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小林太郎 interview
- SPECIAL -

小林太郎 interview

24歳で早くも活動6周年に突入する”小林太郎”。 若きロックの天才の”ロック”と”エレクトロ”の融合は、徹底的に極められた”新たなロック”を生み出す。

Interview & Text : 森村 俊夫

―早くも今年で活動6周年という事ですが、5周年でもあった2014年はどんな一年だったでしょうか。

小林太郎(以下、小林):2014年は音楽以外の遊びもいろいろとした1年でした。前作の『IGNITE』をリリースしてから1年が経ちますが、その間に車やバイクの免許を取ったり、旅行だったり、ドライブだったりと今までにしなかった事をした1年でした。

-そんな5周年という節目を終えて、6年目にリリースされる今作『DOWNBEAT』には新たな挑戦をひしひしと感じます。”小林太郎”と言えば、厚みのあるロックサウンド・疾走感のあるギター・ダイナミックなボーカル等をイメージしますが、今作では新たにエレクトロな要素を取り入れてきた印象があります。

小林:もう、6年目なんですね。今作をリリースする中で、髪を切ったり、服装を変えたりといろいろと今回挑戦しています。サウンドに関しても新たな要素を入れていこうというところで、エレクトロな部分を取り入れました。形になるまでは、もっとガラッと変わるかと思っていましたが、意外と馴染みましたね。

-今までの”小林太郎”の良さをそのままに、更に新たな要素が融合して、 “小林太郎”の音楽を更に追求したような相乗効果を生んでいる印象もあります。
そんな今作に関しても聞かせて頂ければと思いますが、今作のタイトル『DOWNBEAT』には、小節の1拍目であったり、音楽のジャンルであったりと音楽的な様々な意味を持つ言葉ですが、このタイトルを付けた意図はありますでしょうか。

小林:”バックビート”(ビートルズ初期メンバー”スチュアート・サトクリフ”の生涯を描いた映画)という映画からのインスピレーションで付けました。”バックビート”というのはポップスでも使われる2拍目4拍目のアクセントの事で、対して”ダウンビート”はポップスではあまり強調される事はなく、クラブミュージックやダンスミュージックで強調されるものなのですが、そういった要素が今作には取り入れられていると思います。

-M1「Show me」は和訳では”見せて”という意味がありますが、上手くいかない人間関係を歌う詞の中に”Show me”という言葉が強く抜けてくる印象があります。

小林:今作では今までになく英語詞を多く取り入れています。音をダンスビート寄りにしていく中で、歌詞の意味合いよりも聴こえ方を意識して制作しました。”本当の自分を見せて欲しい”という気持ちを込めています。普段、曲と歌詞は同時に生まれる事が多いのですが、今作に関してはほとんど曲からつくっていきました。このフレーズに関しては、一度日本詞も付けてみましたが、音と合わさる事を考えた時に英詞の方がはまりが良いなと思ったので英詞にしました。感覚的に音も言葉も聴いてもらえたらと思っています。

-この曲の始まりでもあり、今作の始まりでもある、冒頭のギターから始まるイントロは、リスナーを焦らすかのようなリフから入ります。

小林:今まではいきなり盛り上げる様なイントロから始まる楽曲を多く作ってきましたが、この楽曲では徐々に上がっていく、始まりを感じるリフを取り入れる事ができたと思います。

-何度も繰り返すリフの中で、曲の後半に向けてどんどんサウンドの作り方を変えていたりと、中毒性を感じる楽曲に感じました。サウンドメイクで意識した事はありますか。

小林:ドラムのパーカッションやキックの部分を強調しつつ、ギターや歌を少し抑えてつくりました。ライブサウンドというものは短時間の中で大きな盛り上がりをつくるものですが、クラブミュージックというものは何時間も朝までずっと楽しめるものだと思っていて、そういったサウンドを意識して制作しました。

-M2「Damn」は、地獄に落とす。”クソッ”みたいな意味がありますが、歌詞の中では自由を奪われて、ちゃんと気持ちを履き出せないでいるようなもどかしさを感じますが、どういった楽曲でしょうか。

小林:不満や不安を歌詞に書き上げていったんです。今までにも同じ様なテーマの楽曲をつくった事はあったのですが、同じ事でも言い回しを変えていたりと、今までにできなかった表現方法ができている楽曲かと思います。

-4つ打ちのリズムを取り入れて、疾走感を生み出しつつも、高音のシンセサイザーの音を多用していたりと、サウンド全体が軽くならない様に厚みを持たせている印象があります。

小林:サビは4つ打ちのリズムを取り入れて、軽快なイメージにしつつも、イントロは激しいロックサウンドで構成して、軽くなり過ぎないように意識して制作しました。エレクトロに寄り切らず、今までやってきているロックサウンドも取り入れる事ができているこの楽曲は、このアルバムを体現する楽曲になったのではないかと思います。今までもエレクトロなシンセサイザーの音は取り入れてきてはいたのですが、今作プロデューサーの方と共に制作を進めていった中で、このように取り入れたのは初めてでした。

-先日公開になったMVは、演奏シーンもありながらもシュチュエーションが銭湯の男湯でという全く別のストーリーがMVの中で進行していて、とてもコミカルかつ面白いつくりになっていますね。

小林:今までMVは僕の演奏シーンをメインで構成していたのですが、今作は新たな事にいろいろ挑戦していこうという中で、監督さんと内容を考えていった中でこのような作品になりました。

