窪田:早速ですが、今回リリースする「卒業メモリーズ~サヨナラ、あなた。~」について聞いていきたいと思います。ズバリ、卒業ソングというコンセプトが前面に出ていると思うのですが、詳しく聞かせてもらえますか?
沢井:ものすごく大好きな人がいるのに結局自分の気持ちを伝えることができなくてタイムリミットを迎えてしまう、という切ない卒業ソングですね。曲の冒頭の歌詞が『あなたに会いに学校に行く あなたのために早起きをする あなたがあたしを動かしてたの ずっと憧れてきたの』というフレーズなんですけど、まさにこの歌詞通りでこの冒頭部分がこの曲の一番大切にしているところです。
窪田:今回は沢井さんの高校卒業のタイミングということで、こういったコンセプトにしたのですか?
沢井:そうですね。このタイミングでCDを出せることってなかなかないですし、人生で一度きりしかない今を逃しちゃいけないなと思いました。なので学校や卒業という雰囲気にはこだわりましたね。今しかできないリアリティ感を出したかったんです。
窪田:今までの楽曲に比べて直接的な表現が多いのも、そういったところからきている狙いですか?
沢井:すごく意識したという訳ではないのですが、飾らずに今の自分が書ける、できるだけリアルな歌詞にしました。
窪田:僕が抱く沢井さんの印象からすると、いつもよりストレートだなと思うような歌詞でした。
沢井:インタビューの時はしっかり伝えようと心掛けているので、印象が違うのかもしれませんね(笑)でもリアルな歌詞にすることでわかりやすいけど独特な世界観になったと思います。
窪田:高校生ってかなり微妙な年頃ですもんね。
沢井:中学生だと少し幼いし、かといって大学生だと少し大人だし、その微妙なニュアンスがこの曲では表現できたかなと思います。
窪田:コンセプトが決まって、1から曲を作り始めた感じですか?
沢井:元々あったストック曲の中に「学校」という曲があったんですけど、先ほど話した冒頭の歌詞とメロディしかなかったので、そこに手を加えていった感じです。
窪田:先ほど自分の気持ちを伝えることができなくてタイムリミットを迎えてしまうというお話しを伺いましたが、その結末を選んだ理由はあるのでしょうか?
沢井:好きという気持ちを伝えたいと思っていても、高校は3年間という時間が決まっていて、しかも卒業間近になったら学校に行く回数も徐々に減っていくし、どんどんタイムリミットが迫ってくるじゃないですか。これって高校生独特の感情だと思うんですよね。それこそ中学生や大学生ではあまり抱かない感情というか。その微妙な切ない感じやリアリティを出すためにこういった結末にしました。
窪田:沢井さん自身は自分の気持ちを素直に伝えられるほうですか?
沢井:いや、私は伝えられなくて終わるタイプです(笑)気持ちを伝えて最終的にはハッピーエンドで、という曲を書きたいなという気持ちはありますが、私自身がそういうタイプではないので完璧なリアルさは出せないなと思ったんです。
窪田:それではこの曲の主人公は沢井さん自身、ということですか?それとも架空の人物ですか?
沢井:初めは架空の設定で進めていたんですけど、作っていくなかで感情移入していったので、最終的に歌うときには自分のことのような感覚でしたね。実際に私も卒業間近ですし、好きな人のために学校に行くという感覚は今までに何回も自分自身で体験してきたので、そういった意味ではこの曲の主人公は私なのかもしれません。
窪田:今まで制作してきたどの曲にももちろん思い入れはあると思うのですが、今作はやはりこのタイミングでの楽曲ということで特別な感情はありますか?
沢井:ありますね。現役高校生シンガーソングライターと言えるのも今回で最後なのでそこからも卒業する感覚もありますし、ラインを引いてそこから新しい一歩を踏み出す区切りのシングルでもあると思うので、すごくメモリアルな1枚になったと思います。
窪田:一歩踏み出すというのは勇気がいることだと思うのですが、不安などありますか?
沢井:去年末くらいまで、私はこの先どういうアーティストになっていきたいんだろうと悩んだことも多かったですね。ただ、今はすごく前向きな気持ちに変わっていて、これからも自分が書きたいと思う曲を思うがままに書こうと決意したので今は全く不安はないです。今までは寂しさや哀しさなどマイナスな感情を曲にすることが多かったのですが、前向きな気持ちに変わってからは、不思議なくらい、思い浮かぶフレーズやメロディがだれかを励ましたいとか支えたいとかプラスなものが増えました。新しい真っ白な道を進んでいくイメージですかね。
窪田:では今作のイメージは白ですか?
