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amazarashi interview
- SPECIAL -

amazarashi interview

様々な表現方法があって。様々な伝え方があって。
“音楽はこうだ”とか”こうでなくちゃいけないとか”
そんな事はどうでも良くて。ただ私は「amazarashi」の創る世界に感動しました。

interviewer:森村俊夫

“歌詞を見ながら聴きたい曲が、いまいくつあるだろう。”

私が小さい頃。家に帰るまで待ち切れなくて、電車の中で買ったばかりのCDの封を空けて、歌詞カードを読みながら家に帰った事を思い出す。家に帰ってからもCDを聴きながら、歌詞を覚える程に歌詞カードの隅々までを読んだ思い出。たった5分ほどの音楽の中に1冊の小説の様な物語があって、たった5分の中でいろいろな感情を抱く。個人的な話ですが、今、そういった時間も極端に減ってしまったし、そういった音楽に出会う事も少なくなった様に感じます。「amazarashi」の音楽に出会った時、圧倒的な歌詞のインパクトに私は久しぶりに同じ様な感覚を覚えました。1つの曲に、すごい数の”言葉”が詰まっていて、すごい数の”情報”が詰まっていて、すごい数の”メッセージ”が詰まっている。そんな言葉達に私はまたいろいろな感情を抱きました。そんな「amazarashi」の中心人物である”秋田ひろむ”。ボーカルとギターも務め、そして「amazarashi」の音楽を創り出している彼の声を聞きました。

秋田ひろむ–普段から思い浮かんだ言葉とか詩はメモしてます。そこから直接曲をつけたり、曲が先に出来てメモから歌詞を考えたり、色々あります。歌詞を先に考える方が多いと思います。最終的に完成させる時はパソコンにかじりついてじっくり考えます。

「amazarashi」の音楽の中の”言葉”は、時に包み込むように優しく、時に深く心を突き刺すほどに鋭利であると感じます。その”言葉”は誰に対して向けられているモノなのでしょうか?

秋田ひろむ–ほどんどが自分です。誰にも影響されない場所で作っているので、他人を意図しない言葉づかいが結果的に鋭くなってしまうんだと思います。頭の中でしゃべってる声とかそのまま出せたらな、と思ってます。

これだけの数の”言葉”を”音”に乗せるのは容易な事ではないと思います。

秋田ひろむ–曲は曲で時間をかけて作りますが、いい歌詞の為だったらメロディーを変えたり、字余りになってもいいと思ってます。結果的に原型から大きく変わる事も多いんですが、それがいいものであればそれでいいと思います。

4/10にリリースされる今作に収録されている「ジュブナイル」では個人的に、10代の少年少女達に対しての”共感”と”苛立ち”、更に”道しるべ”の様なモノを感じました。

秋田ひろむ–リスナーからもらった手紙の中に、音楽やってる人や絵を描いてる人や、なにかしら頑張ってる人が多かったのでこういう曲になりました。昔の僕自身とかぶったりして、ちょっと熱くなって作った曲です。結果的に今の僕が奮い立たされる曲になったと思います。

歌詞の歌い出しの”ねえママ あなたの言う通り(※アルバムタイトルでは 言うとおり)”が今作のタイトルにもなっている「性善説」では、思春期の子供の目線になって描かれているかのような世界観が広がります。Aメロではピアノや鉄琴の様な優しい音を中心に奏でられていて子供らしさを感じる反面、サビでは歪んだ音や声のダブリングで悲愴感や現実的な世界を表現されている様に感じます。

秋田ひろむ–2番目サビのフレーズ「馬鹿な男の下世話な自慢話に 子供を連れ車両を変える母親を見たよ」という光景を実際目の当たりにしまして、これを歌いたいが為の曲だと思います。人の道徳的な規範の原体験は母親だと思うので、そこと対比して今の社会で生きる人の不安感を描いています。

「ミサイル」では、曲の中に出てくる”僕”という人はおそらく20代の大人で、20代の私にとってこの作品の中でも一番共感できる曲でした。”僕らの自由”を”ミサイル”に例えたこの曲は、今のリアルを抽象的な様で逆にすごく具体的に表現している曲だと感じました。

秋田ひろむ–この曲の中で描いてる”僕”は東京のアパートで引きこもってた頃の僕自身で、今までのamazarashiの卑屈さの象徴です。それを今の僕が断罪している様な視点で書いたのですが、思ったより混沌としたものになってしまいました。上手く着地できてないんですが、それがもがいてる様な勢いになっていて面白い曲だと思います。

amazarashiの音楽には、文学的かつ現実的な詩を、ピアノを中心とした幾つもの楽器の音で包み込んだかの様な感覚を感じます。すごく物語の様で、でもフィクションでは無くすごく現実的で、矛盾しますが幻想的でもあるように感じます。

秋田ひろむ–完成形を意識して作っているわけではないので、成り行きで作ってる事の方が多いのですが、1コーラス作っても、次で自分を裏切りたいというのがあるので矛盾したものが一緒に存在するのかもしれません。amazarashiの音楽は思いつきの積み重ねですが、なにかしら真実めいたものを込めようとして作ってます。