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Anly interview
- SPECIAL -

Anly interview

音楽性を育んだ地元、伊江島でのソングライティングから沖縄での路上ライブ活動、東京での初ライブからメジャーデビューと、すべての段階での経験、想いを歌に込めてしたためた今回リリースとなるフルアルバム「anly one」は、その遍歴の中で揺れ動いては咀嚼して進んでいくAnlyの人としての物語をそのまま反映したようなバイオグラフィー的作品。 一曲一曲ごとに込められた作曲当時の思い出を、経験を積んだ今の音楽的尺度で編曲して仕上げたり、憧れの音楽家との共作を実現させたり、アレンジメントは非常に多彩だが、軸にあるのはどれもまっすぐに前を向いて進んでいこうとする強い想いだ。 Anly唯一の、今だからこそかたちにできる音楽を多面性で聴かす表現豊かな今作は、いろいろな場面のいろいろな人たちの心に染み入る、ハイコンテクストな魅力を持っている。

Interview & Text : 鞘師 至

ー 先日のミュージックステーション(以下 “Mステ”)出演、反響凄かったですね。地元の伊江島では島内放送も流れたとか。

■Anly: そうなんです、ありがたい事に。 「MステにAnlyが出演します~」って防災無線で流れました(笑)。 あとは母が島内どこにいっても声かけられて凄かったんですって(笑)。 

ー デビュー前、沖縄で曲を書き始めてから遂に国民的TV番組出演まで来ましたね。

■Anly: 沖縄で曲を書き始めてから数えたら4年経ちました。 デビュー前にとにかく曲を50曲作ろうと頑張ってやってたのがもうとっても昔に思えますね。 

ー そして今作は遂にフルアルバムですね。

■Anly: そう、私憧れだったんですよ、フルアルバムを出すのが。 周りのアーティストの方々の話を聞いていてアルバムリリースとか、その後のアルバムリリースツアーとかの話が羨ましくて。 リリースは重ねてきましたけど、やっぱりこれまでのシングルとは違う感動がありますね。 そういう意味では思い入れが強い作品になると思ったので、ジャケットにも地元伊江島の風景をあしらったり、”私らしい”っていう事にこだわって作りました。

ー このジャケ、伊江島のイラストなんですね…フェリーに書かれた “IE” って頭文字でなく “伊江” って事ですか!

■Anly: そうなんです、本当に描いてあるフェリーが走ってるんですよ(笑)。 その他にも描かれてるのは全部伊江島にあるもので、このアルバムを通して伊江島の事を知ってもらえたり、私の事を深く知ってもらえる作品になったらいいな、と思って色々リクエストをして書いてもらいました。 こうやって出来上がると、嬉しくてしょうがないですね。 

ー 地元愛がとっても深いですね。

■Anly: 私が地元を想う気持ちもあるんですけど、それだけじゃなくて、地元の人たちが私の事を想ってくれるあたたかい気持ちが凄くて、島の人みんなが私の事を娘だと思ってくれてるみたいな感じなんです(笑)。 それくらい私にとって大切な人たちなので、私もその気持ちに恩返ししたいな、っていつも思っていて、今全国いろんな場所へ行けるようになって、その土地の新しい人たちと会う時には「伊江島出身です」って、言うようにしてるんです。 島の存在と名前を知っててくれる人が増えますように、って。 だからMステもそうでしたけど、今こんなに全国放送で島の名前を出してくれてるのが本当に嬉しいし、島の人も「嬉しかった!」って言ってます。 MVの伊江島の風景がテレビとかで流れるのもとってもいいですね、綺麗なところだし誇りに思えます。

ー フルアルバムリリース、「私、ミュージシャンやってます」って胸張って言える事実が増えた感じですか?

