―去年はシングル3部作に始まり、アルバム、そしてツアーをやって初のライブDVDを出したりボリューム満載な印象だったんですが、年が明けてシンプルにシングルで2曲っていうのは逆に攻めているなと感じました。この意図から聞かせてもらいたいです。
渋谷龍太[Vo/以下…S]:2曲でいくのか、1曲でカップリング付けるのか、3曲いれるのかとかそういう話をしたんですけど、やっぱり今の自分たちを顕著に表す方法として1曲でも2曲でも表題でボンッボンッと出したほうが強いだろうってなって。それをやるにあたって情報量が多すぎるとちょっと散るなって思って、だから両A面という形で、現状というものを強く押し出せるんじゃないかなって。そういう曲を柳沢が作ってくれて出来たんで、この2曲だったら色んな所で間違いないなっていうのがあったので、この2曲を表題で出すことにはすごく意味を感じています。
―まさに今のSUPER BEAVERの2曲というか。去年10月号でのインタビューの時に次作のテーマは『美しい日』になると思うというのを話していましたもんね。
柳沢亮太[Gt/以下…Y]:本当にあのインタビューの後に作った曲なんですよ。
―あっ!あの時にはじゃあまだ本当に構想段階だったんですね。
Y:そうですね。そう思っているって口にしたこと自体があの時が初めてでしたしね。
―しかも構想かな?と言っていたけど今作のタイトルが「美しい日」そのまんまだったからあの時のインタビューが今に繋がっているというのを感じました。
Y:答え合わせになるように伏線を先に張った感じで(笑)。アルバムとかボリューム感のあるものを結構コンスタントに出していて、作品数および全体の曲数とライブのボリュームとっていうのが中々これまで成立してこなかった言うか。今でこそワンマンの本数も増えているし、アルバムの曲を全部披露するようなことも増えているけど、今僕たちを知ってくれた人が増えた中で過去にもこういう曲があるんだよというのも知ってもらいたいし、ファンの人たちもこの曲聴きたいとかいろいろあると思うので、曲数だけがどんどん増えていってというよりも、じっくりしっかり聴かせる期間っていうのがあってもいいんじゃないかって話にもなっていて。別にペースを落とそうという訳じゃないけど、ひとつひとつの重心をドシっと構えるということを意識してのシングルっていう選択肢があったんですよね。だとしたら今のSUPER BEAVERを顕著に出せる曲じゃないとふわっとしちゃうよねっていうのは話していました。だから「美しい日」っていうワードが去年の秋口に出てきたっていうのはすごく大きくて。何が一番今の僕たちを表すだろうっていうもののテーマというかワードが出てきたから。
―前回のインタビューでも話しましたけど、今の核となる言葉をその時に渋谷さんが発して、それをキャッチできる柳沢さんがいてというキャッチボール感って、今まで培ってきた経験とかで感性が似てきてるからなんですかね。
Y:それはありますね。
-しかもその「美しい日」っていう言葉自体が今の2人くらいの年齢じゃないと出てこない言葉じゃないかなって。若い頃って「美しい」って言葉が恥ずかしいというかあまり言えない感じが僕の中ではあって。20代後半になって言える言葉だなって感じがすごくしました。
S:正直恥ずかしいっすけどね(笑)。でも言い切っちゃった時の強みみたいなものも何となく知ってるというか、学ばせてもらっている気はするから、まあそこまでわかりやすく極端なことを言うというか、そこに本質があると思っているから恥ずかしいと思いながらもそれでしか表せないようなことっていうのは多いのかなと思っていて。だからポロって出ちゃう言葉っていうのも誰かに届く言葉であれば端的に強い言葉でと考えている時に出たっていう。
―柳沢さんは普段渋谷さんの言葉を聴いている時から曲のヒントっていうのは探しているんですか?
Y:うーん…常日頃探しているわけじゃないですよ。ライブのMCとかでも、ステージの中にいると外のスピーカーで出る音の他に自分たちも音が鳴っているから全部が全部聞き取れているわけではない時もあるんですけど、飛び込んでくる言葉にピンときたりするということはそこに意味があるんだと思うんです。あとはこういうインタビューの時とか人と会話をすると引き出されるところもあったりするので、そういう時にポロっと出る言葉って常に考えてることだったりするから、そういう時になるほど!とか。「美しい日」という言葉もどこかで覚えていたし、且つDVDリリースする前後で映像チェックをしている時にその言葉が改めて入ってきて。いつでも会話している時にギラギラしているってことは全くないですよ。
S:それだったら僕もやりづらいです(笑)。
―渋谷さんは次何言うんだろうって(笑)。そんな経緯を経て完成した楽曲「美しい日」ですが、曲の始まり方がすごいなと思いました。聴いた瞬間鳥肌立っちゃいましたもん。このアレンジはどの段階で思いついたんですか?
