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SHE’S interview
- SPECIAL -

SHE’S interview

幻想的かつ壮大に奏で
わずかな感情さえも逃さず言葉を紡ぎ
等身大に”SHE’S”が届ける7曲の物語。
(L⇒R)【Dr. 木村雅人】【Vo. 井上竜馬】【Ba. 広瀬 臣吾】【Gt. 服部栞汰】

interviewer: 森村俊夫

–今作のタイトル『She’ll be fine』はどういう意図で付けたのでしょうか。

井上竜馬(以下、井上):元々このタイトルは、自主制作の初めてのデモCDをリリースした時から行っている自主企画のタイトルでした。3枚のミニアルバムで3部作という構想があって、3枚目のタイトルにふさわしいのが、このタイトルかなと思いました。
今までの作品のそれぞれのタイトルを付けた理由が、当時大切だった人を失って自分自身の存在を見失ってしまった時に、自分自身は一体誰なんだろうと思い制作したのが1枚目のアルバムの『WHO IS SHE?』。
それを乗り越えた上で、これからどこに向かって行くんだろうという葛藤を見つけ出して歌ったのが、2枚目の『WHERE IS SHE?』。
この2枚の中で2人の物語は完結して、その物語を経た上でわかった事があって、”この先、俺も元気やっていくし、彼女も元気にやっていくだろう”と思えるようになりました。その中で、今まで意図なく使ってきた『She’ll be fine』というタイトルが3部作の最後ですごくしっくりきたという巡り合わせでこのタイトルになりました。

–1曲目「Un-science」はストリングスが入り、とても壮大な楽曲になっていますが、今作でストリングスを入れる事になったキッカケはなんでしょうか。

井上:自主制作のデモCDの「Voice」という楽曲を制作した時にストリングスをシンセで入れたのが初めてで、その時から僕達の楽曲とストリングスのフィット感を感じていて、いつか生で入れたいなと思っていたのが前作から叶って、今回は制作段階からストリングスを入れることを念頭において取り掛かりました。

–ピアノとストリングスの融合はとても壮大な世界観を演出していますが、ピアノもストリングスも、音が持つパワーが強い楽器だと思うので、音の構成であったり、音の共存であったり、制作で苦労した部分もあったんじゃないでしょうか。

井上:そうですね。「Un-science」では2サビ終わりの間奏の流れでフルートも入ってきて、ピアノとストリングスとフルートがいる中で、誰がメロディーを奏でるのか、ギターはどうするのかというのは結構練りました。
ピアノとギターも上モノ同士で、どうしてもぶつかってしまう部分もあって、そこに歌も入ってくるので、ルールを作らずに楽曲ごとで楽曲の求めている感覚にそって試行錯誤しています。単純に曲が一番生き生きするラインを選んでいて、この楽曲ではストリングスが交わっているところを重視して聴かせたいと、スタジオでの制作の段階から考えていました。

–この楽曲の「Un-science」というタイトルの意味はどういったものがあるのでしょうか。

井上:「Un-science」は造語なんですが、”非科学”というモノを伝えるのに丁度良い言葉かなと思いました。この楽曲を制作したキッカケがSF映画なんですが、映画の中で出てくる”愛は時間も距離も飛び越えていくのよ”というセリフにとても感銘を受けました。
人と人だからこそ生まれるシンパシーであったり、共感とか愛情が伝わる瞬間は”〜だから”というかしこまった理由では説明できないものだなと思っていて、科学や心理学で証明できない圧倒的な”非科学”なものなんじゃないかなと感じています。そういった目に見えない非科学的なものを大事にしていたいですし、そういうものにもっと目を配って生きていたいというメッセージを込めて、このタイトルを付けました。

