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ISEKI interview
- SPECIAL -

ISEKI interview

この先10年、20年の自分のベーシック

 

ソロデビュー作としてカバーアルバム3作連続リリースを発表、2作目となる『AOR FLAVA -sweet blue-』が夏の終わりにリリースされ、早くも今月には3作目を控えるシンガー・ソングライターISEKI。 キマグレン活動後の再スタートは、ソロシンガーとしての最初のスタートだ。 ルーツを辿って自分のベーシックを改めて構築する為の活動として選んだAORソングのカバーシリーズは、リスナーへ向けたルーツのショウアップだけでなく、自身の感覚をより際立たせる事へも繋がった、実りの多い経験となったそうだ。 一度駆け上がっても尚、上を向いてストイックに音楽で遊ぶ姿は、見ていてやはりこころに響く。

Interview & Text : 鞘師 至

ー 今作はカバーアルバム3部作の2作目ですが、収録曲の選曲はどんなコンセプトで進めて行ったんですか?

■ISEKI: 元々僕が山下達郎さんをはじめ、ORIGINAL LOVE、CHAGE and ASKAなどAORの影響を受けた日本のアーティストっていうのが凄く好きで、学生の頃からずっと聴いて育ってきたのがあったから、原点回帰というか、ソロになった事だし、まずは自分のルーツに立ち返ったところからやってみよう、っていうプロデューサーからのアドバイスもあって、そこからこのカバーアルバムシリーズを始めたんです。60年代~80年代の渋めの良い音楽をかき集めて、それを季節ごとの空気感にも合わせて1作目はmellow green、今回がsweet blue、3作目が10月に出るsilky redと色分けしてね。そこに1曲ずつ、オリジナルのコラボ曲も入れ込んで、パッケージしていきました。コラボ第一弾は元椿屋四重奏の中田裕二くんと、今回はジャンク フジヤマくん、そして第三弾のコラボもすごくおもしろいコラボが出来てます。カバーだけじゃなく、コラボの新曲もみんな凄く刺激があって良い作品に仕上がりました。

ー コラボ曲、今回の「バブル・サマー feat. ジャンク フジヤマ」は、MVも見ましたけど曲調と海辺の画がバッチリはまってて最高でした。

■ISEKI: 前のキマグレンの時とは違った、だけどどこか雰囲気も感じる、新しいISEKIらしさっていうのが曲でもMVでも表現できたのかな、と思いますね。

ー しかもこのオリジナル曲、アルバムの最後に持ってくるっていうところがまたいいですよね。

■ISEKI: そう、作品として軸はカバーアルバムなんだけど、あくまで僕は “シンガー・ソングライター” なんだよ、って最後の曲で主張するっていう(笑)。 やっぱりカバーって諸刃の剣であって、基本的には原曲を歌うご本人に敵うはずがないと思っていて。でも僕の声で、僕の音楽人生を育んでもらった音楽を、しかも今の音で表現するっていうところには、何か別の希望があるな、って思ったんです。バンドメンバーも凄い人たちにお願いしたんですよ。 元ORIGINAL LOVEのメンバー、小松秀行さん(Ba.)と、佐野康夫さん(Dr.)、キーボードには草間信一‬さん、バンマスとギターにはキマグレン時代からずっとお世話になってる鈴木俊介さん。僕の憧れの世代の音楽を支えた人たちと僕自身の音楽人生を支えてくれてきた人たちが総出で力になってくれてるんで、これ程頼もしいことはないですよね。このシリーズ、基本はカバーアルバムとしてのものなんだけど、そこに1曲ずつオリジナルを入れることによって、聴いてくれる人たちへ、この先のISEKIへの期待感を持ってもらうことができたらいいな、という願いもあるんです。このカバー7曲と最後にオリジナルコラボ1曲というのがベストなバランスだと踏んでこの内容になりました。‬

ー ちなみにカバーソングではどの曲が一番制作段階で印象的でした?

