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Brian the Sun interview
- SPECIAL -

Brian the Sun interview

昨年の頭、メジャー2ndアルバム『the Sun』をリリース。全国20ヶ所をツアーして回り、バンドとして、さらに強力になったBrian the Sun。10月にはTVアニメ「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」のオープニングテーマ曲『Lonely Go!』を発表し、1月9日には同作品が4枚目のシングルとしてリリースされる。アーティストとしてロックを鳴らしていくこととは何か。現代において、どのようなロックバンドでいるのか。本インタビューでは、『Lonely Go!』とカップリング曲『Good-bye My Old Self』の2曲についてをインタビューしながら、Brian the Sunのクリエイティビティについて話してもらった。

Text Ryo Tajima[DMRT]

次世代感を踏まえたうえで
自分たちらしさを表現した

ー1月9日リリースの4thシングル『Lonely Go!』はTVアニメ「BORUTO-ボルト-NARUTO NEXT GENERATIONS」のオープニングテーマですが、楽曲制作において、どんなことを考えましたか?

森良太 [Vo./Gt.] 「BORUTO-ボルト-NARUTO NEXT GENERATIONS」はアニメのタイトルにある通り、「NARUTO -ナルト-」の続編アニメなので、完成された世界観を壊さないような曲にしたいというのは念頭にありましたね。ですが、誰でも歌えるような曲は自分たちらしくないと思ったので、Brian the Sunがこれまでに歩んできた道筋を振り返りながら、楽曲に落とし込んでいきました。”NEXT GENERATIONS”というワードにもありますが、アニメの内容も視聴者も世代が変わって次世代の世界観に変わっているわけなので、押し付けがましくなり過ぎないように、しっかりと自分たちの思うことを表現できるようにバランス感を大事に考えつつ制作を進めていったんです。

ーアニメのオープニングテーマとしての曲と、その他の楽曲では制作方法や内容に異なる部分はありますか?

森 アニメのタイアップ曲に関しては、秒数が予め決まっている部分もあるので、それを踏まえたうえで制作は進めていくんですが、基本的には自分たちの好きなように制作させてもらっていると感じています。数パターンの曲を提示したうえで、そこから選ばれたものをやっていくという流れが多いので。だから比較的いつも通りだと思いますよ。そんなにストレスを感じる部分はありません。特に『Lonely Go!』は歌詞に関しても、むしろ自分自身がこれで良いんですか? ってくらいスムーズに進めることができました。だから、今の自分たちのマインドとアニメの作品の世界観が一致したんじゃないかな、と感じています。

ー今のバンドのテンション感とアニメの世界観が偶然にも合致していたような?

森 そう思います。また『Lonely Go!』に関しては、これまでと違って、制作陣にアレンジャーとして江口亮さんが参加してくれたことが大きいですね。
白山治輝 [Ba./Cho.] 江口さんは僕らよりアニメ楽曲の経験値がある方なので、特にベースに関して言うと、これまで以上にテレビで流れることを意識していただいた気がします。普段の楽曲作りよりもテレビ仕様であることを意識して制作した結果、仕上がった音源を聴いたときには「なるほどな」と新しい発見があったんです。

ー新しい発見というのはどういうことですか?

白山 派手だけどベースがちゃんと立っている。テレビのスピーカーでもしっかりと聴くことができる、今までとバランスが変わっているにも関わらず、不自然ではない、という。それがすごいな、と。
小川真司 [Gt./Cho.] この感覚は今までのオレたちじゃわからなかったことでなんですよね。そういう新しい要素が『Lonely Go!』ではふんだんに表現されています。ギターに関してもそうで、今まで、自分たちでアレンジしていたレコーディングでは、ほぼほぼライブで再現できることだけをやるというスタンスで続けていたんです。楽曲をパッケージングする際に、インパクトも持たせたり、効果音を入れたり、という作業をやったことがなかったんですが、そのやり方を今回の楽曲制作を経て江口さんに教えてもらいました。だから、この曲ではギターを何本も重ねてハモっていたりしているんです。それが、これまでの楽曲にないくらいインパクトある仕上がりになっていますね。初めての制作方法だったので新鮮でした。
白山 これまで自分たちがやりたくてもできなかったことを教えてもらった感覚です。本当に様々なことを教えてもらいました。
森 それに、江口さんもバンドマンなので、僕らの気持ちをしっかり理解してくれていたと思いますし、そんな人と一緒に『Lonely Go!』を制作できたのは自分たちにとって重要な経験になりました。

ー今回の『Lonely Go!』制作を経て経験したことは、今後のBrian the Sunの楽曲制作にも影響してくる部分がありますか?

