―「ふたりでいたい。」リリースおめでとうございます!「”なきごと”史上、最高です。」というXでのポストも見かけましたが、反応はいかがですか?
水上えみり(Vocal,Guitar):ありがとうございます!今まで聴いてくれていた人たちが最高って言ってくれて嬉しいですし、それだけじゃなくて今作をキッカケに新しくなきごとに出会ってくれた人がたくさんいる作品になっている感じがして、手応えを感じています。
― 前作「NAKIGOTO,」リリースから1年半、満を持しての2枚目のフルアルバムリリースですが、前回と比べてどんな変化がありましたか?
水上:制作面での話なんですが、変化の一つとしてアレンジャーを迎えたことが大きいです。アレンジャーが入ったことで俯瞰的に関わってくれる人が”なきごとらしさ”を精査してくれることで、今までのなきごとの良さを伸ばしつつ、新しい景色を見せられるようなアルバムになったんじゃないかなと思いました。
― どんどんキャッチーになってアレンジも深くなっていくのに、ロックバンド感がなくならないところにはこだわりを感じました。
水上:そうですね。それこそ具体的に言うと「グッナイダーリン・イマジナリーべイブ」の入りの音が最初はもうちょっと可愛かったんですけど、なきごとはこうじゃないかもみたいな話をして、ちょっとシンプルにしてみたりしました。振り幅は広げつつも、自分たちらしさを話し合いながら作っていった感覚はあるので、今一度自分たちの楽曲に対して向き合って完成した作品だと思います。
― 「ふたりでいたい。」というタイトルにはどんな思いが込められているんでしょうか?
水上:デジタルリリースした「君と暮らしの真ん中で」と「素直になれたら」と合わせて、「君と暮らしの真ん中で素直になれたらふたりでいたい。」という風に一文で読めるようにしたかったんです。各楽曲のテーマとして、相手がいるからこそ動く感情だったり、対「人」というところが色濃く出ている楽曲が多いので、シンプルに誰かとのふたり、自分の中のもう1人の自分とのふたり、などを意味しています。また、ステージとフロア、チームとなきごと、レーベルとなきごとなど、、、改めて周りへの感謝を伝えられる1枚になればと思いこのタイトルにしました。
― M-1「sniperから攻めた楽曲でびっくりしました。
水上:今まで歌詞を先に書いて曲を作ることが多かったんですけど、この曲だけは曲先で作りました。今までにない感覚は自分でも感じていて、この曲を作った時に正直これなきごとでやって大丈夫かな?とか思ってしまったんです。でも、岡田と2人で車移動してるタイミングに「こんな曲作ってみたんだけど、どう?」って聴かせたら「かっこいい!やりたい!」って言ってくれて。そこで後押ししてもらったのもあって、今回収録することができました。
― 歌詞が先だからこその遊びというか、語感重視の耳馴染みの良さを感じますね。
水上:自分の中で、後から歌詞やメロをつけるっていうのが新境地だったので、1つ自分の壁を乗り越えた感覚です。
― ギターも印象的なフレーズが次々出てきますね。2コーラス目あたりの不穏なフレーズとかまさしくスナイパーな感じで秀逸だなと。
岡田 安未(Guitar,Chorus):サビで空間系エフェクターを多用したり、リフがシンプルな代わりにリードで色をつけるっていうところにこだわりました。2コーラス目のところはアレンジャーの江口亮さんからもらったデモに入っていたギターなんですけど、私も最初これ聴いてすごいことやってくるなーって思いました(笑)
― ライブでも既に披露してるかと思いますが反応はいかがですか?
水上:こういう曲って今までなかったし、こういうジャンルのバンドとも対バンすることがなかったので、ついて来てくれるか不安な気持ちがあったんですけど、蓋を開けてみたら結構人気というか、ノリノリで聴いてくれている感じがあって、ライブの中でもいいエッセンスになってると思います。
― M-3「またたび」は聴く人によってさまざまな受け取り方ができそうな歌詞ですね。
水上:去年末ぐらいから「好きってなんだろう」っていうことについてすごく考えていて。漠然とわかってはいたけど、実はあんまりよくわかってなかったなと思って。答えを見つけたくて、いろんな人に「好きってなんだと思う?」って聞いてたんです。岡田や周りの友達にも聞いて。色々考えた結果、私の中で出た一つの答えの曲です。ただこのテーマに対して、やっぱり小っ恥ずかしいって思ってしまうところがあるので、猫をかぶってこんな歌詞にしてみました(笑)
― M-5「ゆらゆら」は夢と現実というか、ある意味等身大な楽曲に感じました。
水上:それこそ夢や現実について言葉に出してしまったら終わってしまうと思って音楽にした曲です。夢と現実の狭間を進んできて、100パーセントの夢を叶えることってだんだん難しいことを感じていて。諦めることと夢は隣り合せにいると思うんですけど、もちろん全部を諦めるわけではないけど、自分の中での100%を突き詰めれば突き詰めるだけ、やっぱり諦めなきゃいけない数%が出てきたりして。その中でどこまで自分がこだわりたいか、どこまで自分が100%の夢を追いたいかっていう葛藤があって。そんなことを考えながらも、夢が叶えば叶っていくだけ、叶った時の嬉しさに慣れになってしまうことを私はすごく恐れていて。果たしてそれが幸せなのか、もしかしたら絶望なのかもしれない、とか。そんな漠然とした不安も赤裸々に織り込んで曲にしました。
