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isolate interview
- SPECIAL -

isolate interview

クロスカルチャーが主流となった現代で音楽ジャンルを分つのはリフパターンではなく、ドラムのビートと精神。ポストブラックのセンスを手に入れながらも軸はブレずにハードコアバンドとして変化を続けるisolateは、活動7年間のキャリアを注ぎ込んだファーストフルアルバム『ヒビノコト』で音楽レベルを確実に一段階上にシフトさせ、新たな動きを連想させるバンドとして今注目を浴びるインディペンデントアイコンだ。一掃されたサウンド面のイニシアチブを取るのがGt. TH氏。狙いと先見性。ここ数年で手にした閃きをアルバムに投影して自身の理想を今改めて構築している存在だ。

Interview & Text : 鞘師 至

―初めてisolateのライブを見たのがeggmanでした。 TAKEN(U.S)ジャパンツアーの東京編。当時は確かバンド結成間もない時で、勢いむき出しのライブだったのを覚えてます。

TH (Gt.):懐かしいですね、最初はもう緊張で演奏ぐっちゃぐちゃ(笑)。結成して本当に間もない時でとにかく前進したい時期だったんで、そのライブではベースのメンバーが出演出来なかったんですけど、BEFORE MY LIFE FAILSのTsutomu (Ba.)にヘルプを頼んで出てもらってました。

-その当時は “メタルコア × カオティックハードコア” の要素が強かった印象。今までリリースしたデモ、E.P、INFORESTとのスプリットで少しずつ変化してきたサウンドスタイルが、今回のアルバムで確信突いたものに成り切った気がします。

TH:アルバム制作の前に、THE SECRET(Italy)を呼んでジャパンツアーを回った際にギターのマイクと作曲方法について話していた事があって、彼は別でも過去FROM THE DYING SKYというバンドもやってたんで、ファーストアルバムっていうバンドを定義する大事な一枚を作る時の過去経験談なども聞いたんですよ。要は狙いは2パターン。それまでデモやシングル、E.Pなんかで出して来たバンドのアーカイブをそれぞれ編曲、録音し直してその時点までのバンドの集大成としての作品にするか、過去は切り離して考えて全く新しくその時点で作った曲のみの作品にするか。このマイクとの会話がきっかけで自分なりにこのバンドの事を考えた結果、このアルバムの為にツアー後すぐに、全曲新たに書きました。今までのリリース曲を入れ込んでいくと、作った時期によって曲調に統一性が取れなくなる。今作った曲はやっぱり過去タイトルとは違う感覚のものが出来上がるな、と思ったんで今回目指したアルバム通した一貫性を重視する為に3ヶ月で収録曲15曲分、一気に作りました。isolateとして全く新しいものを作ろうと思って今回のアルバムではチューニングは今までと同じで固定して、ある一定のスケールだけ、コードだけを使って全曲作りました。自分の感覚的に聴いた事の無いような和音の重なりが好きで、2本のギターのコードを絡めた時に鳴る音の重なり方の気に入ったものをリフにしていく方法を昔からよく取っていたんで、今回はそれを突き詰めて縛られたコードの中で作っていったんですよ。あとはバラつきのない塊の音、コードがぶつかった時にドンと出てくる塊感を出したくて、5、6弦の鳴りのおいしい所だけを抜き取ってギター2本でそれを鳴らしたり。今回レコーディングしてくれたエンジニアの渡部さん(Yusuke Watabe)にも「とにかくギターは音の塊にしたい」ってことを常にお願いしてディレクションしてもらって、和音、塊、暗い音、これにこだわって仕上げていきました。

-2ギターで多様性でなくユニゾン感を選ぶっていうのが今回の攻めのアイディアですね。どうしても2本ギターが鳴らせると1本リードで1本バッキングとか、別のフレーズを重ねがちですからね。

TH:モヤモヤしてますけど、いろいろ考えながら試行錯誤してやってます(笑)。

-制作は歌詞先行?それとも曲先行?

TH:完全に曲先行です。歌詞と照らし合わせながらとか、スタジオでジャムしてとか、他のメンバーと一緒に作っていく方がバンド全体のカラーが出たりすると思うんですけど、今回のアルバムにはいい意味でそういう要素がないですね。

-レコーディングはスムーズでした?

