–先月号に続き今回もよろしくお願い致します。先月号では『YAMINABE』の制作の経緯に関してお話頂きましたが、今月号では作品の内容に関してより深く聞かせて下さい。
一同:宜しくお願いします!
–“そこに鳴る”はツインボーカルという体制で、男女の二人の声が入り混じり、互いのボーカルが楽曲のフレーズ毎でメインボーカルになったりコーラスに徹したりと細かく振り分けされていて、前作に比べて、より楽曲の世界観をつくりだしているなと感じました。
藤原美咲(Ba./Vo. 以下、美咲):今作では前作よりボーカルの振り分けに理由を持って分けているところが大きいかなと思います。
–「6月の戦争 -extreme explosion ver.-」は、過去の楽曲を今作で改めて録り直したとの事でしたが、当時との変化は感じましたか。
たけむらともひろ(Dr. 以下、ともひろ):今でこそ僕たちも調和している部分がありますが、この楽曲を制作した当時は他の楽器の音を食うぐらいの気持ちでやっていたので、そういう意味でも今作の1曲目のタイトルに”戦争”という単語を使いました。
美咲:この楽曲を制作していた当時は、楽器ごとのソロパートを回したり、”とにかく音を大きく出した方が勝ち”というのがありましたね。
–なるほど(笑)。他にも、過去と比べて今作変わった事はありますでしょうか。
重厚:今作はレコーディングした後のミックス作業にもこだわりました。今作はこのミックスじゃないとカッコ良くないっていうラインがあるんですが、今作はそのラインに近づけたかなと思います。
–確かに、今作に収録されている各楽曲のサウンドはとても印象的で、メンバーだけでは無くエンジニアの方も一緒になってサウンドメイクをしていったのを感じる内容になっていますね。その中でも特に意識したところはありますでしょうか。
ともひろ:ドラムは”より鋭く”というのがありました。
–確かに。めちゃくちゃ攻撃力がありますよね。
ともひろ:聴く人を”音で攻撃”しないと聴いていても流れていってしまうと思うんですよね。ハッとさせるような、目が覚めるような音にしたいというのがあります。
重厚:生音感というか、ライブ感を大事にしたいですね。生演奏のその場にいるからこそ体験できる迫力を音源でも再現したいと思っています。
どんなに大きな音で録音したとしても、一度データにしてCDに収録してオーディオのスピーカーから出してしまうと、生で体験した程の迫力は感じられなくて、それが僕の中で納得できなくて。
データにしてスピーカーから出したとしても、生で聴いたかのような爆発感を作り出したくて、エンジニアの方にも協力してもらいました。
–そうですよね。CDに収録する前にマスタリングという作業をして、本来は音の音量や迫力を整えて聴きやすくするのですが、その概念を全く無視したつくりですよね。完全に規格外です(笑)。音の限界ギリギリというか、歪むギリギリを攻めていますよね。
重厚:もはや歪んでいますよ(笑)。
−他のCDと同じ音量で聴いていたはずなのに、圧倒的に大きな音に聞こえます(笑)。
藤原:音量や音色でメリハリを付けて、出てくるところと一歩引くところの差を付けています。
–メリハリを付けている事によって、引き立てるところを引き立たせて、”今じゃない”ってところでは、支える事に徹して他の音が際立つようにつくっていますよね。
今作の8曲全てが全く型にハマっていなくて、曲ごとのイメージを持たせないかのようにつくられているなと感じました。様々な多様性と恐ろしさを持っていて、”そこに鳴る”というバンドを簡単に1つの言葉でまとめる事はできないなと感じました。前作の『I’m NOT a pirolian』を聴いて抱いた”そこに鳴る”というバンドのイメージを今作ではまた完全に壊されてしまいました。
重厚:そういう意味を込めて”YAMINABE”というタイトルを付けました。
–なるほど!
美咲:普通の鍋だと思って食べたら、チョコレートだったみたいな驚きを与えたいなと思っています。
–「もう二度と戻れないあの頃に」は歌い方一つにしても、かなり多様性を感じたのですがいかがでしょうか。
重厚:そうですね。歌い方に関しては、今作いろいろな意見を頂いて、根本的な歌い方を見直して死ぬほど時間を掛けて録りました。
–可愛くポップに始まりますが、どんどん大人びてくるというか、悲しさを含むような声に変化していきますよね。
重厚:そうですね。この楽曲はかなり良く”歌”を録れたと思っています。
–楽器のサウンドのエフェクティブなところに耳を持っていかれがちですが、楽曲の根底にある部分もすごく大事にしているなと感じました。
「もう二度と戻れないあの頃に」の冒頭のアコギや、”泣きのギターフレーズ”はとても印象的でした。
要所のギターフレーズはデモの段階から固まっているとの事でしたが、この楽曲でもそういったパートは割と早い段階から入っていたんでしょうか。
重厚:いや、この楽曲に関しては例外で、アドリブなんですよ(笑)。
–えっ!アドリブですか!?