■Anly: あぁ、そういう気持ちの変化は、確かにこのアルバムに入ってる昔の曲~最近の曲を聴いていくとすごく感じます。 今は少しは肝が据わったのかな(笑)。 最初の曲「太陽に笑え」を聞くと沖縄でストリートライブやりながら「よし、私ミュージシャンになるぞ!」って決心した時の気持ちとか、風景とかが思い出されてくるんですよ、だから今回のアルバムでは絶対1曲目だな、って決めてました。 始まりの曲だから。 このアルバムを通して、1曲1曲でターニングポイントを迎えて来たなって思うんですよね。 それぞれに思い出があって。 

   

人としての転機、ミュージシャンとしての転機

ー 中でも大きなターニングポイントになった曲ってありますか?

■Anly: う~ん、やっぱり「カラノココロ」ですね。 この曲は作曲ですごく悩みながら作った曲で、私ってこの先こんなんでやっていけるのかな…って不安になったりもして苦しみながら作ったんですけど、その分出来上がった時の満足度とか、喜びも大きかったんですよね。

ー 最初の1フレーズにこだわった、って以前話してましたね。

■Anly: あそこだけで2ヶ月かかったんです…(笑)。 それが今では良い思い出になった!って笑って言えているのであの経験をくぐってきて良かったな、と思います。 あの曲がなかったら今の自分はないかもしれないですね。 これから先どんな音楽をやっていこう、っていう自分なりの音楽の輪郭がなんとなく見え始めたきっかけとなる曲でした。 

ー この曲は確かに楽曲の質が高いな、と。

■Anly: 沖縄にいた時の感覚と、東京に来てからの感覚の両方がちゃんと出せた曲なんだと思います。 今の私の感性ってことなんですかね。 何かひとつ大きい壁を抜けられた感じがありました。 それを経て、今度は私の音楽的な部分、これからどういう事をやっていったらいいか、どういう音楽を作っていったら私らしいものになるか、っていう具体的なイメージを持てるようになったきっかけの曲が、スキマスイッチさんと一緒に作った「この闇を照らす光のむこうに」です。 「カラノココロ」は人として強くなる事が出来た曲でしたが、この曲はアーティストとしての自分なりの道が見えた曲でした。 曲名通り、自分の事も光の方へ導いてくれた曲です。 

ー 「この闇を照らす光のむこうに」はパートによってAnlyさんらしさと、スキマスイッチさんらしさ、メロディーにどちらも感じられるのがすごいですね、この2組でないと絶対にできない曲に仕上がった感じがします。

■Anly: 本当にこのコラボは貴重な経験になりました。 実は「カラノココロ」の制作中、行き詰まった時にスキマスイッチさんの「ボクノート」を聴いて元気を出してたりしていたんですよ。 その前も地元で洋楽ばかり聴いていた時から、スキマスイッチさんはよく聴いていたり。 だからこのコラボのアイディアが上がった時、“私を導いてくれた声の主と今度はコラボをするのか…” と思ったらすごい作品が出来そう!ってわくわくしながらも緊張していたんですけど、お願いしたところ、快くOKを下さって。 本当に光栄でした。 制作し始めた時、データを送り合うんじゃなくて、一緒にスタジオに入って3人でメロディーのアイディアを出して行ったんです。 お互いのメロディーセンスが混じってるのはそうやって直接3人でしっかり一緒に作れたからだと思います。 短い1フレーズの中にも大橋さん発案の部分と、私発案の部分が細く混じってたりして、それを一緒に歌うのがすごくおもしろいんですよね。 例えば、「絶望 失望 どこまでも暗い」っていうフレーズ、これは絶望失望までが私、どこまでも暗いが大橋さんが考えたメロディーなんです。その後に続く「息を吸うのさえも」が私で、その後の「もう苦しくて」が大橋さん(笑)。 すごい細かいでしょ(笑)。 常田さんが弾いたピアノになんとなく私が鼻歌でメロディーを歌ってたら、大橋さんが「そのメロディーさ、最後の部分はこんなのどう?」って案を出してくれて「いいですね!」って意見が合って録音して、みたいな作業の繰り返しで進んでいきました。 作り上げた後の歌い方としては、デュエットソングじゃなくて、1曲としてコラボを表現したいっていうのがコンセプトとしてあったので、掛け合いを細く入れるんじゃなくて、1番のメインボーカルは私で、2番は大橋さん、というように分けていったんです。

