―今年に入って3月に『サクラミツツキ』、5月に『虹』、7月に『現状ディストラクション』と3本のシングルを立て続けにリリースし、更に8月7日にニューアルバム『MILLION』をリリースと、今回確実にリスナーをK.O.しにかかっているような強い気持ちを感じました。アルバムリリースを控える今の心境はいかがでしょうか?
KENTA:去年の10月からこのアルバムの為にみんなで制作を進めてきたんですが、個々のプレーヤーが際立ったアルバムになったのではないかと思います。
“SPYAIR”の集大成の1枚ができたと思うので、是非聴いて欲しいです。
IKE:”売れちゃうんじゃないかな。”と思っています(笑)。今までずっと思っていたけど、今回はいつもと違う”肌で感じるビリビリ感”があります。
UZ:それ何回も聞いてる気がするけどね。(笑)
MOMIKEN:『LIAR』(2010年発売のメジャーデビューシングル)の時から、ずっと言ってるよね。(笑)
-でも、今回は”確実に”リスナーを仕留めにきている勢いを感じます。
IKE:これで仕留められなかったら田舎帰ります(笑)。今回やれる事は全てやれたので、この作品を聴いて欲しいです。
UZ:今までのモノを全て詰め込めたアルバムができたので、この作品で理解できないようなら、きっとその人にはこのバンドを理解してもらう事はできないんだろうし、これからも響くことはないんだと思います。今回それぐらいの覚悟でこの作品を出しました。
このアルバムに照準を合わせて、ずっと制作してきたので”いよいよ”という感じがしています。
MOMIKEN:今まで培って来た力を全部込める事ができたので、やり切った感はすごくあります。過去の作品も全力で制作していましたが、今回それ以上に充実感のある作品が完成しました。
“100万”という言葉を声を大にして恥ずかしげも無く言う事に美学を感じる
-今作では激しいギターを主とした曲や、4つ打ちダンスナンバー、オートチューンやエレクトロなサウンドを使用したり、RAPや歌を中心とした爽やかなミドルナンバーだったりと多彩なアルバムになっていると感じましたが、作品を制作するにあたって意識した事はありますか?
UZ:この作品で初めてSPYAIRを知った人は、”すげえいろんな事やっているな”って感じるんじゃないかと思います。でも、実際この作品に入っている11曲でやっている事は全部今までやってきている事で、新鮮な新しい事に挑戦した意識は全くないです。いろいろな音楽が好きで、今までいろいろな音楽を創ってきた中で、自分の血液になっているモノをそのまま音として出しました。ジャンルが違う音楽が、設計図の中で1つになり、この11曲が違和感なく聴けるモノになっていると思います。
-そんな今作のタイトル『MILLION』はどういった意味があるんでしょうか?