― 歌詞の当てはめ方も独特ですね。
水上:セクションをまたいで文章になっているような歌詞がすごく好きで。2コーラス目のキメが入るところで「からこの言葉」っていう絶対に使わない区切り方をするんですけど、違和感がある感じを表現したくてそこはこだわりました。他にも、波っぽく揺れてる感じだったりだらだら続いてる感じだったり、歌詞とアレンジをリンクさせたくてあえてそうしている部分がたくさんある曲なので、気にして聴いてもらえたら嬉しいです。
― M-7「安酒にロマンスはなきごとらしさ全開の曲ですね。
水上:二十歳ぐらいの頃に出ていたライブハウスでよく対バンしてた仲間がいたんですけど、打ち上げ10次会ぐらいやるまで盛り上がった日があって(笑)その日に「明日が来なければいいのにな」っていう歌詞を使って曲を書いて、また対バンできる時にその曲やろうよみたいな話をしたことがあったんです。結局その別の曲を書いたんですけど、そこからまた数年経って、今の自分だったらどんな風にこの言葉を使って曲を作るだろう、と思って書いた曲です。
― MVも懐かしいような新しいような、なきごとらしい世界観で素敵でした。
水上:監督さんが結構面白い脳みそをしてる方で。月がバックにあって歩いてるシーンがあるんですけど、ルームランナーを使って、その場で歩きながら、その背景にプロジェクターで投影してるものを動かしながら撮りました。今までにない経験で面白かったですね。
― 歌詞の入れ方やストーリーにもこだわりがありそうですね。
水上:小さい文字の感じがスタイリッシュでいいですよね。あと、めちゃくちゃ酔っぱらった私が1人で飲んでる岡田に電話して夜呼び出す、みたいなストーリーがちょっとおもしろいなと思ってるので、ぜひこのMV見てほしいです。
― 他に今作で聴いて欲しいポイントがあれば教えてください。
水上:今回、今までデジタルリリースされた楽曲も入っているんですけど、楽曲の並び方が変わるだけでストーリーが出来上がっていくというか、聴こえ方が変わってくる曲がたくさんあって。例えば「グッナイダーリン・イマジナリーべイブ」は「sniper」の後に聴くことによってグッと聴こえ方が変わったり、「安酒にロマンス」の後に来ることによって「Hangover」の歌詞の聞こえ方が変わったり、デジタルで聴いてくれていた人にも、アルバムの順番通りに聴いてもらえると楽しんでもらえるんじゃないかなと思ってます。
岡田:同じようなことの補足になってしまうんですけど、アルバムでの収録に合わせて曲間の時間までこだわって全部変えているので、1曲目から流れで聴いてもらえたら嬉しいです!
― そして今まさに全国16箇所のツアー中ですね!すでに5公演を終えたかと思いますが、印象的な出来事があれば教えてください。
水上:仙台でライブした時に、対バンが交通事情で来れなくなってしまって。で、水上えみりとなきごとの対バンになったのが、今までのバンドの活動の中でも衝撃的なライブだったなとは思います(笑)でも本当に、そういうハプニングがあったことで、対バンへの感謝みたいなところを今一度感じることができました。安全に来てくれることももちろんだし、最近のツアーはワンマンが多かったので、対バンが一緒にいるからこそできるライブを楽しみながら、このツアー回らせてもらってます。
― ツアーファイナルは11/30。遂にO-EASTワンマンですね。
水上:O-EASTはこれまでも先輩や友達のライブを見に行った憧れのステージだったので、ワンマンが決まって1つ大きな階段を上っている感じがしています。ワンマンライブ自体4月ぶりにやるので、セットリストも含め全然違うものになるんじゃないかなと。今作の曲が加わって、より世界観が広がったライブを見せられると思うので、本当に楽しみに待っていてほしいです。
─ 最後に、読者の皆さんに一言お願いします!
岡田:インタビューを読んでから聴くことでもっと深く楽曲を理解できたり、ライブに入り込むことができるのかなと思うので、これを読んでぜひツアーに遊びに来てほしいです。これをキッカケになきごとの音楽やライブに触れてくれて、それが日常を彩る手助けになれたら嬉しいです。
水上:9月1日にeggman、10月4日に新代田FEVERと、私たちの東京の 2つのホームがツアーに組み込まれていて、なきごとにとっても大事なツアーになっています。もしかしたらeggmanに来て 9月1日の今日に読んでる人もいるかもしれないと思うと、ライブ楽しかったですか?とまずは聞きたいなと思うんですけど(笑)なきごとがこれから更に成長していって、よくある言葉かもしれないけど、応援してくれてる人にとって自慢のバンドになれるように頑張るので、どうぞこれからもよろしくお願いします。
◾️リリース情報
2024.07.31 Release
2nd Full Album “ふたりでいたい。”