ー ボーカルとして新鮮だったのが、Anlyさんがサビでコーラスに回った時の声質のハマり具合。 普段メインとしての声しか聴いてこなかったので、副旋律で主旋を支えた時にあんな風に響くんだ!って感動してしまいました。

■Anly: これまでの私の曲で言えば「太陽に笑え」とか「EMERGENCY」みたいな声を張る歌い方のボーカルと比べると、今回のそのコーラス部分の歌はどちらかというと、もっと素の私の歌い方に近い、実家で鼻歌で歌ってた時に近いような自然な歌い方なんです。 そのリラックスした感じの声がコーラスとしてハマったのかもしれませんね。 もう本当に語りだしたら止まらない位、こだわった部分とか、試行錯誤の結果に発見した事がたくさんあってとても楽しく作れた曲です。 まず最初にお会いした時に、デビューして1年しか経たない私に、”曲作りをする上ではキャリアとか年齢は関係なく対等な立場だから、遠慮せずに一緒に良いものを作っていこうよ” って言って下さったのがとっても嬉しくて、その言葉のお陰で最初から創作意欲がぶわっと出てきて、あまり触ったことのないピアノを触りながら作ったりとか、自由に伸び伸びとやらせて頂けました。 私、作曲中いきなりひらめいたフレーズを逃さないようにレコーダーをずっと回してるんですけど、今回の制作中のレコーダーを後で聴いてみたら、私けっこう遠慮せずズバズバ意見してました(笑)。 その時は気持ち的にスイッチ入ってるんで気づいてなかったんですけど(笑)。 それでもその私の抽象的な意見をちゃんとお二人は受け止めてくださっていて、それを実際の音に変換していく作業工程もそのレコーダーに録音されてて、後々聞き返してみて改めて感動しました。 今でも煮詰まった時なんかにはそれを聞いて “よし、がんばろ!” って思ったりしてます。

ー コラボとしては、以前にガブリエル・アプリンと、今回はスキマスイッチさんと。 憧れの人たちと既にコラボの夢叶えてますが、次にコラボできるとしたら誰としてみたいですか?

■Anly: 夢としてはエド・シーランとやりたいです。 曲を書きまくって、未完成の状態で送りまくって「こんなのどうですかね?」って、乗ってくるのを待とうかな(笑)。 彼は世界中を旅するのが好きだから、沖縄っぽい民族的なエッセンスも入れたりして、彼の興味を惹こうかな、と(笑)。 前に沖縄に来た事もあるんですよ。 美ら海水族館にも行ってたから、きっとその時伊江島も見てるはずなんです。 やっぱりコラボって勉強になる事が多くて楽しいですよね、アーティストってどういうふうに音楽と向き合うべきなのかとか、一緒に作業すると分かる事がたくさんあって凄く良い刺激になります。 スキマスイッチさんとのコラボも、将来私がもっと成長した時にまたご一緒できたらいいなぁ…今回と同じ “Anly + スキマスイッチ=” っていうアーティスト名で。 

    

夢広がってます

ー ちなみにアルバム曲では他にも新曲が収録されていますが、たとえば「サナギ」(M5)

■Anly: 高校生の時に作った曲で、沖縄にいた時にもライブでよく歌ってました。 ある日なんとなくギターを触っていたら、いいコードが見つかって。 で、そのコードを聞くとなぜか私の友達が年上の人に恋をしていた時の話を思い出して、その子の体験した恋について書こうと思って出来た曲です。 「傘」(M6)も高校生の時の曲ですね。

ー 「傘」、この曲はあえて直球のJ-POPをAnlyさんがやっているのがおもしろいですね。

■Anly: そうですね、この曲はアレンジャーの方と話して、”高校生がバンド覚えたてで楽しんでる感じ” を出そう!っていう事になって、J-POPっぽさを意識してアレンジしてみた曲です。 実際この曲を作った時、私が高校生の時は洋楽ばかり聴いていたけど、私の中にこういうJ-POPの側面もあるんだな、っていうのが再確認できた曲になりました。 そういうアレンジャーさんとの発想の出し合いも楽しかったですね。 高校生の時だったら上手くコミュニケーションとって進められなかったかもしれないけど、今はそういう他の人からのアイディアとかアドバイスに対して反応できる、これは昔と比べて私自身がいろんな音楽に触れ合って色んな可能性や方向性を音からイメージできるようになったからなんだと思います。 そういう意味では、この曲のこの感じは、高校生の時の私の作曲の感覚と、今の私のアレンジの感覚、両方あって初めてできたものかもしれませんね。 