Y:いろんな曲をやってきて、言葉の面だったりとか、ビーバーならではのものをこれまでいっぱいやってきたと思うので、だからこそ新たな一手を自分たちで作らないと同じ事やってもしょうがないし、同じ曲が2曲あってもしょうがないっていうのがどこかにありつつ、でもやっぱり共有したいっていうのが根本にあって。でもこの曲でシンガロングして無理やりみんなで歌うか??「WOW WOW」・「ラララ」をいれるか??となった時にそれは違うかなという感覚があって。そこで思いついた共有方法というのが拍手で。拍手というか手拍子ですかね。完全に「美しい日」ってワードに引っ張られちゃっているんですけど、嬉しいことが目の前で起こった時に自然に湧き出る拍手というのはその場を共有した人が瞬間で鳴らすものだなと思って。じゃあ手拍子と歌で始めてみようかってなって、単純にアイデアとして実際にやってみたらいいんじゃないかって
―すごいですよね。渋谷さんじゃなきゃこれは成立しないんじゃないですかね。純粋にカッコいいなーと思いました。
S:ありがとうございます(照)。少しずつゆっくり始まっていくっていうのはいろいろな事にも共通することだと思うから。ジャンプするにも助走が必要だったりするじゃないですか。こういう曲にはドンピシャでハマったかなって思いますね。
―先ほど柳沢さんが言った新しさはあるんだけど、違和感は全然なくて、ビーバーらしくそれが染まると言うか、今は何をやってもそれがビーバーになる、ビーバーらしさに染められるバンドになったんだなって改めて思いました。何をやっても違和感がなくて、それがSUPER BEAVER。
Y:音楽的なアレンジを無理矢理あれっぽい要素とかこれっぽい要素とか取り込むことって簡単だと思うんです。ちょっとJAZZっぽくしようよとか。でもなんかそういうことではないというか、曲の芯に近い部分からアレンジしていく感覚ですかね。根本のスタンスに対しての歌だったり人だったり「美しい日」というワードに対するアレンジを考えたかな。突拍子もないことをやればそれが新しいことになるとは思っていないというのは根本にあるので、そういうことではなくて、必ずこれまでのビーバーというものを踏まえたうえで新しい聴こえ方、新しい絶妙さというのを考えていますね。
―アレンジはメンバーみんなで考えているんですか?
Y:基本的にはそうですね。根本的には曲を作った時点でこういう雰囲気がいいとかは伝えるんですけど、今回に関してはタイトルが先に決まっていたのは大きかったですね。「美しい日」というワードが渋谷から出てきて、何をもって美しい日と言ったのかという場面共有が今回はメンバー全員できていて、そこを目指すことができたので。俺はいつもタイトル付けるのが苦手で、アレンジしている段階で仮だったりすることが多いから、今回に関してはそこがいつもとは違いましたね。
―早くLIVEでこの曲を聴きたいです。
Y:まだやってないですからね。
S:LIVEではまだ敢えてやってないんです。発売までやらないかなと。※インタビューはリリース前の1/11に行った。音源を聴いてそれぞれの頭の中にイメージを作ってもらった方がこの曲の強みがでるなと思ったのでリリースするまではLIVEではやらないつもりなんです。絶対にLIVEでもっと化ける曲だなって思っていて。だから曲の導入部分も自分たちのワンマンの時とそうじゃない時とで変えた方が面白いかなとも思うし、いかにこの曲が一番良く聴こえるかという方法を会場毎に選べる曲だと思うので、色々多種多様に考えていこうと思っています。
―「美しい日」に関しては歌詞が2人の名義になっていますが2人で制作をしたのですか?
