― 今作『Make Lemon Sour』は、昨年リリースしたアルバム『Make Lemonade』との関連性も感じるタイトルになっていますが、どんな位置付けの作品なんでしょうか。
Sally#Cinnamon:前作のタイトル『Make Lemonade』って、アメリカの諺で”人生があなたにレモンを与えるなら、砂糖を入れてレモネードにしてしまえばいい”っていう話で、”どんなに逆境にあっても、工夫次第で乗り越えられる”っていう意味があって、いい諺だなと思ってタイトルにしたんです。そこに収録した「Lovely Time」っていう曲が、”レモンのような苦酸っぱいしんどいことがある毎日でも、あなたはお砂糖をくれる存在だった”っていうラブソングなんですけど、そこからこのアルバムのタイトルに繋がっていて。そこからTomoyaが”『Make Lemon Sour』っていうEPを作ろう”って言ってくれたんです。
Tomoya.S:『Make Lemonade』の諺を受けての発想として、レモネードにすることができるなら、例えばレモンサワーにすることだってできるじゃないか、みたいな。もう一歩別のアイデアに踏み出したくて。その意味合いを込めた「Lemon Sour」という曲を作って、タイトルも『Make Lemon Sour』EPにして、前作のスピンオフ作品的な形で補完するような。バージョンアップじゃないですけど、これが入ってアルバムが本当の意味で完成する、そういう位置づけのEPになりました。
― なるほどですね。今作も一貫したHeavenstamp節的なメロディや質感は変わらずですが、最近の作品になるにつれてどんどんアレンジやサウンド感がすっきり研ぎ澄まされていっているような印象を受けました。
Tomoya:表現したいことが明確になってきた分、骨組みだけでも成立するようになってきたような感覚はあります。昔の曲に対してネガティブな意味で言うわけじゃないですけど、ごまかしが必要なくなってきているような感覚というか、むしろ音数が少ない方が、ブレがなくなる部分があったりするので、隙間を生かすようなアレンジは得意になってきているのかもしれません。
― 勝手なイメージですけど、そうなるとどんどん音楽的に深い方へ突き進んでいってしまうようなことがあると思うんですけど、しっかりキャッチーなところに落とし込めてるのが素晴らしいですよね。
Tomoya:それ結構言ってもらえるんですよね!バンドを長く続けていると、凝ったことをやりたくなったり、自己満足な方向に行ってしまったり、複雑で分かりにくい音楽をやりたくなってしまう可能性もある中で、”HeavenstampはずっとPOPだね”って言ってくれる方が多くて。それはたぶん、僕ら自身の好きな音楽が変わっていなかったりすることが理由なのかなと思っています。
― 収録曲についても聞かせてください! M-1「解放」はオープニングにふさわしい世界観とリフレインするギターリフが印象的ですね。
Tomoya:いつも制作に入るときに、何かしら役割を持たせて制作に入ることがあるんですけど、まさにこれは、2025年のライブで1曲目に演奏するようなタイプの曲を作ろうと思って制作に入ったんです。それに加えて、前作で意外とシューゲーザーアプローチみたいな曲がなかったんですけど、今回のEPにはギターがちゃんとやかましい曲入れたいなっていう思いがありまして。その二つが合わさって、ギターがしっかりやかましくて、かつ1曲目から躍動感がある強い曲に仕上がったと思っています。
― M-2「北極星」これ名曲ですね、、、たくさんの人に届くべき曲だと思いました!
Tomoya:その反応嬉しいです!これって本当にシンプルな曲でギターソロすらないですし、淡々と進んでいくので、わかってくれる人にしかわからない可能性もあると思っていて。楽曲そのものでしか勝負していないので、そういう反応はありがたいですね。
― 歌詞が身近な世界観で描かれているから、スッと入ってくるんですよね。
Tomoya:僕もSallyから歌詞が上がってきた瞬間に”これだよ、、、!”って(笑)もうちょっとこうしたいとか何もなくて、“これこれ!こういうの書いて欲しかったんだよ!”って思える歌詞を書いてくれたんです。
Sally:歌詞を書くにあたって、曲に引っ張られるところは大いにあると思うんですけど、初めて聴いた段階から本当にシンプルにいい曲だったので、それを伝えるにはやっぱり身近なものや言葉の方が聴いた方にもすっと入ってくるんじゃないかなと思って、この世界観の歌詞ができました。
― M-3「Lemon Sour」は先ほどもありましたが、今作の要とも言える楽曲ですね。
Tomoya: 1stアルバムにもこういう構成で同じような手法を取ってる曲があったりするので、セルフオマージュじゃないですけど、”Heavenstampっぽいことをやってるよ!”っていうアプローチの意味合いも含めた楽曲ですね。
― ベースソロがめちゃくちゃかっこいいなと。
Sally:この編成になってベースを弾くようになってから3年経ったんですけど、ずっと猛練習してます(笑)この曲でTomoyaから「ベースソロ弾いてね」って言われて、「・・・わかりました!」みたいな(笑)
Tomoya:やっぱりこの曲はファンクの曲なんで、好きな人だったらきっと”あっ”てなると思うんですけど、Nile Rodgersになりきって僕は弾いたので、ギターソロなんて弾くわけがないっていう(笑)
Sally:私もそれを聞いて、CHICだったらベースソロですよねもちろん、ってなりました(笑)
― コーラスワークなどからも、ライブの雰囲気を強く感じられる楽曲だと思いました。
Sally:掛け合いだったり被せのところだったり、理想は一緒に声を出してくれたら最高です!