ー 「レモンティー」もまた違った感じですしね。

■Anly: あ、そう!「レモンティー」聴いてみてどうでした??

ー 歌詞もですけど音も全体的に素朴な感じが、かわいらしかったです。

■Anly: この曲、実は楽器も全部私が演奏してるんです(笑)。

ー え!

■Anly: 初めてやってみたんですよ、ドラムもベースも、ギターソロも。 だから初心者っぽい演奏がかわいい感じなのかもしれないです(笑)。 アルバムを出すごとにこういう “Anly自分でやります企画!“ みたいなチャレンジをひとつずつやっていきたいんですよね、セルフプロデュース力に繋がると思うし。 あとは、今回全部の楽器を弾いてみたおかげで、スタジオに入って自分が歌う時にギターもベースも良く聞こえるようになったんです。 それぞれの楽器の音に耳がいくようになったし、これまでは歌以外が気になると歌がそっちに引っ張られてしまう傾向があったんですけど、今はそれぞれのフレーズの意味が分かるようになって、ちゃんと分離して全部の音が聞こえるし、「あ、今のギターのフレーズ素敵だな~」とか、歌いながら気づく余裕が出てきました。 演奏当事者になって初めて分かったことがたくさんあったんで、この曲も自分にとって大事な曲ですね。 

ー かたや「FIRE」(M2)は「太陽に笑え」の続編のようなロック感ある曲ですね。

■Anly: この曲は実際「太陽に笑え」と同時期に作った曲で、初めて本を読んでそのインスピレーションで作った曲です。 竹のおばけが出てくる本(笑)。

ー なんですかそのかわいい設定(笑)。

■Anly: そう、かわいいんですよ(笑)、でも感動するんです。 陽の光を浴びると燃えてしまう竹の一族は人間との接触を禁じられているんですけど、その竹は掟を破って人間の子供を育てることになって、最後は死んでしまうっていう物語で。 誰かを守ろうとするときって、こんなにひとは強くなれるんだ、ってすごく感動して出来た曲がこの「FIRE」です。 

  

直接目の前で伝えたい

ー こうやって曲を並べて聞いてみると、結構ロックな曲を沢山やってきたんですね。

■Anly: そうなんですよね、だからこそ今回のアルバムを全編聴いてもらって、ロックな曲以外にもやさしめな曲とか、私のいろんな部分を知ってもらえたらなって。 これぞフルアルバムの良さですよね、一気にいろいろ知ってもらえるっていう。

ー そういった意味では、Anlyさんの音楽性、人間性、いろんな面でこのアルバムを聴けば360°、全体像を体感できそうですね。

■Anly: 本当にいろいろチャレンジしてきた数年間が詰まった内容なので、是非聴いてもらいたいし、ジャケットとかも手にして、目にして、私の音楽を知ってもらって、ライブに来て一緒に楽しめたら嬉しいです。 初めて東京でライブをしたeggmanのステージでは緊張して静かでしたけど(笑)、今はライブでお客さんと一緒に楽しみたい!と思ってみんなで盛り上がれるようなライブになってると思うので。 

ー ライブに関しては確かに今、聴き入る部分とロックな曲で盛り上がる部分両方あってお客さんめちゃくちゃ楽しんでますよね。

■Anly: そういう顔が観れるのも嬉しいから、やっぱりライブでみなさんと会いたいんですよね。 この先全都道府県にアコギ一本持って旅しながら歌いに行きたいくらい。 そうやっていろんな場所に行って、直接歌が届けられたらいいな、って思います。 大変そうですけど(笑)、やってみたいな。