ー 3rd EP「アナザーダイバーシティ」リリースおめでとうございます!「アナザーダイバーシティ」というタイトルにはどんな意味が?
涼音(Vo&A.Gt):コロナ禍にバンドがスタートして、普通だったことが普通じゃなくなったり、新しい常識が出来たり。多様性というものが世の中に広がり始めて、僕が違和感を感じる部分や、自分が世の中に対して思っている事をいろんな角度から考えて、曲にして形にしたアルバムです。最初に出したEPの「インナーダイアログ」から続いて、「ロンリーパラドックス」、今回の「アナザーダイバーシティ」と、3部作になっています。1作目の「インナーダイアログ」は自己との対話。2作目の「ロンリーパラドックス」はその対話を経て、社会とどう向き合っていくか。今回の「アナザーダイバーシティ」で、最終的に世の中でどういう自分を持って生きていくか。というテーマになっています。
― 『インナーダイアログ』『ロンリーパラドックス』との3部作という構想は初めからあったのでしょうか?
涼音:最初に作った時はなかったんです。自分の心情も少しずつ変化し、人間的な成長の変化とともに自然と楽曲と内容も変化していったのかなと思っています。
― ジャケットはどういったテーマで作られたのでしょうか。
涼音:センシティブで、世の中的にはみんなが触れているようであまり触れてないところにジャケットで切り込みたいなと思って、僕が原案を出しました。 社会って1つの枠組みだと思うんですよね。家族、学校、会社、それこそ世の中全体であったり。枠組みが必ずあって、その中でどう生きていくかっていうのが社会だと思っていて。今回、花瓶を社会に見立てて、“その中にいる1人1人の人間がどう生きていくのか”というのを表現しました。世の中の動きに従って流されて生きている感覚が自分の中にもあったり、はたまたそういう風に見える人がいたり。それを針金や造花で表現して、その中に一輪だけ生花を挿しているんです。多様性と言いつつも、同じような価値観を持った人が増えてきている中で、“自分がどのようにそこから抜け出して生花として生きていけるか”という皮肉も込めたジャケットになっています。
― M-1「ワンタイムエピローグ」は今作のリード曲になってますが、どんな楽曲になってますでしょうか?
涼音:2025年の1番最初の曲で、バンドとして大きく1歩踏み出していく年にしたいという思いもあり、いつもよりも少し強めに引っ張るような言葉を多用した楽曲になっています。サウンド感も今までのレトロリロンが作ってきたイメージとはまた違った内容になっているので、より広く多くの人に届いて楽しんでいただけるものになったのかなと思っています。サビに入ると、今までのレトロリロンのメッセージ性よりも少し鋭い強さを持った言葉を使っているので、もしかしたら今まで聞いてくれていた人は違和感を覚えたりするかもしれないです。ただ、受け取る人に自由に楽曲を解釈してもらうっていうスタンスは変わらず続けたいなと思ってるので、この曲を聴いてどう解釈するかは、リスナーの皆さんにお任せしたいなと思っています。
― M-2「カテゴライズ」は、このような歌詞をPOPに歌っているところがレトロリロンらしく印象的でした。
涼音:”多様性を尊重していきましょう”と言っている割には、カテゴリーを作って、そこに人を全部当てはめていくみたいな世の中になってしまったなと思っていて。それって、「矛盾してないかな?」っていう気持ちが自分の中にあって。そのまま鬱憤を書いてしまうと誤解されてしまうので、ちょっとポップな曲調に載せています。レトロリロンを聴いていただく中で、リスナーの皆さんが感じた価値観や考え方の変化、そして今まで寄り添ってきた中で、リスナーの皆さんが得た大切なものがあるのではないかと思っています。そういうものを携えて1歩踏み出して戦っていってほしいという思いを込めています。実は、元々は音源化してない曲をリアレンジして出そうと思っていたんですけど、5曲の中に上手くハマらなくて。チームで会議をしていた時に、「こんな曲が欲しい」とすごく抽象的なリクエストが出て、それをきっかけに新たに書き下ろしました。最初は半分ふてくされていたんですが(笑)、楽曲の大枠はすごいスピードで出来ました。
永山タイキ(Dr):あっという間にできた感覚はありました。これまでなかったような新しい作曲方法で、こういう事も出来るんだなっていうのは感じました。
飯沼一暁(Ba):今までは、涼音がある程度作ってきて持ってきてから僕らが聴いていたんですよ。それを目の前で見ると、こんな感じで生まれるんだ!っていう瞬間を見た珍しい楽曲ですね。
― 先行配信されていた2曲、M-3「焦動」/ M-4「アンバランスブレンド」の聴きどころを教えてください!
