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サカキナオ「カワラ版」
- SPECIAL -

サカキナオ「カワラ版」

 ご無沙汰しております。サカキナオと申します。
 先日演奏いたしましたスタジオライブの様子が、YouTubeにて公開されております。
ほんの少しでもサカキナオの空気を感じていただければ幸いです。

「命・命・命」
https://youtu.be/ArWfGefhSIg?si=ACXg-2wRHVHMlhGt
「フラッシュバック!!」
https://youtu.be/gxG6yyz6ZOw?si=LHYB8lMcE2RB9vjH
「神退治」
https://youtu.be/ySrYmu0mYBo?si=chBiUpiW67c-MuDc
「scream」
https://youtu.be/wpg45xmrRGA?si=x26cBoRgL1CD_nVG

 さて、いつの間にかキーンと鋭い風が吹き抜け、地球が体温を食い尽くしてくる今日この頃。ワタクシ自転車を押して、というより持って歩いておりました。

 「しんどいよーー、、、重いよ、、、」
 イタイケなワタクシ、寒空を睨む。

 それでは小噺を。
 夏も溶け、秋は過ぎ冬に片足突っ込んでいるようなこの季節。ワタクシなぜか妙に感傷的になってしまうのです。そして何かきっかけがあるわけでもないのですが、ふと思い立つのであります。

 「いざ行かん。」

 大いなる覚悟を決め、フラフラ〜っと近所をママチャリの愛機5号(以下「5ロウ丸」)に跨りアテもなく彷徨うのであります。
 放浪癖と言いましょうか、自分のここまで生きてきた街を5ロウ丸で乗り回しながら見ることによって懐古心を呼び起こし、「うっとり」したくなるのです。
 まぁまたその季節がやってきたっちゅーわけでございます。
 そんなわけで5ロウ丸を動かして「サンチマンタリスム(気取ったフランス語で言う“感傷”)」の旅をしていると、突然「ガタン」っとなんともイヤーーな感じの音がして、ペダルは漕いでも漕いでも空回りをしはじめましたのであります。

 「チェーンが外れてしもうた、、、くそ、、、。」

 やられました、、、最近、週に1回くらいの頻度でチェーンが外れます。1度肩が外れたら関節が緩くなるごとく、もうクセになっちゃってるのかしら。
 実のところ状態は深刻らしく、先日チャリ屋さんに持って行ったとき、

 「これはーーー修理というより買い直したほうがいんじゃないかなあーー」

とのこと。ドクターも治療の余地なく、新たな生命をオススメするところまできておりますゆえ、余命宣告をとうに過ぎた個体と考えればギリギリ許せ、、、ない、、、。

 「許せない!!このタイミングで外れやがって!!」

 特に用はないはずなので、このタイミングとは一体どのタイミングなのだろうか。幼き頃から可愛がり育ててきた「癇癪の虫(1月号参照)」がワタクシの身体を目まぐるしく走り回っているのを感じました。
 ええ、わかっておりますとも。怒ったって仕方のないことなんぞ。でもね、このやり場のない宛先不明の怒りをどこにやれと言うのでしょう、、、。あゝ、血の沸騰する音がするーーーー。

 理性という殺虫剤を身体に浴びせること数分、マトモに戻ったワタクシ。ゴソゴソとポケットからプラスドライバーを取りだしてグリグリと修理をはじめます。「私、失敗しないので。」
 病状が病状ですから、いつチェーンが外れてもいいようにここ最近はドライバーが常備品と化しておりました。備えあれば憂いなし。気を取り直して。

 「いざ行かん。」

 目に入ってくる光景はいつもと変わらないのですが、感傷的な今のワタクシにはただの一景色が、今までの想い出たちとともに映るようでありました。

 「あの木、のぼってる途中で落ちたなーー。あの畑に落ちたなーー。(江斗背虎)」

 この1つ1つのエピソードが胸にシンと沁みるのです。
 そうこうしていると通っていた小学校近くまで漕いできてしまいました。そこらじゅうに想い出が転がるこの地に付随する映像や音をめぐらせながら、気づいたら懐かしの品の数々に心を打たれ、サドルから降り、この足で歩いておりました。が、思わず歩みを止めます。

 「あやあや、それにしてもこんなに小さかったかしら」

 校門、柵、校庭どれもが小さく感じる。ほとんどスケールが変わらないアイツらがモノサシとなって、ワタクシが大きくなってしまったことを痛々しいまでに教えてくれます。
 あぁ果たしてコイツらが小さく見えるようになる今日まで、ワタクシは何を成し遂げることができたのやら、、、学校が小さく思えるほど大きくなった己が小さく見えてくる。ちっぽけに思えてくる。この命はこのペースで、いやこれ以上のペースでこれからも歳月とともに溶けて行くのか、、、。

 「イケナイ、ヨワキニナッテイル」

 己を奮い立たせ歩くのを再開。こういうときは動いていないとこのまま死んじゃいそうな気分になる。ライク・ア・マグロ。
 とにかく家まで急いで帰りたくてこの歩みを止めない。ペースも落とさない。「やるべきことをやる」に支配されたワタクシ止まりません止まりません、、、。ってアレ。

 「イケナイ、ジテンシャ、ワスレテイル」

 ワタクシ5ロウ丸を持病ゆえ(何月号にでもいる)失念しておりました。急いで自転車を取りに小学校へ戻ります。結構歩いてきちゃったから面倒極まりない。
 数分後、5ロウ丸を発見。さて気を取り直して、、、
 いやはや愕然といたしました。動こうにも動けません。ペダルがロックされて全く動かないのです。

 「カギが、、、ない、、、くそ、、、」

 後日譚として。
 その後周囲の草むらや道路の端っこ、自動販売機の下(江斗背虎)探しましたが、見当たらず、屍と化した後輪を持ち上げながら帰路につく冒頭のシーンに戻るのでありました。
 道の途中、癇癪の虫のせいで施錠の破壊衝動に駆られましたが、唇を噛み耐え抜き翌日スペアキーをブッ刺してまたチャリチャリするのでありました。

 ここらで駄文を切らせていただきます。
 コラムをはじめ今作で12作品目。1年間お付き合いいただき誠にありがとうございます。
 少し早いですが、今年最後のコラムですので紋切り型のご挨拶を。
 メリークリスマス、良いお年を。

絶望の希望(おそらく鍵の居場所)