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サカキナオ「カワラ版」
- SPECIAL -

サカキナオ「カワラ版」

 ご無沙汰しております。サカキナオと申します。

 2026年である自覚がようやく脳内に芽生えてきました今日この頃、身体を斬りつけるような寒さに耐え凌ぎながらなんとか生きているワタクシ。あゝ体温がなくなっちゃうよ、、、。
 凍てつく空気が身体のまわりを鋭く、痛々しく、ふてぶてしく包んでいるトアル日、都内某所のトアル展示会へと向かっておりました。

 「このときがついにきた。これさえ眼に入れることができれば私、死んでもいいわ」

 おいどんウッキウキ。 

 それでは小噺を。

 皆様、「娯楽」といわれたら何を思い浮かべますでしょうか。「映画」「将棋」「茶道」「盆栽」「折り紙」、、、(江斗背虎)

 、、、いや、「漫画」です。「娯楽」といえば「漫画」です。

 今コラムでは「娯楽」=「漫画」しかあり得ないという世界線で進行させていただきます。(「進行上」の都合「信仰上」ではない)
 テーマ「漫画」に確定したところで次なる発問を。

 「皆様のお好きな漫画作品は何でございましょうか。」

 いやはや、必殺技を使ってしまいました。皆の好きなものを知りたいなんぞという微笑ましさを建前に、自分が答えることが大命題といった具合の、角が立たない自己中技でございます。
 己が話したいテーマに移行したいときに、聞く気もない相手の答えを促し、スムーズに自分の話へ、、、うーん角が立たないスマートな問いかけ。
 そして通例に従ってワタクシの答えを押しつけがましく、図々しく押しつけさせていただきますと、ワタクシ「H2」がだーーいすきなわけでございます。
 皆様「H2」、読んだことがありますでしょうか。んーーコレが傑作でございまして、何が傑作たるものか。その話をいたしますと途方もない時間と文字数を食ってしまいます故、断腸の思いで割愛させていただきます。腸がちぎれるううーー。

 冒頭に戻りまして、寒空の下向かう展示会というのもこの「H2」の作者である、あだち充大先生の作品たちが展示されている催し会場を指しております。先日ウッキウキでお邪魔しに行ったのでありました。
 今コラムの執筆にあたり、先に1つ断りを入れておきたいのは、あくまでワタクシ「H2」のファンでありまして、、、もちろん他にも何作品か読ませていただいて否、勉強させていただいてはいますが、「熱心なあだち充ファンです」なんぞ、、、そんなことワタクシ程度の知識量で宣おうものならその筋の人たちに消されかねない。ってな具合でございます。そこらへん悪しからず。 
 さて予防線をきっちり引けたところで、本編へ。
 都内ビル3階へ、エスカレーターを上ってたどり着いたところいきなりでした。

 「すげええええ!!おいどんが読んだ作品全部あるぞーーう!!」 

 入口にデカデカと貼られていたのは、あだち充先生の手がけた全漫画の表紙が一同に会したアーカイブ展示(というんですかね)。なんとも粋な演出。ちゃんとH2、34巻分ございました。

 「『ラフ』もぜんぶあるぞーーう」

 「ラフ」をこよなく愛する同行のツレも入口にてそいつに見入っておりました。


 「ラフ」もとても素晴らしい。あだち充作品といえばの野球要素はほぼなく、主人公が水泳に勤しんで物語が展開されていきます。それ故、野球漫画に付きまとう「1ゲームの長さ」を回避し、人間関係に濃くフォーカスされた名作でございます。当方も「H2」「クロスゲーム」の次点でのお気に入りですので、ワタクシもツレ同様に見入っちゃいました。というか動けなくなっちゃいました。なんというか表紙だけでもこんなにワクワクするのか、、、とスケールのデカさに取り憑かれてしまったのです。