涼音:「焦動」は、2024年のレトロリロンにとっての道が広がった楽曲だったと思っています。ラジオのパワープレイをいただいたり、サウンド的にも新しい手段を得られたり。 その「焦動」を経て「アンバランスブレンド」も、レトロリロンの2024年を代表するような(トルツメ)楽曲になりました。僕自身はそういうつもりではないですけど、大半の人が恋愛の曲として受け取ってくださっているのかなと思います。いつもと違う切り口で歌詞を書いたので、自分の歌詞を書く価値観を見直した楽曲でもあり、改めて歌詞を書く上で自分の書きたい事と、楽曲に寄り添う歌詞と、リスナーの皆さんにより共感してもらえるようなもの。このバランス感みたいなものをすごく考えて作った楽曲です。「焦動」も「アンバランスブレンド」も、多様性について考え込んで書いた訳ではなかったんですが、今回のEPに自然とはまった楽曲で、実はこの2曲がEPの方向性を決めるシーンになったんじゃないかなと個人的には思っています。
― M-5「救いのない日々よ」は今までになかったテイストのバラードですね。
涼音:レトロリロンって思い返すと、バラードをリリースしたことがなかったんですよね。ライブでやる事はあるんですけど聴けるメディアがなくて。今作で初めてこれがバラードですって言えるものを出せたかなと思っています。楽曲自体は僕が20歳過ぎぐらいの時に書いたものがあって。ほとんど当時の歌詞のまま、楽曲の雰囲気も変わることなくアレンジした曲です。「深夜6時」以来の、僕のソロの時代楽曲になっています。
飯沼一暁(Ba):大元が涼音の弾き語りであって、そこから涼音がサビを加筆して、それに合わせてアレンジを変えてみたりして。弾き語りからバンドに昇華した楽曲でもあり、個人的にすごく好きな楽曲です。
涼音:7年前ぐらいに作った楽曲で、本当に1回だけその時代にライブで歌って、あんまりだったなってその時の自分は思ってしまって、ライブでやることがなくなった曲なんです。今までどこでも演奏することはなかったんですが、他の曲の内容が固まってく中で必要なピースなんじゃないかと思って。歌詞も当時書いたので、今のレトロリロンとは違う雰囲気もありつつ、加えて書いた歌詞もあるので、そこが混ざって新しい楽曲になったかなと思います。アレンジは本当にシンプルにして初めてグランドピアノで録りましたね。
miri(Key):この曲は絶対にグランドピアノがいいって思っていたので、それを伝えて録りました。暖かいサウンドになっていると思います。
涼音:グランドピアノって、レコーディングが少し難しいんですよね。ポップスになるとクラシックやピアノソロなどとは、また違った録り方をします。全部が合わさるとピアノの美味しい部分が消えてしまったりするので、オンマイクも重要だったりします。
miri:他の楽器との兼ね合いや、住み分けも難しかったです。最初はピアノだけで録っていたんですけど、歌の強さとか、アコギのニュアンスだったり、みんなで演奏してるっていうニュアンスが必要だったので、最終的にアコギと一緒に録ったりして、みんなの呼吸が一番乗っている楽曲になっていると思います。
永山タイキ:この曲はバンドの一体感を出したかったのでベースとドラムも一緒に録りました。
― 他にレコーディングで大変だったことはありますか?
飯沼一暁:朝から行って、終電まで粘るっていうのを何日も繰り返しました。1個1個みんなでディレクションするっていうことをやっていて、1つの楽器に対しても、みんなで聴いて、意見を出し合いながら時間をかけて重ねていくっていう事をやっていました。今回のレコーディングの3曲は今までの集大成でもあったので、こだわって作った部分が多いのですが、個人的には「救いのない日々よ」に隠し要素があるので、たくさん聴いて見つけてほしいです。
― この曲のここ聴いてほしい!ポイントをそれぞれ教えてください!
永山タイキ:これまで何曲もレコーディングしてきて、そのたびに全力で取り組んできたのですが「救いのない日々よ」のレコーディングでは、呼吸が苦しくなるほど感情を込めてドラムを叩いたのを覚えています。お客さんにどう届くのか、どうすればもっと心に刺さるのかを考えたときに、「いかに感情を込めるか」という事を大切にしました。自分の中では新しい感覚で挑めた曲だと思っています。
飯沼一暁:「カテゴライズ」のベースのソロがめちゃくちゃ難しかったんですけど、1番いいテイクが録れたので、是非聴いていただきたいです!
miri:私は1曲目の「ワンタイムエピローグ」です。今までは歌詞の部分をあまり後押しせず、包んでポップにピアノのフレーズも作っていたんですけど、この曲に関しては逆で。歌詞の攻撃性みたいのを後押しするような作り方をしてるんですよね。今までとは違った面もある楽曲なので、聴いてほしいです!