■ISEKI: やっぱり山下達郎さんの「RIDE ON TIME」(M1)ですね、コーラスワークが凄く多くて。当たり前だけど達郎さんの曲、歌うのが難しいんですよね。だからその分じっくり向き合えて楽しかったです。

ー この時代の音楽にフォーカスしたっていうのは、キマグレン時代よりもっとISEKIさんのルーツである音楽に照準を合わせたプロジェクトってことですね。

■ISEKI: そう、元々の僕の持っているものを出すっていうテーマがあるんです。小さい頃は兄弟が買ってきたCDを聴いて、そこでどんどん好きな音楽に出会っていって。初めて聴いたCDはCHAGE and ASKAさんの「LOVE SONG」。 その時代に売れてたJ-POPの中で自分が好きだった音楽っていうのが後々振り返ってみるとAORの影響を受けていたものばかりだったんです

ー 音楽のインプット、始まりは兄弟のCDからで、今はどんなものから?

■ISEKI: 最新で言えば、それこそ、このカバーシリーズが今までにないくらい豊かなインプットになっている感じです。自分の歌でないものを歌って、しかもレコーディングまですると、今までは表面的に “良い曲” として聴いていたものが、より深くからだに入ってくるんですよね。好きな曲をレコーディングする事で、細かい歌い回しとか曲の構成とかに、”なるほど、こういう仕組みになってるんだ” って発見が数え切れないくらいあって、その度にどんどん自分の知識とか技術にリンクして身になっていく感覚があって。今年はそういう意味ではこれまでで一番のインプットをやれてる年だと思います。

ー しかも3作含めたら既にカバーを21曲も。

 

■ISEKI: 本当に勉強になりました。オリジナルアルバムもこの後出したいと思って動き始めてるんだけど、このカバーシリーズも引き続きやれたらいいな、とも思っています。音楽をインプットするにあたり、これ程までに深い感覚を会得できるものってそうそうないな、って今回やってみて体感したので。

 

ー カバーでのインプットを経た今、出てくる歌や曲はこれまでと違ったものになってきてますか?

■ISEKI: かなり違いますね。音楽の聴き方も変わったし。あの時代の音楽ってセブンスコードが絡んでくるようなジャジーなフレーズが多かったり、分数コードがあったり、今までやってきた僕の音楽にはないレイヤーの音楽が広がっているんだけど、その響きっていうのをやっとからだが覚えてきてる感覚があります。歌を歌うと、通常のメジャーコードでは歌えても、分数コードとかセブンスとかが入ってると、ちょっとでも音やテンポがズレたらめちゃくちゃ外れて聞こえるんですよね。今まではアリと判断していた歌のスキルも、ソロISEKIでは全然足りてない、って事に3年前くらいに気づいた時があって、全然歌えてなくてコードの中で歌が動けなくなってしまった事があったんです。その時に “これはヤバいな、俺へたくそだ” と気づく訳ですよ。自分の音の感覚がついていけてない感じ。でもカバーをしたりとか、自分でそういうAOR風味な曲を作っていく過程で、からだの感覚がどんどん作られていくのが分かったんですよね。やっぱり物事っていうのは “経験と数” だな、と。ビートルズは駆け出しの頃、もうひたすら毎日のようにクラブのハウスバンドでいろんなジャンルのバンドのカバーを演奏しまくってたらしいんだけど、彼らの音楽の多様性っていうのはまさにそこで培われたそうなんです。それを聞いて “あ、今俺、その時だな” って思ったんですよね。今後10年、20年やる為のベーシックを今作ってるんだな、って。

ー 今作のオリジナル・コラボ曲「バブル・サマー」はまさにAOR風味を感じる曲になってますが、そういうベーシックが身についてから作られた曲?

■ISEKI: そうですね、ジャンク フジヤマくんと共同で作ったんだけど、彼もすごい感覚を持ってますね、このジャンルに於いては特に。今回は夏の空にパァーッと突き抜けるようなアップチューンを作りたいね、っていうアイディアから始まったんだけど、自分の “こういうのがやりたい!” っていうイメージ通りの曲に仕上がりました。自分の元々ある手癖みたいなメロディーラインと、カバーをして培ってきたものと、ジャンクくんの才能も取り込んで。本当に遊びの延長みたいな感覚で作ったんで、面白いおもちゃ箱みたいな楽しめる曲になったと思います。

ー ソロとして歌っていくベーシックが出来上がった今後は、どんな動きになりそうですか?

■ISEKI: まずは今月、カバーアルバム3作目が出るので、それも楽しんでもらえたらと思うし、ひとまず3部作がそこまでで落ち着くので、オリジナル・アルバムの準備に本格的に目を向けて取り組んでいこうと思ってます。なんせカバーで得られた感覚が今はあるからね、自分の新たな段階として、ここからもがんばっていこうと思ってます。