TH:今回のレコーディングでは、エンジニアの渡部さんとのシンクロ感が凄かったんですよ。ドラム録りでもギター録りでも、音決めの瞬間のディレクションがすごく的を得ていて、プレイヤーの僕達にしっかり道筋を示してくれる。要望のイメージを伝えると、そこへ向かうために今何が足りないのか、何が余分なのかをそっとアドバイスしてくれる。僕はプレイヤーであって録音のプロじゃないから、信頼出来るエンジニアに録音のディレクションを担ってもらえたのがすごく助かりました。もう全部言う事聞きましたもん(笑)。そうするとどんどん良い方向に向かうんですよ。レコーディング中、何度も魔法を目の当たりにしました。渡部さんとは出会えてよかったです。

-ちなみにライブでは最近、オールドスクールなMesa BoogieのMarkシリーズ時代のキャビネットの壁が印象的ですが、ライブでのサウンドディレクションも渡部氏発信?

TH:ライブの機材選びの基準は池谷さん(Dr)が軸で、各パートのメンバーの意見と織り交ぜて検討した結果、今のかたちになってます。アルバムのコンセプトが”音塊”だから、音が迫ってくる壁感が欲しい、という結論に至って物理的に目の前にぶつかってくる音の壁を作るにはキャビ積まなきゃね、と。一枚岩の壁を作る為に積むものも同じにする必要が出て来て、ギター二人もおのずと同じMesaで統一。この体制になってから、やはり今回のアルバムで出した塊感を今のisolateの音として忠実に再現できるようになりました。

-今回のアルバムタイトルが「ヒビノコト」。歌詞では安藤氏(Vo.)の内面の葛藤と夜の海を漂流する航海のような下りが重ねられた物語で全曲通して進んでいくイメージですが、楽曲面で今回の “ポストハードコア × ポストブラック” 的なアプローチを選んだのはどういう経緯?

TH:単純に今一番鳴らしたい音がこういう音だったってことですかね。これまで周囲から吸収した音楽のいろんな要素の中で自分の感覚的に気に入ったものが蓄積されて自分なりのかたちで出たものが今回の音だと思います。明るい音楽ももちろん大好きだし聴きますけどね、でも自分の音楽として演奏するとなると、やっぱり一番気持ちが載せられるのがこういう暗い、早い、重い音なんですよね(笑)。もうバンド始めて7年か、けっこう経っちゃいましたけど、今改めて思いますね、これがやりたい音だって。そう思える音楽を持ってるのは本当に幸せ。やっててよかったですよ。

-7年間活動を続けて来た今、見えて来たものってあります?

TH:僕らはメンバー全員仕事を別でしながら音楽続けている身で、今までそれでずっと活動して来てメンバーそれぞれ生活もあるし、仕事との時間のバランスを常に取っていく必要もあるし、バンド続けていく事は簡単な事じゃないんですけど、でもやっぱりこのやり方で仕事しながらやって来たバンドが7年続けられて、好きなライブをやってこれて、こうやってアルバムも出せるし、自分達の活動の仕方は間違ってなかったなって、今改めて思ってますね。仕事で生計を立てられていなければここまでバンドを続けていられなかっただろうし、逆に仕事との両立にめげてバンドを辞めてたら絶対今でも後悔してるだろうし。だから大変なんですけどね、それ以上に僕らが自分達で構築して来た活動の方法があるし、それ以上に楽しい瞬間もあるから、今すごくエネルギッシュな状態でやれてます。今回のファーストアルバムに関しては本当に魔法みたいなんですよ。いろんな周囲にいる人達、メンバーや携わったエンジニアや、近しいところで活動している他のバンドの人達も含めて、沢山の人に関われて、話しを聞けて、その度にいろんなアイディアとか、考えとか、自分を後押ししてくれるパワーをもらって出来上がったものなんで、僕ら独自の今までの経験や人間関係、環境があったからこそ奇跡的に出来た他にないものだと思います。まず今は、ようやく出来たこのアルバムを多くの人に聞いてもらえるようにがんばりたいです。