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HaKU interview
- SPECIAL -

HaKU interview

繊細で圧倒的。”HaKU”にしか成し得ない音世界。
2012秋、EMIミュージックより初のフルアルバムでメジャーデビューする”HaKU”。コンピューターやシンセなどを一切使用せずに音源を制作し、ライブでも人力のみでその音源を表現するオルタナティヴ・ギター・ダンスロック。浮遊するギターのプリズムと、中性的で透明感溢れる孤高の歌声が、アグレッシブなバンドサウンドとクロスオーバーし、ライブでは卓越した技術とアンサンブルがロックファンに圧倒的新衝撃を与え続けている。

interviewer:森村俊夫

–本誌では8月号に続き2度目のインタビューですね。宜しくお願いします。早速ですが、前回7月に発売されたシングル『Simulated reality”decoy”』は、文字通り今回のメジャーデビューアルバム『Simulated reality』に”decoy(誘き寄せる)”する意味合いも持っているとの事でしたが、ついに10月10日にメジャーデビューですね。心境はどうですか?

■藤木寛茂(Guitar. 以下、藤木):気がつけば、といった感じです。元々関西を中心に活動していて、それから東京に来て半年ですが、上京してからはあっと言う間でした。

■長谷川真也(Drums. 以下、長谷川):同じく結構早いなって印象です。上京して来るまではメジャーデビューするという事がどういう事かわからない状態で、いろいろ想像していたんですが、上京してからはそんな事を考える間もなく、気付いたら今になっていました。メンバーの男3人は同じ家に住んでいるので、毎日楽曲制作をして合宿の様な毎日でした。

■三好春奈(Bass. & Vocal 以下、春奈):大阪に居る時に比べて、音楽的な作業も増えて、そっちで頭が一杯で、デビューって感覚があまり無いですが、しっかり音楽ができている気がしています。

■辻村有記(Vocal. & Guitar. 以下、辻村):今、こうやって取材をしてもらう機会が増えて、メジャーデビューするんだなって改めて理解しました。自分達の音楽を今回みたいに雑誌等でいろいろな人に”言葉”で伝える作業ができて、それを読んでくれた人達がどう感じてくれるんだろうかとか考えてワクワクしているというのはすごくあります。ファーストフルアルバムというのは人生に1回しか無いので、これを”メジャー”という場所で出せるのはすごく嬉しい事だと思っています。

–そんな今作の中身にも触れていきたいと思います。まず1曲目の「1秒間で君を連れ去りたい」ですが、こちらは前回のシングルでも1曲目として収録されている曲ですが、前回のインタビューで”今のHaKUを表している曲”との事でしたが、今回もそういった意味があっての1曲目ですか?

■辻村:そうですね。素直に1発目で”HaKU”というモノの入口に入ってもらえる楽曲はどの曲かって考えた時にこの曲しかないと思いました。

–3曲目の「novel」も、前回のシングルに収録されていましたが、歌詞もメロディーも同じなのに、同じ曲に感じられないくらいに世界観が変わりましたね。

■辻村:そうですね。前回のシングルに収録されていた「novel」は、今回のアルバムに収録されている10曲の音をバラバラにして、それを再構築したという実験的な楽曲でした。

–前回のインタビューの時にもこの話をしましたが、前代未聞の試みですよね。前作の「novel」は、いろいろな音が詰め込まれていて面白い楽曲という印象でしたが、今回は「novel」という曲の世界観がはっきり見えた気がします。前作を聴いている分、曲の雰囲気の違いに”やられた!”と感じました。

■長谷川:今回は、歌詞に合ったストーリー性のある演奏をみんなで求めて、意識して創りました。

面白い事をどんどんやっていきたいですし、”HaKU”というバンドがもっと芸術的なバンドになれば良いなと思っています。

–4曲目の「アステリズム」。HPに公開されているPVがすごくカッコいいですね。PVの実写部分とCG部分の混ざり具合がすごく絶妙で、リアル(現実的)な部分と、そうじゃない部分がわからなくなる様な感覚を覚えて、”HaKU”が創り出す新たな世界観に自分が居る様な不思議な感覚を得て、『Simulated reality』という今作のタイトルにも繋がっているんじゃないかとも感じました。

■辻村:そうですね。そう感じてもらえると嬉しいです。面白い事をどんどんやっていきたいですし、”HaKU”というバンドがもっと芸術的なバンドになれば良いなと思っています。そういう面では1発目として良く出来たのかなと思っています。

■春奈:このPVはMotion Graphic Creatorの”TAKCOM”さんに撮って頂いたんですが、”Kinect”というゲームのコントローラーを使って撮影しました。”Kinect”のモーションセンサーを使って、カメラの前で体を動かすとそれに反応するっていう、ダンスゲーム等に使われているシステムを利用して、普通のカメラと”Kinect”を2台同時に撮って、リアルな部分とCGを融合させました。

–衝撃的ですね。本当に”HaKU”というバンドは面白いアイデアが尽きないですね。曲の話も聞かせて下さい。

■辻村:「アステリズム」は”星座”という意味です。今までこういった事を考えた事は無かったんですが、今回自分の中での”グッドメロディー”というか大衆性のある音楽を創ってみたいという気持ちがありました。やっぱり人が口ずさめる様な音楽が一番頭に残ると思っていて、今までは正直そういった音楽が余り好きじゃなかったんですが、今いろんな音楽に触れて、”HaKU”というバンドをやっていく中でそういった音楽を創りたい気持ちも出てきて、クリエイターとしてのレベルも1つ上がれるんじゃないかと思い制作しました。すごくシンプルな曲だと思うんですけど、その中でも”HaKU”らしい捻くれた部分と融合させていかないといけないですし、でもやり過ぎるとまたそれは違った場所に行ってしまうし。結果的に完成まですごく時間がかかった曲です。最終的には自分達の音楽が詰まった曲になったと思います。

