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井上苑子 interview
- SPECIAL -

井上苑子 interview

新たな一歩。ありきたりな言葉にはなってしまうが、今作「白と色イロ」を聴いてそう感じた。意識や姿勢など含めてアーティストとして着実に成長していく彼女の目はしっかりと未来を捉えている。

インタビュアー:ブッキングマネージャー窪田

―もうサードアルバムかと思って過去作を振り返ってみたんですが、メジャーデビュー以降でも結構な枚数のCDをリリースしてきましたね。そしてかなり大人っぽくなったなぁと。

井上苑子(以下…井):嬉しいです。ありがとうございます。20歳を超えてから髪を染めたりとか、最近のアー写は自然な雰囲気を重視したりというのもあって印象が変わったのかなと思います。

―そして3月にはツアーの追加公演で恵比寿リキッドルームでの公演がありましたね。個人的にはそこが一区切りっぽいイメージもありました。高校2年生くらいの頃に出会って、その時から高校卒業タイミングでリキッドルームでワンマンをやるのが最初の目標と言っていたのをすごく覚えていて、実際にそのタイミングでやることができて、そして数年が経って今度はツアーの追加公演という形でリキッドルームを満員にすることができたというのはすごくストーリー性があるなと。

井:そうですね。言ってくださったようにあの日は一つの区切りになるかなとライブ前は思っていたのですが、ライブを終えて反省点はあるのですが、久々にライブハウスの距離感でのライブで物理的な熱量とかを体感して、やっぱりライブが好きだなって思ったし、だからこそもっと良いライブをしたいなって思いました。ポジティブな意味であの日を区切りにすることはできないなって。

―なるほど。良い心構えですね。そんなタイミングでリリースされる作品のタイトルが「白と色イロ」。このタイトルに込めた意味を聞かせてもらいたいです。

井:井上苑子という人間の性格などをあまり知らずに、井上苑子というアーティストが発信する音楽だけを色に例えたときに“白”というイメージがあるんじゃないかなって思ったんです。王道、ピュアみたいな。もちろんそういうイメージが嫌という訳ではないし、“白”という色も大事にはしていきたいんですが、それだけじゃアーティストとして面白くないなって思ったのがきっかけです。私、人間味とか熱量とかを感じることができる人が好きで、自分もそういう人でありたいなと思っていて、自分らしさをもっと出してそれが応援してくれる方に共感してもらえたらそれが大きな輪になるんじゃないかなって。

ーカタカナの“イロ”というワードを入れたのもそういった想いからですか?

井:まさにです。漢字、ひらがな、カタカナをすべて入れたかったんです。たくさんの側面を持った作品にしたかったし、今後もそういったアーティストを目指したいなって思っています。

―そんな作品だからか今の井上苑子ちゃんそのものという印象を持ちました。

井:ありのままという感じですよね。盛り上がれる曲もあれば、ポップな曲もあれば、しっとり聴かせる曲もあれば、全力でふざける曲もあって、全部私らし

く表現できたらいいなと思いながら歌っていきました。

―あとは作品全体が1本のライブみたいな印象を持ちました。約1時間のライブがあれば今作を1曲目からやっていったら成立するんじゃないかなというくらい。

井:ライブを意識して作った曲も多いし、今作の曲順はライブのセットリストを決めるような感覚で決めていったのでそういう印象を持ってくれたのならすごく嬉しいです。

―今曲順の話がでましたが10,11曲目の『ファンタジック』と『リメンバー』という過去のリード曲を後半のピーク的なところに置けたのは大きいのかなと。

井:そうですね。気持ちよい流れが組めたかなと思います。私のライブにきたことがない方もライブを疑似体験できるような。

―ライブで“後半戦盛り上がっていけますか!”的なMCをすることってよくあると思いますがまさにここがその部分かなと。

井:CDにそのMCが入っていても違和感ないかもしれないですね(笑)。

―それは相当斬新ですね(笑)。そんな今作の収録曲について新曲を中心に話を聞いていきたいと思います。まずは作品のスタートとなる『はじまり』。曲を聴いた瞬間に柴山さんの曲かなって思いました(笑)。

