このサイトはJavaScriptがオンになっていないと正常に表示されません

ねごと interview
- SPECIAL -

ねごと interview

ねごとから2017年2枚目のアルバムリリースとなる「SOAK」が届いた。ねごとの新基軸ともいえるエレクトロミュージック色はしっかり出しながらもバリエーション豊富な音色やジャンルを取り込んだ今作は今の“ねごと”というバンドを明確に表現している。そんな今作を切り取るインタビュー

インタビュアー:ブッキングマネージャー窪田

-2017年2枚目となるアルバムリリースですね。非常にハイペースですよね。

蒼山幸子(Vo,Key 以下…蒼山):そうですね(笑)。

-ライブやツアー、自主企画などもある中でこのハイペースでのリリースは大変だったんじゃないですか?

蒼山:バンドとして作品を生み出したい欲がすごく高まっていて、2月に「ETERNALBEAT」をリリースしたタイミングでは年内にもう1枚フルアルバムをリリースしたいというところから今年が始まったので、ハイペースではありましたが、それがすごく大変だったという印象はないですね。

-ねごとというバンドとして制作意欲が高まっているんですね。

蒼山:2015年6月リリースの「DESTINY」から2016年11月リリースの「アシンメトリ e.p.」まで1年半近く空いていて、その間の中でエレクトロサウンドを取り入れてライブの魅せ方を変えた部分もあったり変化が多い時期だったんですが、その中で四人の中で今のねごとを体感してもらう作品を生み出したいという意欲は高まっていたと思います。

-そんなねごとから生み出された最新作「SOAK」。“染み込む”という意味の言葉ということで、作品タイトルが少し意外な印象というか、エレクトロが基調になった世界観で“染み込む”という言葉をタイトルにしたところがねごとらしい部分なのかなと感じました。

沙田瑞紀(Gt 以下…沙田):そう言ってもらえると嬉しいですね。ライブでもそうなんですが、ねごとというバンドは1曲でガツっと雰囲気を作り上げるのではなく、ライブ全体を通して会場全体の温度を徐々に上げていくイメージがあるので、今回のアルバムも1枚を通して徐々に聴いている人を巻き込んでジワジワと染み込ませていくようなイメージでこのタイトルにしました。

-なるほど。そのイメージはすごくわかりやすいです。そういうアルバムにしたいというコンセプトで作り始めたのですか?

沙田:アルバムを作り出す手前のタイミングでみんなで話し合いをしている時に、そういうイメージは共有していました。ただ、それに向かって曲作りが進んでいったというよりは、曲を並べてみて結果的にそのイメージ通りになったという感じですかね。

-アルバムだとそういった1枚での流れとかは作りやすいですもんね。1枚を通してということで曲順にもこだわりをすごく感じました。

蒼山:全体を通してどういう1枚にするかというところだったので、そこはこだわりました。「DANCER IN THE HANABIRA」で始まるというのは満場一致で、ほかの並びも話し合いで決めましたがみんなの中で比較的統一されていましたね。

-いろいろな要素が入っているのでアルバムとして1本の芯を通すのは大変だったのかなという印象を持ちました。

沙田:今年リリースした2枚のシングル「DANCER IN THE HANABIRA」と「空も飛べるはず / ALL RIGHT」が対照的で、その2つが共存するアルバムということで、そこの整合性みたいなものは意識しました。自分たちのやってきたことを信じて信念をもって、挑んだ1枚で、楽曲のジャンルとしてはバリエーションが多いけど、ねごとというバンドとしての気持ちとしてはブレずにできたかなと思っています。むしろそこがブレてしまったら今作は作れないです(笑)。

~一同爆笑~

沙田:時間の制約などもあったので瞬発力、集中力が必要だったのでギュッと凝縮して挑んだ作品ですかね。

-さきほど瑞紀さんからもお話があったようにバリエーションが豊富ですよね。瑞紀さん、佑さん、小夜子さんが作詞作曲を行った楽曲たちも入っていますし。選曲はどういった形で進めていったのですか?

藤咲佑(Ba 以下…藤咲):できた曲たちをアルバム用に話し合いで選んでいきました。

-候補曲もたくさんあったのですか?