UZ:特に深い意味はないですが、ロックバンドが”100万”という言葉を、声を大にして恥ずかしげも無く言う事に美学を感じるし、カッコ良くてバンドらしいと思いました。
-ジャケットも、フェスの野外ステージをイメージしたものになっていますね。
IKE:巨大な野外ステージに数えられないぐらいの人が集まっている光景です。こういうモノにずっと憧れを抱いてきたし、このジャケットに『MILLION』というタイトルを掲げる事はすごく意味がある事だと思っています。
“止まらないアレンジ”
-そんな今作の1曲目「OVERLOAD」は、ジャケットにも繋がるライブ感のある曲ですね。サイレンの音と共に今作が始まります。
UZ:”サクラミツツキツアー”でも、ライブで1曲目にやってきたんですが、曲ができた段階で”次のアルバムの1曲目にしよう”って決まっていました。サイレンを鳴らして高らかに”音を鳴らしていくぞ”という姿勢はカッコいいと思うし、単純に気分が上がると思ったので1曲目に持ってきました。イントロから曲を通してサイレンを鳴らし続けていたりと、”止まらないアレンジ”を意識しました。
-更に止まらず2曲目「Turning Point」、3曲目「現状ディストラクション」と、畳み掛けるように続くこの3曲は、ボクシングの様に”ワン・ツー・スリー”と、確実にリスナーをK.O.しにかかっているように感じます。
UZ:音楽を聴く時、やっぱり1曲目ってBGMにならないというかすごく集中して聴いていると思うし、激しい曲でも聴ける体力があると思うんですよね。しかも、勢いのある曲が3曲をこう続ける事によって、どんどん上がっていく効果があるんじゃないかと思っています。
-その3曲目に「現状ディストラクション」を持ってきたところにも、本作への強い気持ちを感じました。「現状ディストラクション」のMV(ミュージックビデオ)は360°ステージで撮られていて、お客さんとの一体感やライブ感をすごく感じました。
畳み掛ける様に攻めに攻めた3曲から、4曲目の「サクラミツツキ」ではガラッと雰囲気を変えて、優しい曲を持ってきましたね。
UZ:俺の中では「サクラミツツキ」はこのアルバムの中で、一番曲の完成度が高いと思っていて、この曲に関してはアルバムの流れも関係なく、どこに入れても成り立つ曲だと思っています。アルバムの流れの中の1曲というより、この曲だけで成り立つ曲だと思います。
-次の「Winding Road」も爽やかなイメージのアレンジになっていますね。
MOMIKEN:この曲のタイトルには”曲がりくねった道”という意味があります。人生を”道”に例えたストレートなラブソングを歌っていて、これから一緒に歩んでいく2人の道(人生)を歌った歌です。インディーズの頃からの曲なんですが、その頃から歌詞も変えずにずっと歌い続けている曲です。
-「STAND UP」はROCK色の強い、ドラム・ベース・ギターのグルーブが気持ちの良い曲ですね。
KENTA:この曲は良い意味ですごくシンプルで、メンバーの個々の人間性がすごく見えやすい曲になっていると思います。この曲は、鳴らしている音をそのままパッケージしようと意識して制作しましたね。
-「Supersonic」では、4つ打ちのリズムとエレクトロな音も取り入れられていますね。
UZ:エレクトロの直線的に響いてくる音がすごく気持ち良くて、その音をROCKに取り入れて形にしたのがこの曲です。
–同じくリズムは4つ打ちですが、対してPOPなイメージにガラリと雰囲気の変わる「雨上がりに咲く花」。
UZ:アルバムの設計図をつくる中で、ライブで”肝”となる様な、会場全体で合唱できるようなメロディーを持った曲を入れたいというところから、この曲の制作に入りました。コードの使い方など少し今までやったことのない事を取り入れていて、他の曲とは違う”色気”みたいなモノをPOPソングの中に出せたんじゃないかと思っています。
-今作は、そのまま次の「虹」へと続いてゆきます。すごく綺麗な曲の流れですね。
UZ:ここの曲の繋がりの良さは、設計図をつくってプリプロ(プリプロダクション)をして曲を並べた段階では見えなかったんですが、レコーディングをして完成した曲を改めて並べて聴いた時に”こんなに良いモノになるんだ”と感じました。「虹」の為に「雨上がりに咲く花」がある様な印象を自分自身でも受けました。”個”として完成されている「サクラミツツキ」に対して、この部分に関してはアルバムを通して聴いての”繋がり”で完成されている部分になっています。
