このサイトはJavaScriptがオンになっていないと正常に表示されません

ねごと interview
- SPECIAL -

ねごと interview

ダンスミュージックという新たな新機軸を打ち出し、進化を続けるねごとから最新シングル「DANCER IN THE HANABIRA」が届いた。エレクトロな要素はありながらもねごと流とも言えるような独特なダンスミュージックを作り上げた彼女たち。非常に面白い。きっとこれからもっともっと面白いバンドになっていくであろう。そう確信した。作詞作曲を務める蒼山幸子(Vo,key)に話を伺った。

インタビュアー:ブッキングマネージャー窪田

-実はエッグマンフリーペーパー二年ぶりのインタビューです。

蒼山幸子(Vo,key 以下…蒼):そんなに経ちますか。そんな感じがしないですね。

-お久しぶりです(笑)。この二年でバンドとしての変化が大きかったように感じますがどうですか?特にサウンド面

蒼:2015年の3月にリリースした「VISION」というアルバムを制作したときの4人だけの音でライブ感のある作品にしようというコンセプトは、すごく手応えもあって、あの時私たちが発したかった音は詰め込めたと思うんです。次にどうやって進んでいこうかというのを考えて、1年半くらい製作期間をとったんですね。いろいろな幅の楽曲があるのがねごとの強みではあるけど、逆にねごとはこういうバンドですという明確な言葉がないのかもしれないという話がでたり、制作期間と並行して行っていたライブの中でMCを減らしてみたり、曲間を繋いでみたり、いろいろと試行錯誤していく中で横乗りのグルーヴ感が自分たちには合うんじゃないかという体感も強くなってきて、ダンスミュージックを作ってみようという方向性になって、2016年の11月にリリースした「アシンメトリ e.p.」に繋がっていきます。そこでBOOM BOOM SATELLITESの中野さんとROVOの益子さんという音に説得力を持たせてくださるお二人にプロデュースを依頼しまして、一気に精度が高まった感じです。特に『アシンメトリ』という曲を作ることができたのが私の中ではすごく大きくて、中野さんがねごとの舵をグイッと引っ張ってくださって、浮遊感があってダンスミュージックなのにねごとらしさはあるというこの曲が仕上がったことで、今年2月にリリースした「ETERNALBEAT」というアルバムの方向性が具体的に見えてきたんです。ねごと史上一番コンセプティブな1枚で、この2年でねごとがやりたいことの方向性だったり、芯というものが明確になったと思いますね。

-中野さんとの出会いも非常に大きかったんですね。

蒼:BOOM BOOM SATELLITESは以前より聴かせていただいていましたし、以前対談もさせていただいことがあって、いつか一緒に制作をやってみたいという気持ちはずっとあって、このタイミングだ!と思って依頼させてもらいました。音楽に向かう姿勢が非常にストイックで、でも柔軟性もあって、さらに1つの作品だけではなくてねごとの未来や道筋を考えながら制作を進めてくださったので、すごく大きいですね。

-そして今作も中野さんとの再タッグということですね。

蒼:「ETERNALBEAT」の中の『シグナル』という曲と『アシンメトリ』を中野さんにプロデュースしていただいたんですが、この2曲での手応えがすごく良くて、でも実はこの2曲はメンバー内だけである程度曲を作り上げていて整頓された状態からのプロデュースだったんです。なので今度は中野さんと産声を上げた瞬間の、曲の原型からご一緒できたらと思っていて。中野さんからもその形でやってみたいということを言っていただけたので、再タッグで今作を作りました。

-今作をきかせていただいて、元々持っていた可愛らしさやファンタジー要素に加えてカッコよさや尖った部分がどんどんでてきて、ねごとというバンドが確立されてきた印象を持ちました。

蒼:カッコいい曲を作りたいというのがまず大前提のテーマだったのでそう言っていただけて嬉しいですし、ねごとなりのカッコよさというのを考えたときに、内に秘めた熱量を曲にすることかなと思っていて。実際聴いていただいた方にそういう印象を持ってもらえるのはありがたいですね。

-その発想力やイマジネーションの元になっているのはなんですか?

