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Half time Old interview
- SPECIAL -

Half time Old interview

フロントマン鬼頭大晴の中性的で物静かなイメージの容姿と、曲に詰め込む熱量のギャップが半端ない名古屋発ロックトリオHalf time Old。 年1枚のペースでフルアルバムを出し続けて今作で3作目、”ようやく自分たちのやるべき事が見えてきた” と話す彼らのその経験値と、今リアルタイムで感じとる世の中への尺度、これまでの全てと今の感覚の全てをクロスさせた切り口で生み出した楽曲は、確かに過去作と比べても作曲スキルや歌の表現等にネクストレベルを感じさせる。 それに引っ張られて歌詞に込められた気持ちの強さも日に日に増していっているようにも思える。 自分で手に入れた杵柄に影響されて更に上の次元へよじ登る姿は、バンドの持つユニセックスな魅力とまた別の印象として至極勇ましい。 今作『真夜中の失踪に聡明と音楽』は、その最新形態。 生き様が音楽に溶け出していく経過を見ているようで、ひとえに好奇心を掻き立てられる作品た。

Interview & Text : 鞘師 至

一回ドン底に入ってから、光の方を見る。

— 今作、全曲通して聴いて思ったのが、楽曲のアレンジスキルがぐっと上がってる感じでした。 今回は基本セルフプロデュースですか?

■鬼頭大晴(Vo/Gt 以下 “K” ): 「ほたる」(M8)と「ミニマリスト」(M9)の2曲だけ、セカイイチの岩崎慧さんに楽曲アレンジで入ってもらったんですけど、それ以外の曲はセルフプロデュースです。 自分たちでのアレンジに関しては、やっぱりやれる事が増えてきたと思いますね。 
■阪西暢(Dr 以下 “S”): ひとつ出てきたアイディアを、広く大きく捉えられるようになってきたからか、発想が昔と比べて自由になってきてますね、フレーズに合ったアレンジに落とし込む発想。

ー 積み重ねの結果が出てるんですね。 ちなみにここ3年は、1年に1枚のペースでフルアルバムリリース、この速度もすごいな、と。 「嵐の中で貴方に向けた歌」(M11)は過去曲の別アレンジですが、それ以外は?

■K: それ以外は全部最近の曲です。

ー もうずっと作り続けてるんですね。 鬼頭さんは表向き温厚な感じなのに、こと楽曲制作となるとめちゃくちゃアクティブですよね。 ガンガン作りまくるっていう。 そういう攻めてる熱量、歌詞の文字数の多さを見ても同じく感じました。 ほぼ全曲歌詞が超長い(笑)、ラッパーくらいの文字量。 

■K: なんか書き過ぎちゃうんですよね、いつも(笑)。 

ー 言いたい事がどんどん出てきちゃって、気持ちが溢れてつい長くなる、みたいな熱量に思えるんですよね。 例えば「銃声と怒号」(M1)、これはどんな事を書いた歌?

■K: これ、きっかけは本当に久々にハマったゲーム、銃で撃つ系のシューティングゲームだったんですけど、そのシチュエーションに乗っけて言いたかったのは、”反抗する事がかっこいい” みたいな考えでは、手に入れられないものがあるって事です。

ー アンチテーゼ至上理論、確かにサムい事になってる状況を見る事多々あります(笑)。

■K: バンドでもそうですよ、”お客さんに媚びない”のがかっこいい、っていうのは分かるんですけど、攻撃するのは違うと思うんですよね。 むやみに牙をむいてるような場面を見ることも少なくなくて。 僕はそうは思わない、っていうのを言いたくて。

ー ヘイトで推す感じの連中もやがて支持される愛情に気づいて愛を歌い始めるっていうのは、ひとつのリアルとして存在しますからね。 悪ではないんでしょうけど、それで終わるのはちょっともったいないですよね。 鬼頭さんの若い頃は?

■K: …割と方々に噛み付いてました…(笑)。

ー それじゃん(笑)! でもそういう時期を経て変わっていって今思う事、この歌詞は今の鬼頭さんならではのものって事ですね。

■K: そうですね(笑)、噛み付いてきて今分かったことかもしれないです…(笑)。

ー ちなみに2曲目「ウィンザーノット」、これはサラリーマンの生活的な描写ですが。

■K: 僕はサラリーマン経験ないんですけどね、大人の象徴としてこういうトピックで書きました。 僕も学生の頃と比べたら少し大人になりましたけど、子供の頃に大人の人たちは大体大人になることの大変さ、辛さを説いてくる訳ですよ。 でも実際はそこまで悲観的じゃなくて、大人にならないと得られないやりがいとか喜びもある、っていうのを書いた曲です。 最後のサビまではいいものには思えないけど、最後で「割といいものなんだよ」っていう事を書いてます。 昔は本当にネガティブな事しか聞いてこなかったんで、大人になりたくなかったんですけど、今はそう感じないですからね。 これも今思う真実のひとつです。

ー 『runner「A」』(M7)、バンドでこれまでやってきた分リスナーから反応があったり、やりがい感じて人生報われてる部分もあると思うんですが、それでもまだまだ悩み続ける人生なんだな、と思った歌詞の内容でした。 逆に今生きていて一番報われる瞬間ってどんな時ですか?

