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reading note interview
- SPECIAL -

reading note interview

L to R : 鈴木政孝(Gt) / 平田勝久(Vo/Gt) / 平郡智章(Dr) / 中井真貴(Ba)

音色や綴られたことばを読み上げる、と小文字でか細く書かれた字面がバンドの世界観を代名する彼等の楽曲は、きちっと社会に組み込まれて不自由なく暮らしながらも虚無感を抱く現代人達がそれぞれの心の内を投影する姿見のようだ。 浮き世を俯瞰で眺める歌い手、平田勝久の情景描写はどこか憂いを帯びて浮遊するやわらかさと、中心部分にいつも残る意思の力強さ、対局しながら互いに惹き付け合う二つを併せ持つアンバランスな時間芸術だ。

interviewer / review : 鞘師 至

「今まで生きて来た人生と、これから生きていく人生を考えた」

―バンドの結成は2005年大阪。「土地柄なのか周囲にはラウドな音楽をやっているバンドが多かった」という彼等の生活環境下、通っていた高校で出会った平田勝久(Vo/Gt)と平郡智章(Dr)でバンドの原型をスタートさせる。 周囲の音楽のムーブメントとはまた別の繊細な旋律にフォーカスした音楽とは裏腹に活動は勢力的で、結成年には自主企画ライブを経てワンマンライブを開催したり、MBSラジオでの番組ファン投票で5週連続で1位を獲得したりと、勢力的な彼等のアクションと周囲の反響はのっけからリンクして地元での名を広げていく。 2009年には現在のメンバーが揃い、その後上京。 バンドを中心とした人生設計がここで本格化する。

平田(Vo/Gt):「上京して2年半経ちましたけど、東京に行くと決めた時はある種決意の時期で、いろいろ大変でした。 上京することへの賛成派と反対派の意見が噛み合ずめちゃくちゃケンカが多くて、当時出したデモCDシングルが周囲からの反応を満足に得られなかったらもうバンドも解散しようと思っていたくらい。 それでもなんとか上京できて、こうやってデビューCDリリースまでやってこれたのが嬉しい。」

平郡(Dr):バンド初めて8年くらいですかね。 本当に”やっと”です、ここまで長かった。

-腹をくくって4人上京した当月、東京での初ライブでeggmanに出演。音楽性と対照的に闘争心むき出しなステージにメンバーの覚悟を強く感じたのをよく覚えている。 獲物が射程距離に入った時のようにロックオンする感覚、向かう先が明確に見えた時にバンドに宿る突進力だ。 繊細な歌を歌うバンドがそれ以上の前提として魅せる強い意志の固まりがスピーカーの出音と混じって確かに見えた。 バンドで勝負するに当たり、その時reading noteにとって東京は”敵陣”だった訳だ。

平田:上京してバンドメンバー以外、生活の中で自分の身の上話だとか、音楽での悩みとかを話せる友達が全くいない、っていう環境が辛かった時期もありました。 大阪にいれば慣れ親しんだ環境の中で、地元の友達もいて、なんとなく生きていけばそれなりになんとなく生きれる環境だったのが、東京に来たら全てが1からのスタートで、生活の中で感じる感覚が全然違いました。 色々考えましたね。 このままでいいのかとか、これでよかったのかとか。 今までの人生にはもう戻る事はできないんだけど、やっぱり昔は楽しかったな、とか、音楽の道を選んだことですら正しかったかどうか疑った事もあったり。 まぁ今でもそういう時ありますけどね笑。 でもここ最近リリースに関わったスタッフの方々だったり、ストリートライブをやり始めて出会ったお客さんだったり、初めて出会う人も増えて、そういう人達と自分の考え、願い、悩みなんかを共有できたタイミングが沢山あったんで、不安だらけの中で必至にバンドやって来た甲斐あって自分を少し好きになれたというか、自分は独りじゃないんだって思えるようになりました。

「ものを生み出すっていうのがどんな仕事より辛い。 その分やり甲斐も一番強い。」

-reading noteの音楽性、なんともいえない歌と楽曲の技巧は細部に渡り実に様々なジャンルのスキルがちりばめられたパズルの完成系。 メンバーそれぞれの音楽的バックグラウンドから持ち寄ったアイディアをリズム隊から組み上げて、リフと歌を載せていくのが作曲の基本形のようだ。 初めてのプロフェッショナルなレコーディング計画の下、曲を仕上げていった本作では、メンバーにそれぞれの思い入れがあるという。

鈴木(Gt):ギターフレーズは最後の仕上げですね、全体が出来てからバランスを取るというか。 まずリズムパターンを平郡と中井で組み上げるんですよ。 ギターからとか歌から作っていく作曲が一般的なんだと思いますけどね。 「インスタント マイワールド」(M2)のイントロとかは正に最後に差し替えていれ込んだリフですね。

中井(Ba):ベースに関しては今回メンバー以外にも、プロデューサーと共同作業でフレーズを詰めていったんですが、初めてで良い経験でした。 細かいフレーズは録音するその時まで決めずにアドリブで録った部分も多いです。 自分で満足するまで弾くだけ弾いたら、後はメンバーやスタッフに判断を委ねてフレーズを決めていきました。 手癖的には、昔よく聴いていたRage Against the Machine、SKID ROW、SIAM SHADEとかみたいなラウドな曲や、Radioheadみたいなロックのもの、いろんな要素が手に染み付いてると思うんですけど、自分の意思としてはもっと大枠の、”ベースとしてのシンプルなラインの中に侘び寂びは聴かせつつ、ロックである事”を常に考えて作っていきました。

平田:歌に関しては期日的にも労力的にもいつもギリギリで、絞り出して書いてるんで今回も大変でしたけど、普通のサラリーマンの生活をしていたら経験できない生みの苦しみと喜びがあるからやっていけるし、そこで諦めたらこのバンド中心の生活自体終わりですからね。 次作ではもっと確信に迫りたいと思ってます、曲も歌も。 もうなんとなくイメージはあるんですよ。
「このメンバーとだから」

-見知らぬ土地へ踏み込んで悩んで悩んで、がむしゃらに試行錯誤して生み落した作品がメジャーレーベルから流通を通して全国へ。 これまでのreading noteの軌跡を溶かし込んだ希望のアルバム『7+3』、具象化するには苦労も少なくなかったようだが、それを受け入れても尚前へ進もうとするその原動力は?という問いへの答えは至って明確で、語る目線はまっすぐにこちらを向く。

平郡:僕は非常に単純で、こんだけ続けててもやはりドラムが大好きだし、音楽めちゃくちゃ好きですからね。 あとは今のメンバーだからです。 こいつらとでなかったらバンドも組んでないしここまで長くも続けられてない。

平田:僕の場合は、苦労もあれどバンドをここまで続けて来た原動力は自身の意地ですね。 学校の同級生だった平郡とか、他のメンバーも全員、長い間人生引きずって連れ回してるから、曲も詩も僕が書いて、自由にやらせてもらえてるっていう反面、このメンバーをこの生活に引っ張って来た自分の責任っていうのを感じているんですよ。 だからreading noteでメシが食えるようになって、メンバー各々にこのバンドやっててよかった、って思わせられるようにしたい。 一番身近で自分に共感してくれてずっとやってきたメンバーだから、もう後には引けないし引かない、というか。 もしバンドを組んでなくて独りでシンガーソングライターみたいに音楽やってたとしたら、どこかで挫折した時にそのまま辞めてました。 心折れた時でもメンバーがいるから踏ん張って耐えられるし、めげずに前に進める。そういうバンドの強さがあって今も音楽が続けられてるんだと思います。