― M-4「Underwater」は、個人的には今作の中でも一番Heavenstampらしい楽曲に感じました。
Sally:この曲は、私がHeavenstamp活動史上初めて作詞作曲した曲なんです。
Tomoya:作詞だけだったり共作ていうのは今までもあったんですけど、全てSallyは初めてなんですよね。
Sally:ベースを弾くようになってフレーズが浮かぶことがあったので、それを録音しておいたりしていたんですけど、このEP制作のタイミングで「ちょっと曲作ってみたんだけど聴いてもらえる?」っていう感じでTomoyaに聴いてもらったら「いいじゃないこれ!」って言ってくれたので、EPに入れることになりました。
Tomoya:僕はこの曲がこのEPのリード曲だと思ってます!
Sally:とても嬉しいですし、Heavenstampらしいと言っていただけたのも、ちゃんとHeavenstampできてたんだなって嬉しいですね。コーラスワークなんかもたくさん考えて、結構時間をかけてレコーディングさせてもらいました。
Tomoya:アレンジ面でもSallyの想像を形にするっていうのは初めての試みでしたし、ベーシストになって、ベースのリフから1曲作ったっていう、バンドとしてもターニングポイントになる曲かもしれないですね。
― M-5「Lost」は淡々と進行するビートとピアノメインのアレンジが今作の中でも際立ってますね。
Tomoya:これはギターを一切入れないっていう、これまでの活動でも初めての挑戦をした曲ですね。
― 亡くなった方へ向けた歌詞のように感じました。
Sally:まさに、この数年で親戚が立て続けに亡くなったのもあって、死について考えることが多くて。人が生きて死ぬって何だろうって考えて、人生で何か大きなことを成し遂げるのも素晴らしいことだと思うんですけど、もしもそうでなかったとしても「その人が生きた」ということが私の中に残っていて。私は音楽をやっているからですけど、その想いをこうやって歌にして残すことができて、音楽っていいなって改めて思ったんです。きっと誰でも、今はいない大切な人と過ごした思い出や面影を、思い出す瞬間は必ずあると思うので、そういう気持ちに寄り添える曲になればと思って歌詞を書きました。
― M-6. 「Morning glow -Acoustic-」は2011年に出した1stフルアルバムに収録されていた楽曲のアコースティックバージョンですね。なぜこのタイミングで収録となったんでしょうか?
Tomoya:昨年中国にアコースティックツアーに行ったんですけど、アコースティックでどれだけ飽きずに楽しんでもらえるか、みたいな試行錯誤したツアーを回ってきた上で出すEPだったのもあって、その名残としてアコースティック色を今作にも入れたくて収録することになりました。
― アコースティックはどんな編成でやってるんですか?
Tomoya:僕はバスドラムを踏みながらギターを弾いたり、ピアノを弾いてSallyさんにギターを弾いてもらったり、はたまた別の曲ではSallyさんは鍵盤ハーモニカを吹いたり、、、本当はアコギ1本と歌だけで飽きさせないというのがアコースティックライブの究極系なのかもしれないですけど、僕たちはそこで勝負せずにいろいろ見せようっていうスタンスに切り替えてやりました。
― 中国での反応はいかがでしたか?
Tomoya:僕たちも中国にそんなにファンがいるって知らなかったんですけど、向こうのイベンターの方から「こっち(中国)で人気あるのでツアーをやりませんか」って言われて、行ってみたら、本当にちゃんと都市ごとにファンがたくさんいてくれて、嬉しかったですね。
Sally:みんな思い思いに声を出したり踊ったり、楽しんでもらえていたのが伝わってきて最高でした。
― 6月に全13都市の中国ツアーが決定していると伺いました。今回はバンド編成ですか?
Tomoya:今年はドラマーを含めたトリオの編成と、会場によっては昨年のツアーでオープニングバンドをやってくれた上海のバンドのキーボーディストの方が弾いてくれることになっています。
― そちらも楽しみですね。国内では5/9に渋谷LUSHにてリリースパーティー開催が発表されています!この日はどんな日になりそうでしょうか?
Tomoya: リリースパーティーなので、このEPの曲を生演奏で体感してもらう機会なので楽しみにしていて欲しいです。Sallyがベースボーカルとして活動するようになって、アルバムとEPが出てっていう一連の流れの一つの完成系を見せられるんじゃないかなって思ってます。
― 改めて今作『Make Lemon Sour』はどんな作品になりましたか?
Tomoya:賑やかさとか目まぐるしいアレンジとかキメとか本当に全然ないんですけど、その曲の持つグルーヴとメロディと歌詞、そしてサウンドそのもので勝負できた感覚です。余計なことが全くされていない状態で良いものを作り上げられたと思うので、この音楽そのものが刺激的なんだってことを、同じように感じ取ってくれたら嬉しいですね。
Sally:”HeavenstampっぽくないけどこんなPOPな曲あったんだ”とか、”これこそHeavenstampだよね!”とか、こんな一面もあるんだ!”でもいいんですけど、私達がこれまでやってきたことも新しい側面も、1曲1曲にそれぞれの表情があるので、聴いてくださった方がお気に入りの曲を探す気分で聴いていただけたら嬉しいです。
― 最後に読者のみなさんにメッセージをお願いします!
Sally:私たちなりのグッドメロディーを追求した、このEPのリリースを記念して、5月9日に渋谷LUSHでリリースパーティを行います!ぜひその場で一緒に、いつも来てくれるみなさんはもちろん、Heavenstampをあんまり聴いたことがないなっていう人も絶対楽しめるライブにしたいと思うので、遊びに来てくれたら嬉しいです!