとも思ったのですが。
N:映画の予告編でも肝になるシーンを先に見せたりしますけど、それと一緒ですね。あえて結末を先に見せた方が、この二人がどうやって出会い、どうやってこの結末に至ったのかという「プロセス」の部分を想像して聴いてもらえるんじゃないかと。
―では、抵抗もあまりなかったと?
N:最初は少し悩んだんですけどね。でも出し惜しみする必要もないのかなって(笑)!
―「End Roll」はアコースティックが主体になっていますが、今回アルバム全体では非常に幅広いジャンルの楽曲が収録されていますよね。
N:そうなんです!今回は二人の恋の状況によって楽曲のジャンルを変化させるという手法をとった、サウンド面のこだわりがあるんですよ。たとえば、二人の出会いを描いた一曲目には、90年代のR&Bの要素を取り入れたセクシーな楽曲を収録していて。私は1991年生まれなので、ほとんど90年代の音楽ってリアルタイムではないんですが、今あらためて90’sの曲を聴くと、ものすごく新鮮で。逆に年上の人なら懐かしく感じてくれるだろうし、これは絶妙なポジションのサウンドだなと。二人の恋が絶頂のときには、そのシリアスさを今のエレクトロなアップチューンで表現してみたり。「End Roll」はラスト・チューンなので、アコースティックでしんみり聞かせるのが一番しっくり来ると思いました。
―以前から思っていたことなんですが、舞子さんの歌声って、アコースティックな生サウンドとすごく相性が良いですよね!ご自身では、歌声を普段どう分析されていますか?
N:そうですね…フィーチャリングでは、わりとキーの高い楽曲を歌わせて頂くことが多いんですけど、自分自身では中域が一番声の通りも良くて、歌っていても気持ちが良いなと思っているんです。だからレコーディングの時も、マイクはハイトーン映えのする種類ではなく、中域が一番気持ち良く聞こえるノイマン系を選ぶことが多いですね。伸び伸びと歌える要素をいちばん大事にしているので、そういう意味で生の楽器に合っているんじゃないかなと思います。
―ちなみに今年の3月には、エッグマンで開催された「ナマタマ vol.2」という生バンド主体のライブイベントに出演されたそうですが、普段のオケでのライブと比べていかがでしたか?
N:普段は打ち込みで歌うことも多いので、生のバンドさんと一緒にステージをやらせていただくのは、やっぱりすごく楽しいし、いい経験になります!打ち込みって、より歌にも「正確さ」が求められる気がしてしまうんですが、生って「あっ、今熱が入りすぎて歌飛ばしちゃった!」っていうハプニングとかも含め(笑)、ホントに生き物だなあって思います。人間が奏でているからこそ、失敗しちゃったりリズムが狂うことだってあるんだけど、でもそれが逆にグルーヴに繋がったりすることもあるし。それが面白さだなと。”音を楽しむ”と書いて音楽ですしね!
―8月からは、シングル第2弾「まだ、そばにいたい」の配信が開始されますね。こちらは「これぞ中村舞子!」的なサウンドがとても心地良いミディアム・ナンバーで。
N:「まだ、そばにいたい」は、着うた世代といわれる年代の人たちにもアルバムの内容が気になってもらえるよう、心を込めて作った楽曲です。これまでフィーチャリングでやらせてもらってきたことを、どうやってソロで生かそうかと考えた結果、いわゆる「セツナ系」と言われているジャンルを「とにかく良いメロと良い歌詞で歌うことで表現したい!」と思って。じゃないと、たくさんフィーチャリングをやらせて頂いていることの示しが付かないと思ったんです(笑)。とにかく「ソロでも良い曲作んなきゃ!」と、気合を入れて臨んだ曲です。
―気が早い話ではありますが、次回作のビジョンは大体固まってるんでしょうか?
N:全体のコンセプトとかは考えている最中なんですけど、次は「ダメな女の子」を主人公にした曲を書きたいなと思っています。なんかもう、ダメすぎて転んじゃって、でもそこから立ち上がるっていうようなストーリーとか(笑)?今色々と膨らませているところです!
―今回は毅然とした女性が思い浮かぶ楽曲が多いので、そのイメージをさらに打ち破る仕上がりになりそうですね!
N:そうですね。今回、等身大の自分らしいアルバムを作ることが出来たので、次回作ではもっともっと自分のダメな内面にも突っ込んだ表現をしていきたいですね。
―なるほど。ではその次なる”等身大シリーズ”、楽しみにしています!
N:はい!ありがとうございます!
―アルバム発売前後には、ライブなども予定されているんですか?
N:この夏はフェスも含め、ライブはめちゃくちゃたくさんやらせてもらう予定にしています!色んなところに行けるので、今からホントに楽しみです。これまでは1月のアルバムリリースが続いていたこともあって “冬女”イメージの中村舞子だったんですが、今年は “夏女”でライブを盛り上げていきたいなと。日焼けする気も満々ですよ(笑)!
―頼もしいです(笑)。是非またエッグマンでもライブして下さいね!遊びに行きますので!
N:是非!よろしくお願いします!
◉End Roll/まだ、そばにいたい