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Heavenstamp interview
- SPECIAL -

Heavenstamp interview

メジャーデビュー前から通算で4枚のE.Pをリリース。 毎回新たな一面を魅せ、縦ノリ4つ打ちビートのロックや、名のごとく天空を描くような美しいシンフォニックサウンドなど、4枚4様のアプローチでくるくると表情を変え、バンドの各側面を切り取ってアウトプットしてきた彼等が、遂に待望の1st. full album『HEAVENSTAMP』をリリース。 各E.Pのリード曲 + 新曲の合計14曲は、このバンドの変わらない美学と、新たな表現の可能性を感じるに十二分な一遍の物語の様だ。

Interviewer : 鞘師 至

ー初のフルアルバム、どんな作品ですか?

Sally#Cinnamon(Vo.&Gt.): Tomoyaが以前言っていたHeavenstampのコンセプト、なにかひとつのことを表現するに、例えば歌詞は暗いけど、こんなにPOPで楽しく踊れて、でも泣いてるみたいなギャップというか。 それにすごく共感して、このアルバムもその「泣きながら踊る」 みたいな感覚を継承して作れたアルバムですね。

Tomoya. S(Gt) : あとは、このアルバムで本当にいろんな側面を出せましたね。 アルバム1枚を通してひとつのストーリーになっているというか。

ーそれぞれの曲について、聞かせてください。

Tomoya: 1曲目の “Magic” は、結成した当初に作った曲なんですけど、エッジのあるリフだったり、サビで6/8拍子になったり、4つ打ちのグルーヴの中で、自分達のバリエーションが魅せられるようになったな、というのを実感した曲ですね。

Sally:エキセントリック感だよね。最初はキレッキレだし、コード感に不思議な浮遊感もあるし、サビは広がりがあるし、とにかく当時Tomoyaがこの曲を持ってきた時にとっても興奮して、もうマジカル過ぎて…タイトルは “Magic” しか思いつかなかったですね。

Mika(Dr.):この曲はベースを日向さん(日向秀和 / ストレイテナー, Nothing’s Carved In Stone)に弾いてもらっていて、レコーディングは一緒に一発録りしたんですよ。

Sally: そうそう、すっごい楽しかった。

Tomoya: 同じく結成当初に作った “Stand by you” だったり、”Decadence” ではラッセル(Bloc Party)がギターを弾いていて、これも素晴らしいコラボでしたね。あ、あと隠れエピソードなんだけど、”Stand by you” のラストで鳴ってるEBOW(ギター音のサスティーンを得る為の機材)は元々AshのTimのものなんですよ!昔ラッセルがAshでプレイした時のもので、それを借りて録音したんで、実はAshの要素も入っているという(笑)。

ー新曲群は、より自由度が増した気がします。

Tomoya:”Dreaming about you” では、アルバム中で一番USっぽさを自分たちなりの解釈で出せた曲だったり、”Loose” は「リリー・アレンがThe Killsに入ったら」みたいな(笑)。 地下室的な、危ない感じのするダンスミュージックにしたいなっていう、もうイメージ一発で作った曲だったり。”Killer killer” はね、アルバム中一番攻めれた曲ですね。

ー歌詞も、こわいですね(笑)。 今までなかったキャラくらいに。

Sally: こわいですよね(笑)。 一番キレてるキャラで、おもいっきりやろうと思って。私も自分でちょっと引くくらいの、全く自分と対照的な主人公を描こうとしたので。そのくらいでないと、この楽曲に太刀打ち出来ないと思ったんです(笑)。

Tomoya:コード感も、マイナー調にマイナー調を被せるみたいな、うまくハズしを効かせられたな、と思ってます。

ー “Stop!” でもまた新鮮な、ラップまでいかないくらいの、スポークンスタイルの歌が載ってますが。

Sally:そう、この曲は遊んだなー大いに。歌もそうだし、曲も。もうビートルズもクラッシュもなんでもかんでも詰め込んで、すごい楽しかった。

Tomoya:その「ラップじゃないけど」っていうのがまさにそうで、ラップやるほど力入ってすらいないよ、くらいのゆるさがこの曲の色ですね。 ”Hype” を出した頃と比べたら、力まずに自然にいろいろ表現できてるかもしれない。メンバーみんな元々クラシックも好きだったりして、そういう感覚を “Morning glow” とかにも自然に落とし込めたりもしたし。

ー “Morning glow”、デビュー前から大好きな曲です。

Tomoya:そう、最初にエッグマンに出演した時にその話ししてましたよね。その時はやらなかったから、好きだって聞いて、次回は絶対やるって約束して。

ーで、実際次回出演の時に演奏聴けて、本当に嬉しかった。
“Morning glow”以外にも、後半に”Carnival”、”Waterfall”とシンフォニックな空間系の曲が続きますね。

Sally: “Carnival” の最後のギターとかも、もう弦楽器にしか聴こえないくらいの感じだもんね。あれは素晴らしくはまりましたね。 歌詞が書けなくて2年くらい苦しんだ曲でもありましたけどね。 でもこの曲に最適な子(主人公)もようやく見つかって、その物語を歌詞として曲に落とし込めたし、今は最高の状態です。

Mika: これも「泣きながら踊れる」曲だよね。

Sally: そう。泣きながら踊るイズムをTomoyaから、ちゃんと継承させていただいたかな(笑)。”Waterfall”もほんとに広がりある音に仕上がったし、ある種このアルバムのピークですね、この曲。

Tomoya:で、次”Call” があっての、”Ω” でシューゲイザーですね、ようやく(笑)

Sally, Mika:はい、ようやく(笑)。

Tomoya:意外と今までやってこなかったからね、シューゲイザー。My Bloody Valentine が結成のきっかけとなると、周囲からもおのずとシューゲイズサウンドを期待されたんだけど、そのままシューゲイザーをやってもおもしろくないと思ってたし、なんとなくバックグラウンドにはその音がある、ていうくらいしか表に出てなかった面なので、初めてやれて、って感じですね。そう考えると、本当に今までのいろんな要素を詰め込みました。

Sally:うん。してやったり。

軸を見据えた故の、曲の表現力の幅を広げたHeavenstampの渾身のフルアルバムのリリース。ここまでの道すがら、手に入れたのは曲に対する認識だけでなく、その規模感を着実に拡大させているライブへの向き合い方も然り。 収録曲のエピソードの中でTomoya. Sはこう話す。

Tomoya: 「コール & レスポンスがあって、盛り上がっているライブ = いいライブ」っていう風潮が今の日本のバンドシーンにはあるけど、それだけが正義ではないかなと思っているんですよ。必要最低限の音のアンサンブルを淡々と紡いでいって、それを見てジーン、としているオーディエンスがいる、っていう光景も、俺は素晴らしいライブだと思うから、”Ghost” とかを、ガンガン盛り上がってるライブの中に出て行って、恐れずに演奏できるような強いバンドになりたいな、と思ってます。「踊らされずに踊らせる」っていうか。

このバンドはひとえに、はかなくて、強い。