Y:実際書いたのは俺ですけど、この曲のタイトルもそうだし、冒頭のAメロは都会のラクダ(LIVE DVD 10th Anniversary Special Set「未来の続けかた」付録/渋谷龍太書き下ろし小説)の最後の1ページから言葉を引っ張ってきているんですよ。イメージでいえばあの日があって、そこで言った最後のページからあの日に繋がっていて、その後に繋がっているので。だから原案・渋谷、作詞・柳沢みたいなイメージが最初から自分の中であったのでこういう表記にしました。
―この曲の歌詞にでてくる普遍的な形をした幸せが特別だと感じられることができるのは今の年齢や、今まで経験を重ねてきたから出来る事なのかなと感じました。きっと何年か前だったらこの曲は出来ていない気がします。
Y:そんな気はしますね。別に何かを望まなくなったということではなくて、いくつもあるという事がポイントで。ただ一つ掴み取るものではなくて、実はいくつもあるんじゃないかなって。ある意味ではもっと欲張っていい、じゃないけど一個一個気づけばいくつも幸せってあるんじゃないかなって思うようになったというのは確かに年齢を重ねたという部分も大きいかなと思うし、それがかつての自分たちじゃないけど、僕らよりも下の世代の人たちにも気づきのキッカケになればいいかなとすごく思います。
―今作の2曲はすごくハッとさせられるというか、歌詞を読んで確かになーって共感するし、教えられる感がすごくありますね。普段は忘れてしまっているけど改めて文章で読んで歌として聴くと、そうだったなって懐かしく思うというか。
S:僕らの曲は僕らの経験したことで、その中で僕たちが感動していることってやっぱりみんなが感じるようなことだと思っていて、みんなが感じられるようなことを改めて提示するようなバンドだと思っているので、みんな絶対どっかには持っているものを曲にしていると思います。忘れてしまったりだとか、どこかに置いてきてしまった気持ちだと思っているから、それを表面上で大人の男4人が声を大にしてそれを伝えてるっていうのがすごく僕らならではだと思うし、そうでしか伝えられないこととか。それがバンドという形態を通って音楽という手段を使って伝えているものに繋がっていくと思うんですけどそれが強くできる。やっぱり歌っていても俺が言った「美しい日」という言葉であっても色々なことを考え直した時に、そうだなァ…って自分でも思いながらとか、毎日毎日要所要所思い浮かぶ場面が違ったりするというのはやっぱりあるのでそれを聴いてくれる人がもっと感じてくれたりしたら嬉しいなとは思いますね。
―もうSUPER BEAVERにしかできない音楽ですよね。聴く度にすごく学ぶところがあるし二人の発信力だったりとかいつもすごいなって感心してしまう所があります。2曲目の「全部」は「美しい日」が出来てからの楽曲ですか?
Y:「全部」の方が先でしたね。
―なるほど。どういうタイミングで出来た曲なのですか?
Y:去年の秋口くらい曲作りをしている時ですね。シングルを作るということは意識していました。
―非常にキャッチ―だしシンプルだしわかりやすい曲ですよね。
Y:出来るだけに簡単に歌おうというのが最近基本的にあるんですけど、そうはいっても言葉は多くなりがちだったりするんです。そんな中でも非常にシンプルに出来たかなっていう感覚はあって、今回の2曲に共通する部分というのも多くて、入り口としては冒頭一行がすべてだったんですよ。“楽しい思い出には必ず誰かがいる”という言葉は自分の中でずっと言いたかったことで。LIVE会場においても何においても、楽しければそれでいいっていう言葉がすごく好きで、その反面それだけでいいのかなって思う自分もいたりして。それはなんでなのかというと、楽しいって思う理由にはいろいろあって、なんで楽しかったのかなって何かの帰り道に思った時に、例えば話してみたいってずっと思っていた人と今日ようやく喋れたとか、ただ単純にあんなに笑うと思わなかったから楽しかったのか、楽しかった事には何か理由があって、そこの自分を顧みることが出来てキャッチできるとそこにあるものを大事にできるようになるというか。それってやっぱり自分の以外の人やモノやシチュエーションが関わってくると思うから、そういうものを大事に見ることができると色んなことが素晴らしい方向に向いて行くんじゃないかなって。これは楽しい事だけじゃなくて辛い事、悲しい事の原因や理由をちゃんと見ることが出来たらもっとこうでありたいとかこうしたほうがいいとか、自分でわかるんじゃないかなって。ムカつくって思ったりした時に理屈はないと思うんですよ、頭で考えたりする前に感情が動くじゃないですか。でもなんでそうなったんだろうと考えた時に、「こういう事が違うと思ったから」っていう理由が必ずあるからだと思うんですね。そういう事を歌いたくて、そういう事の気づきやキッカケになる曲を作りたかったっていうのが大きかったんで。だからこそそういう事に気づくと、小さいことが幸せだなって感じられるようになるかもしれないという2曲のリンクはすごくあります。
