―リリースやライブ、それぞれのアクションの度に賛同者の数を増やし前進し続けるUVERworld。 2010年11月、バンド史上初の東京ドーム公演を控える最中、1日にはshibuya eggmanにてシークレットライブを開催。 その後もアリーナツアー前にWarm Up Gigと称したライブハウス公演を全国各地で回り、大舞台で活躍する今も小さなライブハウスでも会場を湧かす彼等はニューシングル『ナノ・セカンド』を引っ提げたツアーでも同様に各地のライブハウス、アリーナ双方での公演を開催。 今もこだわるライブハウスでの公演は彼等にとって大切な役割があるという。
TAKUYA∞(以下 “T”): ライブでの感じを毎回呼び起こして感覚のチューニングを合わせるんですよ、ライブハウスで。 大きい会場、小さい会場、いろいろな場所でのライブがあってパフォーマンスもそれによって全然別物になってくるんだけど、やっぱり根底にあるものは俺にとって全く一緒だと思ってて。 小さい会場で直接的に感じられる自分たちの熱量みたいなものをいかにそのまま増幅させて大きい会場へ持っていくか、という感覚のチューニングが、大きな会場に行く前にはどうしても俺たちのチームにとって必要な事なんですよ。
-環境変われどずっと同じ視点で地に足を付けている感覚、ロックスターである傍らでずっとおごらず同じ位置から上を見上げている感覚は音楽家であるよりもっと前提の人間性からくる堅実さの沙汰。 今アウトプットされる表現はバンド結成時とは別のものなんだろうか?
T: 伝えたい事は日々変わっていってるんですよ。 良くも悪くも、伝えるとは?自分の音楽とは?って自問自答が毎日続いてて、数学的な答えが無い分、自分の精神的なその時々の感覚で出す答えがどんどん変わっていくんですよね。 でも姿勢は変わってないですよ。 元々の俺たちの目標は、全国を自分たちで運転した機材車で回って、今アリーナツアーの前に回っているような200~400人くらいのキャパのライブハウスがパンパンに埋まってる状態でライブして回る事。 バンドを結成した時の自分たちの夢です。 それは今既に達成できているんだけど、それが今も変わらず自分たちが幸せだと感じられる事だから、昔と変わらず今もどんな会場でもまっすぐに音楽と向き合ったメッセージを放っていられてるんだと思います。 未だに緊張するんですよ、ライブハウスでやっても。 前回東京のライブハウスでやった時も前日にメンバー全員めちゃくちゃ緊張してて、「俺ら東京ドームでライブやったことあるよな?」「何で経験いくら積んでもこんなに緊張してんの?」って(笑)。 でもそれがまた幸せなんですよね。 本気だからこそやっぱりキャパが100人であろうが12,000人であろうが、変わらない緊張感があるっていうのが、俺の生き甲斐です。 昔はね、逆にアリーナでライブするのが自分の身の丈に合ってないと感じていた時期もあって、ライブ前日はもう明日が来るのが怖いくらいの感覚だったりしましたね。 でもそれもどんどん回数と経験を重ねていくにつれてブラッシュアップされていって、つい数日前(12/20, 12/21)の大阪城ホールでは、ライブハウスと同じくらい、その場の空気を俺達のイメージで掴めていた気がします。
積み重ねる事。
