–まずは先日のライヴ、どういう印象がありましたか?
ロスタム 僕が思うに、今までの日本の公演の中ではベストのお客さんだったんじゃないかな。観ていても、すごく身体を動かしてるのがわかったし、曲への反応もすごくよかったと思うよ。
武井 僕は2010年のフジロックフェスティバルで初めてライヴを観たんですけど、そのときの印象とはまた違って、すごいパワフルな印象でした。”ワン”っていう曲のキメにも圧倒されちゃったし、いい意味でパンクな感じがして、すごい格好よかったです。
エズラ ありがとう!
武井 単純な疑問なんですけど、ライヴは音源と違ったアレンジでやってますよね。機材とか同期は何を使ってやってるんでしょうか?
エズラ 曲によるんだけれども、ピュアなロックソングにアレンジを変えてやってるのもあるよね。特にファーストアルバムの「ウォルコット」なんかはシンプルなアレンジに変えて演奏してる。だけど、セカンドの曲はまた新しい形で表現したいなと思ったんで、ベースのクリスが足でペダルを踏んで、それをトリガーにしてサンプラーを演奏してもらってる。まあ、そのせいでクリスの人生は少しややこしいことになっているんだけれど(笑)。それは多分今後もやっていくことになるんじゃないかな。
武井 なるほど。
–チェコはヴァンパイア・ウィークエンドに影響を受けているところがいくつかありますよね。特にリズムの感覚には似たようなテイストもあると思うんですけど、どうですか?
武井 ファーストのアルバムが出たときに「マンサード・ルーフ」っていう曲で「♪ズッタズッタ、ズッタズッタ」っていうリズムがありましたよね。あれが出て、日本のインディーズのバンドにも影響を受けたバンドが一杯いたんですよ。当時ライヴハウスのドアを開けるとそのリズムが聴こえてくるぐらい日本では浸透しちゃっていて。素晴らしいフレーズだと思うんですけど、そういうのはみんなで意見を出し合って作ってるんですか?
ロスタム でも、あの曲に関してはどうだったかな。みんなで話し合ったと思うけど。それとも、エズラが言い出したんだっけ?
エズラ あの手のリズムは当時話題になってたんだよ。僕らがあの曲を作った頃、NYでレゲトンっていうプエルトリコの音楽がすごく流行っていたんだ。それこそ、ライヴハウスに行ってドアを開けるとあのリズムが流れてくるくらいで。たとえばダディー・ヤンキーの「ガソリーナ」とかね。
武井 ああ〜!
エズラ ただ、レゲトンはたいていスローなんだけど、僕らの鳴らしたいリズムはもっとテンポが早くて。面白いのは、僕らがやるとどうしてもテンポが上がってパンクっぽい感じになるんだよね。だから、レゲトンのそのままにはならなくて。あの曲がリズムに関してみんなで考えたり話し合ったりした最初の曲だったかもしれないね。
–じゃあ今度はエズラとロスタム、先ほどチェコ・ノー・リパブリックの音源を聴かれたと思うんですが、率直な感想はどうでしょう?
エズラ まずアートワークに一貫した美意識を感じたな。たぶん、同じ人が手掛けてるんだよね。まとめて並べたら素敵だろうなって思った。ああいうイメージの一貫性というのは僕らも目指してるところなので共感したな。
ロスタム ミキサーが出てくるビデオの曲があるよね? あれがよかったよ。
武井 うん。「レインボー」です。
ロスタム ここから始まってこんなところに行くんだってとこで終わる。まるで別の曲みたいな感じで終わるっていうのは僕らの音楽の中でもやりたいと思っていることだから。あれはすごくいいなと思った。
–武井さん、二人の感想聞いてどうですか?
武井 泣きそうです(笑)。
エズラ ははは! CDも貰ったんで、アメリカに持って帰ってじっくり聴くよ。
武井 嬉しいです!
–今はアートワークの話が出ましたけど、ヴァンパイア・ウィークエンドはファッションも独特なバンドだと思うんです。そういうところで、チェコからヴァンパイア・ウィークエンドの二人に訊きたいこと、気になることってあります?
タカハシ 普段の洋服の好みは気になります。たとえば、私は古着が好きでよく着るんですけど、二人はどういう洋服が好きですか?
ロスタム 僕はいつも兄とかドラムのクリスからも譲ってもらってる。だから、僕が言えることは何もないかな。
タカハシ ちなみに今日着てるのもいただきものなんですか?