―曲は違うし歌詞の内容ももちろん違うんだけど、根本は一緒ですよね。しかもこの歌を渋谷さんが歌うことによって発信力としてすごいパワーを持っている印象を持ちました。
S:この曲に関して僕は空っぽな感覚で歌っています。この曲自体がすごく強いから考えて歌うよりももっと投げた先の伸びしろの方がデカい気がしていて。すごくわかりやすくてメロも単純で頭に入りやすくて入った中で伸びるっていうのがすごくあると思うから、特出して何かを考えるっていうよりも届けるためにというのを念頭に置いたりしているからすごく単純なピュアな気持ちがデカいのでアプローチの仕方としては「美しい日」とは少し違う気がする。もっと本能的なものかなって。あんまりこの曲にエゴはいらないかなって、受け手がそれぞれの正解を導ける曲だと思っているから、聴いた人の数だけ正解が間違いなくある。それを解釈した時にそう意味じゃなくてっていうエゴよりも感じたままがすべて正解になれる曲だなって。出発点は一緒かもしれないし極論としては2曲とも一緒かもしれないけど届け方は違う。
―僕はこの2曲がある種一つのビーバーの完成形なのかなと感じました。
Y:特に完成形ではないと思います。その理由としては多分生きていくというかバンドが進み続ける、年齢を重ねる毎にその時その時で言いたいことがいっぱい出てくると思うんですね。このバンドにいえばサウンドがどうこうっていうよりそっちの方が軸にある気がするから。言いたいことは変わらないんですけど深くなっていくとか、新たな言葉が生まれてくるとかということが生まれ続ける限り完成ではない感覚ですかね。
S:基本的に(仮)が付いていていいんじゃないですかね。リリースするにあたっては現状の最高を出しているつもりであるから、そういう意味では常に完成形で間違いはないとは思いますが、今柳沢も言ったようにこの先も進み続けるから死ぬまで(仮)でいいのかなって気はしていますね。自分たちに限界は作っちゃいけないような気もしますしね。
―そして春には岡東販ツアーもありますが。岡山でやるのは前ツアーでのキャパの問題のこととかがあったからですよね?
S:色々騒がせてしまったり期待させてしまったりしたので…。東京は憧れの日比谷野外大音楽堂、大阪は大阪城野外音楽堂の2本柱で考えていたんですけど、岡山ではこの間の件があるからここでしか行けないかもという話になりました。
―それで耳馴染みのないツアーが岡東阪ツアーができあがったと(笑)。
Y:岡山のバンドでもないのにね(笑)。
―大阪がツアーファイナルって初じゃないですか?
S:初ですね。
Y:ツアーファイナルが福岡だったりだとか、名古屋だった時もあるんですが、大阪は今までなかったですね。
S:大阪は東京よりライブやってますからね。
Y:夏場とか毎週行ってるみたいな時とか2週連続大阪城野外音楽堂の時もあったね、イベントで。あと神戸だけどラジオもやらせてもらっていたんで関西は頻繁に行きました。
S:毎月行ってますね。ホーム感すら出てきた関西で、こういう時にファイナルやれるというのはいいですね。
―日比谷野外大音楽堂と大阪城野外音楽堂でビーバーっていうのはすごくいいロケーションですよね。
Y:イベントで出たりはあるんですけど外でのワンマンって初めてなのでやっぱりちょっと雰囲気違う感覚はありますね。
―特殊な場所のイメージがあるよね。同じ2000人~3000人くらいのキャパでも箱と野外だと全然違うし、野音が持つパワーというかスピリチュアル感はあるなという感じ。そこでビーバーの曲たちが演奏されるパワーってすごそうだなってぼんやり想像してしますけど。
S:絶対にハマると思っています。日比谷野外大音楽堂に関しては昔から憧れもあったし、確実に聖地だから、そこで自分たちが出来るっていうのはロマンだなって思います。
―その手前2月にはeggman35周年記念の武道館公演もありますね。よろしくお願いします。
Y:こちらこそお願いします。
―そこをキッカケに、未来の武道館ワンマンに繋がってほしいと思っています。
Y:そうですね。初めて武道館に立つのはワンマンでありたいと思う部分もありましたが、俺らってだいたい2回ずつ出ているんですよ大事な所って。だからそういう意味で言うと今回出るっていう事はそのあとに自分たちのワンマンがあるっていう事だなって思っています。
S:eggmanは徐々に思い出じゃなくて積み重ねてきた歴史みたいなものをすごくたくさんあるような気がするんですけど、やっぱり今所属事務所でもあって、どんどん馴染みが出てきてeggmanというライブハウスの特色っていうのにも気づき始めてきて。でも俺らがというよりeggman自体が濃くなってきている気がするんですよね、なんとなく。だからそういう所がすごくあるから共有してきた歴史とか歴を感じるところがある。だから武道館でeggman35周年をお祝いするというよりも、eggman35周年のお祝いする場所が武道館というだけかなと思っています。
―その一言がすごく嬉しいです。ありがとうございます。これからも一緒に歩んでいければと思います。