 「先に進むでござんす。」

 同行のツレは先にいそいそと流れていきましたが、我未だ動けず。折角きたのでございますから、この景色、空気感すべてを吸い込んで、取り込んで帰りたいと入念に味わっておりました。んーー美味。
 十二分に堪能したのち進んでいきますと、あだち充先生のこれまでの軌跡が年表形式に書かれた展示がされておりました。いや、もはや輝かしい功績が屹立しておりました。
 そこには、「ナイン」「陽当たり良好」「みゆき」「タッチ」てな具合で神々しい作品の数々とともに歴史が綴られておりました。おお、すごい。 
 その後映像コーナーにて、作品ごとの名シーンがまとめられた動画を観ることができたのだが、これがトリハダものでございまして、その作品の名シーンを漫画の一コマを用いて映像で作られたものでした。いやはやそれは感動的でありまして、その漫画の一コマが流れるたびにそのシーンの登場人物の心情、というか拝読していた当初に入り込んでいたワタクシの心が蘇って当時の血がたぎってくるのでございます。こちらは残念ながら撮影NGでして皆様に共有することはできないのですが、ワタクシこの眼にジュウジュウ焼き付けてきました。
 それからは作品ごとのブースがおおよそ年代順に展示されていきます。それぞれの名シーンと思わしきページが見れるようになっており、内容を知らずともある種の感動に浸れちゃいます。抜粋されたコマだけで感動を誘うなんて、、、というか読んだことないやつは読みたい!って自然になりましたもの。(「みゆき」は確実に読まねばならない)
 そんでもって「タッチ」も同じく漫画の名シーンが数々貼られていました。が、しかし流石「タッチ」。ちょっと他の作品より展示が多い(気がした)。当時「みゆき」と「タッチ」は同時連載だったというから恐れ入る。先生凄い。タイトルは和也から達也にバトンタッチという意味が込められているそうだが(然れど後付けらしい)、かの有名すぎる名シーン「きれいな顔してるだろ」という達也が発するに至る展開に、当時衝撃が走ったのではなかろうか。ワタクシもリアルタイムではなく後追いながら読んでいたが、いやはや衝撃どころではありませんでした。唐突の死でしたもの。カッちゃんいなくなってここからどうするの??続きかけるの??てな感じで。そしてそのカッちゃんの死を受けての両親のリアクションも当時のワタクシには衝撃でして、たしかご両親やタッちゃんはどこかボーっとしているような、スーンとした雰囲気だったのです(朧げながら)。それまでのワタクシ、ステレオタイプながら「死」に直面した際のリアクションとして、「取り乱す」「泣き叫ぶ」といった激しい絶望を持っていましたが、なるほど「虚無」か、、、それもあるやも知れないなあ、と思ったのを妙に覚えているのでございます。 

 さてさてブースを移動しましていよいよおいどん大好きな「H2」のコーナーへ。はじめて拝読したのはもう遥か前ではあるのですが、未だに読み返したくなる名作でございます。最後まで揺れ動くヒロインの心情や、物語においての結論の余白、いくらでもいつでも楽しめるのですよ。

 「僕の作品は最後の詰めを読者に投げている。読者が最後を完成させる(あだち充)」

 なるほど、故に様々な最後を楽しめるのかもしれません。 
 それに加え、作品に登場してくる「国見比呂」。彼はワタクシのヒーロー像を構築してくれたのです。まぁ他のあだち充作品の主人公たちにも言えることではあるやも知れませんが、不器用で素直になれず、わがままで、然れどなんだかんだ最後は助けの手を差し伸べられるぶっきらぼうな優しさ。己の人生において主人公であるワタクシは、なにかと比呂の影追っているような気がしてならないのです。漠然と「あんな風になれたらいいなあ」みたいな。残念ながら「不器用」「わがまま」だけが色濃く反映されていることに涙を禁じ得ないのですが。

 「おっとっともう19時だあああーー」 

 ヒーロー、時間を忘れて夢中になっておりました。19時で終わるのこのあだち充展においてワタクシは最後の客みたいでございまして。少し急ぎ目にしかしじっくりと最後まで堪能、折角来ましたしね。係の方々大変ご迷惑をおかけいたしました。というかツレはどこぞ。完全に忘れておりました。 
 そして会場を出たところにてツレ発見。いましたいました。「やあ、待たせたね」といった具合にツレと合流。ところがこれが悪手、ただならぬ雰囲気。

 「人をこれだけ待たせておいて謝ること一つ出来ぬか、貴様」

 そこからというもの、19時で終わるものなのに何をそれ以降もいるのだ。や、ワタクシの悪びれることのない様相に対しての叱責がそこには待っておりました。 
 んーー比呂が遠いよおおーー。
 人生においての主人公には、そりゃ各々産声あげたときに自動的になれるのだろうが、そう易々とヒーローにはなれるわけがないのだ。そんな一山いくらなわけないのだ。 

 それでは今月はこのあたりで。


あだち充大先生の作業机を再現。こりゃたまんない。