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the quiet room interview
- SPECIAL -

the quiet room interview

最新作『色づく日々より愛を込めて』の2カ月連続インタビュー後編!

Interview & Text : 鞘師 至

— 今作の曲調のバリエーションは、どんなきっかけで広がっていったんですか?

■K: ライブの影響だと思います。 嬉しいことに少しずつバンドがステップアップしていく中で、出させてもらえるライブの演奏時間が長くなってきたんですよ。 なのでおのずとこのバンドの魅力をよりわかりやすく伝えるセットリストを組む必要が出てきて、そこでポップなだけじゃない曲調のものが必要になってきたり。 

— 必然的に、なんですね。

■ K: 30分のライブセットでポップスやってる中にいきなり激しいゴリゴリの曲をやっちゃうと、それこそ情緒不安定になっちゃうんですけど(笑)、ロングステージだったらロックな強みも流れの中で出せるようになったな、って思うんですよね。 短いステージでは自分たちの軸となるようなカラーの曲しかセットリストに入れ込めなかったけど、最近は40〜50分のステージをよくやらせてもらえるようになりましたからね。 ありがたいことに。

— 起承転結の “転” の特色が出せる的な?

■K: そうですね。 ロックな曲も、もっとメロウな曲も含めて届けられて初めて、僕らの全体像がようやく見えて来ると思うんで、いろんなタイプの曲を披露できるようになったのは、単に演奏時間が伸びたっていう事だけではなくて、僕らの音楽をもっと豊かに伝えることができるようになった、っていうすごく意味のある変化だと思います。 続けてきてよかったな、って思うことのひとつですね。

— 楽曲の事をいくつか訊いていきたいんですが、まずリード曲以外にも「シュガータイム」(M3)の途中で出てくるジャズっぽいビートとか、いくつか新しい要素になってるようなフレーズが気になったりしました。

■ K: 元々自分のバックグラウンドにジャズがあったりする訳じゃないんですけど、ある種の憧れみたいなものです。 昔からJポップが好きでずっと聴いてると、こういう小技が時折入ってくるじゃないですか、そういう遊び心みたいなものに憧れがあって、このリズムを取り入れてみました。
■S: ドラムのコビキに「なんかこういう感じのやつ、叩いちゃってよ」みたいな名物プロデューサー的な感じでオーダーしてたね(笑)、この時。 「今のいいけど、もっといけちゃうよね?」みたいな(笑)。 個性出たし、アルバム的にもこういう曲が入ってると落ち着くし、場面展開にもなるんでいいですね。 今までになかった曲だと思います。                                             ■ K: 歌に関してはこの曲で目覚めたところもあって。 リズムをあまり気にせず歌う、っていう気持ち優先の歌唱をやってみたんですよ。 歌に色気を出したくて。 そろそろ僕も25 歳になるし(笑)、いろんな先輩のライブを観に行ったりして思う事もよくあったんですよ、僕も歌で色気を出していきたい、って。 
■S: 「菊地さんかわいい!」っていう今の評判から、ワンランク上の菊地さんを目指してもらわないとですね(笑)。
■ K: でも実際今回のアルバム、曲によって歌い方にバリエーションを色々取り入れていて、カラッと歌ってる曲もあれば、細かい息遣いにフォーカスしてる曲もある。 とにかくこれまでより大人な作品になってると思います。 パッと聴いた時の印象を意識して作ったというか。 歌に対する意識はここ1年で随分変わりましたね。成熟した部分もあるんですけど、逆に原点回帰した部分もあって。 今回の「東京」(M-8)や「Prism」(M-1)はバンドを始めた時にやりたかったことってこういう事かもな、って思えるような曲になったと思ってます。 
■S: 変にひねくれてなくて、ストレートな感じね。

 

— このバンドは初めて何年?