重厚:冒頭の部分はデモの段階では全く無かったですね。
“泣きのフレーズ”の箇所も、スタジオで全員で曲の内容を詰めている時に即興でつくりました。
普段はそんな事できないんですけどね。この楽曲と「少女の音色に導かれ」のイントロだけです。
–「UTSUNOMIYA」という楽曲のタイトルはどういった意味があるんでしょうか。
重厚:これ言って良いのかわかんないんですが、”tayuta”というバンドがいまして・・・
美咲:それ言っちゃうんですね(笑)。
重厚:そのバンドのギタリストの名前が”宇都宮くん”と言いまして。
彼らと対バンした時にイントロのタッピング部分のフレーズをいただいたので、そんな宇都宮くんに敬意を表して、このタイトルを付けました。
–すごいタイトルを付けましたね(笑)。
重厚:今作はリスナーのニーズを考えて制作した楽曲が多かった中、この楽曲に関してはニーズどうこうあまり考えずに、今自分がやりたい事を詰め込められた気がしています。4つ打ちというところは少し意識していますが。
–そうですね。すごく軽快に聴かせながらも、歌詞も含め楽曲としてはズシッと重いですね。
重厚:おどろおどろしいですよね。
–そこが先月話した”ベクトルの話”の部分にも通じていて、軽快かつ、おどろおどろしいという対局な2つのベクトルが存在していますね。
重厚:そうですね。そういった楽曲のつくり方をしているバンドがいて、そのバンドに影響を受けて、リスペクトの気持ちを込めて「内緒にしててよ、醜い私のことを嫌っても」という楽曲は制作しました。
美咲:拘りがありながらも、良いモノは抵抗なく取り入れて制作しています。
–「UTSUNOMIYA」はポップでキャッチーなところがありながらも、間奏部分では完全にやり過ぎ感がありますね。ドラムが爆発するんじゃないかって恐怖すら感じました(笑)。
重厚:キックの音も歪んでいますしね。
-本当にギリギリを攻めに攻めまくっていますよね。ギターソロがあって、ベースとドラムが目紛しく掛け合って、振り幅がすごくて目が回りそうになりました。本当にとことん楽しませてくれますね。
ともひろ:この楽曲に関しては自由にやらせてもらいました。楽曲としては4つ打ちなんですが、ただの4つ打ちじゃなくて重たい楽曲になるように工夫しています。
重厚:「UTSUNOMIYA」は”そこに鳴る”的な4つ打ちで、「内緒にしててよ、醜い私のことを嫌っても」はまさに迎合している感じになっています。
–そういう意識的な部分は周りの目も感じているからこそでしょうか。
重厚:そうですね。僕達は、何にも考えていないようで考えているし、考えているようで何も考えてなかったりと、拘っている部分と拘りなく受け入れていける部分とがあります。
–そういう部分ってすごく”そこに鳴る”らしいところですよね。だからこそ、こんなにも”そこに鳴る”らしい音楽が生まれているんじゃないかと感じました。歌詞に対しても拘りはありますでしょうか。
重厚:歌詞には自分の人間性を出さないといけないなと思って制作しました。
基本的に自分自身の事を他人に伝えるのが嫌いですし、自分の事を話すのも聞くのも嫌いなんです。バレたくないんです。そういうところは若気の至りかも知れませんが。
今まで歌詞でも伝えたい事を抽象的な表現を隠すように書いてきたんですが、今作の「エメラルドグリーン」と「少女の音色に導かれ」では、もう包み隠さず出しましたね。”少女って言って良いのは、向井秀徳だけ(少女の音色に導かれ)”って言っちゃってますし。完全にリスペクトです。
「エメラルドグリーン」に関しては、”ていうか、光ってなんだよ”の1フレーズの為に歌っていますね。
その手前の”光を探すんだ”っていう気持ちから急に”まぁ無理だけど”っていう、僕の普段の思考回路を出しちゃった楽曲です。わかりやすいぐらいに卑屈でネガティブな歌詞になっているかなと思います。
ただ、楽曲のアレンジとしては何も難しい事はせず、とにかくシンプルに、想像する通りに進行していく、僕ららしからぬ楽曲だと思います。
–普段は逆に裏切りの連続で展開していく”そこに鳴る”からすると、らしからぬ楽曲ですよね。
話は変わりますが、昨年に初の全国リリースをして、2015年はどんな1年になりましたか。
ともひろ:昨年初めてリリースをして、ツアーを回ったりといろいろな経験をして、いろいろなバンドと出会った事によっての刺激が多くて、今までの考え方とは変わっていきましたね。
美咲:今まで2、3年バンドをやってきたよりも、それ以上の経験をした1年でした。
重厚:ツアーの為に免許を取ったんですが、初心者マークを付けて半年で30,000km走りました(笑)。
美咲:いろんなところへ行きましたね。北は北海道から南は台湾まで行ってライブをしました。
–そんな刺激が、今年のアウトプットに繋がっていくと思うんですが、今後の”そこに鳴る”はどうなっていくんでしょうか。
ともひろ:今までは、音源でやった事をライブで再現するって事を考えていました。でも、最近はCDの表現とライブの表現を全く別物に考えてやるようになって。その2つが離れた事によって互いがより研ぎ澄まされてきたと思うので、この先その2つをもっと離していきたいです。
重厚:高校生の頃からずっと思っているんですが、”凛として時雨”と2マンをしたいです(笑)。
–今後の活躍に期待しています!ありがとうございました。
【そこに鳴る「YAMINABE」リリースツアー】
4/1(金)福岡Queblick
4/3(日)広島4.14
4/4(月)大阪pangea
4/22(金)仙台enn 3rd
5/11(水)神戸 太陽と虎
5/12(木)岡山PEPPERLAND
5/18(水)宇都宮HEAVEN’S ROCK VJ-2
5/19(木)名古屋CLUB UP SET
5/26(木)下北沢SHELTER
5/27(金)新潟RIVERST