-約2年ぶりのアルバム発売おめでとうございます!miwaさんにはアルバム発売の度に本誌で表紙をやっていただいています。
miwa:いつも応援してくださってありがとうございます!
-早速ですが今回アー写が随分大人っぽい印象を受けました。
miwa:女神のイメージです。虹をかける女神。
-ジャケ写も非常に世界観がありますよね。
miwa:今作は水の世界をイメージしていて、水を巡る感情の旅なんです。誰かが悲しみの涙を流して、それが川となって海となってそれが蒸発して雲となってそれが誰かにとっては恵みとなる雨となって喜ぶ人がいるかもしれない。そんな循環を巡る感情の旅。ジャケ写(初回盤)の大きいmiwaはそんな世界に虹をかける役割を持った女神で、小さい5人は涙を流していたり、悩みを抱えていたり、一歩踏み出す勇気がなかったり、それぞれの感情を持っていて、その5人が天を見上げて虹を見て元気になって先に進んでいくというイメージです。アルバムタイトルの『SPLASH☆WORLD』の世界観をそのまま具現化しました。
-今お話しにでた『SPLASH☆WORLD』というタイトル自体も今までとは雰囲気が違う印象を持ちました。miwaさんのアルバムというと今までの流れもあって、1ワードでというイメージだったので。
miwa:元々は“SPLASH”という単語からスタートしているんですよ。2年前くらいから表現したいテーマでもあって。今作も前作の『ONENESS』同様で森本千絵さんにアートワークを担当していただいたんですけど、さきほどお話しした今作のコンセプトを森本さんにお伝えして、デモ音源も聴いてもらってという流れの中で、“SPLASH”という単語をテーマにした世界だねという話になって、今作のタイトルはそれだと思いました。“SPLASH”というテーマに基づいた“WORLD”。
-2年前くらいから表現したいテーマだったというお話がでてきましたが、なにかきっかけはあったんですか?
miwa:水を使った演出でのライブをやってみたいというのがあったんですよね。水が弾けるイメージ。野外ライブをやりたいなというのもあって。自分の中でまだ頭の中だけでまだ具現化できていないフワッとしていたSPLASHという単語が、SPLASHという曲を書いていくことによってどんどん明確なものになっていきました。
-この曲の展開がとにかくめまぐるしいですよね。曲のスタートからゴールが全然予想できなかったです。
miwa:すごい展開ですよね(笑)。やりたいことを詰め込んだら最終的にあの形になりました。波がまったくない張り詰めた水面に一滴だけでも落ちたら波紋って広がるじゃないですか。何かが生まれる瞬間みたいな。曲のスタートはそういうイメージで、そこからテンポも変わっていって、サビではSPLASHという単語の意味のとおり弾けたり、感情が開放するような広がりがあって、2番からはストリングスやホーンの音も入ってきて、さらに大きな広がりになっていって、こんなに展開が多い曲なかなかないですよね。最終的には膨大な量のデータになって、ずっと一緒に制作をやってきているNAOKI-Tさんもこの曲にはすごく時間がかかったって言っていました。
-さまざまな展開がありすぎて、この曲だけで一つの物語というかミュージカルみたいなイメージが湧きました。
miwa:そうなんです!そのイメージ!ミュージカル感ありますよね。スタートからゴールまでずっと進行していて同じところには戻ってこず、一つの物語として成立しています。
-この曲に対してのmiwaさんの熱量の賜物ですね。こだわり方がすごい。この曲はもちろんですが、アルバム全体を通してすごく大きな世界観も感じました。何万人という規模の人がそこにいるような画が浮かんできて。
miwa:そう言ってもらえるのはすごく嬉しいです。今言ってくださったように何万人の画というのも私の中ではイメージがありましたね。実際この後に控えているアリーナツアーで何万人という人に聴いてもらえるというのもありますし、そこに繋がる今作はそういったイメージを持って気合を入れて作らなければなという想いはありました。ずっとやってみたくて温めていた今作のテーマをこのタイミングで踏み切ったというのはやはりそういった側面があって。今作をアリーナという大きな会場で表現できるということにすごくワクワクしています。一体どんな風になるんだろうって。