■ K: 8年ですね。 弦(Gt.斎藤)が入ってからもう5年くらいかな。

— ここで一旦原点回帰のタイミングなんですね。

■ K: 歌詞で書いてる事もそうかもしれないです。 これまでは菊池遼ってこういうイメージだろう、とかthe quiet roomってこういうPOPなイメージだろう、みたいな外から見た自分たちのイメージをリード曲には必ず入れなきゃいけない!っていう変な意識が多少なりともあったんですよ。 でも今作ではこれまでの「Happy End」、「Number」、「Fressy」みたいなユルい感じのラブソングを皆は欲しているだろう、っていう部分は完全に無視して作りました(笑)。 バンドを始めた頃はもっとロックな、というか “生きるってなんだ?”みたいな事を歌いたくてバンドを始めたところがあったんですよね。 いつの間にかそういう事を歌わなくなっていってしまったんですけど。 最近ではそういう意識に少し戻ってきたのかな、今作の歌詞はそういう哲学的なものとか、初期衝動に近い感じのものになってます。 このバンドを組んだ時はよく前田(前田翔平/Ba)に言ってたんですよ、「俺、絶対愛してるとか好きだとか歌わない!」って(笑)。 
■S: …それは初めて聞いたし、これまで愛だの恋だのガンガン言ってきてるよね(笑)。
■K: そうなんですよ(笑)、歌ってくにつれて色々経験を積んで歌いたい事、伝えたい事も変わってくるんですけど、上京したて位の頃、ラブソングを歌う事に良さを見出した時、さすがに前田に「最初に絶対歌わない!っていってた愛だの恋だのを歌いまくってるけど、これ大丈夫…?」って突っ込まれましたけどね(笑)。 でもその頃はそれが一番自分にとって歌いたい事だったんで。

— その後ラブソングを歌い続けてまた今、歌いたい事が変わってきたって事ですね。

■ K: 今回原点回帰で最初に歌ってたような、別れとは?とか生きるとは?っていう投げかけに戻ってきたのも、振り出しに戻ってしまった感じではなくて、フレッシュな気持ちでまたそれを歌えてる感じがして、今すごく良いんですよ。 

— 歌詞の原点回帰感とはまた別に、歌い方、曲への歌の乗せ方は音符と休符の使い方がすごくバリエーション多くなった気がします。 平メロで歌がすっとなくなるところがあったり。

■ K: 休符の入れ方には特に今回意識してこだわってます。 「シュガータイム」なんかは特に。 あえて短めに発音したり、あえて長めにだらっと発音したり。 色気の意識ですよね。 歌い方の違いで歌詞の印象もガラッと変わるなぁ、と最近強く感じてるんで、細かい部分に色々挑戦しました。 今までは自分が歌えば自分らしい曲になる!っていう超単純な意識で歌ってたんですけど、その中にもいろいろあるな、と。 

— 歌や歌詞にはそういう最新の感覚が反映されてますが、今作の曲自体はいつ頃できたものですか?

■ K: 「Prism」も1年以上前からあった曲で、「Landscape」(M4)も「夢で会えたら」(M7)も過去にあった曲を編曲し直して今回収録しました。 エッグマンで2015年にワンマンをやった時に、ライブ中盤で「疲れたー」とか言いながら僕がフラッと袖にはけて、ワイヤレスマイクだけ持って会場反対側のバーカウンターから出てきて歌う、っていう茶番をやった事があったんですけど(笑)、その時にやった曲が「Landscape」で、それっきりボツになって一切演奏してなかった曲です(笑)。 でもそこから全体的に作り直したらかなりいい出来になったんで、今回収録する事にしました。

— この曲はギターのフレーズがハンパないですね。

■ S : この曲に関しては最初のコード編成から僕が持ってきて、「こういう曲が作りたい」って話してたものに、「Landscape」のアイディアをくっ付けて作った曲です。 もうこの曲は僕がやりたいようにフレーズから曲構成まで好き勝手にやらせてもらった曲です。 
■ K: 正直この曲の頭のフレーズ聞いた時には悔しいですけど弦(斎藤弦 / Gt)天才だな、と思いましたね(笑)。 サビの歌より記憶に残るフレーズじゃん!、って。 この曲に関しては弦に完全に持ってかれました(笑)。
■ S: こう言われるとギタリスト冥利に尽きますよね(笑)。 

— ギターのフレーズ的には他の曲でも全曲ギターソロが入ってたり、「東京」のブレークで残るライトハンドタッピングのフレーズとか、意外とロックスター性あるフレーズが多いですよね。 斎藤さんのキャラはもう少しオシャレ系な感じがしてたんですが。

■ S: やっぱり楽器かじってる人が聴いた時に「これ弾いてみたい!」って思うようなものを作りたい、っていうのはありますよね。 自分がそうやっていろんな曲をコピーして弾いてきたんで。 
■ K: 僕的にもライブでソロになると前出てくる、みたいなロックスター的なギタリストの存在が好きなんで、メンバーにはそうあって欲しい、っていう想いもあったりします。 それはギターだけじゃなくベースもドラムも。 それぞれ目立つ存在であってほしいんで、そういう場面をこれからも曲の中に常に入れ込んでいきたいと思ってます。