井:あはは(笑)。だいぶ井上苑子フリークですね(笑)。

―この曲はタイトル通りなにかがはじまるという感が満載だなと思いました。

井:この春に新生活が始まる人に向けて書いた曲です。あとは私が今大学4年生の代なのですが、友達がみんな就職活動をしていて、次に向けて進もうとしている人が実際に周りにたくさんいるので、すごく考えやすかったというか親和性の高いテーマでした。仕事を決めるのって人生の中でもかなり大きなターニングポイントだと思うので。やりたい事が見つかっていなくてもまずはスタートしてみたらなにかきっかけになるかもしれないし、そもそもどこがスタートかは自分が決めることかなって。ささいなことでもなにか一歩踏み出したときがスタートだと思うんです。

―YAMAHA PASのタイアップソングということでアシストというワードがさりげなく入れている歌詞も面白いなと思いました。

井:そこ気付いてくれましたか!そういったところも注目してほしいですね。自転車で前に進む様子を比喩というか人生を進むことに例えてみました。

―そんな曲に続くのは2曲目の『コトノハノオモイ』。ピアノサウンドが特徴的で、タイトル通り日本語でというイメージはあったのかなと。

井:曲の冒頭部分で裏声で歌っている部分に関してはメロディに馴染むように、和っぽさを意識しました。楽器みたいなイメージで。

―初のアニメタイアップで、川柳を題材にしたアニメということで、和をイメージしたということですかね。

井:そうですね。あとはアニメの題材にある川柳っぽさというのは曲の冒頭部分では意識しました。

―先日まで川柳を動画でアップしていましたよね。

井:語彙力ないとか適当とかすごく言われましたね(笑)。敢えての緩さなのに(笑)。

―苑子ちゃんの魅力の一つですよね。緩い感じは。

井:あとは久々にこういったちょっともどかしい感じのある恋愛ソングを書いたので妄想が楽しかったです。

―妄想は得意技ですもんね。でもロケーションが高校じゃなくなったのが物理的に苑子ちゃんが大人になったんだなっていうのを感じました。

井:確かにデビュー当初は高校生だったのでロケーションがそういうことが多かったですからね。あと最近は自由に歌わせてもらうことも増えていたんですけど、この曲は歌い方とか含めてデビュー当時を少し思い出すような感覚もありましたね。

―続く4曲目もちょっとデビュー当初っぽい雰囲気のあるスカ調の曲『My Friend』。

井:久しぶりにこういうスカ調の曲ですね。eggmanでのライブを思い出します。

―フロアに降りてみんなで盛り上がりましたよね。

井:みんなで踊って騒いで楽しかった!またやりたいなぁ。

―懐かしいですね。この曲もライブで盛り上がること間違いなしですね。

井:早くライブでやりたいです。あとはやっぱ管楽器の音が入ると華やかだし、テンション上がりますね。しかも今回は柴山さんと歌詞を共作して、陸さんには編曲を担当してもらって曲は共作してという馴染みのメンバーで制作でした。レコーディングでも井上苑子バンドのギターのTomoyaさんで、ドラムは過去に『Lovely days,Lousy days』を書いてくださったMubvidatのMAHさん、ベースはRei Mastrogiovanniさん、ホーンにはORESKABANDのSAKIさんをお迎えしてという豪華布陣で。

―スカをやるにはもってこいのメンバーですね。

井:すごく楽しいみんなで取り組んだ制作でした。個人的にはもうもはや家族愛的なレベルで(笑)。

―様々な色がある今作の中でもこの曲は良い色で輝いていますね。歌詞もすごく苑子ちゃんのイメージに近いかなと思いました。

井:かなりナチュラルな歌詞ですね。友達の存在って本当に私にとって大切なので。

―続いての5曲目『くれたもの』は苑子ちゃんが単独で作詞作曲をおこなった楽曲ですね。個人的にこの曲すごく好きです。

井:ありがとうございます!小野工業所CMソングとして書き下ろさせてもらったんですけど、そのCMのテーマがお父さんと娘の家族愛だったのでそこからイメージを膨らませて進めていきました。私は今歌を歌っているのは母親の影響がすごく強くて、そことリンクする部分があったのでそんな自分とも重ねながらという感じでしたね。

―今の苑子ちゃんの年齢になってこういう曲が似合うようになってきたって思いました。続く6曲目の『何でもない』も楽曲の雰囲気や歌詞が大人っぽくてで今の苑子ちゃんだから歌える歌なのかなと思いました。

井:ずっと見てきてくださっている窪田さんにそう言ってもらえるのは嬉しいですね。この曲は作品全体の中でもちょっと特殊な色で輝いている曲かなと思います。憂鬱さみたいなものがでている曲かなと。誰もが感じたことのある感情みたいなものを描きたかったんです。

―苑子ちゃんの内面的な部分を垣間見た気がしました。

井:そういう部分もちゃんと表現できるアーティストになれたらとは思っています。こういった色の楽曲があると作品全体としても大きいのかなと。

―そしてそんな大事な曲に続く7曲目は『点描の唄』。ソロで歌うのはまた違ったんじゃないですか?