–歌詞の中にある”機械じゃないから 共鳴していくんだよ 心は奇跡だってさ 引き起こす”というフレーズには、定められた反応しか起きない科学や機械ではなく、生身の人間だからこそ起こり得る奇跡の大切さを感じました。
“SHE’ S”というバンドは、そういった部分をできるだけ多くの人に届けることのできるように、優しく表現している印象があります。この表現の先にいる、”まだ目に見えていないたくさんの人”を意識している”歌い方””伝え方”なんだろうなと。

井上:”言葉”によって歌い方を変えたりと、意識をしています。レコーディングの時も同じフレーズを何テイクも録って、その中で聴く人に一番伝わりやすいものをセレクトして構成しています。

–サビの”Love lives in wonder(愛は奇跡の中に生きている)”というフレーズもすごく印象的ですね。

井上:楽曲に対する思いを咀嚼していった中で生まれた言葉で、愛は決まり切ったものの中で生まれるものでも無いし、産むものでも無いし、そういった定義があるものでも無いし。そういう気持ちを表した言葉ですね。

–2曲目の「信じた光」のタイトルですが、この”光”というのは何を表しているのでしょうか。

井上:具体的なものは無いんですが、19歳の時にやっていたロールプレイングゲームから影響を受けた楽曲なんですが、ストーリーの中でしつこいくらいに”信じて”という言葉が出てきて、各々のキャラクターの中で”光”というものが全然違うもので、各々が辿り着きたい抽象的な”光”というものを表しています。
この楽曲の1番の歌詞は、主人公側から見た”誰かの為”に戦って未来を変えたいという気持ちを書いていて、2番は対立している側の人の気持ちで”自分自身”とずっと戦っているんです。

–3曲目の「Save me」は今作の中で、特にギター・ベース・ドラムのバンドサウンドが際立つ楽曲ですね。歌い方もロックで強さを感じました。

井上:ギター・ベース・ドラムを主役にして、リフ感やパンチ感を出したいなというのがあって、そこにピアノもロックなイメージで強く入れました。サウンドに負けないようにボーカルでも意識して、この楽曲の中にある、もがいている心の叫びをリアルに生々しく歌いました。

–他の楽曲の、声で包み込むようなイメージとは違って、声と音で身体を強く刺されました。”Save me(助けて)”という言葉は、楽曲の感情をすごく表した言葉ですね。

井上:狂気的な楽曲にしたいなというのがありました。
人の落ち込んだ先というのは”狂い”だと思うんですよね。
狂気感というか、誰も近付けないような空気感を出しながらも”助けてほしい”という矛盾があって、そこを表現するために、2番のAメロでは狂った感じを出したり、ピアノのコード感も無視して叩いたりというアクションがありました。

–4曲目の「2人」はミドルバラードなテンポですが、サビではピアノの裏でロックに切なく奏でるギターの音がすごく印象的でした。

井上:今までもっとガツッとやっていたというか、バラードでもギターのコード感を出してドラムもダイナミックに演奏していたんですが、今回はそれではダメだなと思っていて。”J-POP”の感覚を入れたいというか、カッチリし過ぎず、少し崩してサウンドを柔らかくして、アプローチも変えたものにしました。
バラードだけど、バラードっぽくないような楽曲にしたいというのがありました。

–「ワンシーン」は結構前からある楽曲ですよね。

井上:そうですね。「ワンシーン」と「信じた光」は2013年の3月に出した自主制作の音源にも収録していましたが、今作で改めて収録しました。

–同じ楽曲ですが、全く違う雰囲気が変わりましたよね。2013年当時の気持ちを3年経った今、飲み込んだ上で表現しているような印象がありました。
イントロに”裸足で駆け出すような疾走感と切なさの共存”を感じました。
6曲目の「遠くまで」。作品通して感じる事なのですが、”細かな感情を逃さず表現している”なと感じました。変わった事をする訳ではなく、芯にあるものは変えずにその中で細かな感情を細かく逃さず表現する為に、様々な意識を持って表現しているんだろうなと感じました。今作に収録されている7曲全てが違っていて。その違いを上手く表す事のできる言葉が見つからないんですが、それぐらいとても細かな部分で表現を変えているように感じました。

