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桐嶋ノドカ interview
- SPECIAL -

桐嶋ノドカ interview

デビュー前にも関わらずドラマの主題歌に抜擢され、無料配信されたデモ音源じゃ1ヵ月で2000ダウンロードされるなど各所で話題になっていた、シンガーソングライター【桐嶋ノドカ】が遂にデビュー!!
デビュー前からライブを重ねてきたライブハウスeggmanのフリーペーパーだからこそ聞くことができた彼女のロングインタビューは必見です。
この子、今の音楽業界変えてしまうかもしれませんよ。

Interview & Text : ブッキングマネージャー窪田

-ついにデビューですね。eggmanで初めてライブを観てからもう2年近くが経っています。懐かしいですね。

桐嶋ノドカ(以下 桐):右も左もライブについて全くわからない時からのお付き合いですもんね。しかもこのフリーペーパーでの連載も長くやらせていただいていて。私にとってeggmanは本当に卵から成長させてもらった場所です。少しは殻を破れたかなと。

-最初の頃相当ビクビクしてた印象です(笑)。

桐:そうですよね(笑)。eggmanには思い出もたくさんありますし、今回のインタビュー本当に嬉しいです。

-そんな頃から携わらせてもらっている桐嶋さんがデビューということで僕としても本当に嬉しいです。しかも裏表紙ですからね。では早速ですが今回のインタビューで桐嶋さんを知る方もいると思いますので、まずは桐嶋さんの今に至るまで聞いていきたいと思います。音楽を始めたきっかけは?

桐:姉の影響で、幼稚園の時に音楽教室に通っていて、そこはエレクトーンをメインに歌も習う場所だったんですけど、歌のほうばかりに集中していたみたいで(笑)。その時から私は歌が好きだったみたいですね。練習は好きではなかったんですけど、歌を歌うことって楽しいなって思ったのを覚えています。

-歌手になりたいと思ったのはどのタイミングですか?

桐:高校生になってからですね。中学生の頃から聖歌隊と合唱部に所属していて歌は常に一緒に共存していたので、歌は自分の中で欠かせない物なんだなという意識はありましたが、みんなが進路とかの話をしているときに私は歌を仕事にしたいなと思い、音楽大学に進学しました。

-作詞作曲はいつから始めたのですか?

桐:大学に入ってからですね。オーディションを受けたりするときに自分でのオリジナル楽曲でいきたいなというところがスタートでした。そのデモを今のプロデューサーの小林武史さんに聞いていただけて、そこから本格的になっていった感じですね。

-作詞作曲の方法を教えてください。

桐:作るぞって決めたタイミングで集中して作業します。ただ、日々生きている中でなにかしらで感情が大きく動いたときには歌詞とかメロディが思い浮かぶこともあるので、それらを普段から書き留めてはいます。

-そしてついにメジャーデビューをつかみ取ったわけですが今のお気持ちを聞かせてもらえますか?

桐:まだ少し実感が薄い部分があるのかなとは思いますが今は意外にフラットな自分がいますね。CDが出せるんだなって思ってます(笑)。やっとって感覚もありますかね。

-小林さんと出会ってから今までの準備期間は振り返ってみると長かったですか?

桐:長かったかなとは思います。大学在学中に小林さんに出会って、今考えると私はすごく変わったと思いますね。音楽の面でも自分自身の内面でも。大人になりました(笑)。年齢を重ねたというのはもちろんあるんですが、色々な人に出会って色々な出来事を体験したからだと思います。

-デビューするまでに焦りなどはなかったですか?

