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レトロリロン interview
- SPECIAL -

レトロリロン interview

ソウルフルな歌声とジャンルレスなプレイが魅力のポップスバンド、レトロリロン。年明け早々にリリースされる2ndEPは、よりリアルに綴られた歌詞と洗練された楽曲で聴き応え抜群の一枚だ。渋谷クアトロを含めたワンマンツアーも発表され、2024年も彼らから目が離せない。

Interview&Text:高田麻衣

──2ndEP「ロンリーパラドックス」リリース発表おめでとうございます!

一同:ありがとうございます!

──まずは「ロンリーパラドックス」というタイトルについてお聞きしてもよろしいでしょうか?今回のタイトルに込めた想いは?

涼音[Vo&A.Gt]:「ロンリーパラドックス」というのは造語で、「ロンリー」は、孤独に近い独りという意味、「パラドックス」は逆説という意味があります。人生の中で色々な可能性があって、自分が今まで正しいと思って生きてきたことが実は間違っていたり、絶対に間違っていると思っていたところに新しい発見があったり。前作の「インナーダイアログ」は、「自己との対話」っていうテーマだったんですけど、それを経て、どう自分の人生と向き合って生きていくのかを大事にしていきたいという意味も込めました。曲が6曲集まった時に、前作からの繋がりがあっても面白いのでは、というところでこのタイトルになりました。

──ジャケットについてもお聞きしたいです。

miri[Key]:今回はジャケットのラフを書く前にタイトルはまだ決まっていなくて。 孤独、1人、人生、歩み、みたいなキーワードだけ決まっていたので、それを元にちょっとずつアイデアを膨らませていきました。まず、土台の足と服以外がない人間を描き、何かもう1つインパクトが欲しいってなった時に、「ロンリーパラドックス」っていうタイトルが決まって。パラドックスっていう意味をジャケットにも出したかったので、デザイナーさんの意見や、涼音から「光が前に当たると影は後ろに行くはずなのに、その逆で前に出てるっていう違和感みたいなのが結構インパクトになるよね」という意見をもらって出来ていきました。 普通に見えるんだけど、“あれ?なんかおかしい”っていう違和感がプラスされたことで、「ロンリーパラドックス」というタイトルによりマッチしたジャケットになったと思います。

涼音:モデルは黒木渚さんにお願いをしました。僕が高校生の時からファンで、初めて音楽家として一緒に仕事をできたという作品でもあって。自分がちゃんと頑張ってきたことが目に見えて分かった瞬間でした。自分が憧れていた人と一緒に仕事が出来たということもあって、すごく感慨深いジャケットです。

──リード曲の“TOMODACHI”は歌詞もメロディもレトロリロンらしい1曲だなという印象ですが、具体的なイメージがあって作り始めたんですか?

涼音:今回の6曲の中で、出来上がるまでに一番時間がかかりました。今までの楽曲は、僕の人生の中で経験した事を元に書いていて、26年生きてきた人生の中のピックアップだったんですけど、この「TOMODACHI」という曲は、更にそこを深掘ったというか。26年間を歌った曲という感じです。なので、今までの曲よりも、もっと深いところに入り込んだような歌詞になったかなと。歌詞の内容的には、“人との距離をうまく測れない人”みたいな内容なんですけど、それとは裏払に楽曲としては友達がいっぱいいるようなキャッチーでポップな感じに仕上がっていて。そういう皮肉の意味も込めて、タイトルも”TOMODACHI”になっています。

永山タイキ[Dr]:本当にレトロリロンっぽいよね。

涼音:最後に「ラララ」があるんですけど、そこも1人なんですよ。そういうのって、大人数で録って最後は大団円で終わることが多いじゃないですか。この曲は最後そういう雰囲気なんだけど1人。でも実は僕の声で2声重なっていて。前作の「インナーダイアログ」の内側の自分と外側の自分みたいな意味もあります。

──ベース、ピアノ、ドラムとそれぞれソロ的な見せ場がありますね。

飯沼一暁[Ba]:デモの段階で弾いてみたら採用されました。わかりやすいリズム、メロディみたいなのをベースとかピアノは出来るから、やってもいいかなと思って。そこ、ちょっと前に出てみたいなと。

涼音:結構、引き算で作った曲なんです。こういう曲は楽器を増やせば増やすほど楽しくなる曲なんですけど、そうすると歌詞とタイトルと色々なバランスが崩れちゃうので。他の収録曲はたくさん楽器を使っているんですけど、この曲は本当にシンプルなので、そういうソロプレイが際立つ曲になったかなと思います。

──M2「独歩」はどんな楽曲ですか?

