― 「不時着する運命たち」というタイトル、前回のワンマンツアーのタイトルにもなっていたことも記憶に新しいですが、なぜ今回アルバムタイトルになったんでしょうか?
毎回the quiet roomのツアータイトルには、その時伝えたいことや歌いたいことをつける節があるんですが、前回「不時着する運命たち」のツアーを回っている時に、このタイトルを自分の作る曲だったり、話す言葉の中だったりで回収していけたらなって考えていました。ライブハウスに集まることや音楽に没入することって、人生においての緊急の羽休めじゃないですけど、一種の「不時着」みたいなものだなと思っていて。別に音楽がなくたって生活はできるし、人生は続いていきますが、それでもやっぱりみんな対価を払ってライブに来てくれたり、時間を割いて音楽を聴いてくれたりするわけです。自分も含めてね。僕らの音楽がそういう心の休息のような時間の味方であれたら嬉しいなと思って、このタイトルを再度作品に名付けることにしました。
― ワンマンツアーを経て得たものは多かったですか?
前回のツアーファイナルは初めてのZeppワンマンでしたし、自分の人生にとって大きな経験になりました。バンドとして積み上げてきたものが反映されたツアーだったと感じられたので、もちろんそれは今回の作品の中にも生きていると思います。
ー フルアルバムのリリースとしては約3年ぶりとのことですが、どんな3年間でしたか?
コロナ禍を含めいろんなことがありましたけど、特に周りの状況に左右されることなく着実に、ライブも欠かさず前向きにやってこれた数年間だったと思います。ロックバンドをやるならやっぱりライブバンドでありたいっていうところがあって。老若男女問わず届けられる音楽を意識してポップス、エンターテインメント的な方向に音楽性を振ってたりするので、その分ライブハウスでの活動もしっかり両立していきたいなと常々思っています。the quiet roomがロックバンドたる所以を体現できた3年間だったかなと思います。
― M-1「偶然を抱き寄せて」はリスナーへのクワルーからのメッセージ的歌詞と始まりを感じさせるメロディが印象的でした。
アルバムの1曲目にふさわしいメロディーや歌詞、明るい気持ちでアルバムを聴き始められるように意識して書きました。実はこのタイトル「偶然を抱き寄せて」が次のツアータイトルにも使われていて。多くのライブを重ねてきたからこそ、楽曲やライブツアーを通して伝えたいことがたくさんあります。そういう意味でもアルバムの中で大事な1曲になっていると思います。
― M-6「もう少し前から」は後悔の中から、最後にやっと前に進もうとする歌詞が切ないラブソングですね。
ジェンダーレスの時代なのであまり男らしさとか女らしさとかいうのは違うのかなと思いつつ、思いきり男の恋愛というか、男性目線の曲ですね。男性って、こういう感じになりがちじゃないですか?(笑)
― 正直共感してしまう部分がたくさんありました(笑)
改めてそういう歌詞を書いてもいいんじゃないかな、って思えるようになって。今までは、僕という人間のキャラクターもあって、結構女性目線だったり、女性らしい言葉遣いで書いたりすることが多かったんですけど。久々に情けない男のストレートな恋愛を書いてみました。
― この曲に限らずですが、より広い層に届くバンドになっていっているのかなと。
根気強くライブを続けてきたことによって男性のお客さんも増えてきた実感があります。あと家族連れやカップルも増えましたね。「the quiet roomの音楽がきっかけで付き合いました!」みたいな感じでライブに来てくれるのにがっつり失恋の曲を歌うっていう(笑)でも、老若男女誰にでも届きうる音楽を意識してやってるので、それぞれの曲がそれぞれの必要なところに届いてくれるのが嬉しくてたまらないです。
― M-8「Bad Ideas」は歌詞にも入ってますが、まさに力を抜いて楽しめるポップチューンですね。
この曲はとにかく自由に作りたいなと思って、今自分がやりたいことを素直に書けた曲かなと思います。たまには自分のために曲を書いてもいいかなって。
― 意外と中盤のアレンジはロックバンド感全開なところも含め、クワルーの曲調の中でも新しい印象を感じました。
久々にメンバーとゲラゲラ笑いながらアレンジできたなっていう(笑)曲の中のガヤには僕が友人たちと遊んだ時にこっそり録音した笑い声が入っていたりもして、まさしくタイトルの通り”悪巧み”な感じで、スリリングな展開含め、何回も聴きたくなるたのしい楽曲に仕上がったかなと。
― M-9「ラストシーン」はバンド初期の楽曲の再アレンジと伺いました。なぜこのタイミングで?