桐:私意外とのんびり屋なんですよね。

-全く意外ではないですね(笑)。イメージ通りです(笑)。

~一同爆笑~

桐:それなら安心しました(笑)。そんな性格だからかあまり焦りとかなかったんですよね。今回CDを出せることは本当に嬉しいですし、音楽を仕事にすることとCDを出すことはリンクはしているとは思いますが、仕事である以前に歌は私の生活の一部として存在していて、私自身の人生という物の中には必ず歌があるので、特別焦ったりはなくのんびりと歌と共存していました。

-そんな桐嶋さんがリリースする今作、『round voice』ですがまずはアルバムタイトルの由来から聞いていきたいです。

桐:私もタイトルを色々と考えていたのですがしっくりくるものが思い浮かばなくて、小林さんに相談したところ、このタイトルを考えてくださったんです。私の声のことを表現した言葉ということで付けてくださったんですが、最初は正直、デビューなのになんだかフワッとしたタイトルだなと思って、もっとセンセーショナルな感じや、収録曲の中での曲名がアルバム名になるのかななんて思っていたんですけど、さきほどお話した、のんびり屋な部分だったり、飾り気のない(飾る気の無い)スタンスも含めて丸い声ということで私のデビューCDのタイトルにはピッタリなのかなって今は思いますね

-僕も桐嶋さんに対して声はもちろんですが、雰囲気や人間性も含めて丸みがあるイメージが強いのですごくピッタリだなと感じました。

桐:私だなとすごく思いますね。roundって言葉を調べると朗々と響くというような意味もあって、大きな意味で捉えるとなんだか地球のようなイメージを持ったんですよね。ただの丸じゃなくて広がりと温かみのある丸というか。

-まさにピッタリじゃないですか。広がりと温かみのある丸は桐嶋さんそのものですよ。ではそんな1枚に収録されている楽曲について1曲ずつ聞いていきたいと思います。1曲目は「風」。この曲は最近出来た曲ですよね?デビューに向かう強い決意が表れた曲なのかなと感じました。

桐:おっしゃる通り一番最近できた曲ですね。デビューが決まって、デビュー曲を制作することになったんですが、すごく苦労して、すごく悩んで、すごく時間がかかったんです。年末から制作していたんですが、MVの撮影直前まで曲も歌詞も未完成で、、、

-デビュー曲だから桐嶋さんにとって本当に大事な1曲になるわけですもんね。

桐:今までの人生で初めて、人前で歌を歌うことや曲を作ることに対して恐怖を覚えたんですよね。デビューというプレッシャーもあったんでしょうね。

-歌と共に生きてきたという桐嶋さんにとって相当大きな出来事ですよね。

桐:まさかデビューする直前にこんなことになるとは思っていなくて。でも結局そういった不安や絶望って悩んでも答えは出ないし、大人になっていくにつれ終わりがあることだったりと100%絶対ということはないんだとか、いろいろな感情がうごめいて、苦しんだんですけど、最終的には今をしっかり生きていること以外は前に進む方法ってないんだなと思うようになって書くことができた曲ですね。

-「風」というキーワードはどのタイミングで思い浮かんだんですか?

桐:デビューに向けて色々な人や出来事が動いていく様子が風がみたいだなと思えたんです。嵐のような風の中、私は歌うことに怖がってポツンと一人いるみたいな。そんなイメージが湧いたんです。その風の中を自分の芯を持って突き進んでいくことも必要だし、自分自身で風を起こしていっていろいろな物を巻き込んでいかなければいけないなと思ってこのタイトルにしました。この曲が出来上がって改めて歌と向き合うことができたし、すごくパワーが溢れる新しい私の世界観を構成することができたかなと思います。

-そこに辿り着くきっかけはあったんですか?

桐:すごく悩んでいる時期に井上うにさんと出会ったのは相当大きな出来事ですね。今までの私を良い意味で壊してくれました。そしたら新しい私に出会うことができたという感覚ですね。

-そんな1曲でスタートするこの1枚ですが続いては「キミのいない世界」。これはeggmanでの初ライブからやっていますよね?

