クワタユウキ(以下 クワタ Vo./Gt.): “READ ALOUD”というバンド名は直訳すると”読み上げる””音読する”という意味があります。僕自身が小さい頃から引っ込み思案なタイプだったのですが、誰もが持っている吐き出せない気持ちを”口に出して読み上げていこう”という意味を込めています。
―今作の『アカンサス』というタイトルの由来もあれば、お聞かせ頂けますでしょうか。
クワタ:『アカンサス』は花の名前なのですが、花言葉に”芸術””技巧””離れない結び目”という意味があります。”芸術””技巧”という部分は自分達のバンドサウンドを象徴しており、”離れない結び目”はツアーを通じて出会ったかけがえの無いお客さん達との繋がりを象徴しています。今回のアルバムではそういった繋がりをどんどん増やしていきたいという気持ちを込めてこのタイトルを付けました。
-今作を聴かせて頂いた最初の印象としまして、圧倒的なボーカル力を感じました。個人的な印象ですが、ボーカルに多様性があり、場面によって女性的な”美しさ”を表現しているところもあれば、場面によっては全く違った男らしい”力強さ”を表現しており、楽曲の世界観の多くをボーカルで創り出している印象がありました。そういった面で意識しているところはありますでしょうか。
クワタ:僕の地声が結構低く、でも今の音楽シーンには中性的な声を持ったアーティストが台頭している中、自分がどんな存在感を放てるのかというのはとても意識しています。
自分の声にできる事を試行錯誤して、様々なカラーを出していければと思っています。
-ボーカルの声に、一度聴いただけでは感じ切れない程の感情が深く込められていて、とても厚みのあるモノに感じました。
そして、何度も聴いている内にまた新たな印象が出てきたのですが、ボーカルを支える楽器の”構成力”と”演奏力”が相当高いなと感じました。
ボーカル力に負けない楽器のアレンジの構成はとても大変なのではないでしょうか。
秋澤正志(以下 秋澤 Ba.):ボーカル力が強い分、自分達は比較的、自由にやらせてもらっています。多少アレンジに凝ってもボーカルがそれに飲まれてしまう事は無いので、逆にやりやすいですね。
クワタ:”READ ALOUD”の一番の武器は自分の”声”なので、それを活かすようなにアレンジは常に考えてくれています。
-今作の楽曲に関してもお聞かせ下さい。1曲目「タイムトラベラー」は”美しさ””壮大さ”を感じる楽曲でありながら、歌詞は今の社会に対する強いメッセージを感じる歌詞になっていますね。
クワタ:この楽曲は、短い時間の中で急遽制作した楽曲だったのですが、その分、衝動が強い楽曲にもなっています。
歌詞に対してもあまり考え込まず書いていて、人身事故の影響で電車が運休した時に、隣にいた人の発言から感じた心境から書き始めました。
どういう経緯があったのかはわからないですが、きっと何もなくて自殺する人はいないと思うし、そういう人に対して舌打ちをする心理がわからないなと思ったんです。とは言え、それもきっと自分自身を良く見せたいが故のカッコ付けなんじゃないだろうか。自分自身もこの東京という街の中、俯瞰で見ている1人なんじゃないだろうか。という問いかけを提示したかった楽曲です。
-2曲目「君の声を思い出す」は昔を思い出すような懐かしい楽曲になっており、切なさも感じる楽曲ですが、決して後ろ向きではなく前を向いている楽曲になっている印象があります。
クワタ:今までの作品では、Aメロが絶望のイメージから入ればサビも絶望のイメージで構成していて、1曲を通して同じ気持ちを吐き出していくイメージで制作していました。ですが今作は、最後には”希望”をみせる事のできるような楽曲の構成にしています。
遠藤タカヒロ(以下 遠藤 Gt.):この楽曲は、イントロのメロディーから広げて曲を創っていきました。そこにこういった歌詞が乗って、この楽曲の持っている世界観が大きく広がりました。
-楽曲が持っている世界観とはまた違った世界観もボーカルが背負っているイメージがあって、すごく深い楽曲に感じました。
