–まずは5thアルバム『変身』リリースおめでとうございます!2人体制になって初めてのアルバムリリースという事で、変身した”新しいチャットモンチー”をこのインタビューでも探れたらと思います。宜しくお願いします。
■2人:宜しくお願いします!
–2人体制になってから、どんなライブをするのかすごく気になっていたのですが、先日SWEET LOVE SHOWER2012でライブを観てすごく感動致しました。今年の夏は色々な場所で、たくさんのアーティストのライブを観て来たのですが、その中でも3本の指に入るぐらい、正直、圧倒された最高のライブでした。今作「変身」を聴かせて頂きまして、ライブでどうやって表現していくか、、、を強く意識して制作された様に感じたのですが、そのようなコンセプトはあったのですか?
■橋本絵莉子(以下、橋本):今回、新曲をレコーディングする前に、ライブで演奏する方が先だったんです。特にコンセプトとして決めていた訳ではないんですが、そうやってみようって事で、半年ぐらい色んなライブで演奏していました。
–今までもライブでプレイしてからレコーディングというケースは多かったのですか?
■福岡晃子(以下、福岡):全然!
■橋本:デビューの時ぐらいですかね。
■福岡:月の前半は曲作り&レコーディング、月の後半は1、2本ライブをする、という流れを決めてやっていましたね。月の後半でやったライブで新曲を披露して、その曲を翌月レコーディングする。また曲を作って、それをまたライブでやって、翌月レコーディングする、というのを半年間続けました。
–なるほど。今回、後藤正文(from ASIAN KUNG-FU GENERATION)さんや奥田民生さんがサウンドプロデューサーとして参加されていますが、彼らとはどのように曲を作っていったのですか?
■福岡:曲を作るのはメンバー2人でやって、それをライブで披露して、プロデューサーさんには”この曲でお願いします”って感じでお願いしました。ゴッチさん(後藤正文)にプロデュースしてもらっている曲に関しては、「Yes or No Love」をゴッチさんがライブで観てくれた時に”この曲のプロデュースをやりたい”って言ってくれたんですよ。で、私達的にはASIAN KUNG-FU GENERATIONって速かったり、勢いのある曲のイメージがあったんで、「きらきらひかれ」も一緒に作りましょうって提案して、各曲を作り始めました。どちらの曲もすでにライブでは演っていましたね。
–そうなんですね。その今回のアルバムにも9曲目に収録されている「きらきらひかれ」ですが、タムとスネアの音でずっとリズムを刻んでいるのが印象的でしたね。
■福岡:そうなんですよ!18インチのフロアタムをバスドラ代わりに使っています。この曲が結構早い曲なんですが、バスドラをそんなに早く叩けないんで(笑) シンバルと混ざっているところや、叩けるところはバスドラも入れています。
–聴いていてすごく面白かったです。 このアルバムの中でも異彩を放っていますね。
■福岡:そうせざるを得なかったというところもあります。速い曲をつくるということは早く叩けなきゃ。でも、できないし。それで苦肉の策でフロアタムをバスドラ代わりにするって事を思いつきました。そしたら絵莉子が誕生日にフロアタムをくれて(笑)。それを使ってやりました。
–そうなんですね(笑)。後藤正文さんはどういった面で曲作りに参加されたんですか?
■福岡:ゴッチさんにはサウンドの面で一緒にやって頂きました。
■橋本:ゴッチさんのギターやアンプも使わせて頂いたし、ギターの音も「これくらい歪んでいた方が良いんじゃないか」とかアドバイスをもらったり。
–曲のアレンジというよりは、音色などのプロデュースといった感じですか?
■橋本:そうですね。でもなんかもう、一緒になって「わぁー」ってやってたって感じですね。
■福岡:プロデューサーさんっていうよりも、バンドマン同士って感じでしたね。
–なるほど。今回のアルバムは歌詞の世界観も素晴らしくて好きなんですが、アレンジの面でもいろいろ凝っているモノが多いなという印象を持ちました。メンバー自身で全部作っているのですか?
■福岡:アレンジに関してはゴッチさんも民生さんも全然何も言わなくて、ゴッチさんは「チャットモンチーのファンだから」って言ってくれて、「ファンだったらこうだったら良いなって事しか言いません」っていう事を最初に言ってくれたので、言ってくれる事に関してはすごく解りやすかったですね。音色や曲の間奏部分が長いとか短いとかそういった事は言ってくれましたけど、主な骨組みに関しては全曲自分達で作ったものです。アルバムの5曲目に入っている「コンビニエンスハネムーン」は民生さんにプロデュースしてもらったんですが、歌詞やアレンジに関しては何も言われなかったです(笑)。
–それでもどこか奥田民生さんの雰囲気を感じさせる曲になっていますね。
■橋本:この曲が出来た時、民生さんにプロデュースしてもらえれば合いそうだねって事で頼みました。
–この曲も雰囲気がすごく良くて素敵な曲ですね。チャットモンチーの楽曲は、歌詞を見なくても言葉がすっと入ってきます。歌詞を読んでも、例えば「テルマエ・ロマン」(今作3曲目)は言葉遊びをしていたりして面白いですし。歌詞を書く上で意識している事はありますか?