-この楽曲からは全く想像もつかない作品ですね。

小林:俳優の山田親太郎さんと菅登未男さんに出演頂いたんですが、目の前でプロの収録現場を目撃できたのもとても刺激になりました。アーティストがステージ上では変わる様に、役者さんのカメラが回った時の目の変化はとてもカッコ良かったです。

-M3「miscommunication」にも、エレクトロな要素が取り入れられていますね。

小林:「Damn」にはいろんな音をシンセサイザーで取り入れて贅沢につくっていったのですが、「miscommunication」ではバンドの4人の音を大事にして作っていきました。バンドの音もガッチリとエディットはせずにそのままの音を残して、アナログ感みたいなものとエレクトロな要素との融合を意識して、バンドらしい踊れるナンバーになったかと思います。歌詞も、言葉遊びかの様な今までにない歌い回しで、とても歌っていて気持ちの良い楽曲になりました。

-「miscommunication」には伝達不良などの意味がありますが、対して歌詞はストレートな表現も多いですね。

小林:この楽曲ができた時に、友人に”すごく面倒臭い女に振り回されているね”って心配されました。歌詞にそのような言葉は出ては来ないのですが、面倒臭い関係に対するストレスを表現できた楽曲だなと思います。

-M4「electronica」は今作の新たな要素を際立たせる楽曲になっているかと思います。

小林:これまでの作品の中にも毎回インストの楽曲を1曲収録していて、このインストの楽曲に関してはスタジオでレコーディングせず、いつも全て1人で自分の家で制作しています。その時、その時の作品に寄せて作っている訳ではなかったんですが、アルバムを制作している時と同時に作っている事もあって、聴くだけでアルバム全体の流れが見える楽曲になっていて、今作でもそういった楽曲になったかと思います。毎回インストの楽曲をSEとして使っていて、これからはライブ前にそれを感じながら聴いてもらえると嬉しいです。

-M5「Yo-Ho」のタイトルにはどういった意味があるのでしょうか?

小林:”パイレーツ・オブ・カリビアン”に出てくる台詞から取りました。ダルっとしていて、アウトローな感じが楽曲のイメージとも合っているところからこのタイトルにしました。「Show me」と同じく、繰り返しの要素を取り入れている楽曲ですが、この楽曲はドラムとベースで作られているダンスビートを聴いて欲しいですね。

-ドラムとベースで楽曲の芯を支えながら、シンセサイザーとギターで遊んでいる部分がとても際立つ楽曲だと感じました。

小林:実は今作のギターは自分では弾かず、ほとんど自分以外の人に弾いて頂いています。自分以外の人が弾く事によって、自分以外の要素が楽曲に取り込まれるのを感じてみたくて。
この楽曲は、今作の中でもギター等のサウンドが軽く聴こえる楽曲で、良い意味でヘッポコなギターのサウンドも入っているのですが、”できる限りヘタクソに弾いて下さい。”なんて注文をしたりしました。
そういった浮遊したサウンドが、遊びの要素になっているとても面白い楽曲ができたと思います。

-M6「opposite」は2つの正反対のものの向こう側を差す言葉ですよね。

小林:電車に乗っていた時に、”反対側の(opposite side)ドアが開きます”という言葉が目に付いたところからこのタイトルを付けました。

-とても反発心を感じる楽曲に感じました。

小林:早いBPMの中で、シンセのサウンドを取り入れたロックで踊れる楽曲を体現したいなという所からこの楽曲を制作しました。”向こう側に行きたい”という歌詞はないですが、自分の行きたい所にもすぐに行ける様な勢いがあって、とても好きな曲です。この曲は年末の”COUNTDOWN JAPAN”でも演奏しましたが、制作時にライブで演奏する事を想定してつくっていなくて、少し苦労しましたね。激しくも、とても楽しい楽曲です。

-M7「utsumi」は更に言葉は鋭角で、強い言葉を使いながらも、サウンド的には今作の中では一番優しさがあるといいますか、むしろどこか悲しさも感じました。

小林:始めは「opposite」のようなロックな楽曲だったんですが、アレンジを進めていく中で、コード感がすごく綺麗に出てくる楽曲になりました。激しさの中にピアノのサウンドを入れていたりと、新しい事にも挑戦していますが、もしかしたら一番今まで楽曲の要素を汲んでいる楽曲かも知れません。

-作品の中身に関して聞かせて頂きましたが、そんな今作『DOWNBEAT』を通して、リスナーに伝えたい事はありますでしょうか。

小林:今作の制作を始めた頃は、もっと軽いダンスビートになると思っていたのですが、いざ完成してみたら全然ロックで、ロックとダンスビートが融合して相乗効果を生んだ作品ができたと思うので、楽しみにしていて欲しいです。更に、ライブではその要素がガラッと変わるのでは無いかなと思います。この楽曲をメインでライブを作っていった時にどんなライブになるのかっていうのは僕も楽しみですし、聴いてくれている人も楽しんでもらえたらと思います。何も考えなくても、音だけでも楽しめる作品になっていると思うので、是非聴いて楽しんでもらいたいです。
“eggman”は本当に思い出のあるライブハウスで何度も出演させて頂いていますし、また”eggman”にも出たいですね。そんな”eggman”が作る冊子で初めて僕を知ってくれた方は、もう僕のライブにくるしかないです。まずは、是非アルバムを聴いて下さい。

-ありがとうございました。また”eggman”での出演もお待ちしております!