涼音:これは多分レトロリロン史上、1番じめじめした曲です(笑)

飯沼:なんか、じめっと感はあるね。

miri:サウンドもね。第一印象はそうだよね。

涼音:新しい一面というか、より深く入り込んだ楽曲になっています。この「ロンリーパラドックス」自体が今までよりも深いところへ、というのを考えて歌詞も書いていて。この「独歩」に関しても、僕の中での黒い部分みたいなところが色濃く出た曲かなと思います。歌詞が2つ重なるところがあるんですけど、左と右からそれぞれ違う歌詞が流れているんですよ。この曲も人間関係においての黒い部分みたいなのをテーマにしていて。人間関係において傷つく側と傷つける側っていうのがどうしても発生してしまって、誰しも傷つける側にも傷つけられる側にもなりうる。そのどちらの視点からも曲を書きたくて。人対人、1対1、という意味もあるし、自分の中の自分との言い合いという意味も込めて、左右から違う視点の歌詞が流れています。レトロリロンではあんまりない歌始まりだったり、途中で拍子がちょっと変わって曲の雰囲気がおどろおどろしくなっていったり。 aメロから始まってaメロで終わる。暗くなって、明るくなって、暗くなって、という人生のループ感をこの曲で表現しました。

──歌詞にはそんな意味が込められていたんですね。

涼音:そうですね。なので、1回曲が終わってもう一人の視点でまた1回聴いて欲しいです。傷つける側と傷つけられる側の視点で。これは遊び心になっちゃいますけど、3拍子とかワルツ調に変わったところは全部、歌詞は4文字で統一していて。で、ワルツ調からまた戻るんですけど、そこからは全部3文字になっていて。今回はそういう言葉遊び的なことも入れていて、なんだかんだ1番遊び心のある曲なのかなって思っています。

永山:雰囲気的に、こういう楽曲はこれまでなかったよね。今までとは違うアプローチな気がする。他の曲って、どこかしらにエモーショナルな部分が入っている楽曲が多いけど、「独歩」はずっと続いていく中で、ちょっとした遊び心を散りばめているので、楽しんで聴いてもらえるかなとは思います。

──M3「DND」はブラスアレンジがとてもかっこいいですね。

miri:レトロリロン初のブラスアレンジで、3人のブラスの方にお願いしてレコーディングをさせてもらいました。サックスのソロがあったり、めちゃくちゃかっこいいものが出来たなって思います。ピアノとも結構ユニゾンしていて、楽曲の中でも浮かない4人の楽器とブラスが一つになっているようなフレーズが多く、楽曲のまとまりをちゃんと出したアレンジになったかなと思います。

──作曲やアレンジの部分で何か変わったことはありましたか?

永山:元々大学でずっとビッグバンドをやっていたので、3管とのアンサンブルは頭の中で想像は出来ていました。管楽器とドラムのアンサンブルをしっかり作りたくて、管がある上でより楽曲をきらびやかにするようなドラミングというか。手数だったり、音圧、パッションみたいなのがすごくあるドラムアプローチ、アレンジです。途中の歌詞がなくてバンドだけのところでも、お客さんが楽しんでもらえるように考えました。

飯沼:管楽器がいたり、ドラムの激しいプレイングもあったので、ベースは低い部分をしっかり担当する気持ちで弾きました。高音の方には極力行かずに、低い音の成分でみんなと上手い具合に合わせるように考えて作りました。吹奏楽をやっていたので、ブラスとか入ってくると、ベースがよりコントラバスのようになっていって、でも楽曲の激しさは残しつつ、という事を考えながら弾いています。

涼音:この曲はライブでの演奏を想像して、アコギは弾かずにハンドマイクで歌うことを前提に書いていました。難しすぎると歌えなくなっちゃったりするので、今までは自分が楽器を演奏することを視野に入れて曲を書いていたんですけど、この曲は逆に楽器を置くことを前提に書いたので弾きながら歌えないですね。それが楽曲のいいところに繋がっていきました。歌わないんだったらもうなんでもできるや、みたいな。ライブ定番曲になるのかな?なったらいいな、っていうところはありますね。

