ー 今作はアルバムという事で、フルボリュームで13曲収録ですが、曲は最近書いたものばかりですか?
■鬼頭大晴 ( Vo/Gt 以降 “鬼頭”): 2曲だけ、少し前の曲が入ってますけど、それ以外は最近の曲です。
ー これまでの作品と比べて、例えば歌詞の部分で出来上がりの風合いって変わっていってる感覚ってありますか?
■鬼頭: 歌詞は今まで通りの感覚で書いたつもりなんですけど、結果的には結構ストレートなものになったな、と思います。 「愛してるよ」(M9)とかは特に。
ー サビで愛してるx8回連呼ですもんね、これはもうこれ以上無いほどストレート(笑)。
■鬼頭: ですね(笑)。 この曲はちょっと作曲進行が特殊だったんですよ。 スタジオに入って曲作りしてた時に、リズムパターン決めて、ギターコード決めて、そのフレーズをループして演奏し続けてる上になんとなく「愛してるよ〜、愛してるよ〜」って歌ってたのがそのままサビになっていって。 そういうノリで歌詞がハマってったんで、おのずとストレートっていう(笑)。
ー 他にも曲ごとで幾つか気になる部分を訊いていきたいんですが、まずは「0」(M2)。 タイトルにはどんな意味が?
■鬼頭: 歌詞で “1秒前”、”1秒先”、っていうフレーズがあるんですけど、その間にある今現在の空間ってことで “0”。 “嫌いだったはずの人ともへーづらして喋れるようになる” ってフレーズがあるんですけど、こういうのってみんな経験あると思うんですよね、でもこれってどうなんだ? 在るべくして在る事なのか? 悪い事なのか? っていう問いから広げていった歌詞です。
ー こういうメッセージが生きるようなボーカルフレーズって、やっぱり歌詞と曲を合わせる段階での “どっちの原案を優先する?” みたいな悩みって尽きなそうですが、鬼頭さんは作曲は歌詞から作る? それとも曲から?
■鬼頭: 僕はメロディーと平行して歌詞も作っていきますね、1番くらいまでを一気に作って、それを元にして曲全体へ広げてく感じ。
ー 両方同時ってすごいですよね、集中力が。 そういう時はスタジオにこもっての作業なんですか?
■鬼頭: 家にこもります。 今回のアルバムから家に防音室作ったんですよ、真っ暗の。
ー 真っ暗なんですか! なんで(笑)。
■鬼頭: 照明器具を着けると部屋がめちゃくちゃ暑いんで、PCの灯りだけでずっと作業してます(笑)。 エアコンがないんで、サーキュレーターだけ足元に置いて、来る日も来る日も何時間もこもって作業して作ったのが今回のアルバムです。
ー 汗凄そう(笑)。
■鬼頭: もう作業中汗ダラダラです(笑)。 簡易防音室のキットとか、追加の遮音材とかを買ってきてメンバーに手伝ってもらいながら自分達で部屋を改造して。 おかげで結構思いっきり歌って、アコギ掻き鳴らしても大丈夫なレベルの防音室を手に入れました。 まぁ、下の階まで聞こえてて住んでる人がただ我慢してくれてる可能性もありますが(笑)。
ー 歌詞は全編通して鬼頭さん独自のワードセンスにどんどんなっていってる感じがしますが、中でも例えば「忠犬ヒト公」(M3)なんかは常套句でない、自分のことばでかなり怒ってらっしゃいますね(笑)。
■鬼頭: これは…特定の人へではないんですけど、いろんな人へ向けての曲です(笑)。 モロ実体験から書いた歌詞ですね。
ー 鬼頭さんって、ビジュアルは物腰柔らかそうに見えるんですけど、ハートはたぎってるのが人間的でおもしろいですよね、嘘がないっていうか。 逆に「ハミングオンザストリート」(M4)みたいな浮遊感ある抽象的なあるのもおもしろいし。
■鬼頭: 「ハミングオンザストリート」は3年前くらいに書いた曲ですね。 アレンジも当時のままほぼ変えずに仕上げた曲です。 3コードでずっと回してるシンプルな曲。 これは本当に無心で書いた曲で、書いた当時の記憶があんまりないくらい(笑)。
ー それが故の歌詞のこの文字数…(他の曲に比べて1/3程の歌詞量)
■鬼頭: 本当に自然な感じでできた曲なんですよ(笑)。 こういう曲がアルバムにひとつあってもいいな、と思って今回収録しました。
ー シンプルという点でいえば次の曲「メイサイ」(M5)も楽曲がとてもシンプル。
■小鹿 雄一郎 ( Gt 以下 “小鹿” ): この曲は本当にギターもシンプルに、歌がメインで聞こえるように作った曲です。 ここまでパワーコード押しの曲は初めてかもしれないですね。 普段僕の手癖的に、サビでもガンガンソロ弾いちゃうギターフレーズが多いんで、そうでない曲も作りたいな、と思って。
ー そういうフレーズだからか、阪西さんのライブで感じるパワーヒッターな感じのドラムのダイナミクスも感じる曲になってますね。
■阪西 暢 ( Dr 以下 “阪西” ): あ、そこ感じてもらえました?(笑)、嬉しいです。 レコーディングではLa’cryma Christi(ラクリマ・クリスティー)のドラムのLEVINさんにスタジオも機材もお借りして、これまでのレコーディングよりいい音でダイレクトに出せたのがあって、ドラムの音的にはすごく満足してます。 おかげでミックスもマスタリング併せてパワー感あるサウンドになったと思います。
ー 音質以外の部分でドラムに関して今作でこだわった部分ってどんなところですか?