桐:そうですね。3年前くらいには出来ていたと思います。

-別れの歌ですが桐嶋さんの温かい歌声の影響か、決してしんみりしないし強さを感じる部分もあるけど、でも弱さもあるし、強さと弱さが混在しているイメージです。

桐:女の人が自分で別れを決めて自分で別れを告げて、という時の気持ちを歌った曲で、ただの失恋ではなくて決別という感じのイメージですね。自分で決めて自分でなにかを手放す時って、それまでは自分の決断はこれで合ってるはずだ!って信じて強い気持ちを持っていられるのに手放した瞬間ってすごく不安になるんだけど、でもその手前の強い気持ちは否定できなくてちょっと強がるみたいな。きっと女性はこんな気持ちで上書き保存していくのかなって思いますね。

-そして3曲目の「ボーダーライン」に続いていくわけですがこの曲も「キミのいない世界」同様当初からライブでやっていて印象に残っています。これもニュアンスは違いますが、1曲目の「風」同様決意の歌ですよね。

桐:小林さんと出会う前の私はただ淡々と大学に通っていて、音大だったから周りに音楽はありふれていたし、みんななにかしら音楽活動をしているという環境だったので、なんかぬるま湯に浸かっている感覚というか、日常に流されてしまいそうで、これじゃいけないなと思っていたんです。その頃に小林さんと出会って、そこが一つのターニングポイントになっていて当時の私の目線での決意は表れていますね。「風」に比べるとやはり幼いですけど(笑)。

-確かに少し幼い世界観ですね。ただ、非常にシンプルなメッセージソングで分かりやすいと思います。そしてこの曲のラストの部分、テンポが変わるところにメッセージが集約されていると感じました。

桐:小林さんと相談して出来上がった部分で、ここの部分でグッと集約してこの曲が終わっていくので気に入っています。

-僕もこの部分非常に好きです。そしてデビュー前にも関わらずドラマの主題歌に抜擢されて、桐嶋さんの名前が最初に世の中に広まるきっかけとなった「Wahの歌」が4曲目ですね。まずタイトルになっているWahについてお聞きしたいです。

桐:サビのメロディが一番最初にあって、大学卒業が近いのタイミングだったので、私なりの卒業ソングをそのサビのメロディを基に曲を作っていこうとなった時に小林さんからの発案があったんですよね。声にならない声というか、普段心の中に溜めている様々な感情をWahという言葉にして歌にしようということになって制作が進みました。

-桐嶋さんはすごくおっとりしている印象ですが、しっかりと芯があって、様々なWahがありそうですね。ライブでこの曲を歌う桐嶋さんは開放的でこの曲に込められた真意を桐嶋ノドカという媒体を通してフロアに発信している印象がすごく強いです。

桐:私はすごく人見知りだし、人前で自分をさらけだすことが苦手だし、話すのも苦手だし、だからこそ歌を歌っているという部分が強くて、そういう意味でWahは自分の中にすごくあって、この曲をライブで歌っているときはすごく気持ち良いですね。普段自分が出せない自分が出せますし、歌っているときが一番私らしく生きているときだなって感じるので。ついつい笑顔になってしまうんですよね。歌って楽しいなって心から思います。この曲でそういったことが再認識できました。

-この曲ができてライブでやるようになったタイミングで、桐嶋さんのライブが変わったという印象があるんですよね。

桐:ライブを始めた頃は不安も多くて、どうしていいかわからないこともあって、でもこの曲で先ほどお話したように歌を歌うことの楽しさや感情を吐き出す気持ち良さを再認識できたので、桐嶋ノドカのライブにおけるターニングポイントになったと思います。

-そして最後に「世紀末のこども」に繋がっていくわけですが、これはSNSを表現したような歌詞があったり、現代というなんでもある時代に生きつつも、それに違和感を感じて客観視している桐嶋さんの思考なのかなと感じました。

桐:「キミのいない世界」や「ボーダーライン」と同じくらいの時期に出来た曲で、このタイトルにある世紀末のこどもって私たちの世代のことを指していて、携帯もインターネットも小さいころからあって、なんとなくみんな満たされているような雰囲気があると思うんです。これは私だけの感覚かもしれないのですが、満足すると同時になんか未来に希望を持てていないような雰囲気がある気がしていて、それってなんでもすぐに調べることができて、なんでもすぐに知ることができてしまう時代だからこそ夢を見にくくなってしまっているのかなって。

