“初めて聴く人にとっても、今までずっと聴いてくれている人にとっても、全員にとって1つ衝撃を与えられる様な事をやりたかったんです。”
ーメジャー1stシングルリリースおめでとうございます。本誌では『Simulated reality”decoy”』のリリース時からずっと追いかけてきて3度目のインタビューになります。前作の『Simulated reality』から3ヶ月と間髪入れずのリリースとなりますが、制作活動はいつ頃されていたんですか?
■長谷川 真也(Drums 以下、長谷川):6月ぐらいには曲は出来ていました。前作の『Simulated reality』のリリース直後にはレコーディングを始めていましたね。
ー今作の『masquerade』は、今までと違う新たな事を幾つも取り入れ、ガラッと曲の雰囲気を変えてきたイメージがありますが、制作で意識した事はありますか?
■辻村 有記(Vocal & Guitar 以下、辻村):今回、重厚感のあるモノを創りたかったんですが、今まで創り上げてきたモノを壊したくない気持ちもあって、曲の隙間を音で埋める様なイメージで創り上げていきました。ドラムやベースでは戦車の様な重いイメージを表現しつつ、疾走感は失わない様に意識しました。
ーそうなんですね。ドラムとベースの今までとは違った主張を感じますし、ギターや声との共存がすごく気持ち良いですね。
■長谷川:個人的にはドラムをツインペダルにしたりと、今回レコーディングの環境もガラッと変えました。
■三好 春奈(Bass & Vocal 以下、春奈):イントロでギター2本が単音の絡み合いがあったりして、ベースとしてはしっかり支えないといけないというのはありました。できる限り太く重くズッシリとしたサウンドを意識しました。でも、みんなでユニゾンしていたり、プログレっぽい部分もあったので、展開に合わせてのベースのサウンドはかなり意識しましたね。ベースシンセに関してもすごく新しい使い方をしています。
■藤木 寛茂(Guitar 以下、藤木):今回、自分達の機材だけではなく、いつもと違うアンプやエフェクターもいろいろ試していて、そういった面でも違いがあって面白いと思います。
ー今作のタイトル『masquerade』ですが、どういった意味があるんですか?
■辻村:『masquerade』とは”虚構”や”仮面舞踏会”といった意味があります。この曲の歌詞の中に”溺れていく”というフレーズがあるんですが、”人が溺れていく瞬間”というのは第三者からだとわかりやすくても、自分自身ではなかなか気付けなかったりする事なんじゃないかと感じています。
人が溺れていく様をこの楽曲では表現したくて、感情を表現したギターの音や、すごく高い音域の歌のサビがあったりと、詞に追従しているようなサウンドが表現できたんじゃないかと思っています。
ー先日公開された『masquerade』のライブPVではとても一体感を感じました。と、同時に”HaKU”を聴いている私達にも求められているモノを感じた様な気がします。
■辻村:元々、お客さんと一丸となってやるようなバンドではなかったので、今回お客さんにも歌ってもらえる様な雰囲気のアレンジも取り入れて、今までとは違った部分も見せたかったというのはあります。どんどん聴いてくれているお客さんに近付いていっている気がします。人の悪い部分を探すのはとても簡単な事だと思うんですよ。でも、もっと人の良い部分も発見できたらというのはあって、自分達の音楽が伝わる事でもっといろいろな人の表情を見る事ができるんじゃないかと思っています。
“シングルだからこそできるんじゃないかと思いました”
ー今作の2曲目に収録されている「vanitas」についても聞かせて下さい。
辻村:「vanitas」は繁栄しているものと失っていくものが一緒になっていたりと”人生の空しさの寓意”を表現した静物画のジャンルの1つです。 ある絵に出会って、”繁栄しているものもいつかは終わってしまうのかも知れないし、逆にそこから再生していくのかも知れない。”と感じたその時のインパクトから楽曲の制作を始めました。結構前にできた曲なんですが、今までずっと音源には入れていなかったので、このタイミングで登場してもらいました。キーチェンジも多くて、サビは明るくも切ないサウンドになっています。でも、曲の始まりは”痛い”というか”苦しい”というイメージもあって、バラエティーに富んでいる曲になっています。複雑な曲を2曲続けて入れたんですが、シングルだからこそできるんじゃないかと思い、この2曲を繋げました。
“この曲はHaKUの原点でもあります”
ー3曲目の「”光” Reincarnation ver」。「光」はインディーズ時代にも一度音源化されていますが、今回”Reincarnation ver.”という事で、新たに生まれ変わったという事ですね。
■長谷川:そうですね。初めて”HaKU”で出した音源に収録されている曲でもあるので、”HaKUの原点”でもあります。
ー今作は1曲目2曲目とすごく複雑な曲が続くのもあって、3曲目のこの曲はすごく聴きやすく優しい曲だと感じました。
■辻村:自分自身も、この時はこんな素直な歌詞を歌っていたんだと感じましたし、4年経って大人になって、言葉の使い方も変わってきた自分がいるんだと気付きました。「光」を創った当時は、スタートの時で本当に無我夢中に前しか見ていなくて。その時の自分自身の言葉と、いろいろ人に出会っていろいろな世の中の物事に出会った自分自身の言葉とではやっぱり違っていて、新たな発見でもありました。月日が経つにつれて、良い意味でも悪い意味でも頭が難しくなってきているんじゃないかなというのは感じます。
ー2013年も始まりましたが、昨年は海外やフェスでのライブ出演、そしてメジャーデビューと忙しい1年になったと思いますが、どうでしたか?
■長谷川:初めての事だらけの1年でしたね。1年がすごく早く感じました。
■藤木:すごく良い1年でしたね。でも、欲を言えばもっとやりたかったです。
■春奈:これからもずっとメジャーという場所で音楽をやっていく準備はできたと思います。
ー今作では”HaKU”のいろいろなモノが詰め込まれていて、すごく濃くて複雑さもある作品だと思います。この作品を楽しみにしている方々に改めて伝えておきたい事はありますか?
■辻村:”HaKUの音像”というモノは変化していっていると思います。今回、初めて聴く人にとっても、今までずっと聴いてくれている人にとっても、全員にとって1つ衝撃を与えられる様な事をやりたかったんです。だからこそのアレンジや新しい事を今回取り入れていて。昨年1年で作った下地を今年は爆発させないといけないという気持ちがあります。その1作目として、いろいろな仕掛けや、隙間を埋める作業を繰り返してきて、その中で出てきた新たな”HaKUの音像”は、聴いてくれている人にとってすごく引っ掛かりのあるモノになったと思います。
それはもしかしたら、聴く人に寄っては複雑過ぎるモノかもしれませんが、自分達の音でこれだけのモノを創れるんだという事は確認しておきたかったですし、”新しいHaKU”というモノを試す作品でもあると思っています。
今まで、興味がなくて突き放していた音楽も多かったんですが、今作ではいろいろな事に向き合ってきたので、それと今まで創り上げてきたモノとが混ざり合って生まれる”新たなHaKU”というモノに挑戦したかったですし、表現したかったというのはあります。それを”難しい”と感じる人もいるかも知れないですし、”すごいな”って思ってくれる人もいると思っています。
ーそうですね。聴く度に”新たなHaKU”を感じることのできる作品だと思います。
■辻村:音源で聴いたこの曲が、ライブだとどうなるのかも観に来て感じてもらいたいです。”仮面舞踏会”ってだけに、踊りに来て欲しいですね。