-とんでもない規模の世界観になりそうですね。11曲50分というしっかりとしたボリューム感で、聴きごたえはありながらも重くなく、作品としてのバランスや完成度が高いなとも思いました。
miwa:今作のための新曲4曲をいかに大事に書けるかどうかがアルバム全体のクオリティを上げる重要な要素だとは思ったので、8曲目の「ATENTION」みたいな今までにない感じの楽曲も作りましたし、10曲目の「泣恋」に関しては「SPLASH」と対になるようなイメージで作っていて、アルバム全体の世界観を構築していく上で欠かせない楽曲になりましたね。「SPLASH」は雨と波の音から始まるんですが、「泣恋」は滴が落ちる音から始まるので、今作のテーマに対して重要な曲です。
-対になっている曲をアルバムの最初と最後にするのではなく、そのあとの「あなたがここにいて抱きしめることができるなら」でアルバムを締めくくるという曲順も非常に興味深いです。
miwa:「泣恋」で締める感じではあるのですが、「あなたがここにいて抱きしめることができるなら」が11曲目にあることで、1曲目の「SPLASH」に戻ることができるんですよ。循環する感覚。繰り返し聴いてもらえる作品にしたかったんです。冒頭でもお話しましたが、いろいろな感情で旅をしていくような作品で、例えば4曲目の「夜空。feat ハジ→」は失恋の曲ですし、3曲目の「Princess」では出会いを求めてワクワクしていて、「泣恋」では愛しすぎて涙が出てしまうような、造語になりますが私の中で愛し泣きというキーワードがあって、「あなたがここにいて抱きしめることができるなら」では生命の誕生を取り扱った大きな深い愛情を歌っていて、それを経て「SPLASH」に戻った時に感情の旅の末に、新たな感情をまた開放できるような感覚。繰り返すことによって感情の整理や浄化ができますし、新たな視点を持てることもあるじゃないですか。そういうことに気付けるような作品にしたいという想いがあって、曲順にもすごくこだわったんですよ。新曲4曲が後ろのほうに固まっているのは変じゃないかという指摘もあったんですけど、今作はこの曲順じゃなきゃ嫌ですって言いました(笑)。新曲かシングル曲かという並べ方ではなくて、今作に関してはその楽曲の感情や曲調、曲の意味というのをどうしても重視したくて。目で見た曲順ではなくて、この曲順で聴いた時の感覚をとにかく優先しました。
-かなり強いこだわりを持って曲順を決めたんですね。
miwa:ここまでアルバムの曲順にこだわったのは初めてかもしれないですね。自分で通して聴いてみてこれだ!と思う順番を突き通しました(笑)。私が思う良いアルバムって曲順通りに繰り返して聴ける、アルバムの中の数曲が好きとかではなくてアルバム全体として捉えられる物なんです。そういう作品って時間が経ってから聴いてもその時の感情が思い出されたりとか。今作は聴いてくださるみなさんにとって、そういう1枚になってほしいという想いがすごく強いです。だから何回も何回も繰り返して曲順通り聴いてみてほしいですね。
-僕も資料をもらってから繰り返して聴いてみたんですが、確かに1回通して聴いたときと11曲目から1曲目にいってまた聴いた時の感覚が少し違いました。聴こえ方が違うというか。
miwa:ありがとうございます。私自身が提示する今作の正しい聴き方です(笑)。みなさんもぜひそうやって聴いてみてくださいね。
-今作は今までキャリアを積み上げてきたmiwaさんだからこそ完成できた作品なのかなとも思いましたがどうでしょうか?
miwa:それは間違いなくそうですね。デビュー当時とかでは絶対無理ですよ。
-今のmiwaさんはアーティスティックな部分と大衆的な部分のバランスが絶妙だなという印象があります。
miwa:結果だけを求めることはしないですね。結果だけを求めると失敗するような気がするし、結果を求めすぎたら正直私も楽しくない部分もでてきますから、やりたいことをやるということも大事にはしています。人の意見を聞きつつ聞かないというか、参考にはするけど、それだけに左右はされないし惑わされないようにしなければいけないとは思っています。人のせいにはできないし、自分で責任を負わなければいけないですからね。シンガーソングライターは特に。自分で書いて自分で歌うわけですから。
-その意志の強さが今のmiwaさんを培っているわけですね。ライブでもそこを感じることがよくあるのですが、今作をひっさげてのアリーナツアーはどんなライブにしたいですか?