■阪西: 今回の楽曲、勢いある曲と、ミドルテンポの曲の差がはっきりしてるんですけど、元々自分が得意な勢い系の曲以外の部分、バラードだったりミドルテンポの部分で、流れがダレないように意識してビートを作るようにしました。 もちろんメロディーも生かしながらですけどね。
ー そういう楽器のアレンジが出来てから歌のアレンジを変えることもあるんですか?
■鬼頭: 全然ありますね、結構レコーディング本番ギリギリまで調整します。
■小鹿: 歌、ギターなんかは本当にかなりギリギリまでアイディア出し合って録り直して、って作業を根詰めて繰り返してましたね。
■鬼頭: プリプロなんかは例の暗い部屋でギリギリまでアレンジ詰めて、小鹿にデータを送って。
■小鹿: そこから僕もギリギリまで受けたデータにギター入れ直して。 毎回何パターンかアレンジ作るんですけど、もう最終的に作業繰り返し過ぎてどれがいいか判断つかなくなってくるんですよね…(笑)。 最終的にはメンバーに意見してもらって決める、っていう。
ー PCでのデータやり取りでの作曲なんですね。
■鬼頭: 前々作から打ち込みの音を入れるようになったんで、それまでスタジオでの作曲だったのをDTMソフトを買って、PC作業での作曲に変えていったんですよね。 その為に今回作った訳です、暗い部屋(笑)。
ーその部屋はそこに繋がってるんですね(笑)。 「Attention please!」(M7)はギターフレーズでこれまでとまた違った雰囲気出てますね、超おしゃれ。
■阪西: これ、レコーディングで小鹿がアイディア枯渇でグッタリしてたんで、「この曲だったらこんな感じのアレンジとかどう?」っていくつか音源を聴いてもらったりしてハマった部分なんですよ。
■小鹿: テンションコードとかが入るようなおしゃれ系のギターって今まで自分の手癖にはないものだったんで、新鮮で。 結構大変でしたけど、やってみてよかったです。
ー「drop」(M8)ではまた歌詞でヘイト感が出てきますね(笑)。
■鬼頭: 出てきますね…怒ってはないんですよ!本当。 この曲のきっかけは、初めてのパターンだったんですけど、 “dropっていう曲書きたいな” と思いついて作った曲なんですよ。
ー …どんな感情なんですかそれ(笑)
■鬼頭: ですよね(笑)、“drop”っていうフレーズが何か気になってこういうタイトルの曲を想像したんですよ。 自分的にはちょっと激しくもあってちょっと感動的でもある、みたいなイメージがなんとなくあって、それを目指して書いた曲です。 よく分からないですよね(笑)。 でも本当にそんな感じで、ふいに思いついて書いた曲です。
ー 次の「愛してるよ」(M9)、これはスタジオでジャムしながら作った、というやつですね。
■鬼頭: そうですね、サビ部分の「愛してるよ〜」の部分が最初にスタジオで出来たんですけど、そのまんまのラブソングにするとなると、好きな子へ向けてサビで8回愛してるって連呼するのは若干気持ち悪いな、って思って(笑)。 あと、本音で愛してるって言える事を題材にしたい、っていう気持ちもあったんで、音楽について書く事にしました。
ー「虹を目指して」(M12)は辛い事があっても生き抜こうぜっていうメッセージの曲になっていますが、”生きようぜ最後の日を”っていうのは?
■鬼頭: 少し前に自分の父親が亡くなって、今度この曲を作ってる時には甥っ子が生まれてきたんですね、そういう家族が減ったり増えたりする経験を目の当たりにして、自分の中でかなり心境に変化があったんです。 今までは死っていうものに対してマイナスなイメージしか持ってなかったんですけど、死に向かっていく=最後の日まで生き抜く、って事にも捉えられるな、と思って。 ポジティブに生き抜く、っていう事を歌った曲です。
ー いろんな思いや狙いが詰まったフルアルバムのようですが、このアルバム引っさげてのツアーも今後予定されてますか?
■阪西: そうですね、来年決まっているライブがあるので、楽しみです。 早く新曲をバリバリ演奏したいですね。
ー 今後のバンドの目標って何かあったりしますか?
■阪西: やっぱり僕らのできる事って、いいライブをして、いい曲作る、ここに集約されてると思うんで、とりとめてトリッキーな事に走るんではなく、今回作った曲持ち歩いていろんなところでいいライブをして回れるように、ひとつひとつ着実にやっていきたいですね。 それはこれまでもそうだったし、多分これからも変わらず軸にある姿勢だと思います。