-本取材日の2日前まで大阪城ホールでの2DAYSライブ、そこに至るまでに行われるリハーサルや、「ナノ・セカンド」リリースに至るまでのスタジオワーク、彼等がファンの前で日の目を浴びる時間の裏側に積まれた様々なロードワーク。 作曲にリリース、ツアーに取材とひとつの作品を生み落とすに当たって携わるひとつひとつの作業は折り重なって彼等の一週間、一ヶ月、一年を簡単に埋め尽くす。 限られた私生活でもそれを支える為の身体のメンテナンスなどは常に止めないそうだ。
真太郎(以下 “S”): 体力作りはもうずっとやってますね。 リハーサル前は特に詰め込んでやってます。 やっぱり会場の大きさに限らず本番のライブ一回で得られるものってすごく大きいんですよ。 毎回アリーナツアーの前にWarm Up Gigっていってライブハウスでもやってますけど、そういうライブのひとつひとつ、やる度に「あぁ、こんな感じこんな感じ」って発見と再確認ができる。 その価値は非常に大きいから、そこに到達するまでの準備にも価値があると思ってやってます。 それでもやっぱり準備でまかないきれないものがライブにはあるから、緊張感とかね。 だから事前にやれることはやろう、と。
T: 俺はずっとランニングやってて、去年は365日のうち340日走ってました。 eggmanで以前ライブした日もあの後走って家まで帰ったんですよ。 走る用意を持って行ってたんで、ライブ後に着替えて、eggmanの前に停めてあった車に会場を出てからそのまま乗り込んで、その反対側のドアから飛び出て、出待ちの人たちを振り切りながら走っていきました(笑)。
-人生全部をバンドの為に費やす彼等の渾身の新作に溶かし込まれたのは、今まで積み重ねて来た意思の強さや人間性、音楽的経験値など、どれも彼等自身を構成するリアルなエッセンス。 リード曲「ナノ・セカンド」(M1)の歌詞は友人の生き様に感化されたTAKUYA∞の感性が綴られたものだという。
T: 友達にプロボクサーがいるんですけど、彼がアツいやつなんですよ。 俺は去年一年走り続けるって決めて、初めの3ヵ月くらい足を故障して引きずりながら走ってたり、歩くより遅いスピードの時もあったりしながらだったんですけど意地でも毎日走るっていうのをひとつ決めて、やりきった時にそれがすごい自信になったんですよ。 歌うことと走ることは関係ないように見えると思うんですけど、俺の中では見えてる確実な整合性があって、いいライブをする為には走らなければいけない。 それで1年間やり通したんです。 でも彼はその俺が1年間で満足したものをもう10年くらいやり続けてるんですよ。 そいつが言う一言、「夢は願えば叶う」という言葉の大きさが、俺にはすごく響いて突き刺さったんですよ。 はっきり言ってワードでいえば「夢は必ず願えば叶う」なんて使い古されたしょうもない言葉ですよ。 でも言う人間が変わればその言葉の重さが変わる。 彼にはそれを感じたんです。 彼のDVDを見ていて試合以外でのオフショットや練習風景で話していた事、それを見て聞いて衝撃をもらったのが歌詞を書きたくなった瞬間です。 年齢は俺よりずいぶん下ですけど、そんなの関係なく純粋に尊敬できるかっこいいやつですよ。
-方や「LIFE」(M2)、「DEJAVU」(M3)も含めた各楽曲にはブルースアプローチのリードやアンビエントヒップホップの様なビートなども独自の感覚で彼等のオリジナルに飲み込む求心力が光る。 構成も一筋縄では行かない独特なスタイルで曲と歌が絡む、なんとも特定の音楽にカテゴリーできないセンス。 プレイや編曲のヒントはどこから来るのだろう?
