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2011/06/14
- SPECIAL -

2011/06/14

shibuya eggman 30th anniversary [音故知新]
“SHIBUYA TRANCEPARENT vol.1”
◆こうやって毎夜、東京のどこかで星屑が作られキラリと輝く
6月14日火曜、渋谷の丘、神南に位置するshibuya eggmanにて。小雨の降る、週も始まったばかりの平日の夜にSHIBUYA TRANCEPARENT、”渋谷で鳴るラウンジサウンド”を特集したイベントが開催された。

(text:鞘師)

オープンしたての会場では、DJ TAKASHIがチルアウトなHIP HOP中心の選曲でこれからはじまるショーケースへの期待感をあおる。テーブル上のロウソクで薄暗く照らされたホール前方の席が埋まり、後方にも立ち見の来場者が入り始める。まず最初にステージで音を切ったのはこの日オープニングアクトとして出演の”altro mondo”。アンビエントなボッサに乗るvo.Namiの歌声、低音が心地よく時に張り上げたことばじりも耳にすぐ透過する。altro mondoとしてのライブはこの日がまだ2回目と、生まれたてのバンドだが、
情熱としとやかさの両面を持つ、これからの活動が非常に楽しみなバンドだ。
次の登場は国内New Soulシーンの兄貴的存在!バラエティーに富む楽曲でダンディズム~少年的な無邪気さまで、曲ごとに様々な側面を見せる”椎名純平”。冒頭から会場であるエッグマンの30周年アニバーサリーを絡めての即興演奏。「エッグマンってどんな意味ー?」「…、たまごおとこ~」と、開始1分足らずで会場の笑いをかっさらう。デビューからの活動を見てきている筆者からすれば、こういったハッピーなスタンスは当初からあった彼の所在であろうがやはり当初は”ダンディーでセクシー”という側面を作品から受け取っていた反面、ここ最近のDezille Brothersでの活動も然り、彼の”素の部分”をライブを通して体感できるのは、新鮮味も手伝ってとてもうれしい。1st. singleの「世界」など、彼のクラシックナンバーも織り交ぜた一貫してハッピーなステージに、必殺爆笑MCもあり終始会場と一体となったエンタテインメントなステージを披露した。
しばしのDJタイムでオーディエンスの耳も次のショーへの準備万端。ステージに上がったのは豪華7人編成の”JiLL-Decoy association”、近年のジャズ/ポップスクロスオーバー界の最注目バンドだ。単なる作曲家ではなく、ショーで音を鳴らすプロフェッショナルとしてのクオリティーにこだわり、今もなお進化し続けている、”表現者”としてのセンスの高いアーティストだ。ライブで会場を飲み込むテンションの緩急、オーケストラ指揮者の指揮棒のようにメンバーだけでなくオーディエンスの気持ちの高揚、静寂も操るジャジーサウンドと、vo. chihiRoのハイセンスでキャッチーな歌声は毎会場ステージで交わり、客席の喝采を生む。最新アルバム「ジルデコ4」のリード曲「ドレスを着る前に」から始まったこの日も”いつも通り”と言わんばかりの大盛り上がり。会場全体の一体感を感じるこの空気は、ミュージシャンがその時間芸術の中で作り出す、「一時的ではかない、世界でいちばん強いきずな」なんだろうと思った。40分のステージ後半ではvo. chihiRoがなかなか見せない涙を見せつつも、こらえて歌いきるような場面も。流れる時間に、ひとのきもちとそれに呼応するひとたちが溶ければ、あとはもう何が起こるかわからない。そんな一回一回のドラマを目の当たりにして、そのドラマの一員になってこころのつながりを感じるためにライブ会場には夜な夜な多くの人々が足を運ぶ。熱量で繋がる人の輪を体感できるジルデコのステージはいつもすばらしい。最後のDJタイムでまた耳をリセット。メロウなラウンジミュージックで耳とこころをスローテンポで次のステージへ向かわせる。
この日のラストを飾ったのは日本が世界に誇るクラブジャズバンド”JABBERLOOP”。2日後には台湾公演を控え多忙な彼等だが、この日も惜しみないパワフルなステージでオーディエンスを沸かせた。この日のセットリストは、1曲目からいつものアッパーチューンが来るのかと思いきや、予想を裏目に渋めのナンバーで始まった。それでも客席の盛り上がりは曲が終わるごとに加速していき、キラーチューンの連発でステージ中盤にはオーディエンス全体が声を上げ、拍手で賞賛し、その空気が東京の夜の一室、スタンディング350人の小さな空間でぐるぐる回りだす。Sax DAISUKEのMCでは爆笑で会場の雰囲気を和ませ、ラストの「攻め燃える」まで大盛況で幕を閉じた。
ロックイベントなどに比べ、イベント自体がそう多くないこの類のジャンルだが、こうやって会場で感じるのは、求めるファンの期待値と、アーティスト達のクオリティーの高さ、シャレオツなイメージとはある種かけ離れた、大盛り上がりする会場のバイブレーションだ。 今夜出演したようなすばらしいアーティストと、音楽でハイタイムを求めるリスナーがいる限り大人だって楽しめるカッコいいライブミュージックは東京から消えない。これはリスナーとアーティストのセンスで一緒に作り上げていく、我々の我々による、我々の為の固有の文化だ。
2011/6/14  AM26:00、渋谷区神南1丁目にて