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サカキナオ「カワラ版」
- SPECIAL -

サカキナオ「カワラ版」

ご無沙汰しております。サカキナオと申します。

 先日、新曲『フラッシュバック!!』を配信いたしました。MVの方も寒空の下、ちらつく雪に見守られながらの撮影となりましておかげさまでファンキーでファニーなものとなっております。是非ともよろしくお願いいたします。

 さて、今回はワタクシの「夢」についてこちらに書かせていただければと思います。
 この一見ロマン色に染められたキラキラした書き出しにむず痒くなった方々へ。
 ご安心してくださいませ。勿論ココでの「夢」というのは、希望、青春、澄み切った何か等々、、、そいつらがハチ切れんくらいに膨張した未来に馳せた想いを指すのではなく、瞼を閉じて横になると見ることのできるアレのことでございます。
 今回コラムに持参しましたのは私の夢にまつわるとある妙技についてなのであります。
 皆様、目覚めたときに「夢だったのかあ、ならばアレコレしていればよかったあ」などと考えたことはありませんか?
 はい、私できるのです。夢の最中に夢だと気づけるのです。
 正確には可能な場合もあるくらいのものですが、大袈裟に言えば夢をコントロールできる。いわゆる「明晰夢」というやつですかね、これが私の妙技でございます。

 それでは小噺を。
 とある夜、頭の中でまたも繰り広げられる茶番劇。エレベーターにて降りたい階のボタンを押しているのにも関わらず、違う階で扉が開いては閉じ、また違う階で扉が開いては閉じ、、、こうして文字に書くと馬鹿らしいのですが、最中はこの劇の中で本気で生きているつもりのため必死なのです。こういう制御不能系の夢というのは何故か「死」が連想され、その恐怖に駆り立てられてしまうのです。夢の中で怯えてドキドキしてしまうのです。
 さて、エレベーターの中で死の恐怖に震えている私、何かのタイミングでハタと気づいてしまいました。

 「あれ、これ夢じゃね」

 毎夜毎夜、私の頭の中であくせく勤務してくださっている、黒いシルクハットを被る小太りのカメラを回す撮影技師(恐らく週1金曜21:00〜シフト)による、ただの脳内映画だと気づいてしまったのです。
 こうなるともうこっちのもんです。先ほどまで私の身体に充満していた恐怖なんて何処へやら。私はエレベーターの中で「次はどんな展開を披露してくれるのかね」と強気な姿勢を見せているのであります。
 次なる展開を見せてこようとも所詮は夢、もはや私の思うがままなのです。
 しかしそんな楽しい劇も突然の終わりを迎えます。基本的に眠りが浅く、ちょっとした物音で起きてしまう私の性分故、何かの拍子にパチっと目を覚まし、急激に現実に引き戻されてしまいました。
 あーー夢から覚めてしまった、、、いや、まだだ。絶対に取り戻す。
 そう、このままでは終わりません、ここからが私の真骨頂でございます。この夢から覚めたばかりの寝ぼけ眼と、絶対にさっきの夢の続きに戻るんだ!!という強い意志がどちらも強すぎず弱すぎず、丁度良いバランスでミックスした究極の精神状態。これを維持しながら再び目を瞑るとあら不思議、「エレベーター止まらない」第2話が始まっているではありませんか。
 こうしてその日も十二分に夢を堪能しきったのでした。もう一種の趣味みたいなものです。とまぁ上手く行くときはこんな感じで一方、上手く行かないときもありまして。