藤咲:そうですね。たくさん候補曲はあって、その中にはもちろん過去に作った曲たちもありましたが、今の私たちのモードに合わせていったので最近作った曲たちが多い構成にはなりましたね。

-今過去に作った曲たちというお話がありましたが、2年半以上前のリリースにはなりますが「VISION」でのセルフプロデュース、そして今年リリースした「ETERNALBEAT」と変化はしつつも、ねごとというバンドとしての物語が続いていて、過去作があるから今があるような印象を持ちました。

蒼山:4人で一緒に続けてきたからこそですよね。いろいろな経験もして今がありますから。
沙田:1本の道を4人で歩いてきた感覚があります。あとは年相応になってきたかなと思います。自分の中にあるものをスッとリアリティのある状態で曲にできるようになってきたかなと。

-今作には中野さん(BOOM BOOM SATELLITES)や益子樹さんのプロデュースの楽曲も収録されていますが、リミックスをやったり、ねごとのサウンドメーカーとしての側面も持っている瑞紀さんとしては新たな発見などあったんじゃないですか?

沙田:お二人にプロデュースしてもらえたのはすごく大きかったですね。二人とも全く異なる個性を持った方なので、それぞれの視点でのねごとに対してのお話を聞くこともできて、それによって私自身の視野も広くなったと思います。

-今後に活きることも多そうですね。

沙田:音楽的でいたいなという気持ちは強くなりましたね。中野さんが大事にしている部分なども勉強になります。一つ一つのビートや音色にも意味合いがあって。そういうことにトライしている中野さんとこうやって一緒にお仕事させてもらえたのは私にとってはすごく貴重な経験でした。今後に活かしていきたいですね。

-今、ビートに関しての話がでてきましたが小夜子さんはドラムなのでビート感というところに関してはガラリと変わった部分もあったんじゃないですか?

澤村小夜子(Dr 以下…澤村):最初は戸惑いもありましたね。前作「ETERNALBEAT」の制作タイミングのときは特に。
沙田:そうだよね。相当大変だったと思う。
澤村:今までやってこなかったようなリズムだったりビート感だったり、自分の中に入れ込むまで苦労しましたね。その後のツアーも経て、今はかなり慣れてきた部分もあるので今作はスンナリ入ることができたかなとは思います。

-佑さんもシンセベースという新しい楽器への挑戦がありましたね。

藤咲:私も最初は戸惑う部分はありましたね。でも今ではこれが一つの武器だなと思えるようになってきています。演奏のタイトさへの意識とかは普段のベースにも活きてきていますね。

-今作の収録曲でのそれぞれ思い入れの強い楽曲を聞かせてもらいたいです。

澤村:私は3曲目の「WORLDEND」です。歌詞の内容が面白くて、メロディも好きだし、ドラムのフレーズがすごく考えやすかったです。こういうちょっとチャイナ系の曲が元々好きなのもあって、ねごとでこういう雰囲気の楽曲を作ることができて嬉しかったです。
蒼山:どれも思い入れがあって選ぶの難しいですね(笑)。

-では例えば生み出すのに苦労した曲とかはありますか?

蒼山:4曲目の「サタデーナイト」ですかね。アルバムのリード曲候補を夏くらいから作っていたんですけど最初のデモはしっくりこず、なかなか固まらなくて。中野さんにデモを聴いてもらって、アドバイスをもらいながらこの曲が出来上がりました。すごく苦労したというと少しニュアンスが違うかなとは思いますが、時間をかけてこの完成形に辿り着いた曲という意味ではこの曲ですかね。
沙田:7曲目の「undone」は2013年に原型があった曲で、そのタイミングではまだメロディだけで歌は入っていなかったんですが、佑がこの曲がすごく好きだから収録したいと言ってくれていたんです。なので佑にこの曲のどこが好きか聞いたんです。
藤咲:聞かれたね(笑)。
沙田:そこで聞いた話を元に、自分なりに今の自分で考えて解釈してメロディを変えたりして佑に歌詞を書いてもらって、完成した曲です。最近作った曲が多い中で数年前に原型があったこの曲を今作に入れることができたのが嬉しかったです。過去に作った曲でも今鳴らしても良い曲と思えることって大事だと思うんですよね。ライブでは過去の曲はもちろんやるわけで、自分たちが成長して進化した中で過去の曲を鳴らして立ち返るというのはやはり大事なことだなって、この曲の制作を通して改めて思いました。
藤咲:私は10曲目の「水中都市」です。この曲は一番最後にレコーディングしたんです。まだワンコーラスしかない状態から聞いていて、幸子と中野さんがそこからどんどん制作を進めていって、完成形に向かう過程を体感していたので、完成した時にすごく感慨深くて。ラストのドラマチックな展開を聴いた瞬間涙がでてきました。この曲がアルバム一つの締めとして10曲目にいてくれることがすごく今作にとって大きなキーポイントだと思っています。