miwa:今作の世界観をそのままライブで表現できたらと思っています。水がテーマになるのでその静と動の部分とか。どのライブでもそうですが、その日にしかできない空間を一緒に作りたいなと思います。今回は特にコンセプトがしっかりとある中でのツアーで、それをツアースタッフさんとも共有できているので、そこから出来てくる舞台だったりとか演出は今までのツアー以上に凝ったものになるんじゃないかなと思います。こんなにアルバムのテーマやコンセプトを事前にツアースタッフとも共有できていたことは過去になかったので私自身もすごく楽しみです。今回は作品とツアーが分かれているものではなくて、作品があってのツアーであり、ツアーがあっての作品で、すべてひっくるめて“SPLASH☆WORLD”なので、そこは楽しみにしてもらえたらなと思っています。
-ライブと言えば今作の初回盤DVDには母校慶応義塾大学で開催された「三田祭前夜祭」スペシャルライブの模様が収録されるそうですね。
miwa:すごく面白いライブでしたね。在学中は三田祭には参加できていなかったのですが、今回チアリーディング部のみなさんとコラボしたりして、三田祭をようやく味わうことができたかなと思います。しかも後輩(大学生)がメインの客層で、特殊な一日だったと思いますね。私がやたら先輩風を吹かせている貴重なライブ映像です(笑)。
-それは相当貴重ですね(笑)。
miwa:いつものライブとスタンスが違ったんですよ。普段は老若男女に向けてどう発信するかを考えていますが、今回はターゲットが後輩というところだったので。後輩に良いところを見せようとするmiwa先輩でした(笑)。
-必見ですね。
-今月号はeggman35周年記念の武道館公演でも配布されるので、それについても伺いたいと思います。
miwa:35周年おめでとうございます!
-ありがとうございます。武道館は大学卒業ライブもやったりなど思い出の地でもあるとは思いますが、今のお気持ちを聞かせてもらえますか?
miwa:eggmanはデビューライブをやらせて頂いた私にとってスタート地点とも言えるライブハウスで、そんな大切なライブハウスの35周年記念公演で武道館という場所でライブができることはすごく光栄ですし、嬉しいです。7年という期間私がアーティストを続けてきて、eggmanが35周年続いてくれたからこういう機会ができて、それはすごく大事なことだなと思っています。
-miwaさんとeggmanは切っても切れない縁ですからね。近年本当にお世話になったアーティストですから。デビューライブ当時から見てきた立場としてすごく楽しみです。eggmanでの思い出も聞かせてもらえますか?
miwa:やはりデビューライブの思い出が強いですかね。あの日から今が始まっていますから。でもそれ以外のタイミングでもイベントやライブなどやらせてもらっていて、心の距離が離れていないライブハウスだなって思っています。だから懐かしいという感覚になることもなく、いつでも気軽に帰れる場所って感覚はありますね。そういう関係でいられる場所ってなかなかないので、これからも大切にしていきたい場所です。
-今でこそeggmanのロッカーにいろいろなアーティストのサインが書いてあるんですが、そのスタートもmiwaさんでしたからね。
miwa:そうでしたね!38番のロッカーにサイン書いちゃいなよって言われて書きましたもんね(笑)。
-それ以来eggmanはmiwaさんの聖地の一つとして観光名所になっていますよ。
miwa:唯一悔やまれるのはeggman近くで私が大好きだったカフェがなくなってしまったことですかね(笑)。第二の楽屋がなくなってしまいました(笑)。
-そんな場所もありましたね(笑)。これからもmiwaさんゆかりのライブハウスとして、フリーペーパーとして応援させてください。今日はありがとうございました。
miwa:ありがとうございました。