白山 めちゃくちゃあると思います。
森 特に作曲者側からしてみると、弾き語りで演奏してカッコいい楽曲じゃないとボツにすることが多いんですよ、自分の場合ですが。曲の地の強さがすごく大事だったんですけど、バンドで制作する段階でやれることが多いんだってことが、この曲の制作を経て理解できたんです。今後は、これまでボツにしていた曲であっても1回はバンドに持っていこうという気持ちになりましたね。
白山 一緒に作業をしているとき、何かアイディアが出てきたときに「それを実現するには、これくらいできなくちゃいけないから、それをできるように頑張りなさい」ってことを江口さんが分かりやすく解説しながら、僕らを育てるように進めてくれて、それを実現できたのが良かったですね。全部、自分に任せてくれっていうスタンスのアレンジャーではなく、コミュニケーションを取りながら一緒に作業できたのが、バンドにとって大きな経験になったと感じています。

ーそんなBrian the Sunの新たな表現となった『Lonely Go!』ですが、どんな人に届いてほしいと思いますか?

森 何かに本腰を入れて頑張っている人には、ちょっと孤独な瞬間があると思うんですよ。そう思うからこそタイトルも『Lonely Go!』にしたんです。だから、何かを頑張ろう、というスタート地点に立っている人に聴いてほしいと思います。例えば受験勉強もそうだし、就活とかもそうだし、社会に出てからもそう、日々に抑揚がなくなっていきながらも、頑張らなくてはならないという人たちにも届いてほしいですね。

ー頑張り続ける、という意味ではバンド活動もそうだと思います。そこには自分たち自身を鼓舞するという意味も含まれていますか?

森 いえ、バンドの場合は、頑張るというよりも楽しいと思っているときの方が記憶に残っているので、頑張って努力するというのとはちょっと違うと考えています。もちろん努力はするんですけどね。まず、メンバーがずっと一緒にいるわけじゃないですか、それ自体がすごいことで。自分とまったく違う人間と同じ空間に居続けて、日々思うこともあり、それをお互いに言い合えるようになってきて、だんだん相手のことがわかってきてっていうのを、Brian the Sunはもう何周もやってきているんです。傍から見れば、そういう行動が頑張っているように見えているかもしれないんですけど、意味合いが違う気がしますね。もちろん、違う人間とどうやって1つのものを作り上げて、どうやってライブをしていったり制作していったり、ということを考えていくのは大事なことなのですが。バンドってお客さんの方を向いて演奏するわけじゃないですか。

ーそうですね。

森 バンドが良い状態のときって、私生活でもそうなんですけど、メンバー1人1人が前を向いている状態なんですよ。でもバンドの状態が良くないときは、お客さんの方じゃなくて、自分たち同士で向き合っていて、全然フロアを見れていない。そういうときって良くないんですよ。いかにメンバーを……クサい言い方ですけど信じて、お客さんに対して何ができるかを各々が考えているときが、バンドとして良い状態なので、言うのであれば、それをできるように頑張り続けています。MCを考えたり、練習をしたり。

ーあえて根源的な質問になるんですが、活動を続けるうえでのモチベーションとなっているのはどういうことですか?

森 シンプルな話なんですが、僕らは本当に周りの人に恵まれているんですよ。今作『Lonely Go!』もそうなんですけど、バンドの中で煮詰まりきって、ヤバい状態になっているときに、江口さんみたいな人が参加してくれて、まだ見える世界がこれだけあるんだってことを教えてくれたり。
白山 まだグランドラインの入り口にも到着してなかったんだってね。
森 そう。まだ、空島にも行ってなかったわけで。
小川 ちょっと待って、作品が違うから(笑)。『Lonely Go!』はBORUTOのオープニングテーマだから!

