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高橋優 interview
- SPECIAL -

高橋優 interview

「間違いなくどの感情も、濃厚になっていってると思います」
今思ったことを今歌う、時の代弁者「高橋優」。その時その声から発せられる想いは様々だ。衝撃的な初期衝動ソングで、現代日本に噛み付き始まったメジャーシーンでの活躍、待望のファーストフルアルバムリリース。その後も彼は活動ペースを落とすことなく、数々のシングルをリリース。3/11の悲劇から立ち上がる人々の背中を押すような、希望を描いた前作「卒業」は、ヒットが難しいと言われている今日の男性シンガーソングライターアーティストとしては異例の、オリコンTOP10入りを果たした。ライブでも多くの地へ出向き、歌を通してその想いをファンに届け続けている。

text:鞘師至

故郷の北の地を離れ、夢を叶え、また次の夢を作るべく単身乗り込んだ東京での多忙な音楽生活。彼を取り巻く環境の変化は、もちろん本人にたくさんの影響を与える。その経験値の波に淘汰されて、想いが濃厚になっている、というのが彼の感じている、こころの変化のようだ。
いちサウンド面に着目すれば、デビュー当時と比べて前作「卒業」までの2011年に発表された作品は、ピースフルなものが多い。ファンの中には、「衝動的で剥き出しの感情を歌っていた人間がそうじゃなくなった」と、その変化を嘆くような人もいた。が、今回発売となるセカンドフルアルバム「この声」、イントロとなる1トラック目の鳴り始めから、アルバム冒頭曲「蛍」への流れで確信する「やはりやってくれた高橋優」感。 「リアルタイム•シンガーソングライターっていうファーストアルバムを出した時よりも、たぶん5倍ぐらいの濃度になってると思うんです。」 と本人が言うように、怒りの歌、愛の歌、日常を綴った自分を描写する歌、歌詞からメロディーから、バンドアレンジまで、実に多彩な感情を、よりディープに音に落とし込み編成されている。彼の感受性は今、ただの初期の衝動ではなく、より鋭利でいて、どっしりと深い。
「僕自身そんなに暗いことばっかり思ってる人間でもなくて、友達と一緒に居たら笑ってるし、ワイワイ騒ぐのも好きだし、寂しいときもあれば満たされてるときもあるっていうところで言うと、そのどっちも曲に反映させることが自分を全部ぶつけることだと思ったんですね。暗い方ばっかり見せるのも逆に上辺になっちゃうと思ったんですよ。 小手先だけの、暗い人間演出みたいな。だからその全部トータルで高橋優だっていうのをもっと見てもらえるようなものを作りたいって思ったときに、今回出させてもらうセカンドアルバム「この声」っていうのはファーストアルバムよりも尚、それが出来た、いろんなバラエティに富んだ高橋優が詰め込めた作品なんじゃないかなって思ってます。」
3/14に発売する今作、それぞれの感情の色味を、アルバム全13曲を通して、それこそ過去作品の「こどものうた」的な毒も、「福笑い」的なやさしさも、まぜこぜにして表現しているが、全曲に一貫して感じるのは、「なんかスカッとする感じ」。それは僕らリスナーが普段の生活の中では、声に出したり、記憶に残ったりするところまで、つまり表現するところまでいかずに消えてしまう、「ひそかな気持ち」を切り取って、今住むこの世界を少しだけ違う角度から見せてくれる特別感から来るのだろう。
「今の日本もそうだと思うんですよね。なんか閉塞的な世の中で、今や絶望の淵に立たされたよ日本、みたいな。そうやってタイトル付けちゃえば、そういう風に見えてきてしまう。」
切り取った一部分の感情へのフォーカスの仕方、その世界の見せ方。ひたすら自分の為に歌っていた学生時代は暗い歌ばかりだったそうだが、自分の歌を聴いてくれる人達と共鳴する心地よさを感じ始めてからは、こういった表現方法の工夫をし始め、自分を形成する怒り以外の想いも、納得するかたちで歌にできるようになったそうだ。
「最初にミュージシャンになることを決意した大学3年生から、自分が出そうとしている表現の根本は変わっていないと思うんです。 “本当の自分を出す、本当の自分で居る”っていう軸はその当時からブレていないんですよ。」
デビューから2年経たずの今年5月からは、早くも全国9カ所でのホールワンマンツアーが始まる。変わらぬ軸と、より磨かれた感性で作り上げたセカンドアルバムを引っさげて各地を回る彼は、この先、どんな夢を新たに描くのだろう。
高橋優の目は、まっすぐだ。
インタビューの間、度々合う目線は言葉と連動して、迷いなくまっすぐこちらを向く。「自分への孤独感とか、寂しさみたいなものは昔以上に感じています」と、未だに自分とは何たるかを探し求めながら生きていることにも、正面から向き合っているが故の心の強さ。意思が宿る彼の目力は、非常に心地のいい説得力を持っていた。
「自分が出したいと思った曲と、自分がやりたいって思ってる雰囲気っていうことを絶対大事にしていきたいし、だから仮にこれから変なビックリするような曲出したとしても、聴きたいって思う人がそこに居れば、歌を続けていきたいなっていう想いだけがあります。」