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showmore interview
- SPECIAL -

showmore interview

楽曲と歌声、双方にハイエンドな質感漂うポップユニットshowmore(ショウモア)。 ボトムスを生粋のジャズマンが担っていた4人編成のバンド期を経て、根津まなみ(Vo/作詞/作曲)、井上惇志(Key/作曲/編曲)の2人組となり新しい切り口のバンドの第2期をスタートさせた彼らの最新事情が詰まった配信シングルがこの度、2作連続でリリースされた。 1作目の「circus」は、Kai Takahashi(LUCKY TAPES)、大比良瑞希などが参加し、仲間のミュージシャンが集まる賑やかな夜の街を描いたMVが話題となり、2作目の「unitbath」では、都会で暮らす恋人のインドアでの瞬間を切り取った物語が描かれている。 モチーフはどちらも “東京”。 故郷から上京して今、東京を中心に活動する彼らがリアルタイムで持ち合わせた感覚で仕上げた時間芸術だ。 ロウ(raw)でオーセンティック。 このバンドの艶感は、こういう自身の感覚に正直なアウトプットから生まれるものだと改めて感じさせる作品だ。

Interview & Text : 鞘師 至

自由になった。

—今作の「unitbath」、前作の「circus」は共に根津さんのソロ名義の歌の世界観を、このバンドのセンスで仕上げた感じというか、以前のバンド全体の個性として魅せる音楽から、より今の二人の個々の音楽性が感じ取れるような音楽に変化していってる感じがしますね。

■根津まなみ( Vo/作詞/作曲 以下“根津” ): メロディーと歌詞は私が、アレンジと楽曲のメロディー構成は井上が、っていう役割分担はこれまでと変わってないんですけどね、以前はドラムとベースのメンバーもいて、そこにも合わせながらのアレンジを起こしていたのが、今はメンバーが1/2になってシンプルになったんで、確かに今の2人にフォーカスした楽曲になっていってるかもしれないですね。
■井上惇志( Key/作曲/編曲 以下“井上” ): 根津のメロディーと歌詞っていうのは、元々ゆるぎない軸として捉えてたんですけど、メンバーが4人だった時はドラムとベースの演奏技術の高さが尖っていたんで、そこもフィーチャーしたアレンジとして曲を作っていってたんですよ。 あくまで歌メインで聴かせつつも、歌とぶつからないスレスレのラインまでトリッキーなビートを効かせたり、ちょっとテクニカルなフレーズを入れたり。 そういうフレーズ、僕は今でも大好きなんで、例えば今回の「unitbath」の2回目のBメロのドラムパターンが7連符になってたり、変なタイミングで入れてるシンコペーションがあったり、9thコードが多様されてたり。 ちょっとしたスパイスとしては取り入れてるんですけど、大枠としては今は変にバンドアレンジに縛られる事から解き放たれたんで、すごく自然体に歌を生かす事とか、楽曲を生かす事にフォーカスできてるんです。 「circus」では初めて生のベースに代わってシンセベースを入れたり、ドラムの録り音には生音に加えてHipHopでよく使われてるTR-808(リズムマシン)のキックとかスネアの音を重ねたり。 アナログかデジタルか分からないような方向性に持っていったら、音の表現の幅が広がりました。 

—今だからこそできた曲ってことですね。

 

■井上: 本当にそうですね。 2人になったからこそ、これまではドラムとベースに使っていた部分のアレンジ作業を、ドラムとベースに囚われずに取り組めてる感じですね。 とにかく歌とメロを、っていう。 あとはこの編成になった当初、たまたま2人が聴いてた音楽が、トラックもの、DTMミュージックが多かったっていうのもあって、今回のシングル2曲の雰囲気にもそれが現れてるのかな。
■根津: 今年、たくさんそういう音楽がリリースされたんで結構聴いたんですよね。 コーネリアスとか、Mondo Grossoとか。 そういう自分達がかっこいい!と思う音楽には少なからず発想のヒントをもらって、自分たちの音楽をもっと自由にしてくれました。 今まではJazzっていうハコがあって、でも私はそこに適応できるキャラクターではないから、バランスで魅せていたんだと思うんですよね。 その独特の関係性が良かったんだと思うんですけど、今はそのハコがなくなって今までにはない自由さがあるかな。

 

—昔話していた、”POPSとしてリーチしたい” っていう部分で言えば、その時の音楽的な目標が実現していってますね。 今はかっこいいセンスは残したまま、もっとポップになっていってる気が。

■井上: そうですね、やりたい事にやれる事が追いついてきたんでしょうね。

 

