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NIKIIE interview
- SPECIAL -

NIKIIE interview

心の中の本当の気持ちを自由に描くNIKIIEの音楽世界は、白壁の陰りを照らす間接光のようにふわっとした空気感。前作から飛躍的に幅を広げた楽曲表現の豊かさに、それを実現させるまでの悩みや葛藤も連想させる反面、目の前で話すNIKIIEの表情は至って明るく、言葉をあたまの中で巡らせながら時折身を乗り出して話す様が印象的。毎回いろいろな表情を見せる過去作品から、今回リリースとなる2nd. album『Equal』までの流れを、自身はどう捉えるのだろう。

Interviewer : 鞘師 至

光と影はイコール。

 

–前作までの作品と比べて歌、楽曲共に自由度が増して表現方法が幅広くなった気がします。作曲方法などは変わりましたか?

■NIKIIE(以下…N):デビュー前は鍵盤と歌で弾き語りスタイルのライブを続けて来たんですが、バンドの共演者の中にひとりだけ弾き語りで参加したりするのが好きだったんです。その中で共演するバンドの音楽から貰うインスピレーションだったり、自分がお客さんからシンガーソングライター然としたイメージだけに限定して受け取られる事を打破したい、という願いがあったりして、ジャンルに捕われずに歌いたいと昔から思ってやっていたんですが、今はそれが少しずつ実現できるようになってきたと思います。特に異ジャンルの音楽から得るアイディアが、自分の表現の幅を以前より広げてくれていますね。

–系統の違うバンドとの共演ですか。共鳴できるかを考えると怖くなかったですか?

■N:うん、怖くなかった。高校生の時に、生まれて始めてステージに立ったのが地元の小さいライブハウスで、もうレゲエもヒップホップも混ぜこぜの共演者の中で自分ひとり、弾き語りで参加して。その時はまだジャンルなんて分からなかったから、自分が浮いてるかどうかも分からずただただ精一杯やろうと思ってステージに立ったんですが、他のバンドのお客さんが身体揺らしてノリノリで見ていた中で私の出番が始まった時に、今まで陽気に騒いでいた人達が静まり返ってすごい集中力でステージを見てくれて、そこでライブの楽しさを知ってしまったんですよ。だから今でもバンドの人達や、いろんなジャンルの人達と一緒にライブに出るのがすごく楽しい。

–学生時代には留学もされていたそうですが、海外生活の中にも今のNIKIIEの音楽のヒントになるような心にささる出来事はありました?

■N:オーストラリア留学中、当時病気で活動休止しているにも関わらずアルバムがすごいセールスなんだ、って友達から勧められた「デルタ・グッドレム」という歌手がいて、曲を聴いてすごく気に入ったんです。彼女はピアノ弾きのシンガーだったから「耳コピしたい!」と思ってホームステイ先にあったピアノをなんとなく弾いてたんですよ。そうしたら友達がスコアブックを持って来てくれて、それがきっかけで曲の書き方を学んでいったんです。この世には「コード」というものが存在するんだ、とかね(笑)。もう本当にそのレベルから。それから曲を書くようになって、留学中の授業で老人ホームを訪れた時に、施設にあったピアノで自分の初めて作った曲をこっそり弾いていたら、おじいちゃんおばあちゃんが「すごくいい」って喜んでくれて。そこで初めて「私の曲って人前で歌っていいんだ」って思えたんですよ。

–留学先で起きたそういう出会いやきっかけは、偶然もあれど元々持っていた感覚や感受性あってのものだったのかもしれませんね。NIKIIEワールドの原型というか。

■N:はい。私子供の頃から学校とか、そういう自分の生きているコミュニティーの中での、自分の居場所に対して違和感がずっとあったんです。自分が投げかけた事柄に対して、共鳴してくれる人がいない感覚。 何かズレてる、って。「ここから抜け出したい」ってずっと思ってました。それでもこの存在が”普通”と捉えられる場所がどこかにあるんじゃないかって、小さい頃から探していたら、留学した先のオーストラリアで初めて「あ、ここだと普通でいられる」って、思えたんですよ。それからは日本に戻って来ても、音楽を通して自分が普通でいられる場所を見出せるようになりました。ライブをしていくうちに、ライブハウスに出入りする人達とも「ああ、一緒の感覚なんだな」って感じて嬉しかったり。

–確かにデビュー当時から今作まで、歌詞で描かれている世界には「外の世界と自分の関係性」の様な内容がよく顔を出します。それを音楽でアウトプットして、共鳴する人を探してきたのかもしれませんね。2年でフルアルバム2枚をリリース、NIKIIEの内に詰まった思いはかなりの量が外の世界へ生み落とされた訳ですが、今新たに心に溜まった思いは、過去とはまた違った類いのものですか?