■K: やっぱり曲が完成した瞬間ですかね。 

ー なるほど、やっぱり職人なんですね。 「ほたる」(M8)に関しては、今作中で歌詞が最も長い曲ですね、数えたら785文字ありました(笑)。 思いの丈がこの文章量を生んだのかな、と。 これまで生きてきた全てがここで解釈できる感じの諦めと願いと、辛さと希望と決心、全部入ってる感じがしました。 「人と話すのすら躊躇した」ってありますが、こういう時期が過去あったんですか?

■K: 小学校〜中学校くらいの時期がそうでしたね。 自分が思った事を言えば言う程、人を傷つけると思った時期があって。 言葉数は少なかったかもしれないですね。

ー そこからステージ上で大勢の前で、しかもこれほどの言葉数の歌を大声で歌う存在になるとは… 何があるか分からないですね。

■K: そうですね、でも子供の頃のそういう時期があったからこそかもしれないです。 

ー 全てはこれまでの経験と今の感覚に忠実な歌詞って事ですね。 

攻撃力高めでいきたい。

ー サウンド面に関しても幾つか聞かせてもらいたいんですが、まず曲順について。 最後をピアノ編曲で締める、という前作からの流れ、これすごく素敵な恒例パターンになりつつありますが、今回過去曲の中から「嵐の中で貴方に向けた歌」を選んだ理由は何ですか?

■小鹿雄一朗(Gt 以下”O”): この曲、バンド初期の頃から好きでいてくれる人が多かった曲なんですよ。 インディー盤の音源に収録されてる曲なんですけど、そのCDが廃盤になってるのもあって、また違う形でみんなに聴いてもらいたいな、と思って今回選びました。 あとは純粋にバラードにしたら似合いそうな雰囲気が元々あったから、っていう引きもあって。 いつもサポートしてくれているベーシストにピアノを弾いてもらってるんですけど、今回もばっちりハマりましたね。

■S: あとはやっぱり、僕らの一番のストロングポイントである鬼頭の声がしっかり映えるアレンジにできたのが、良さに繋がってると思います。 

ー 締めのピアノバージョン、これ今後も毎回期待しちゃいますね。 ちなみにギターに関しては、ソロ以外でもバッキングというよりは単音メロディーのリードをひたすら紡いでいくようなフレーズがこのバンドらしい特徴的なフレーズだなと思うんですが、逆に今回初めて取り入れたことで、小鹿さんがフォーカスしたところってどんな部分ですか?

■O: 「marvelous」(M3)でワーミーを使ったり、「=notequal=」のイントロ間奏でオクターヴを2本重ねたりとか、音色の面で今まで手を出してなかった事に触ってみたりしました。

ー 確かに今まで飛び道具的なエフェクトってあんまり使ってる印象なかったですね。

■O: 本当にディレイくらいしか使ってなかったんですけど、逆に今回はディレイをほぼ使ってなくて、別のエフェクト取り入れました。 曲を作る段階で決め打ちのエフェクトも新しく取り入れる事で自分のフレージングのインスピレーションとかも変わってくるんで、そこは意識して今回やりました。 オクターヴ重ねとか、ちょっとハマって自分の中で主流になってきちゃってますね最近(笑)。 頼り過ぎないようにしないと(笑)。

ー でもそうやってハマった音色が結果的に “そのバンドらしい音” ってイメージになっていったりもしますからね。

■O: 自然とそうなっていったら、それがベストだなと思ってます。

ー ドラムに関しては音質というか、ライブでの阪西さんのドラムのダイナミクス、あの臨場感が音源でもちゃんと感じられる音だと思ったんですが、録音時の今回のポイントってどこだったんでしょうか?

■S: スタジオとエンジニアさんは前回と変わってないんですけど、そのチームでの信頼関係が回を重ねて上がっていってる感じがします。 あとはフィルとか細かい部分のアレンジは結構ギリギリまで何が一番ベストか、レコーディングの時に詰めて録音しました。 音の納得感はそういう細かい部分からも来てるんだと思います。

ー 音源録り終えて、これからレコ発ツアーですが、どんなツアーになりそうですか?

■S: 最近ようやく長尺のライブをやらせてもらえる機会が増えてきて、今回のツアーも2man, 3manみたいな尺で演奏できるんで、対バンの短い尺のライブでは演奏できないような曲もたくさんやれるし、バラードとかもセットリストに躊躇なく入れられるんで、いろんなタイプの曲を聴いてもらえるツアーになると思います。

ー 今作まででフルアルバムも3枚完成させて、ツアー回って、ある程度この作業を重ねて成熟してきましたけど、この先はこのバンドはどうなっていくんでしょうか?

■K: 曲に関して、今までは手探りでいろんなタイプの曲を作ってきたんですけど、今回まででやっと自分たちがやるべきものが分かってきた感じがあるんですよ。 やり始めの時に手探りで何も分からずいろんな感じの曲を作って演奏してを繰り返しやってきたからこそ、今のオリジナリティーが見えてきてる感じがするんで、この先新しい事を取り入れていくとしたら、今見えてきたこの地盤にプラスしていけたらいいですね。 今までのものを変えてしまうんではなく。 ようやく見つけた自分たちの色みたいなものを大切にしていきたいです。