蒼:今自分がどういうことを歌いたいかというのを大事にするようになりましたね。自分の中から湧き出てくる物の純度をどれだけ保ちつつ、ちゃんと意味のある曲にできるかどうか。メロディに関しても華やかさも大事ですが、自分の声に合うかどうか、自分らしいかどうか、説得力があるかどうかというところを意識するようになりました。そういう意味では以前より自然体だと思いますし、肩の力は抜けているかなとも思います。

-弾き語りでのライブをやりはじめたのも大きいですか?

蒼:そうですね。弾き語りって純粋に歌詞とメロディ、声での勝負なのでそういう形でも良いと思ってもらえる曲を作りたいなと改めて思うようになりましたね。原点に立ち返るというか、音楽の一番根っこと言えるような部分を意識するようにはなりました。

-そんな中リリースされる今作、『DANCER IN THE HANABIRA』。ダンサーと花びらというあまり一緒にならないイメージの言葉を合わせたところに面白さを感じました。

蒼:このワードとメロディは一緒に浮かびましたね。そのフレーズを元に曲を作っていきました。歌詞の内容としては、生きている中ではたくさんの人と出会い・別れがありますが、サヨナラを言って別れる人ってあんまりいないと思うんですよ。例えば学生時代の地元の友達とかってずっと一緒にいるのが当たり前だったけど、今ではそれぞれの生活があるから会うことが少なくなって、もうあの頃のように一緒にいることはできないけど、でもサヨナラを言って会わなくなっているわけではなくて。でもそれがわかるようになってきた今の自分だからこそ、周りにいる人たちを大事にしたいなという想いを曲にしたいなと思って書いた曲です。過ぎ去っていく人たちを花びらに見立てて、散ってしまったら目の前からはなくなってしまうんだけど、でも花びらの美しさがあって、胸の中には印象として残るような情景を描けたらと思いました。

-それはきっと年齢を重ねて、バンド活動を続けてきたからこそ抱く感情ですよね。

蒼:それは間違いなくそうでしょうね。今の年齢だからこそだと思います。若い頃の自分だったらこの感情に気付けなかったと思います。今だからこそリアルに感じられる部分や切り取れる部分なのかなと。一瞬一瞬の素晴らしさとか、今の私だから言葉にできること、表現できる音を意識するようになったのはここ最近のことですね。

-今話してくれたような幸子さんの想いがあるからか、エレクトロな音色やビート感でも機械的な感じがしなくて、温かみや広がりを感じました。ねごと独特のポジションを掴んだ印象です。

蒼:ありがとうございます。そう言ってもらえるのはすごく嬉しいです。血が通った作品を作りたいというのは根底にありますね。サウンドの形態がどうであれ、聴いた瞬間に心に変化を生み出すことができるのが音楽の面白さや良さだと思っていて、だからこそ聴いてくださる方の心に少しでも変化を生み出せるような作品を作りたくて、そのためには血が通った作品を作るというのは必要不可欠な要素かなと。以前は作品作りを楽しんでいる部分があって、小説を書くように、全部が全部リアルではなかったんですね。それはそれで世界観があったし、それだからこそ響いた感情はあったと思いますが、今はすごくリアルに私の内面を切り取って曲にしているような感覚があります。

-サウンド感と歌詞の内容が本来、違和感を感じるようなところはありながらも、一つの楽曲として成立しているのがこの曲の面白い部分なのかなと思いました。

蒼:そこが中野さんのマジックですね。すごくパンチのあるサウンド感なのですが、ちゃんと歌が活きているんです。中野さんってエレクトロなサウンド作りにすごく長けてらっしゃいますが、あくまで曲の中心は歌という想いを持っていて、歌のことをすごくしっかり考えてくださる方で。その部分で中野さんには絶大な信頼をおいていますし、その感覚がねごとにはすごく合っているなと感じています。今回一緒に制作させていただくのが3曲目で、お互いを理解しはじめて踏み込める範囲が増えたので、精度も高まっていると思います。