—逆に今となっては、むちゃくちゃドープなジャズい曲とかも聴いてみたい(笑)。

■井上: 実は既にそういう曲も出来ていて、先日の2周年ワンマンライブでも演奏した「scope」って曲なんですけど、カマシ・ワシントンのような6/8拍子のビートを軸にしたもので、ある意味今はそういう振り切った玄人好みの曲もポジティブにできるようになりました。 ストレートな4ビートジャズの曲もあるし(笑)。 他にも、この前のeggmanのライブでもやった曲ですけど、根津のソロの曲をshowmoreに移籍させた曲があったり。 今のshowmoreでやったら絶対面白いな、と思って根津に相談したらOK出たんで、アレンジを新たに作り直して今ライブでは披露してるんですよ。

—あの曲、シンセベースがブリッブリでめっちゃかっこよかったなぁ〜生ベースよりパンチありました(笑)。

■井上: いい意味で2人だからこそ、やれる事が今あってそういう振り切ったアレンジがやれてるのは今すごく楽しいですね。 

—なんかすごいですよね、普通バンドってバンド全体のレイヤーで聴かせる集合体だから、メンバー抜けたらバランス保てなくなるものだけど、このバンドは全然違った(笑)。 元々の音楽的主軸だけになったから、一層キャラクターが引き立って。 今のshowmoreは強いですね。

■井上:以前の4人の時の曲の方が好きな人ももちろんいると思うから、僕らはそれ以上の曲をこれからどんどん書いていって、もっともっといいものを聴いてもらいたいですね。 ただ過去は全然否定してないのであくまであれがあっての今としての音楽をね、やっていきたいな、と。

リアルタイムな誰かに重なりたい。

 

—「unitbath」、歌詞に関しては超絶切ないストーリーですが、これ、根津さんの実体験?

■根津: う〜ん、実体験かどうかで言えば、、、実体験なんですけど(笑)。 でも自分だけの世界になっちゃうのはあんまり望んでないので、いろんな要素を入れてはいますね。 私、ソロでも活動してるんですけど、ソロの曲とshowmoreの曲、歌詞に関しては明確な差があるんです。 ソロでは過去の思い出とか、未来のちょっとした希望的なものとか、いろいろ書けるんですけど、showmoreでは今現在のリアルな事しか書けないんですよ。 今の誰かと気持ちが通っていたい、っていう思いがあって。 実体験って過去のものだから、この曲の歌詞では自分の実体験を素材にしながら、今の感覚で切り取る人間の弱い部分の描写にしてます。
■井上: ユニットバスっていうワード、都会でまだあんまりお金もない若い頃に恋人と一緒に住んでた家、みたいなものの象徴的なワードだと思うんで、よくこういう絶妙なテーマを持ってきたな、と思いましたね(笑)。

—さすが根津さんですよね、ワードセンスが。

■井上:過去にそういう経験をしてない人でも想像して込み上げてくるものがあるっていうか。 文脈から広がる情景が豊か、っていう根津のいい部分が出てる歌詞だな、と思いますね。

—「狭いユニットバスで抱き合おう 昨日のケンカは無かったことにして …明日がまた来ること願って」とか…切なすぎるっす(泣)。 寂しさと愛情の間で揺れる様(さま)、みたいな。

■根津:こういう経験してる人すごい沢山いると思うんですよね… 

—ジャケットデザインもこの切ない感じにめちゃくちゃ寄り添ってますよね。

■根津:このジャケだと一人だけ湯船に使ってますけど、デザイナー的にはこれは、こういう思いを抱いた女子の怨念らしいです(笑)。 実態のない想いを表現したかった、と言ってくれていて。 showmoreのデザインは毎回この徳山史典くんにお願いしてるんですけど、本当に常に最高なんですよね、センスのかたまり。
■井上: 毎度毎度本当にしっかり作品のイメージを汲み取ってくれていて。 「circus」のジャケでは、「これ使って」って写真一枚だけ材料で渡したんですけど、それだけで「歌詞の世界観を考えて、夜から明け方への時間の流れを表現してみた」っていってこれを上げてきてくれたんですよ。 デザインって凄いな、って思いましたね(笑)。

—そういう信頼できる人たちとのチームができてるのはいいですね。

■井上:本当にここ最近、メンバーみたいに親身になって携わってくれる人たちが増えてきて嬉しい限りです。 

カウンターカルチャーで在ること。

—今の音楽シーンの中で、showmoreは今後どんなバンドでいたいですか?

■井上:何かのオルタネイティブで在りたいんですよね。 自分が持ってる感覚のなかで、周囲はまだ十分に触れていないような感覚のものを魅せていきたい、というか。 田舎から出てきて今東京でこうやって活動していて、出会ったメンバーとその時に聴いてる音楽と、全部の要素が自分たちの音楽に活きてると思うんですよね。 これは僕らのこれまでの経緯から成り立ってる音楽で、僕らにしかできないものだと思うんですよ。 結果的にそれが王道な音楽じゃないのは全然構わないし、逆にカンターカルチャーとして誇らしいですしね。 僕らなりのかっこいい!と思ってる音楽をちゃんと見せつけて沢山の人たちに聴いてもらいたいですね。 まだまだ未発表の曲のストックも沢山あるし、これからどんどんそういう曲を出していくのが今から楽しみです。