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TAMTAM interview
- SPECIAL -

TAMTAM  interview

ハイエンドな新世紀ダブスタイルのアイコン、TAMTAMが過去の想像力を超える瞬間。 輪郭のクリアな音像や、無常と希望を描く示唆的なバースの並び、アートワークにも反映される美意識。 音楽IQ高めなダブグルーヴはリバーブやディレイが包み込んだり切り裂いたり。 全ての構成要素はどこかへの所属性より自分達の足で立ち前進する事を得意とするもの。 リリース毎の進化著しい前衛集団の歌い手Kuro(Vo/Trp)が捉えるバンドのベクトルは、自身の足下から外のフィールドへ向かってまっすぐに伸びている。

Interview & Text : 鞘師 至

自分の本能に目を向けた音楽。

―今作『Strange Tomorrow』、これまで以上に自身の音楽に自覚が宿った感じがしました。

• Kuro(以下”K”): そういう自覚はどんどん深まってます。 昔はいちプレイヤー兼リスナーとして”ダブってこうあるべきだ”っていう固定意識が強かったんですけど、『Polarize』で吹っ切れて、前作『For Bored Dancers』でより明確になって、今回はそこにライブも重ねて自分達の出音を更にくっきりイメージできる様になった状態でできてきた曲を詰め込んだ感じです。 今は”ダブの定義は自分達で自信持って作っていこう”と考えれるようになって、外に求めないようになりました。 元々スタジオでジャムしててもやっぱりメンバーそれぞれ、自然にダブ的アプローチを共通言語としてセッションしてるし、どんなことやっても自分達なりのダブっていうのがエッセンスとして残る安心感が出て来たのかもしれないですね。 だから最近はそこからもう一つ先にある、歌として曲として刺さる成熟したものかどうかにフォーカスできるようになったんだと思います。

-しっかりサビがあるダブソングという並びの中で、要所に差し込まれたグレースケールな深いダブ感が実は最大の武器なんじゃないかなと。 「スピカ(M7)」のラストの流れとか、頭バグりそうになりました(笑)。

• K: (笑)。 その曲もそうですけど、今作は特に自分達なりの方法論で仕上げるっていうのを念頭に置いていたので、過去ルーツレゲエをやってた時代の感覚なんかも在りながら、よりキャッチーなものを作る事が出来たかな、って。

-こういうリアルミュージックがメジャー的アプローチで世に輩出されるっていう事自体が,今作の持ってる希望を体現してる気がします。

• K: 過去の自分達は、今思い返したらですけど、聴く人を選ぶ音楽をやっていたなあと思うんです。 メジャーデビューしてからは関わってくれるお客さん達の事も意識して曲を書くようになった。 もちろん良い意味で。 バンドの外に目を向ける感覚が備わったのはひとつバンドにとっても希望かもしれませんね。 聴いてる音楽は昔から変わらずズブズブなものも聴いてますけど、まず私がボーカルをとってる以上やれる事、やれない事はあるし、自分の好きなディープな音楽をやってる人達のそのまま模倣をするのはおもしろくない。 あくまで自分達から自然に出てくるフレーズや手癖、そういうもので曲を作っていこうという意識なんです。
伝えたい事を伝えてないと意味を感じなくなってきた。

-外界からインプットしていても最終的には自分の能力にフォーカスする、そういう感覚を手に入れたのはいつ頃から?