■N:そうですね、どんどん変化していっています。しかも今は一人で弾き語りをやっていた時期と比べて、アイディアや、それを具体化してくれる人達がいて、より明確に、リアルタイムに表現できるので、その時々で思っている気持ちは新しいものとしてこの先どんどんアウトプットしていきたいと思っています。「春夏秋冬」、「HIDE&SEEK」、「紫陽花」とシングルを出していく中で毎回感じたのが、曲を聴いてくれるみんなから反応を貰える嬉しさと、その反面また私をひとつだけの角度から切り取って捉えられてしまう、という戸惑いでした。みんなから今、私はどう見えているんだろう?って。ファーストアルバムのリリースツアーが終わった時にひとつ分かったのが、「私は自分の作ったイメージをどんどん壊していきたいんだ」ってことで。常に変化していたい人間なので、新しい自分の気持ちを常に伝えられて、楽曲にしても毎回何かひとつ自分なりのチャレンジをすることを心掛けてます。新しいことを取り入れて、それが周りからは「普通のPOPSっぽくなったね」と思われたとしても、自分の中でチャレンジであれば、新しい意味があることであればそれでいい。自分が納得して出せているものであれば、何を言われても動じないタフさが少し身に付き始めたのもこの時期だと思います。それまでのデビューして1年目は、とにかく怖かったですね。自分が「こういう人間だ」と特定されて見られる事が。

「どこかに居場所を求めなくなった。」

 

–デビュー当初、FMではどの局でも「春夏秋冬」がかかっていて、NIKIIEに対する世間からの期待度、注目度が活動の多忙さを連想させました。当時一気に忙しくなったのでは?

■N:なりました。デビューする前は代官山の雑貨屋でアルバイトしながら、ライブを月1〜2本やれたら嬉しいくらいのマイペースな生活だったのが、デビューして一気に音楽メインの生活に変わっていって、演奏だけじゃなくキャンペーンやインタビューのような思いを語る場所というのが、それまで全くなかったところにすごい速度と量で入ってくるようになったので、最初の1年は自分の中から思いを出して出して、中身がからっぽになるような感覚でした。

–音楽漬けの生活が訪れた喜びよりも、葛藤が大きかった?

■N:がむしゃらでした。とにかく分からない事だらけで、目の前にあることをやるのに精一杯でしたね。例えばレコーディングではクリックでリズムを取りながらの録音にも慣れていなかったから、クリック音がある切迫感だとか。

–野生児が文明を手に入れて戸惑う的な?

■N:そうそう、本当そうです(笑)。それでも使おうとはしてみるみたいな。

–その当時と比べたら、今は周囲の環境から浮いている感覚はなくなってきました?

■N:う〜ん、まだ浮いてるかな(笑)。音楽での表現は少しずつ、自分の生活や思いを溶かしていけるようになったけど、同世代の女の子や、友達と会ったりした時は感覚がズレてきてると思う(笑)。

–昔よりも今の方が?

■N:うん。でも、こうやって好きな事を続けてることとか、何かを発信している私を見て「勇気づけられる」と言ってくれる友達もいて、励みになってます。自分の居るべき場所へ、落ち着いて来てはいるんですけどね、普通の人達の場所からはどんどん離れていってるのかも。だからデビューして3年目に入る今になって、ようやく同じシンガーソングライターの方々や、音楽で出会った人達と新しく友達になったりすることを怖がらなくなってきた。この世界の人達の方が、きっと自分と近いんだな、って。

–音楽のアウトプットで、自分で自分の居場所を作れて来れた、ということなんでしょうね。

■N:自分の今いる場所が、その時の自分のいるべき場所と一致してきたかな。その分苦しいこともあるけど、昔と比べたら全然へっちゃら。疎外感はなくなりました。

–既存のコミュニティーに寄り添っていく事って簡単だけど自分のオリジナルの場所ではないから、どこかハマらない感覚を抱きながら、悩みながら皆生きてますからね。NIKIIEのファンがどんどん増えていっている実情は、自身で作った居場所が皆でシェアできる新しいコミュニティーになっているって事だと思います。

■N:居場所があれば出会うひとも沢山いて、去っていく人もよく見えるから、「結局は自分自身なんだ」と思うと儚く感じることはありますけど、でも去っていく人達の思いも受けて、自分の中の前向きな光にしていってるので、悲しくはないし、自分の幹は時間を経てどんどん太くなっていってます。

–思いは細かく変化しても、根源にあるNIKIIEの感覚は昔から変わらず、人との関わり合いに対する”知りたい”と思う知識欲だったりするんですね。

■N:タフにはなったけど、そういうことをずっと悩んでいくんでしょうね、この先も。ふとした瞬間に自分の存在意義が分からなくなったりするし。でもライブをやると毎回、自分が吐き出している以上に、お客さん皆さんから受け取る力がすごく大きくて、生命力を貰ったりするので、その繰り返しで今までやってこれています。

–ライブが原動力?

■N:そうですね。 楽しい。

–ライブと言えば3月からレコ発全国ツアーが始まりますね。どんなツアーになりそうですか?

■N:ファーストアルバムのツアーと同様、弾き語り編ツアーと、バンド編ツアーの2つで構成されてます。当時はとにかく精一杯でがむしゃらに突き進んだツアーだったんですが、今回はいくつかのツアーを経験した上で得れた、お客さんと共鳴する気持ちよさだとか、思いの伝え方なども携えてのライブができると思うので、気持ちはどんどん変化してますが、今回のアルバムリリース後に改めて向き合った自分をリアルタイムに出せるツアーになると思います。

–最後に今作のタイトル『Equal』。何と何がイコール?

■N:自分の中のサニーサイドと、ダークサイドは全て真実で、心の中ではイコールで繋がっているのに、今まではどこかうまく共存できずに分離した表現に近かったと思ってるんですよ。両方が本当に真実なんですけどね。その両極端な自分の気持ちが、今回のアルバムでようやく共存して表現できたと思います。ライブでも、そういう意味での両部分を持ち合わせた力強さを表現できるステージになると思うので、ツアーにも是非足を運んでもらいたいと思っています。