一同 笑

森 日々、親身になってやってくれる周りの人もそうです。それにBrian the Sunはお客さんも真摯な人が多いと思うんです。本当に応援してくれていることを肌で感じるし、僕らがいないと困ると思っている人が多いと思うんです。もちろん僕らも人間なので浮き沈みはありますけど、そういう現状を考えると、自然と、どうやってライブを良くしよう、良い曲を描こうって思考になっていくんですよね。だから関わってくれている人のお陰だと思っています。
白山 オレも同じですね。自分からしたら、それがメンバーだし。1人きりになったら折れそうになることもあるんですけど、そういうときに助けてもらっているから。だから、もしメンバーが変わるようなことがあれば、Brian the Sunとしては無理なんだろうし、ということはよく最近よく思います。演奏スキルがどうだとか、そういうことを超えた意味での繋がりというのはあるんじゃないかと。
森 ……クサいこと言う合戦みたいになってるやん。

一同 笑

小川 結局は楽しいからやっているというのは1番大きいですね、僕は。楽しんでいるときがモチベーションが上がる時なので、何かバンドで動くときはそれを楽しみながらできるようにしています。楽しいことを仕事としてやりたいという気持ちもあるので。
田中駿汰 [Dr./Cho.] 僕もそうですね。どんな仕事をしていても浮き沈みはあると思うんですけど、僕らは好きなことをやれているというのもあるし、落ち込むことがあっても最終的には戻ってこれるというのが大きいので。あと、色んな場所にツアーで行くことができているので気分転換的なことは勝手に出来ているんじゃないかと。

メッセージ性は同じでも
表現の仕方は対象的な2曲

ーなるほど。では、カップリング楽曲『Good-bye My Old Self』についても教えていただければ。

白山 この曲のベースとなるものは随分前から出来ていて、2018年の2月にはもうライブでやっていたんですよ。2ndアルバム『the Sun』のツアーで、曲として全然完成されてない時期からライブで演奏していました。
森 なので『Good-bye My Old Self』については、明るいけど切ない、という世界観を目指してメンバーだけで制作したので、ものすごくリアルな楽曲に仕上がっていると思います。『Lonely Go!』のカップリング曲にしたいと思って収録した楽曲なんですよ。

ー『Lonely Go!』のカップリング曲にしたいと思ったのはなぜですか?

森 『Lonely Go!』はアニメのオープニングテーマということもあって、色んな人に聴いてもらう機会がある曲だと思うんです。そこでカップリングの曲は、対照的な雰囲気の楽曲にして、聴いてくれた人に「Brian the Sunはどっちが本来の持ち味のバンドなんだろう?」と思ってほしくて。バンドとして、こういうチューンもあるんですよってことを提示したかったんです。Brian the Sunはそういう表現のレンジの広さを大事にしていきたいと考えているので。

ー実際、『Good-bye My Old Self』はどんな楽曲だと言えますか?

森 僕らの曲はいつもそうなんですけど「まぁ、とにかく大丈夫だよ」と歌う内容ではないんですよ。「こんなこともあるけど、大丈夫なんじゃない?」ってことを歌っていて、そういう意味では温度が低いんです。しんどいことから目を背けるということではなく「それはそれで大事な思い出です。でも、そればかりに捉われていても仕方ないじゃないですか」という風に捉えて表現しているんです。サウンド面での差はもちろんありますが、『Lonely Go!』も『Good-bye My Old Self』も本当はどっちも同じようなメッセージ性があるんですよ。それを僕らは違う角度からやっているんだということがリスナーに伝わればいいと思っています。

ー対照的でありながら相対的な2曲、よりBrian the Sunらしい曲というと、どちらになりますか?

森 本当にどっちも自分たちらしいんですよね。僕らの場合、すごくポップなこともロックなことも、どっちもが混在していて全部やろうとするんです。それが僕らの分かりにくさでもあって、Brian the Sunって、どんなバンドって聴かれたときに、こんなバンドだってパターンが色々あり過ぎるという事態になるんです。でも、今までそれを愚直にやってきたので、どっちもちゃんとバンドの色になっていると思うんですよ。それに、作品を制作するときに、変に自分たちらしさを意識しなくても済むんです。どんなことをやっても自分たちだなって考えられるので。

ー『Good-bye My Old Self』は歌詞を読むと、混沌とした恋愛の終末を描いているようで実に刺激的です。これは何か実体験が元になった世界観なんですか?
森 それは……秘密です!

一同 笑

生きてきた時代感が伝わる
ロックバンドをやっていく

ー何かを深く察しました(笑)。では話題を変えて。2019年もいよいよスタート。今年、バンドとしてやってみたいことはどんなことでしょう?