K: ほんとここ最近、前作『For Bored Dancers』くらいからかもしれませんね。 元々このバンドを始めた時から、有名になりたい!というよりは歴史に爪痕残したい的発想で、自分達でダブミュージックを更新したいっていう気持ちが強かったんですよ。 だから極論歌が無くてもいいと思ったし、自分が楽しい音楽ができていたら満足だったんですけど、途中から自分が歌ってるんだっていう自己認識が強くなって来て、そうなった瞬間に歌ってる内容に芯が無いと手持ち無沙汰な気持ちになってきたんですよね。 本当に言いたい事を歌ってないと、ライブでお客さんの目を見ながら気持ち込めて歌えない、っていうか。 昔は年上のダブバンドとしか対バンしてなかったりしたんですけど、前回出たeggmanのライブ(8/6 w/Heavenstamp/イツエ)みたいに同世代の畑の違う人達、ロックバンドとか、女性ボーカル然としたバンドとかとも一緒にやらせてもらえるようになってから、そういうボーカリストとしての意識が強くなっていったかもしれない。

-今作の歌詞、決して明るいハッピーソングではなくどちらかと言うと空虚みたいなものを捉えたものが多いですけど、8/6のライブではあんなに楽しそうに笑いながら歌っていたので、新曲がまさかこんな歌詞だとは思いませんでした(笑)。

K: なんか、だんだん気分が明るくなって来たんで(笑)。 歌ってる時は純粋に楽しいし、暗い事ばっかり表現しててもダメだな、って最近思って来ました。 歌詞を書くとどうしても暗くなりがちな傾向にあるけど、実質自分自体は明るい側面も持ってる訳で、その明るい部分の表現って、自分の中でまだスペース余ってて、これから開拓できそうな部分なんですよね。 私、歌詞は作り込むより直感派なんで、今作の例えば「トウキョウ・カウンターポイント(M10)」なんかも私的にはけっこう明るいつもり(笑)。 ちょくちょく明るい部分も出し始めてるんですよ。 何で歌詞書き始めると空虚みたいな内容になっちゃうのかな。。。 読んでる本の影響なんですかね、星新一とか、グレッグイーガンとか(笑)。 主観が入らない事実ベースの物語っていうのがすごく説得力があって惹かれるんですよ。

-なんだか同世代の女子と話し合わなそうな知性ですね。。。

K: そんなことないですよ(笑)! 最近特にね、同世代の女子と絡みたい時期ですし。 以前はダブの先輩方との対バンがほとんどだったのが、いろんな同年代の子達とも一緒にやれるようになって来て、毎回出会いが楽しいので心は全然オープンです(笑)。
メインストリームでこれをやりたい。

-DOPEとPOPの架け橋、TAMTAMのフロントマンから見て、今日本でヒットチャートに入って来る音楽ってどう見えますか?

K: 私アイドルも好きですし、R&BとかHIP HOPも含めて、サウンドで世界と肩を並べてると思うアーティストも沢山いますし、それぞれのフィールドで前衛的な事をやってると思うから、メインストリームにいてもちゃんとかっこいいですよね。 ドメスティック特有の進化の仕方をしてる音楽が流行ってるのは個人的に好意的に捉えてます。 昔はね、クソが!とか思ってる時代もありましたけど(笑)。 自分達も保守か革新かで言えば、もはや保守ではない存在だと思いますし。 葛藤して進化を得ていく様はどのジャンルの音楽も一様にしておもしろいなあ、と思います。 この前、何かの番組で谷川俊太郎(詩人/翻訳家/脚本家)がボカロのプロデューサーと対談していて、そのプロデューサーが「ボカロとBUMP OF CHICKENしか聴いてない」って言ったら谷川俊太郎が「それ人間じゃないね(笑)」って言ってたのが超ツボだったんですけど、そういう独特な、他国にない進化をしていって、音楽ムーブメントが日本だけ孤立した方向に行ってしまってもそれはそれで真におもしろいな、と。

-その中で自身はどういう存在でいたい?

K: ジャンルがどうとか言ってたらダメだなって思うんですよ。 辺境の音楽をやってても曲が良くて大衆へもアピール出来る事ありき。 TAMTAMなりに守ってるリズムとか曲構成のマナーとかもあって、そこにはこだわりながらも縛られてない要素に関しては自由にやりたい。 その部分で自分達なりの音楽を作っていけたらな、って思ってます。 それしか出来ないから、私達はまずそれをやる。