「Instant Girl」という曲のシングルのカップリングで入っていた曲なんですけど、今、サブスクで聴く手段がないので、改めて、今のthe quiet roomでレコーディングしたらどんな風になるんだろうと思って、今回再録にチャレンジしました。
― 初期衝動感というか、まっすぐな感じがめちゃくちゃ良かったです。
最近の楽曲がキーボードやストリングスが入ったりしてアレンジも凝ったものが多いので、あえて初期衝動的な、ロックバンドとしてのthe quiet roomをこの曲でちゃんと聴かせられて嬉しかったです。結果このアルバムにとって必要な彩りになってくれていると思います。
― M-12「Overtime」これも目の前のお客さんに向かって歌っているような歌詞で、クワルーにとってライブが大事なものであることがヒシヒシと伝わってきますね。
まさしくライブハウスに集まってくれる皆さんに届けたいと思って書いた曲なので、そういう風に感じ取ってもらえて嬉しいです。アルバムがショートチューンで始まってショートチューンで終わるところや、その間の曲順も含めて、かなりライブを意識していて。この曲で締めることで改めて、聴いてくれるみなさんがライブに行きたくなるような作品に仕上がったんじゃないかなと。
― そして既にデジタルリリースされている楽曲は、すでにライブでも披露されているかと思いますが、改めて収録するにあたってライブやツアーを経て何か変化はありましたか?
特に変化を感じてるのは「Nowplaying」(M-11)ですかね。「自分の人生が一枚のアルバム、或いはひとつのプレイリストだったとして、今はその何曲目なんだろう?」ということをテーマに書いた曲なんです。だから、この曲をアルバムのどこに入れようかとか正直すごく悩みました。でも、このラスト1曲前っていうのが僕の中ではベストかなと思っていて。何故そこに入れたのかも含めて、みなさんに楽しんでもらえたらなと思っています。たくさん考察してください。
― そして10月からはツアーが始まります!初日はeggmanワンマン!やっぱりeggmanでのライブって特別感ありますか?
特別ですね!やっぱり一番のホームにしているライブハウスですしね。もちろん各地のライブハウスでやるのも楽しいですし、素晴らしいライブハウスはいっぱいあるんですけど、やっぱりeggmanで見るthe quiet roomって照明や音響含め、他のライブハウスでは味わえない特別なものになっていると思うんです。ツアーをやるなら初日にしたいなって毎回思いますし、来れるひとは期待してもらって間違いないかなと思います。
― <関東近郊編>でこの場所を選んだのは何か理由や狙いがあるんですか?
シンプルに、普段からお世話になってるライブハウスに恩返しのつもりで組みました。対バンしたいバンドもたくさんいたので初日のeggmanワンマン以外はツーマンにしました。この先に控えている東名阪ワンマン編に向けての勢いもついたら良いなと思っています。
― <東名阪ワンマン編>では4回目となる恵比寿LIQUIDROOMでのワンマンがファイナルとなってます。
僕たち、ライブに来てくれた人全員が分け隔てなく楽しめたらいいなと思ってるんです。わざわざライブハウスまで足を運んでくれたからには最前の人はもちろん、後ろの後ろまで1人残らず全員楽しんで帰ってもらえたら嬉しいなって常に考えて、意識してライブをしています。LIQUIDROOMはどこからでもライブが見やすく、ちゃんと後ろの後ろまで歌が届きやすい環境だなと思っていて、大好きなライブハウスの1つなんです。何度もこの場所でワンマンができることは当たり前のことじゃないと思ってるので、関わってくれる全員で特別な1日にできたらいいなと思ってます。
― 最後に読者のみなさんに一言お願いします!
いつもthe quiet roomは今が1番かっこいいバンドなんだ!と宣言をしてるんですけど、本当にまた最高を更新できたなと。ロックバンドとして、ライブバンドとして最高傑作を作れたと思ってるので、是非このアルバムをたくさん聞いて、ツアーにライブに遊びに来てくれたら嬉しいです!