S: ドラムのプレイスタイルとして特定のドラマーからの感化はそんなにないと思います。 それよりも若い頃バンドを初めてやり始めた時に演奏してた音楽、ドラムが今の自分のプレイの主軸になってますね。 あまり考えすぎてプレイしないこと。 意外とライブの時って考えながらやってると上手くいかない事があるんですよ。 一番いい感じで叩けてる時って無心の時だったりする。 そういう時って普段こんなフレーズ叩いてないのにこんなフレーズが出てきた、みたいな突発的なアイディアで叩いてたりするんですよ。 そういう無心から生まれるものが自分的に面白いんですよね。 いつもそういう風にライブできたらいいな、と思ってます。
T: 曲のアイディアに関してはメンバーそれぞれから出し合いですね。 クレジットが自分になっている曲でもきっかけは俺だけど結果的にメンバー全員の脳で考えてる楽曲ばっかりです。 奇をてらっていろんなものを取り込みたい訳ではないんですけど、世の中で今聴ける音楽をいろいろ聴いてみた時に、そのアーティストが一歩二歩踏み込んだ新しいチャレンジをしているつもりの楽曲であったとしても、聴く手側からすれば10歩20歩踏み込んでくれないとその差って分からない、ってことをよく感じるんですよね。 俺達はそれをなるべく聞き手側に新しい感覚が伝わるところまで踏み込もうと常に模索していて、故におのずといろんなアプローチの音が入ってくる。 そしてそこにはまだまだ可能性があると思ってるんです。 もっと30歩40歩踏み込んだものを2014年の一年間で具現化していこうと思ってます。
-普段の生活の中で特定の音楽からのインプットはさほど無く、気付くと己で生み出した作品を何度も繰り返し聴き直し、音と言葉を見つめ直す時間が多くなっているという。 彼等の独自の音楽的感覚はこの作業の繰り返しで培われた真にオリジナルのものなのだろう。 どこかのアーティストからの借り物の理論でなく、感性で音や言葉のダイナミクスを分析して理想へ持っていく作業。 孤独だが真に自身の感覚に向き合える時間だ。
T: 普段は圧倒的に自分たちの音楽を聴いてる時間が多いですね。 リリースすると一旦自分の手から離れる感覚があるんですけど、そこからまたよく聴き始めるんですよ。 走るときもポータブルプレイヤーのプレイリストに大体入ってる。 俺の場合は歌詞も自分に対してのメッセージとして歌ってるものが多いんだと思います。 だから歌もよく聴き直す。 どうもそういう傾向があります。
「絶対ひっくり返してやる」っていう闘争心。
-これまで新しい時代に沢山の足跡を付けて来たUVERworld。 彼等が開拓した場所に集って志共有し合う仲間の輪は今も肥大化し続ける。 これから先のゆくえ、例えば5年後バンドはどんな場所に立っているのだろう。
T: この先5年後。 一番はやっぱり今みたいにいろんな緊張感持ってどんな場所でもそこにUVERworldの音楽が関われば本気になれる瞬間があって、大好きなメンバーと大好きな音楽が出来てるってことですかね。 それ以上の展望っていうのはなくて、むしろもっと細かい点で見ています。 例えば俺の友達が初めてライブに連れてきた別の友達がライブを見て、「UVERworldってこんな感じだと思ってなかった」っていう感想をくれる。 今まで俺達をあまり知らなかった人たちが、ライブを見た後にキラッキラした目で挨拶に来てくれる。 そういうことがよくあって嬉しい反面、自分達の打ち出したいものと世間から見たイメージはまだまだズレがあって、ライブ見てもらうまではその溝は埋まらないな、って実感してるんですよね。 それをひとつひとつひっくり返していく作業をこれからしていきたい。 職業上いろんな仕事をしている人、俳優さんやタレントさん、ミュージシャンにもよく会います。 初めて出会う時、俺達の名前はたいがい知ってくれてるんですけど、話している間に自分達のやっていることが伝わっていない感じ、ナメられてるなと感じる瞬間があるんですよ。 そういう人達に「一回でいいからライブに来てくれ」、ってよく言うんですけど、それに対して「分かった今度のライブに行くよ」と言われて別れたその日、帰り道で湧く「絶対ひっくり返してやる」っていう闘争心、これがなくなった時に俺が終わると思ってるんです。 だからいろんな人に愛されるバンドになりたい、と思ってる反面でそれがパーフェクトに達成できてしまったら、その時点で俺が終わってしまうと思う自分もいて、今は俺を否定してくれる人をどんどん探して、オセロの白を黒にひっくり返していくように、ひとつずつ自分達の色に染めていきたい。 点をかき集める作業ですけど、それをこの先5年間でもずっと続けていきたいと思ってます。