ロスタム これは違うよ(笑)。
エズラ 僕が一番好きなブランドはポロ・ラルフ・ローレンなんだけど、実は、お店に行って目がパッと行くのは、逆にその店で一番格好悪いものなんだよね。なんか、そういうものに目が行ってしまうんだ。Tシャツに文字が書いてあるやつとか、いろんなパッチがついてるのとか、ジッパーがいっぱいついてるが気になっちゃう。そういうのも、組み合わせによっては身に着けてオーケーだと思う。
–さっきのアートワークの話でも、チェコもヴァンパイア・ウィークエンドも一貫したイメージを大事にしているという共通点はあると思うんですけれども。共感する部分もあります?
武井 自分たちはかわいい感じのが好きなので、かわいい、ポップな、カラフルな感じがいいと思ってやってるんですけど、ヴァンパイア・ウィークエンドも、PVが全部かわいいんですよ。そういうのは自分らでこういうのが撮りたいって言ってイメージを作ってるのか、それとも素敵なディレクションをして下さる方がいるのか、どっちですか?
ロスタム 両方かな。場合によっては監督が強くイメージを提案してくれて、それをやってみようと思う。その代表としては「Aパンク」とか「カズンズ」があると思う。あれはもう向こうの意見を訊いてこれは絶対よくなると思ったんでその通りに従ったんだ。そうじゃないケースとしては僕らがこんなイメージということを言ってそれを理解してくれる監督が形にきちんとしてくれるということもあるよ。で、そういう曲のビジュアルに関しては、曲を作ってる段階から頭の中に描いているので、それを形にしていく感じかな。
–じゃあここからは、ヴァンパイア・ウィークエンドの新作の話にも移っていこうと思います。先日のライヴでは「アンビリーバーズ」という新曲もやってましたけれど、武井さんはどんな印象でした?
武井 歌のメロディがすごくキャッチーでよかったです。パッと入って歌えちゃうようなメロディーで、アコースティックギターが印象的で。今まで聴いてきた曲とまたアレンジが違ってる感じもしたんですよね。1枚目とも2枚目ともやっている感じが違って、でもやっぱりヴァンパイア・ウィークエンドで、すごいいい曲で3枚目が楽しみで仕方ないんですけど、ああいうアレンジにはどうやって辿り着いたんでしょう?
エズラ そもそもロスタムのニューヨークのアパートで僕と2人で曲を作る作業をしてるんだけど、その中で曲が全然できてこない時期があったんだよね。で、2人でいろいろやっているときにあのピアノのフレーズをロスタムが弾き始めて、それをきっかけに出来上がっていった曲なんだ。で、僕はラップトップを持って曲作りをしているので、彼のピアノを聴きながら歌詞を書いていって。わりと早くできた曲だったかな。最初にピアノのフレーズが浮かんでから、数時間後にはベーシックなアレンジは全部できてしまって。ああやってパッとできて、しかもクールなものが仕上がったんで、自分たちにとって印象のいい曲なんだよね。だから、気に入ってもらえたのは嬉しいよ。
–あの曲、ベースのクリスが後半ですごく難しい手拍子をしてましたよね。あれ、会場の多分誰もできていなかったと思うんですが、あそこはどうやってるんですか?
エズラ 基本的に自分のキックの間を取っていくような感じなんだ。足でキックのビートを踏んで、その間で手拍子をするんだよね。
–これ、実際に教えてもらっていいですか?
エズラ いいよ、何人かはビートの上で、もう何人かはその裏で、バラバラに手拍子を叩くんだ。
(手拍子をやってみる)
–やってみてどうでした? 難しかったですか?
武井 いやー、難解でした(笑)。
–じゃあ、時間も少ないですが、チェコのみんなからヴァンパイア・ウィークエンドに訊きたいことがあれば。
武井 そうだなあ、音楽を作るときにどんなエモーションを生み出すことを重視していますか?
ロスタム 僕が思うには、緊張感なんだよね。ありきたりに終わらない緊張感というのが大事だと思ってる。特に新しいアルバムの中ではそういうテンションが全ての曲の中にあってほしいなって意識して作ってるところがあって。もちろん、流れを途絶えさせない一貫性みたいなものは必要なんだけれども、あくまで緊張感を持って表現するっていうことは意識してるね。
八木 あと、これは訊きたかったんだけど、二人の将来の夢はなんですか?
エズラ 今はアルバムが完成してまだ世に出る前という独特な時期なんで、アルバムのことをどうしても考えちゃうんだよね。この後にアルバムがリリースされて、みんなが曲を覚えてくれてる状況でコンサートをやるのがすごく楽しみで。新しい曲をどんな風に演奏しようか、どんなショウにしようか、どんなビデオにしようかというのを考えるのが楽しい時期でもある。ショウの構成も、今から3ヶ月後にはかなり内容の違うものをやると思うから、それを考えるのが今の楽しみだね。
ロスタム で、将来的には、とにかく曲を書き続けること。それくらいしか考えてないね。それが何より僕の好きなことだから。今はそれができてる自分がラッキーだと思うよ。