-ありがとうございます。そして今日も何度も話にでてきている前作「ETERNALBEAT」を引っ提げてのツアーファイナルの模様を収録したDVDも同日リリースとなりますね。このツアーはエレクトロという新たなことに挑戦しつつもそれをねごとの過去作とも交えて世界観を作り上げていくという意味ではすごく大きなツアーだったのかなという印象です。

沙田:新たな挑戦ではありましたが、肩の力を抜いてすごくナチュラルに挑めた感覚はありました。今のねごとを自由に楽しんでもらいたいというコンセプトがあって、それが一つの形になったという感覚を持てたツアーファイナルだったので、バンドとしての経験値がグッと高まったとは思います。
藤咲:今自由に楽しんでもらうという話がありましたが、でも決して緩い感じではなくて。熱量は今までで一番だったんじゃないかなと。一気に燃え上がる熱さではなくてジワジワとくる熱さ。

-肩の力を抜いて挑めたツアーというのは意外でした。

沙田:準備は本当に大変でしたけどね(笑)。

~一同爆笑~

藤咲:大変ではあったよね(笑)。でもライブ中はすごくリラックスして余計なことは考えずみんなで楽しむことができたかなとは思いますね。
小夜子:私も初めてのことが多かったから大変な部分はあったけど、やってみないとわからないことも多くて、一回一回のライブごとにいろいろな部分を確かめながら固めていったツアーだったかなと思います。今まではツアーが始まる前に全部固めていたので、そこは今までと違ったツアーでした。

-幸子さんはどうですか?

蒼山:「ETERNALBEAT」に収録した音楽をライブという立体的な空間でどうやって表現するかということをすごく考えました。映像とか照明も含めて魅せ方がすごく大切だったので。やりがいもあって、すごく楽しかったです。先ほど小夜子も言っていましたが、そういった部分もツアーを周りながら固めていって、それがギュッと凝縮できたツアーファイナルだったので、みなさんにはぜひじっくり見てほしいなと思います。

-そして年明けから新たなワンマンツアーも始まりますね。

蒼山:新しい曲も増えたのでセトリの組み方などはまたいろいろ工夫して、「ETERNALBEAT」のツアーで学んだことはさらに進化させて、最高のワンマンツアーにしたいと思っています。

-またセトリも含めていろいろな構築が大変そうですね(笑)。

沙田:リハーサルたくさんやると思います(笑)。

-今作の曲とデビュー曲がどうやって混ざり合っていくんだろうとか想像がつかない部分もありますがワクワクしますね。

沙田:セトリによって聴こえ方が変わりますしね。
蒼山:楽しみです。今作でコンセプトにした、1枚を通して“染み込む”という感覚を新旧の曲を織り交ぜて1本のライブというものに落とし込むイメージですね。

-ねごとにとって2017年は大きな1年だったんじゃないかなという印象ですが、それぞれ振り返ってみてどんな1年でしたか?

藤咲:突っ走っていきたい、挑戦したいと思ってスタートした1年で、実際いろいろなことに挑戦もできて突っ走ってこられたのですごく充実していた1年だと思います。
沙田:あっという間な1年でしたね。ハイペースな制作でもあってタイトなスケジュールではありましたが、逆にそのおかげで、瞬発力・集中力・決断力は養うことができたかなと思います。〆切があるからそこに向けて進めるわけで、音楽家としては必要なことですからね。
澤村:もう2017年が終わるのかと思うとすごく早いですね。今のねごとのモードが徐々にいろいろな人に伝えることができているかなと思います。これが来年に繋がっていくような感覚があります。
蒼山:リリースもたくさんあって、ライブもたくさんやって、慌ただしい部分はありましたが、今思っている気持ちを作品という形にしたりライブだったりに込めることはできて、そこで気付くこともたくさんあって、気持ちがたくさん動いた1年で、個人としてもバンドとしても芯が図太くなったので、それをもっと制作やライブに注ぎ込んでいきたいなと思っています。

-これからのねごとが楽しみですね。

蒼山:そのきっかけになるであろう今作「SOAK」を聴いて、ライブに来てもらえたら嬉しいです。

-期待しています!