■長谷川:一言で言ってしまうと、この曲は”HaKU”というモノの入口のような曲です。良い意味で聴きやすくて、入りやすい曲だと思うので、ここから入って”HaKU”の深い部分にも来て欲しいですね。

–そうですね。この曲で”HaKUの世界観”にすんなりと入ってしまえた気がします。次の5曲目「unknown justice」では、またがらりと世界観が変わりますね。”正義の向かい側に立てば こちらからは悪を捉えている”というフレーズはすごくグサッときました。

■長谷川:この歌い始めの1小節でこの曲の全てを表しているんじゃないかと思うぐらいの深い言葉ですね。

■辻村:”正義とはなんだろう”というテーマを持った曲で、世の中には十人十色のいろいろな意見を持った人がいて、10対0の物事なんて絶対無いと思っていて、自分自身が正しいと心から思っている事が反対側見ると間違った事であったりするかも知れなくて、そういった部分を自分自身の中でも言葉にして曲にしていきたいっていうのはありました。だから、音も激しいサウンドであったり、アレンジも滅茶苦茶な感じにしてやろうって感じで、言葉通りの気持ちを表した曲です。

–6曲目「carpe diem」はこの作品の中で唯一の、ボーカルが全く入っていない、俗に言う”インスト”の楽曲ですね。

■辻村:”carpe diem”という言葉は古代ローマの詩人”ホラティウス”の詩に登場する語句で、”明日じゃなくて、今日を楽しめ”って意味があって、思うがままに楽しんでもらおうと思って創った曲です。

■藤木:この曲は好きなようにやらせてもらいました。さりげなく後ろに入れているギターの音とか、男の人が鳴いているかの様に聞こえる音を入れていて、何回も聴いてもらって発見できる様な音がさりげなく散りばめられています。
歌が入っていない分、親しみやすいようなフレーズも曲の基盤として入れています。

■長谷川:この曲は歌も無くて、ギターの音も多いので、普段とはシンバルの種類やドラムセットの組み方も変えて、華やかな音にしました。

–そして、このアルバムを締めくくる10曲目は「astray」。”道に迷って”という意味を持つ言葉ですが。

■辻村:このアルバムの中で根っこになっている曲ですね。この曲ができた事によって、いろいろ見えてきたり、自分達の事を自分自身でわかる事ができた曲です。創っては白紙に戻して、創っては白紙に戻しての繰り返しで、結局1番最後に完成した曲です。

■長谷川:曲の構想自体は以前からあったんですが、曲のアイデアがあり過ぎて、なかなか組み立てる事ができなくて、ことごとく崩れていって、結局1番最後になりました。

■辻村:最後の曲でありながら、また始まりに戻りたくなるように、耳に残るアレンジやワクワクする曲になるよう意識しました。

–この夏は夏フェスに初出演や、マレーシアでの初海外ライブなど、今までとは違った夏になったんじゃないかと思いますが、どうでしたか?

■長谷川:夏フェスはすごく気持ち良かったですね!野外の経験は今まで余り無かったので、すごく新鮮で良い経験ができました。マレーシアでは日本の文化が受け入れられているのもあって、すごくウェルカムな感じで迎えてもらえました。マレーシアの人達は感情の表現の仕方がすごく激しかったですね(笑)

–このインタビューを読んでくれている人も含め、これからメジャーデビューをして今まで以上にたくさんの人が”HaKU”というモノに触れると思います。そんな人達に”HaKU”というバンドをどう見せてゆきたいですか?

■藤木:僕らは”ライブバンド”なので、今回の作品は”音源”として楽しんでもらって、そこから”HaKU”というモノに興味を持ってくれた人達が”LIVE”も目で見て楽しんでもらいたい気持ちもあります。”LIVE”を体感して”楽しい”と思ってもらえるバンドになりたいです。

■春奈:今回の作品で、いろいろな曲ができて、今までの集大成的なモノが完成しましたが、視野が更に広がってもっといろいろな事ができるなと感じました。この作品に触れて”HaKU”を知ってくれた人達にも、”HaKUはこれからもっと、どうなっていくんだろう”って感じてくれると嬉しいなと思います。

常に時代と平行にいける音楽が”HaKUの音楽”だと思っています。

–この作品を通してみても”HaKUの音楽”は”私”と”君”という2人の世界の舞台が多かったりと、その曲の中の場面は、この作品を聴いてくれる人にとって共感できるモノが多いイメージですが、そこから溢れている言葉や世界観がどんどん曲の中で広がっていて、結果的に”HaKU独自の世界観”を表現しているイメージが個人的にあります。

■辻村:自分達の音楽というモノが、世の中の出来事と平行してできていると思うので、現実の出来事があってそれが音楽になると思います。未来の事を考えて曲を創るというのは自分にとってはなかなか難しい事なので、その時その時にあるモノに触れて・聴いて・見て・感じて、それが音楽になってというのがあるので、常に時代と平行にある音楽が”HaKUの音楽”だと思っています。そして、聴いてくれた人に何か気付くキッカケになってくれるような作品になって欲しいというのが自分自身の想いです。その為に聴いてくれている人が入り込んでもらえるような仕掛けや要素は思い付く限りに入れているので、是非この作品を通して、”HaKUの世界”に入って来て欲しいです。

◉‪アステリズム‬