-今作最後の11曲目、「16 And Life」。
MOMIKEN:”16″というのは、自分がバンドを始めた歳でもあって自分自身にとって象徴的な年齢でもあって、そこから今までを振り返っての感謝や、抱えている後悔を許してまた進んで行こうというメッセージを込めています。作品として、アルバムの最後にSPYAIRの自叙伝の様なモノを入れておきたいというのがありました。
UZ:作品の設計図からブレたくなかったんですよね。良い曲ができたからってその全てをアルバムの中に詰め込んでしまっていたら、全体としてはバランスの悪いモノになっちゃうと思うので、設計図からは絶対にブレない様に制作を進めていきました。アルバム通して聴いた時の”ストーリー”をすごく大事にしていて、最後に温かい曲を入れる事によって”また次に進もう”と思ってもらえるんじゃないかと思いますし、この作品をまた始めから聴いてみたいと思ってもらえるんじゃないかと思っています。
“SPYAIRというモノを完成させたかった”
UZ:ロックバンドは”アルバム”という作品を掲げて一生背負っていくものだと思っているので、3枚目のアルバムとなる今作は、ひとつ”SPYAIRというモノを完成させたかった”という思いがあったので、すごく強いモチベーションで取り組む事ができましたね。
-止まらず立て続けにリリースしていく中で、ライブツアーも止まらずに披露していきました。
IKE:”サクラミツツキツアー”では、ライブももちろんですがライブ以外のところもすごく楽しめたツアーになりました。去年は武道館を目指していたので、自分自身で”武道館に立つ者とは”みたいな事をすごく問いつめてしまってストイックになってしまっていて、最大限に楽しめてなかったなと思います。でも今年に入ってみんなの気持ちも変わって、音楽を楽しもう、ライブを楽しもう、ツアーを楽しもうっていう気持ちでツアーに挑めましたね。ライブ後にお酒飲んで、美味いものを食べて、みんなで車で移動してって。そういうところが根本的な部分だと思うし、ツアーを楽しんでいるとすごく楽しいライブもできるんですよね。
-8月には”真夏の3番勝負”として、2マンライブを3日連続で開催と、まさにガチンコ対決ですね。
IKE:ガチンコではありますが、1つの夏のお祭り事として企画しているので、思いっ切り楽しんでいきたいですね。
-更に日本各地夏フェスの出演、韓国やパリでの公演も決まっていますね。
IKE:すごくライブが充実してきています。海外でのライブは韓国以外では初めてなので、どんな空気でライブできるのかすごくワクワクしていますね。言葉のコミュニケーションは難しいかも知れないけど、”音楽”でコミュニケーション取って、良いライブを披露する事ができると思っています。
-そして、11月からは『MILLION』のリリースツアーが始まりますね。今回、ホールツアーという事で、ライブハウスのツアーとはまた違ったツアーになるんじゃないでしょうか。
UZ:全然違うものになると思いますね。
IKE:見せ方も変わっていくと思うので、許す限りでド派手にやっていきたいですね。ホールという場所の中でできる、俺らが楽しいと思う事をやっていきたいなと考えています。
“黙って、1曲聴いて欲しい”
-最後にこの冊子を読んでくれている読者の方々にメッセージをお願いします。
KENTA:こういった雑誌でも取り上げてもらっている中で、このページを読んでもし少しでも引っ掛かってもらえたら、是非ライブまで足を運んでもらいたいです。
IKE:”shibuya eggman”はずっとお世話になってきている”ハコ(ライブハウス)”ですし、”shibuya eggman”に関わる中でこの雑誌にも取り上げてもらえる様になったので、読んでくれた人達に気付いてもらえると嬉しいですし、それがキッカケでアルバムまで届いてくれると嬉しいです。
UZ:”見た目がチャラチャラしていてなんだか偽物くさい”って俺達の事を聴かず嫌いしている人もいるかも知れないけど、良かったらこのアルバムの1曲目だけでも良いから、”聴いて”判断してもらいたいという気持ちはあります。1曲目を聴かせたら3曲目まで聴かせる自信があるし、そのまま引き込んでアルバム全部を聴かせる自信があります。なので、言い方が悪いかもしれないけど、とりあえず”黙って、1曲聴いて欲しい”。
MOMIKEN:まだSPYAIRの音楽に触れていない方がいれば、SPYAIRの代表作となるこのアルバムを聴いてもらえれば、SPYAIRがどんなものかわかってもらえると思います。是非聴いてもらいたいです。