──そして、「たださよなら、命燃え尽きるまで」「ヘッドライナー」と続いて、最後が「夢を見る」。この曲すごく好きです。

飯沼:「夢を見る」はeggmanでもやったことあるよね。

涼音:結成して1年ぐらいの時から曲自体はあって、ライブの最後だったり、アンコールだったりとか、あんまり登場が少ない曲。この曲はやっぱり音源化したいっていうのがあったのと、今回の「ロンリーパラドックス」というタイトルにも合っているし、他の6曲とのバランスを見ても、最後はこの曲だろうってみんなの意見が一致して。他にも音源化したいなっていう曲はあったんですけど、この並びだと、やっぱこれじゃない?となって、自然に決まりました。今までライブでやっていたのとはちょっと違う、今の自分たちで出来るアレンジで、もっと豪華に最後の曲にふさわしい形にリアレンジしました。特にイントロにこだわりました。口で歌いながらみんなで作ったんですけど、寒い夜とかに外で聴いていると、じんわり気持ちが溢れてくるようなイントロになったと思います。そのイントロができたおかげで、よりこの曲の伝わってほしい事も強まって。いつ聞いても自分たちがいい曲だって思える曲を最後に持ってこれてよかったです。

──曲の並びは結構悩みましたか?

涼音:曲順は、いつも全員自分で考えてくるんですよ、それぞれいろんな意見を持ってきて。でも、1曲目と6曲目は最初から決まってたよね。 2曲目が「独歩」で、暗い曲が来るので、 “いや、これは…”っていう意見もありました。個人的には、「TOMODACHI」っていう曲に対しての皮肉的なところもあって、次に孤独の曲が来るのがいいなっていうのと、曲調もすごい明るく1曲目を聞き終えて、1番下に突き落とすみたいな。リスナーさんたちの感情を揺さぶりたいっていうのもあって、 あえてこの曲順にしてみました。そういう意味では、曲順も結構こだわって作りました。今、サブスク時代なので、シャッフルとか1曲だけ聞くとかが多いとは思うんですけど、昔はね、アルバムの曲順にもアーティストがすごく意味を持たせて作ってたりっていうのがあったので、そこを再定起したいかな。曲順で聞いてほしいっていうのはあります。その後は、シャッフルで好きな曲聞いてもらっていいんですけど、1回、1曲目から最後まで時間を取って聞いてもらいたいです。

──今作は全6曲で、それぞれに思い入れがある曲だと思いますが、特に記憶に残るのはどの曲のどんなエピソードですか?

飯沼:「TOMODACHI」かな。弾いていて楽しかったですね。全部楽しいんですけど、特に楽しくて。僕の中ではすごくレトロリロンらしい曲なんですよね。それをリードに持ってこれて、“あ、俺レトロリロンのベースだ!”と思いながら弾くと、嬉しいんですよね。

涼音:「試用期間終わった!」ってね(笑)

飯沼:あ、そう。「僕、レトロリロンのベース弾いていいんだ」じゃないですけど(笑)やっぱ嬉しいんですよね。いい曲って自分たちでも思えるような楽曲なので、ベースラインをどうしようかなって考えてる時間が楽しいんですよ。もちろん全部その気持ちはあるんですけど、特に強かったのが「TOMODACHI」だったかな。それぐらい好きな曲なんだと思います。

永山:俺は「DND」ですかね。ドラムが目立つ曲ではあるなと思っています。レコーディングの時も、フレーズをしっかり決めていったというより、その場の即興性で挑みました。1回サウンドチェックして、もうほぼほぼワンテイクで、想像していたドラミングを全力で熱量100パーセントみたいな感じで叩けて、それが上手くはまったと思っています。新しいレトロリロンの武器、新しい聴き方、見方ができる楽曲で、今後演奏していくのがすごく楽しみです。

miri:EPの中だと、「たださよなら、命燃え尽きるまで」です。やっぱりオーケストラが好きなので。ストリングスに囲まれて演奏する感じとか、すごく好きなんですよね。レコーディングの時も、実際に弦の方が弾いてくださって、より打ち込みの弦よりも命が吹き込まれた感じがあります。初めて他の方に演奏していただいたっていうのもあったので、すごく思い入れが強いです。