白山 3月からはBrian the Sun TOUR 2019「Lonely Go!」もスタートするので、まずは、それに向けてやっていきつつ。さらに、その次、2020年にドカンといくための準備をちゃんとして、地固めをして、バンドとして地力をつけるツアーができたらいいな、と思っています。
森 バンドとしても個人としても、2018年は自分たちの個人の人生をけっこう考えた1年だったと思うんですよ。例えば、Brian the Sunじゃなかったら自分たちはどうなっていたんだろうな? だとか。というのもメジャーデビューしてしばらく経って、最初はメジャーデビューした、というガソリンがあったから、脇目も振らず突っ走って来れたんですけど、気がついたらもうこんなに時間が経っていて。そういうタイミングで一瞬、自分のことに立ち返ったりしたのが多かった1年で『Lonely Go!』の制作もあり、メンバーと過ごしていくなかで、最初にバンドを始めたときの感覚とメジャーデビューしてしばらく経っての感覚の大きな変化をやっと俯瞰して見れるようになったんです。そこで感じたことが、すごくシンプルなことなんですよね。やっぱり、自分たちが良いと思った楽曲を自分たちが良いと思った演奏で、自分たちが良いと思うライブで、しっかり表現していきたいなと。

ーなるほど。

森 ミュージシャンってアーティストとも呼ばれるじゃないですか。そう呼ばれることに相応しい存在になりたいんです。何も考えずにアーティストと呼ぶ人も多いと思うんですけど、それに足りうることを実現できている人というのは、すごく少ないと個人的に思っているんです。その肩書きに対して、恥ずかしくないような活動を2019年はしていきたいとすごく思っていますね。白山が言う、ツアーで地固めをしていくというのはそういうことだと考えています。自分たちがもっと強固になって、他に替えがきかないバンドになっていくということですね。「Brian the Sunが好きならコレを聴けば?」って比較対象が出てこないくらいBrian the Sunが強くなれば良いと思っています。そういうバンドになれるような1年になりますように。

ーでは、2019年に個人的にやってみたいことはどんなことですか?

白山 僕はフルマラソンですね。
森 それ、ずっと言ってるよね。
白山 うん、そろそろ実現しなきゃって。
小川 オレは海外に行ってみたいですね、台湾とか。それにバンドとしてもアニメの曲を色々やらせてもらっているので、そういう意味でも海外でライブをやってみたいという気持ちがあって。日本のアニメ文化は世界中に根付いていると思うので。
田中 僕は乾燥機付き洗濯機が欲しいです
一同 欲しい!! わかるわー。
森 例えばキャパ何人を達成するとか、そういう目標を決めてクリアしたら母校の軽音学部にドラムセットを送るとか、そういうことができるバンドになりたいなって個人的に考えていますね。なんだかんだ言っても、僕らも次世代の人たちを引っ張っている部分は大きいと思うので。ドラムセットなんて、なかなか買うに至るまで大変じゃないですか。何か下の世代のために行動して、具体的にはわからないんですが、何かが良くなればいいと思いますね。

ー今の10代や20代前半など下の世代に向けて、Brian the Sunはどんな音楽を提示していきたいですか?

森 世代感というのは「BORUTO-ボルト-NARUTO NEXT GENERATIONS」のオープニングテーマとして『Lonely Go!』を制作している段階で感じたことがありました。結局、僕らの頃と現代じゃ、まったく感覚が違うと思うんですよ。そこで、あんまり自分たちの世代のことを押し出し過ぎて、無理に押し付けるのも嫌だなって。でも、同時に、自分たちが生きてきた時代がわかるようなバンドにはなっていきたいと思っていて。僕らの世代で言えば、ASIAN KUNG-FU GENERATION、ELLEGARDEN、チャットモンチーにACIDMAN、サンボマスターとか、そんな、大先輩のカッコいいロックバンドが大勢いるし、その影響をちゃんと受けているっていうのも、今では胸を張って言えるし、その影響を自分たちなりに昇華して表現していきたいですね。4人編成で、ギター、ベース、ドラムというミニマルなバンドで音楽を鳴らすというのは、時代的に見て、僕らが最後の方の世代なのかな、と思っているんです。バンドサウンドメインの愚直なロックバンドを、オレらはやっていきたいんです。