-そういう部分も含めてか、この曲は未来に向かうイメージを持ちました。

蒼:今年はもっともっとたくさん発信していきたいという想いはバンドとしてはありますね。ずっと走っていたい。新曲もどんどん作っているので年内にまだリリースもできたらいいなと思っています。3月に行ったツアーファイナルでも先が見えたというかまだまだやれることってたくさんあるなと感じるライブだったので。バンドとして出来ることが増えたし、新たな武器を手に入れたような感覚なので、その武器を持って次にどうやって攻めていこうかなってワクワクしていて、そういった想いが自然と曲にも宿っているかもしれませんね。

-2曲目の『DEADEND LOVE STORY』は曲を聴いた印象がすごく柔らかかったです。この柔らかさはねごと特有かなと感じました。

蒼:表題曲がすごくパンチのある曲なので、この曲はもっと歌にフューチャーしつつ、ヒップホップ的な要素も取り入れて、仕上げた楽曲なので、表題曲との対比が面白いかもしれないですね。

-2曲とも5分超というボリュームって珍しいなと感じました。

蒼:そうなんですよ(笑)。どちらも5分超って珍しいですよね。でも意図的にこの長さにしたわけではなくて、それぞれの曲の表現に必要な要素を入れていったらこの長さになったという感じです。ちなみに『DANCER IN THE HANABIRA』は元々もう少し速かったので短かったのですが、中野さんとのディスカッションの中でもう少し遅いほうが歌が活きると思うし、それでもダンスミュージックの要素は失うことはないからその方がいいと思うよというアドバイスをいただいて、この長さになりました。どちらの曲もしっかり重みのある、シングルだけど重厚感のある1枚になったと思います。

-初回生産限定盤の映像もかなりのボリュームですよね。見どころを教えてもらえますか?

蒼:『アシンメトリ』の映像はすでに公開になっていますが、あとの2曲もすごく良い映像なので、楽しみにしていてほしいですね。今の私たちを一番反映できるているのがライブだと思うし、最近ねごとのライブを見ていない方にもぜひ映像を見てライブにきてもらえたら嬉しいです。

-僕も最近ライブを見に行けていないのですが、『アシンメトリ』の映像を見て驚きました。雰囲気や照明なども含めてすごくエンターテイメント感があって。

蒼:ツアーでのチームで1公演1公演終わるごとに話したりなどして、迎えたツアーファイナルで、空間づくりや照明などは特にこだわりましたね。ダンスミュージックとそれって切っても切り離せないものだと思うので。

-こういったダンスナンバー的な楽曲があるとライブの幅もすごく広がるんじゃないですか?

蒼:そうですね。最近のライブではあまりMCをしなかったりとか、曲と曲を繋いで行ったりとか、セットリストの作り方の幅は広がりましたね。この前は映像を投影しながらライブをやったりしたこともあって、きっと今後もライブは変化していくと思うし、進化させていきたいなと思っています。

-6月に開催される“ETERNALBEAT NIGHT”はまさかのCreepy Nutsとの2マンということで驚きました。

蒼:すごい組み合わせですよね。久しぶりの対バン企画なので、今の自分たちと化学変化が起きそうなアーティストさんと一緒にやりたくて。先日ライブを見させてもらった時に、ライブがすごく面白くて、瞬間的にその場の空気を切り取ってライブ空間を作り上げていく様子が今の私たちにとってすごく刺激になると思ったし、同じ1日を作れたらきっと面白いなと思って今回のオファーに至りました。

-すごい1日になりそうですよね。僕も見に行けそうなので楽しみにしています。

蒼:ぜひ!今のねごとのライブもきっと楽しんでもらえると思います。

-今回お話しを聞いて、自信が深まったというか、芯が強くなった印象を持ちました。

蒼:続けてきたからこそ見えるようになった景色はあるかと思いますね。デビュー7年目なんですけど、ライブにしろ、楽曲制作にしろ、いろいろ試行錯誤しながら、とにかく一度やってみたというのは今の自分たちにとって大きかったかなと思います。やってきたからわかるようになったことがたくさんあるので。歌い方ひとつにしても過去の歌い方があったから今の自分に合う歌い方を探すことができるし、その変化を感じることができますから。

-これからがすごく楽しみですね。今日はありがとうございました。

蒼:ありがとうございました。これからもよろしくお願いします!