沢井:まさに白ですね。校舎や廊下も白いイメージが強かったのでそれも合わせてです。あとは歌詞も日本語で、少し古風なメロディなのですが、今作のサウンド面ではビートが入っていたり新しいものも取り入れているので、そこも白というイメージに重ねてます。
窪田:曲を書く際に色のイメージを思い浮かべて作ることが多いですか?
沢井:書く際に思い浮かべるというのは少ないですが、最終的に色のイメージを持つことは多いです。
窪田:そういった色のイメージはPVにも出ていますか?
沢井:確実に出てますね。今回も学校で撮ったんですが、伝えられない片思いの物語がロケーションとマッチングしてすごく良い作品になっています。
窪田:前作で初めて演技に挑んでとても緊張したというお話しを以前伺いましたが、今作はどうでしたか?
沢井:少しは成長したと思います(笑)前作は自分では恥ずかしくて見れないです(笑)
窪田:そこにも注目ですね!(笑)ジャケ写やアー写も学校っぽいロケーションで、今作を象徴するような物に仕上がってますよね。
沢井:実はジャケ写とアー写は私の地元である大阪で撮ったんですよ。いつも通っていた商店街や学校の近くです。
窪田:ではリラックスして撮れた感じですか?
沢井:逆に変な緊張がありました。すごく不思議な感覚でしたね。なんで私ここで写真撮ってるんだろうって(笑)
窪田:レコーディングはどうでしたか?
沢井:今作はリリースが決まってからこの曲を録り始めたので、いつもより届ける人へのイメージが明確にできてすごく良い雰囲気で進められました。純粋にいつもより感情が込めやすかったですね。
窪田:カップリングの2曲についても聞いていきたいのですが、まずこの2曲を選んだ理由を教えてください。
沢井:まずは3曲並べた時のバランスがすごくしっくりきたんですよね。そして「愛しい人」は高2で制作して、「青空恋模様」は高1で制作した曲なので3年間の集大成的な意味合いも込めています。
窪田:「愛しい人」はどういったコンセプトの曲ですか?
沢井:この曲は母や家族を想って作ったものですね。素直になれなくて普段は伝えられない感謝の気持ちなどをすべて愛しいという言葉に込めました。私の中では最上級の愛情表現ですね。
窪田:「青空恋模様」は非常にシンプルながらも、なにか少しひっかかる不思議な曲という印象があります。
沢井:他の曲以上に昭和っぽさが濃くて、尚且つ3拍子の珍しい曲だからかもしれないですね。歌詞の内容自体は本当にすごくシンプルなんですけどね。なんだか気持ちが昂る変な感じは実は恋だったんだ、と気づいてしまうという歌です。
窪田:青空にひっかけている部分などは前回のインタビューでも話しましたが、やはり言葉選びのセンスを感じますよね。
沢井:そう言ってもらえるとすごく嬉しいです!でも私自身は全く意識せず書いた結果がこうだったんですよね。普段からあまり歌詞を悩んで書きなおしたりとかしないので、この曲を書いた時に空がすごく青かったんだと思います(笑)
窪田:高1で作ったとは思えないようなレトロ感がありますよね。
沢井:特に意識したわけではないんですけどね。この曲に限らず私が作る曲は少し古風な感じが自然と多くなってます。
窪田:沢井さんの作風は幅広い世代の方々の共感が得られそうですよね。
沢井:少しでもそういった方々に共感してもらえたら嬉しいですね。
窪田:前回のインタビューで誰かの記憶に残りたいというのを伺ったのですが、今年に入ってその目標に変化はありましたか?
沢井:その目標自体に変化はないのですが、そこにプラスして自分の周りの人たちに愛を与えられるようなアーティストになりたいと思うようになりました。今までは与えているつもりで実は与えてもらっていたんだということに気づいたので、その恩返しをしたいんですよね。
窪田:沢井さんにとって音楽とはなんでしょうか?
沢井:ありきたりな答えになってしまいますが、なくてはならないものですね。私は常日頃から自分の感情が大きく動いたときなどはすぐに曲にしているんですね。なので今までストックしてきた曲を聴くと写真を見たりするよりもずっと鮮明にその時の記憶が蘇るんです。だから、音楽は私の人生そのものと言っても過言ではないのでなくてはならないものですね。
窪田:最後に一言メッセージをお願いします。
沢井:今作を一つの区切りとして沢井美空の第一章は終わり、第二章がはじまります。今まで以上に良い曲を作って歌っていきますのでみなさん応援お願いします!
窪田:本日はありがとうございました。
沢井:ありがとうございました!