■福岡:基本的に曲をつくるときは全部、歌詞が先なんですよ。絵莉子が歌うって事を想定しては書いています。この詞にどんな曲が付くか全くわからないので、とりあえずAメロ・Bメロ・ブリッジ・サビみたいなのを分かりやすく改行して絵莉子に渡しています(笑)。歌詞はあまり長くならない様にしたくて、短くてすぐ伝わる言葉を使う様に意識しています。
■橋本:最近は手書きよりもiPadのメモで書く方が捗ります。
■福岡:可愛いなー(笑)。やりにくくない?(笑)。
■橋本:iPadって、紙とパソコンとの中間なんで、しかも自分の文字じゃないっていうのが良いんですよね。なんか自分過ぎると、やり過ぎるというか、作り込み過ぎるというか。他の人が書いた歌詞の方が曲は載せやすいんですよね。
–今作では、エンジニアとしてジム・オルーク(ex Sonic Youth)さんも参加していますが、どのような経緯でお願いしたんですか? Sonic Youthが元々好きなんですか?
■福岡:元々好きですね。
■橋本:私はジムに興味があって。
–レコーディングが始まってからはスムーズに進みましたか?
■福岡:そうですね。やっぱり日本のやり方とは少し違っていて戸惑った面もありましたけど、一緒にやって新しい発見もめっちゃありました。
–今回ベースレスの曲が結構入っていますが、ベースを入れた方がいいっていう葛藤はありましたか?
■橋本:2人になってレコーディングを始めた当初は、うっすらベースを入れた方が良いんじゃないかって考えたんですが、2人で始めた意味がなくなる様な気もして何となくひっかかってたんです。でも作業を進めていくうちにだんだんベースが入っていない事が気にならなくなって。それで最終的にベースを入れようって考えなくなりました。
–ライブに関しても、”2人でやる””サポートミュージシャンはいれない”という気持ちですか?
■福岡:そうですね。
–先日発表された年明けのツアーはZeppなどキャパシティの大きい会場での公演になりますが、そこでも2人でやる事にこだわっていきたいですか?
■福岡:サポートミュージシャンを入れる予定はないですね。
–これからも2人で活動していく中で、3人で活動していた時の曲も表現する事に関して意識している事はありますか?
■福岡:3人でやっていた時の曲を2人でやるに当たって、曲のリアレンジを根本から変えないといけないんですが、そこがすごく大変です。2人でやるからにはやっぱり、今までと違った、より良いアレンジにしないといけないと思っていて、”なんか違うな”って思われるんじゃなくて、”こういう曲だったんだ!”と再発見してもらえる様な曲にしないといけないと思っています。誰かサポートミュージシャンを入れて、3人でやるっていうのはただの再現になっちゃうので、気持ちが燃えないですね。リアレンジはすごく大変な作業ですが、新たなアレンジを見つけた時は新しい曲ができたのと同じくらいに嬉しいです。それを聴いたお客さんにも喜んでもらえるんじゃないかと思っています。
–先日「恋愛スピリッツ」(3人で活動していた時からの曲)をSLSで聴いた時は本当に感動して、”新しいチャットモンチー”を体感しました。これから年末年始にかけて、ツアーが続きますね。キャパシティの大きさに関わらず全国各地のライブハウスをまわるツアーという印象ですが意図する事はありますか?
■福岡:11月からの年末のツアーに関しては小さめのライブハウスを中心に廻って、年始からは、大きい会場でもやっていきます。小さい場所でも大きい場所でもどっちでも観てもらいたいし、同じようにやれると思う。2人になってからまだワンマンをやっていないので、今の私達がどう見えるのかがすごく楽しみです。
–eggmanでもバンドとして、DJとして、度々出演して頂いていますが、都内でも今後そういった規模の会場でのライブ予定はありますか?
■福岡:やりましょ!やりましょ!eggmanではスーパーカーのコピーバンドをやったりもしましたね。
–そうですね。またeggmanのステージにも立ってください!(笑)。
■福岡:はい!お願いします!
◉コンビニエンスハネムーン