 それはまた別のとある昼。朝まで私用で身体を酷使しておりまして、さすがに力尽きそうなのでやむを得ずショッピングモールの駐車場にて仮眠をとっておりました。
 しばらくするとどういう訳かワタクシ崖の上におりました。正確には崖の根元とでも言いましょうか、いい具合に岩の壁の裏に隠れておりました。そして本当の崖の先にいたのは私の友人たちでした。その見慣れた顔たちは何の因果か、見知らぬ刃物を持った、モッサモサと髭を蓄えた男によって崖の先に追いやられているのです。まさに崖っぷちといったその状況に私は岩壁の裏で戦々恐々としているのですが、そのときの私はと言えば、友達を救いたい気持ちと己が生き延びたい気持ちがせめぎ合い、決断しかねているといったところでした。しかし、どう考えても私しか救える人間はいないような状況でして、、、どうしたものか、、、と困り果てておりました。

 いやはや困った、、、決められないよおーー。

 私は外食をするときでさえ、メニューを決めるのに数分かけ、挙げ句の果てはツレに決めてもらうときもあるくらい優柔不断な人間なのです。ああ、よりによってこんな大変な選択、、、いや待てよ。
 このタイミングでまたもハタと気づいてしまいました。

 「あれ、これ夢じゃね」

 先述したのと同様のフェーズが最高のタイミングで訪れたのです。迷わず岩壁から飛び出して格好良く救出してやろうと思ったそのとき。ヒゲ男が友人らに何かを叫んでおりました。現場に緊張が走ります。
 いや、これ万が一、億が一にも夢でなかった場合どうなっちゃうんだろう、、、私は再び迷宮に入りこんでしまいました。小さい時分から大切に育てて参りました臆病の虫が私の足をギュッと結んで離さないのです。そう、この虫たちが悪いのです。ああこの虫たちさえいなければ今すぐにでもアイツらにこの手を差し伸べられるのにーー。
 夢?それとも現実?どっち?の状態になりますと迂闊には動けません。しかし猶予は残されておりませんでした。次の瞬間、ヒゲ男は友人の方へ一歩、強く激しく踏み出したのです。絶体絶命のそのときパッと目が覚め、眼球に映るフロントガラス。多分、夢、、、?兎にも角にも安心いたしました。
 いやしかし私は友人の窮地に対した際、足がすくんで動かない臆病でどうしようもない奴なんだなと己に人間失格の烙印を押しまして、少しヘコんでいました。情けない。
 まぁ寝よう、、、休息を取っているはずなのに酷く疲れた。そうしてまた眠りにつくのであった。

 おい、なんてこった。再び例の崖に戻ってきてしまったではないか。今回は全く希望でないカムバックでありまして、しかもよく見りゃさっきよりピンチっぽい。
 今改めて振り返れば前回の続きと気づけているのにその場で夢だと断定できなかったのが謎なのですが、仕方ありません。必死なんだもの。
 状況はヒゲ男が友人の1人の胸ぐらを掴み上げており、一刻も早く助けねば。おお、怖い、、、。然れど考え方によっては汚名返上の機会が与えられたともとれる。さっきはグズグズブルブルしておりましたが、今回は勇気をもってハムストリングに魂を込めて岩壁から飛び出しました、、、。

 さてその後はというと全く覚えておりません。夢に録画機能がないことを恨むしかありません。誰も悪くなく、まぁ強いて言うならばこの映画を上映している、例の黒シルクハット小太りおじさんのせいでしょうか。でもそれはそれはとても晴れやかな気分で目覚めましたので、それが答えなのかもしれません。
 晴れやかを胸に飼いながら車から飛び出し、ショッピングモールにてお買い物です。たしかそのときはテニスボール?か何かを購入したような、まぁ他愛もないショッピングでございます。その後エレベーターにて、3階ボタンを押し3階へ。車に戻ろうとしたそのとき、あるはずの我が愛車がないではありませんか。そのフロアをグルグル周回してみたのですが全く見当たりません。
 いや、心当たりは3階しかありませんでした、、、よもや盗まれた?すぐさまエレベーターに再び乗りその他駐車階のボタンを押して着いては降り、着いては降り、然れどどのフロアにも愛車の「ア」の字もありません。

 いやはや途方に暮れてしまいました、、、。
あ、、、まさかこれは、、、。

※無事3階にて愛車発見。