涼音:1番思い出すのは「TOMODACHI」のボーカルレコーディングかな。みんなに届くものなので、普段は上手く良い状態のものを届けたいと思って、細かい歌のニュアンスとかピッチとか色々なことに気をつけながら、頭の中で考えながら、レコーディングすることがほとんどなんですけど、初めて自分の中に自分が入り込んでいく感覚みたいなものがありました。終盤の方に差しかかってく中で、感情的になったり、涙が出るみたいなシーンもあったりして。自分の曲じゃないみたいに、曲と会話できたような感覚でした。今までは、曲を書いてお客さんに出すときには、もう独り立ちしているというか。一気に20歳になって、巣立っていく感覚だったんですけど、今回は育てたような感覚でした。「TOMODACHI」だけ他の曲に比べて質感が違うボーカルになっているんですけど、歌に入った気持ちみたいなところのコンディションが1番良かったのかなって思います。新しい体験でした。これから先もずっと思い出せる楽曲になると思います。

──そして1/12(金)にeggmanでのフリーライブがありますが、どんな日になりそうですか?

涼音: CDを買ってくれた方に特典が付くっていうのも、自分たちのリリースに対してこういったアクションがあるのも初めてなので、未知数ですよね。やっぱり、そこを経てワンマンにも来てもらいたいです。普段、ライブの日にお客さんとコミュニケーションを取る時間っていうのは、ステージの上の30分ぐらいの時間しかなくて。この日はサイン会もあるので、そういう意味ではやっといつも応援してくださってるファンの皆さんに恩返しができる時間になるのかなって思います。改めてファンの皆さんに感謝を伝えられる日にしたいです。

──ワンマンツアーも始まりますね。

涼音:去年は本当に初めてのワンマンで緊張が大きかったんですけど、今回は会場もスケールアップして、名古屋も追加されて、よりこうパワーアップしたところをお見せ出来るのかなって思っています。 あとは、このワンマンをきっかけに、よりもっと大きいところにいきたいです。ワンマンが1区切りみたいになっちゃうことってあると思うんですけど、 僕ら的にはこのワンマンがスタートダッシュというか。今年1年間を作っていくためのスタートのライブなので、全部、余すことなくぶつけられるような日になったらいいですね。ありがたいことに名古屋も追加公演が決まりましたし。去年、名古屋なかったんでね。去年分のおかわりみたいな感じです。

永山:待ち遠しかったんじゃない。お客さんたちが。

涼音:もう去年の分までやっちゃおうってことだね(笑)本当に楽しみですね。 それこそ、この新しい曲たちも入ってのセットリストにはなると思うので。お客さんも初めての人も沢山いると思いますし、ずっと通ってくださってる人もいるので、ファンの方がもっと繋がれるような日になったらいいですよね。ファンの輪が広がっていくような。終わった後とかね、ファンのみんなでご飯に行ってもらったりとか。より、みんなと僕らでレトロリロンっていうチーム感が強まる日になったらいいなと思ってます。

──最後に2024年の抱負や目標を聞かせてください!

永山:2024年はこれまで以上にバンドの動きがありそうな予感があって、その分いろんなものを吸収したり、色々勉強したりして、もっと飛躍していけたらいいなと思っています。

飯沼:意識改革ですかね。僕、体壊しやすいんですよ。前回のeggmanのライブとか、出演できなくて本当に申し訳ないです。それもあって、自分の生活リズムもバンドへの意識として少しずつ変えていこうかなと思っています。2024年の終わり頃には全く違う男になっていたいなと思っておりますけど。なってなかったら、また試用期間に戻ります(笑)

miri:2024年、まだ何も決まっていないですけど、アルバムを出したいですね。より濃い1年になると思うんですよ。それも含めて、始まりでもあり、1つ区切りじゃないですけど、これまでの4年間の集大成みたいなものを作りたいです。

涼音:そろそろ、ちょっとわがままに動いてもいいのかなって思っています。もう大きく踏み出していってもいいのかなって。いろんなものを掻っ攫って、いろんなところに足を伸ばしていけるような、そんな1年にしたいです。


RETRORIRON 2nd EP「ロンリーパラドックス」
RELEASE ONEMAN TOUR 2024

2月 12 日(月・祝)【東京】SHIBUYA CLUB QUATTRO
2月 17 日(土) 【名古屋】ell.SIZE
2月 25 日(日) 【大阪】Shangri-la


2024.1.10(水)RELEASE
2nd EP「ロンリーパラドックス」
LACD-0313 / ¥1,980(tax in.)

<Tracks>
1. TOMODACHI
2. 独歩
3. DND
4. たださよなら、命燃え尽きるまで
5. ヘッドライナー
6. 夢を見る