遠藤:その2つの世界観が楽曲の中で1つになっているところが、この楽曲の良さであるとも思っています。
秋澤:この楽曲は今作の中でも、キャッチーな要素が多く含まれているので、幅広い方に聞いてもらいたい楽曲です。
遠藤:”READ ALOUD”の入口になり得る曲だと思うので、この楽曲を聴いて他の楽曲にも興味を持って頂けると嬉しいです。
貝吹”KONG”裕一郎(以下 貝吹 Dr.):こういった構成の楽曲だと、”悲しい”曲になってしまいがちなのですが、ボーカルの歌詞の中にある”希望”を大切にし、”切なさ”を大切にして制作しましたね。
-「風が吹くから」は壮大な空をイメージする楽曲ですね。
秋澤:UKロックのような、疾走感もありつつ、壮大になるように楽曲を創っていきました。
歌詞の中にあるように、”何かの目標に向かって進む時は必ず向かい風が吹いてくる”という事は、僕達の12月7日の渋谷クアトロでのワンマンライブにも通じるものでもあって、自分達の中でも強い思い入れがあります。
遠藤:この楽曲のイントロからボーカルの歌い出しまでの流れは、最後にできたのですが、ここが楽曲全体の世界観を全部背負っているようなメロディーになっていて、とても聴き応えのある部分になっています。
クワタ:前作までは、バンドサウンドという事に拘っていたんですが、今回はシンセやパッドの音色を使用したりと、ライブとは違うアプローチを取り入れています。今作で一番始めに完成したこの曲は”READ ALOUD”の新しい第一歩でもあると思っています。
-「月と太陽」は対してバンドサウンドが強調されたサウンドになっていますね。
クワタ:アイリッシュロックのようなビートをバンドで取り入れるとどうなるのかなというのが、この楽曲の制作の始まりです。
歌詞を書く時は”手紙を書くようなイメージ”を大事にしているのですが、この楽曲は言葉をとても詰め込んでいて、他の楽曲とは違った書き方になっていますね。
高校の同級生に久しぶりにあった時、友達は夢への大きな一歩を進んでいる中、自分の状況がなかなか変わらない気持ちからのジレンマを”月”と”太陽”に例えています。
-「BGK」はとても攻撃的な楽曲ですね。
貝吹:”ビート・グルーブ・ノックアウト”の略なのですが、もうノックアウト寸前の人が相手をノックアウトしてやろうと奮い立たせるような気持ちを楽曲にしています。
クワタ:めまぐるしい展開で、自分達のスキルを出し切った楽曲です。
-最後に収録されている「朝」は、今作を通じて様々なアプローチで揺さぶってきた中、今作を締めくくる楽曲になっていますね。
貝吹:誰かと共鳴する事で生まれる化学反応によって、解決できる事がたくさんあって、それは生まれてから死ぬまで永遠に続く事だと思っています。
この楽曲は、夜から朝までの時間軸とすごくマッチする構成になっていて、その時間に聴くとより染み込んできます。
この楽曲が終わる頃には朝になり、また今作をまた一から聴いてもらえると嬉しいです。
-今作を引っさげて12月は渋谷クアトロでのワンマンライブとなりますが、心境はいかがでしょうか。
貝吹:7年程前、クアトロに憧れのドラマーのライブを観に行ったんですが、そのライブ後になんとそのドラムを譲り受ける事になり、初めて持ったこのドラムを、いつか自分がクアトロに立つ事ができるようになった時に披露しようと、ずっと大切にしてきたんですよね。
今回のレコーディングも全てこのドラムを使ったのですが、メンバーが僕の気持ちを汲んでくれて、クアトロでのワンマンライブを決めました。
クワタ:『アカンサス』をリリースして、今までずっと応援してくれているお客さんと、新たに今作で出会ってくれるお客さんに対して気持ちをぶつける場所がクアトロだと思っているので、是非来て頂けると嬉しいです。
遠藤:前作までとは、今作はガラッと変わったモノになっていると思っています。”変わったね”といわれる事は悪い事に思われがちですが、どんどん新しい自分達を模索して、良い方向変わっていければと思っています。それを披露できるクアトロに是非とも来て下さい。
-ありがとうございました!