Stone in the “グレイトエスケイプ”
私は気付いています。物語が何処へ向かおうとしているのか理解しています。それでもずっと気付かないフリ。それがきっと一番たのしいから。
生きていてこんなにたのしいことはない。それこそ一生に一度、二度あれば多いくらいです。何故か私は驚くほど冷静で、一言一言を噛み締める余裕があります。ああ、なんて素晴らしい時間なんでしょう。
貴方が運転席で微かに息を漏らす度、何もかもが煌めいてこのまま夜が明けなければいいのにと思います。何年か前に流行ったミュージカル映画のように夜空を軽やかにステップ、逃避行の旅に出るのも悪くないかも。
望むのなら何処までも着いていきますから、早く答えを頂戴。ああ、でもなかなか上手い台詞が出てこない貴方のそのいじらしさも悪くない。そのこぼれ落ちた秒針の音、届かずに宙を舞った言葉、その全てが勿体無い。いつかまた思い出せるように、大切に仕舞っておきましょう。心の奥に。
Digital Single 「グレイトエスケイプ」より