涼音:昨今、サブスク時代にCDを出す意味っていうのはあんまりないと思っていて。CDもグッズ化してると思うんですよね。記念として持っておこうみたいな。手に取って買ってもらうっていう体験が減ってしまったと思うんですけど、そこで少しでも目について受け取ってもらえるようにジャケットを工夫したり、楽曲の中も見てもらえるように歌詞カード作ったりもしているので、改めて歌詞を読みながら楽曲を聴くっていう、普段はあまりしないようなことをリスナーの皆さんにはしてもらいたいなと思っています。もちろんサウンド面でも楽しんでいただけるようにいろんな工夫はしているんですけど、日本語の良さだったりとか、J-popである意味、J-popでしか楽しめない要素は、歌詞を読むことだと思っているので。目でも楽しんで、耳でも楽しんでもらえたら嬉しいなと思ってます。
― 年明けから全国7都市を巡るツアーが始まります。どんなツアーになりそうでしょうか?
涼音:今まで通算2回ワンマンライブをやってきたんですが、初回はとにかく無事に公演を終了しなきゃいけないっていう気持ちで臨みましたし、2回目に関しては、2回目のワンマンっていう感じのワンマンで(笑)今回はこの楽曲たちを携えて回ることになるので、セットリストも大きく変化すると思いますし、レトロリロンのワンマンライブというものを作り出す上ですごく重要なライブになると思っています。
全国7都市もあって、北海道や福岡、広島、仙台は我々のワンマンライブが初めての人もいると思うので、楽しかっただけではなく、何か残るような時間にしたいなと思っています。楽しみに、期待して足を運んでいただけたら嬉しいです!
― 最後に2025年の抱負を聞かせてください!
飯沼一暁:僕、去年もこのインタビューでかっこよくなるって言ってなかったっけ。言いましたよね(笑)
一同:なってないじゃん!(笑)
飯沼一暁:引き続き、2025年は本当にかっこよくなる事が抱負でお願いします!(笑)
永山タイキ:毎年「飛躍する」と言っていますが、2024年を振り返ってみると、ミュージシャンとしてまだまだ足りない部分があると感じていて、もっと成長しなければいけないと強く思いました。2025年は、どんなアーティスト・ドラマーになりたいのかを改めて考え、自分自身を見つめ直し、よりバンドの曲をお客さんにしっかりと届けられるよう成長していきたいです。
miri:レトロリロンが大きくなればそれでいいです。そのためにかっこよくもなりたいし、自分も磨くし、鍵盤奏者としても頑張ります!
涼音:2024年はいろんな人に気を使って、調和を保って、バランスを保つっていう意識で進んできたので、2025年は大きくわがままに行こうかなと思っています!悪い意味ではなくて、もうやりたくないことはやらない。よりやりたいことにフォーカスして1年間を進めていきたいです。1年間が本当に早いんですよね、”ジャネーの法則”のように、年を追うごとに1年に対して感じる速度感が早くなってきていて。うかうかしてると気づいたら2026年になってたりするので、来年は引っ込まずに尖っていこうかなと思っています。バンドとしては進み続けるっていう点では変わらないと思うんですけど、大きく立てるとするならヒット曲は出したいなと。何を持ってヒット曲かっていうのは本当に難しいんですけど、バズるとかではなく、納得いくもので納得いく結果を得られるような1年間にしたいなと思っています。今回のワンマンライブ自体はすごくチャレンジングなキャパシティなんですけれども、来年はどこでやってもバーストするようにしたいですし、もっとレトロリロンというバンドを、ファンの人と一緒に育てていくという感覚を2025年は共有していけたらいいのかなと思っています。僕たちだけがレトロリロンというバンドを進めているわけではなくて、いろんな人が関わってくれていく中でバンドは成長していくものだと思っているので、より多くの人と関わって交わって、人間としてもバンドとしても大きく成長できる年にできたらいいなと思っております。
― なにか言い残したことがあれば!
飯沼一暁:2月7日にeggmanでフリーライブをやるので、それをぜひ見に来てください!
▪️リリース情報
2025.1.22 RELEASE
3rd EP「アナザーダイバーシティ」
- ワンタイムエピローグ
- カテゴライズ
- 焦動
- アンバランスブレンド
- 救いのない日々よ
▪️ライブ情報
RETRORIRON 3rd EP「アナザーダイバーシティ」Release One-Man Tour 2025
2月24日(月・祝)【大阪】UMEDA CLUB QUATTRO
3月1日(土)【名古屋】NAGOYA CLUB QUATTRO
3月7日(金)【仙台】LIVE HOUSE enn 2nd ※追加公演
3月8日(土)【仙台】LIVE HOUSE enn 2nd ※SOLD OUT
3月14日(金)【広島】SECOND CRUTCH
3月16日(日)【福岡】DRUM Be-1
3月29日(土)【札幌】Bessie Hall
3月30日(日)【札幌】Bessie Hall ※追加公演
4月6日(日)【東京】EX THEATER ROPPONGI