井:一人でどうやって表現しようかなって悩みましたよ。男女の歌の掛け合いが魅力の曲でもあるので、ちょっとコーラスを入れたような雰囲気にしてみました。あとはシンプルにピアノアレンジで。この曲を違った楽しみ方してもらえたと思います。

―改めて聴くとこの曲めちゃくちゃ良いですよね。

井:メロディと歌詞のバランスとか本当に素晴らしい曲だなって思います。作家さんが作る曲とバンドマンの方々が作る曲の違いを体感できるかなと思います。そういった部分も含めてこれもまた違った色ですね。

―中盤戦最後の楽曲となる8曲目は『はなたば』。これも大人になったなぁという印象を受けました。

井:感謝の気持ちを“はなたば”というキーワードに置き換えて書いていきました。今回のCMソングのお話をいただいたときに、親にほとんどなにもしたことないなって思ったんです。プレゼントを渡したりとか、感謝の気持ちを改めて伝えることとか本当に苦手で。恥ずかしくてできないんですよね。高校生から上京させてもらって、親の支えがなかったら今の私は活動できていなくて。だから自分のそういう感情も重ねて曲を作っていきました。こういう機会をいただけてよかったです。

―この曲もそうですが、こういったメッセージ性を苑子ちゃんの楽曲に求める方が多いんだなというのを感じます。

井:本当にありがたいことだなと思っています。私の曲で少しでもなにかが変わる方がいるかもって考えたらアーティストとして歌を歌っている意味を実感することができます。続けてきてよかったなって。やっぱ曲を作ってそれを聴いてくれる方がいるからアーティストでいられるので。

―確かにそうですよね。そして後半戦のスタートとなる9曲目『キミマミレ』に繋がっていきますね。

井:すごくポップで幸せな曲で後半戦を彩る曲ですね。過去作の『ふたり』という曲の未来をイメージした曲です。その曲にでてくる二人の数年後的な。『ふたり』の歌詞に出てくる言葉も引用したりとか。飲み仲間とか、タコヤキパーティーとかのワードとかも等身大なところもある曲ですね。

―苑子ちゃんはお酒も好きだし、関西出身だし、苑子ちゃんのイメージをしやすいワードでした。

井:みんなで楽しめる曲だと思うのでこれも早くライブでやりたいです。

―ライブでいうと今作のラストを締める12曲目の『わっしょしょいしょい』はまさにライブ曲ですね。

井:言いにくいですよね(笑)。みんなちゃんと言えるかな(笑)。

―そんなこと抜きでもライブでどんちゃん騒ぎになりそうですね。

井:その画が想像できますよね。

―しかもこの曲テンポ感とかリズムとか歌うのめちゃくちゃ難しそうですよね。

井:展開も多いんですよ。ライブで歌えるか不安でしょうがない(笑)。でもとにかく楽しい曲に仕上がったし、思う存分遊んでいる曲なのでみんなで楽しめたらって思っています。ガヤだけで1時間くらいレコーディングしましたからね。“ぽんぽこぽん”って言っていたりとか(笑)。もうこういう遊びが大好きなんでレコーディングも楽しかったです。

―早くライブでやりたいですね。

井:うずうずしてます(笑)。いのうえ夏祭り2019に向けて書いた曲ですしね。

―今お話にありましたが今年の夏祭りは東名阪ですね。過去とはちょっと違う形になるんですか?

井:東名阪それぞれ別の対バンを迎えての開催ですね。今まで東京のみでの開催だったので、名阪でもやれるのがすごく嬉しいです。どんな対バンでやるのか楽しみにしていてほしいですね。

―今年で3年目ですが定番化してきた印象です。

井:そう思ってもらえて嬉しいです。今年はやるの?とか聞かれることも増えたので。毎年やれるように頑張っていきたいと思っています。

―これがないと井上苑子の夏は終われないというイベントですね。

井:そうですね。ライブが好きだし、ライブハウスで対バンイベントを主催でやれることが嬉しいのでもっともっと私自身も良いライブがやれる良いアーティストになっていけるように頑張ります。

―楽しみにしています。