井上:この楽曲は、ライブで演奏している光景を想像して、自分の楽曲を聴いているみんなの顔を想像しながら歌うのを意識し始めてから、歌い方は変わっていきました。もちろん楽曲の気持ちを代弁するというところを優先している歌い方もありますし、「ワンシーン」は19歳の時に初期衝動で勢いだけで書いて、勢いだけで歌ってきた楽曲なので、今回録り直す中でも、年齢を重ねて自分の中で深みを出せるようになった部分は出しつつ、当時の裸足で走っていくような夢中な荒さは残していたいし。楽曲それそれでシフトが違うというか、向かうところが全然違うなと思います。

–今作の最後に収録されている「Curtain Call」は、ライブハウスだけではなく、ホールという舞台が似合う”SHE’S”だからこそのタイトルだと感じました。 “SHE’S”の楽曲は物語の1つ1つのシーンが絵に見えますよね。サウンドがつくる世界観は壮大の中、歌詞の世界観は等身大で目に見える範囲の世界の事を歌っているなと感じました。

井上:僕がただの作曲家であれば違ったと思うんですが、作詞家であり歌い手ででもある中で自分の思った事や経験した事だけを歌っていたいというのが大前提にあって、他の人が書いた歌詞は絶対に歌わないというのが第一にあります。スケール感に関しては、僕が聴いて育ってきた”スタジアムバンド”になりたいというのがあって、そういう音楽はどれもそういった事を大切にしていたというのがあります。スケールの大きな壮大な音楽であっても、聴く人に伝わらなければ意味が無いので、伝える事を大前提にした上で、意識せず単純に自分の欲求に従って自然に出てきたものを歌っています。
この楽曲は僕が本格的に落ち込んで”音楽を辞めたい”と思っていた時に生まれた曲で、そんな時に何回も踏ん張れたのはお客さん以外の誰のおかげでもなかったので、そこに向けて圧倒的に歌いたいなというのがありました。
「遠くまで」では、僕達が光となって”一緒に遠くまで導きたいんだ””一緒に行きたいんだ”という想いを歌っていて、ずっとそう感じていたんですが、「Curtain Call」では逆に”照らされていたのは僕達だったんだ”というところに気付いて、最大限の感謝を歌いたいなと思って、書き始めた曲です。
この楽曲ができた事によって、もう一度踏ん張れたというか”まだまだ辞めない”と思えました。”カーテンコール”は全てが終わった後に贈られる賛辞ですが、それは”俺達にはまだまだやってこないよ”というところを提示したくて、サビの最後の”Curtain call will never end”という歌詞に繋がりました。

–今作のリリースツアーでは東名のQUATTRO公演を含む、全5箇所のワンマンツアーがありますが、意気込みを聞かせて頂けますでしょうか。

井上:初めてのワンマンツアーというのもありますし、
今までずっと使ってきた”She’ll be fine”というタイトルをアルバムのタイトルにして、そしてこのタイトルで自身初めてのワンマンツアーに出るという事で、良い5日間にしたいとしか考えていません。前回のツアーまでは、これまでの楽曲を全てやるという感じだったんですが、今回からはツアーのセットリストを選んでいけるという事で、各地でいろいろ変えながらやっていければと思っています。5日間全部を違うものにしたいです。
各地の空気をつくりたいです。一ヶ所ずつどんどん進化していきたいですし、それをファイナルで見せたいと思っています。


■SHEʼS ONEMAN TOUR「Sheʼll be fine -Chapter.0」
3 月 2 日 ( 水 ) @【宮城】仙台 enn 2nd
3 月 4日 ( 金 ) @【大阪】梅田 CLUB QUATTRO
3 月 7日 ( 月 ) @【福岡】天神 Queblick
3 月 11日 ( 金 ) @【愛知】名古屋 ell.FITS ALL
3月14日(月)@【東京】渋谷 CLUB QUATTRO