-その現代を生きる世代である桐嶋さんがこの歌を歌うというのがすごく興味深いですね。

桐:「夢」という言葉には、社会の厳しさみたいなものに対して腹を括り切れずに、目をつぶり続けようとする若者の現実逃避的な意味もあって。でもそれと同時にこんな時代でも無垢に夢を見たいし、明日を信じて生きていたい。って思いたいという私の葛藤がこの曲には込められています。

-この曲は幻想的だけど現実的で非常にバランスが面白いなと感じたのですが、そこはコンセプトとしてありましたか?

桐:私自身が物事をすごく客観的に見てしまう性格なんですが、夢見がちで、冷静に判断している部分もあるけど、実際に行動に移すとなると感情が優先されたりとか、自分の中でちぐはぐな部分があって、そんな私がこの曲には表れているかもしれないです。

-1枚を通じてレコーディングでのエピソードがあれば聞かせてください。

桐:「風」以外の曲はデモ制作などで以前から音源としてもある程度完成していた曲だったんですが、井上うにさんにレコーディングエンジニアを担当していただいて歌を録り直したんです。今までは自分で歌録りのディレクションしていたんですが、今回からはうにさんにディレクションをしていただいてそれがすごく新鮮でしたね。自分でのディレクションだと少しのミスで歌い直したり、周りの人が良いと言ってくれても自分で納得できていなかったらまた歌い直したりしていたのですが、うにさんのディレクションによってレコーディングで歌う回数が激減して(笑)。あとレコーディングを始めるときに、生き様をレコーディングで記していきたいか、それともかっちりとした作品作りでやりたいかどうかを聞かれて、それって具体的に言うと声の細かい揺らぎだったりとかを修正や歌い直しをするかしないかという部分なんですけど、私は前者を選んだんですね。だから今までのように私がディレクションだったら絶対修正したり録り直しているだろうなっていう部分だったりも活かしていて、すごく生に近い感じです。今まではレコーディングって作品作り!って感じだったのですが今回はすごくライブ感があって、楽しめました。CDってレコーディングしてから数カ月くらい経ってから発売するので、今の自分と比べたら過去の自分を記録した物なんですよね。だからこそ生き様をレコーディングして一つの記録としてCDにしたいなと思うようになりました。

-MV撮影は初体験だったと思いますが、どうでしたか?

桐:2月に撮ったんですが風が本当に強くて普段生活していたらこんな風の日は外でないようなくらい。もう寒いなんてものじゃなくて、体が身の危険を察知してたくさんの反応を示しているのを感じました。でもだからこそすごくリアリティがあって、この曲を書いたときの歌を続けて生きていくんだっていう覚悟を持ったギリギリ感というか、このMVを撮ったタイミングでまたこの曲に対しての理解が深まっていきました。歌を歌う=生きると思っている私の感情がこの映像になっています。

-デビューに向けての覚悟を持つための試練だったのかもしれないですね。

桐:なんとか乗り越えました(笑)。

-そんな桐嶋ノドカの今後の展望を聞かせてもらえますか?

桐:常に自分の人生に向き合いながら歌を歌っていきたいです。今回のCDで今までの自分とこれからの自分のスタートを記録することはできたかなと思っていて、大半の曲は2~3年前ほどに作った曲ということもあって、ファーストCDというよりはゼロCDという感覚もあって、そこにプラスで「風」という私の新たな道標となる曲が入って、ここから桐嶋ノドカというアーティストの人生が始まるというイメージなんです。歌こそが私が生きていると感じる一番の証明ですし、自分の限られた人生を燃やし切るということを歌を通してやっていきたいなと思っていて、その生き様を出来るだけ多くの人に見てもらえたら嬉しいなと思います。そしてそれを見てくれた方のなにかのパワーになれたら幸せです。